オリ主が挑む定礎復元   作:大根系男子

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今回は短めです。
そしてグロ描写もないです。



純白の花嫁(マイボスマイヒーロー)

「何故、何故、何故、か。口を開けば乳を求める赤子の様に喚くしかないとは、尊大に利いた風な口で王の疑問に答えていた以前の貴様はどこに行った」

 

呆れ交じりの嘲笑が風に乗って私に届いた。

剣を握る手がいやにべたつく。

流れる汗の一滴一滴が不快さを掻き立てながら肌を伝って滑っていくのがよくわかる。

そんな音を立てて脳の歯車が動く。

記憶の滑車が走り出す。

くるりくるりと回りだす。

ああそうだ、覚えているとも。

その不敵な笑みを。

その鍛え抜かれた体躯を。

その自身の尊厳すら歪めて改造をし尽くした肉体から洩れる魔力を。

 

どれもどれも、馴染み深い男の物。

嗚呼だからこそ。

その脅威がどれほどかあの日あの時、たった一度の邂逅、たった五分にも満たない邂逅で、確りと理解してしまったのだから。

 

陽の光を受けた太陽の騎士(ガウェイン)が、恐ろしき膂力を持つ隻腕の騎士(ベディヴィエール)が。

円卓の誇る彼らが鎧袖一触であった事実を、この身はまざまざと覚えているのだから。

 

サーヴァントとなった彼がどれ程の能力を誇るのか、少なくとも生前そのままであるということは良い意味でも悪い意味でもあり得ない。

なら過小評価なんてものはしない。

 

平野にて行われた戦闘。

レイシフトでカルデアから来た私たちはまだ魔力を残している。

だがここに駆け付けた征服王と魔術師は戦闘でもしていたのだろう、大きな外傷こそ見受けられないが疲労の色も濃く魔力も乏しい。

おまけに手負い、それも生身の常人も次郎丸の中に幾人もいるのだ。

何より後ろに立香と共にいるのは、名乗った名が偽りでないのなら間違いなく決して死なせてはいけない存在(今代のローマ皇帝)

 

対する剣帝は()()()()()()()()()()()()()()

手にするのは魔剣。

五体に傷は見受けられず遠目から見ても分かるその絹の如き肌の下から活力と魔力が戦が待ち遠しいといわんばかりに溢れている。

 

間違いなく状況は最悪。

多対一でこそあるものの、こちらは幾重に鎖が絡まっているようなもの。

だからこそやることは明白。

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういう貴方も随分とまあ様変わりしたものね。亡霊(サーヴァント)になった気分は如何かしら?」

 

口を開く。

時間を稼ぎ魔力充填(スキル)を発動、魔力を練り始める。

これは好機なのだ。

 

「お前が聞くのか、ギネヴィア。こんな場所にまで逃げこんだお前が誰よりもよく分かってるだろう?そもそも(ローマ)は座になど到達できる立場にない。そんな権利はとっくの昔に捨てたからこそ、俺はあの時あの場所で祖国(ローマ)を手にしたのだから」

 

敵は剣帝、我らが宿敵。

私怨がないわけでもない。

だがそれ以上にこの男は、今倒さなくてはいけない。

 

「そういう意味では人理焼却にも感謝しなくちゃね。何せ無様に病床で没した馬鹿な皇帝が居るって聞いたものですから、てっきりこの手で貴方の事を縊り殺してやることができないと思っていたんですもの。それがこんな機会が巡ってくるなんて、ああ此度ばかりは運の廻り合わせというものに感謝すべきね」

 

ルキウス・ヒベリウス。

落陽を迎えた五世紀の西ローマ帝国に嘗て以上の栄光をたった十数年で齎した稀代の戦術家。

実質自身が盟主となる形でギリシャ、バビロニア、アフリカ、ヒスパニアの諸王を纏め上げ傘下に置いた大帝国の支配者。

この男が何を望んだのか、僅かな時間で言葉を交わした間柄でしかない自分にはその全てがわかったわけではない。

だが少なくともこの男は大陸の支配という目的のためにその人生を全て投げ捨て、そして()()()()()建国王ロムルスの手で袂を分けた幻想(神代)へと欧州全体を巻き込んで回帰させかけた上に自ら数多のまつろわぬ民(幻想種)を率いた男。

 

「よく回る口だ、それほど(ローマ)が気になるのか」

「それはそうでしょう?誰だって、貴方みたいな()()()()()()亡霊(サーヴァント)になってしかもどっかの誰かさんに仕えてるだなんて、そんな信じられない話を聞いたら」

 

故に人理の否定者。

英霊に問われるのはその偉業(行い)が善か悪かなのではない。

人類存続という命題(人理)に対して利益を齎すのか不利益を撒き散らすのか、ただそれだけ。

 

「成程、道理だろうな。俺もまたこうして呼ばれもしなければ何処とも知れぬ場所で漂い続けていたのかもしれん。だが皆目見当もつかず況してや見栄もしない虚像を延々と追うことに俺は喜びを見いだせなくてな。(ローマ)の誉れ、(ローマ)の喜び、それは虚ろな霧の中にありはしない。お前はどうだ、ギネヴィア?少しは()()()()()()()()の一つでも出来るようになったのか?」

「さあ?けど、随分貴方も喋るじゃない、詩人にでもなられるつもりなら諸国漫遊の旅にでもお出かけになられたら?さぞかし世界(人類)の役に立てるんじゃないかしら?」

 

だからこそ、ルキウス・ヒベリウスは英雄であっても英霊にはなれない。

格が如何こうではない。

血統なぞ関係すらしない。

ただルキウス・ヒベリウスが存在する。

その事実があるだけで、この男がいるだけで、人理は畏れるのだ。

幻想種が跋扈し神に隷属させられたあの神代に引き戻されるのではないかと、そう思うのだ。

 

「……つくづく、お前の言葉は本当に()()な。嫌味ですら、心に響く物が何一つないとは本当に度し難い血袋だ。何をどうしたら、そんな虚飾を羽織って言葉を弄す人間になるのやら。ああやはり、お前は至極詰まらん女だ、ギネヴィア。(ローマ)の率いた異形の兵(幻想種)ですら生きた輝きがあったというのに、お前のそれは出来の悪い硝子細工のそれだ」

「言葉が過ぎるわね、ルキウス。そんなに私とお話しするのが楽しくて仕方がないのかしら。それとも……いつもの化け物共(お友達)がいないのがそんなに不安なのかしらね?」

 

そしてもう一つこの男が厄介なのは、四つの大国を纏め上げた手腕と種族の垣根どこらか現実と幻想の垣根を越えて数多の幻想種を率いたその異質な将としての器。

魔獣の軍勢を率いたこれに勝負を仕掛けるというのはそれこそ神代の法則そのものと戦うに等しい。

だからこそ、たった一人で此処にいる今こそが最大の好機なのだ。

 

 

 

ばちりと僅かに音がする。

手元からだ。

それは魔力が十分に溜まり終え、今の霊基でできる最大規模の魔力行使が可能となったという事実を知らしめる。

 

その様子を隠すつもりはない。

隠したところで、あの野獣のような男の事だ。

持ち前の獣染みた勘、そして忌々しいことに決戦術式(とっておき)を使えるほどに熟達した魔術の技量で幾らでも見破ってくるだろう。

だからこれは合図。

このローマにあやかるなら、先の音は賽なのだ。

 

当然その僅かな音を聞き逃すことができるような殊勝な身体をしていない剣帝はつまらなそうに鼻を鳴らした。

 

「変わらず諧謔すら愛さない、否、()()()()()。それがお前だというのだから、本当に救われない女だ、お前は」

 

その言葉は酷く憐れんでいるようで、何処か私ではなく遠い誰かに話しかけているようでもあって、今の私には到底できないしこんな状況で返事なんて返してやれない。

代わりに贈るのはこちらの意思。

即ちここが決戦なのだという証左。

 

右肩に担ぐようにして王剣を構える。

とうの昔に起動しっぱなしの宝具は自陣への供給を断ちそのリソースを全て自分に注ぐ。

焼き付きどころか刀身自体が熱を孕んだように熔熱を宿す。

排熱の勢いは荒らしい獣の吐息の様。

それと同時にまた、ばちりと燐光が弾け飛ぶ。

淡い水色で細く、そして鋭く棚引き刀身からその身を表す雷。

 

対する剣帝、ルキウスからの言葉は既にない。

至極、嗚呼本当に、ぞっとするほど詰まらなさそうに魔剣を手にし、刀身の上で紫電を踊らす。

 

その銘はフロレント。

 

私が王から借り受けた王権代行の証である王剣クラレントの姉妹剣たる()()()

一説にはかの智将カエサルが所持した彼の聖槍の原典、それと対を成す鍛冶の始祖が鍛えたとされる聖剣と同一視されるそれ。

故にか、聖槍と同様に()()()()()()()()()()()()()()()()、そう約束された剣。

それがどこまで本当なのかは分からないが、構えたわけでもなく只ぶらりと構えただけで周囲を圧倒する威は確かにそう語り継がれるにも相応しい。

そしてそれを担うは東洋の武芸を収め羅刹(ラークシャーサ)と称された武人。

その身に宿した巨人の腕(ブラキウム・エクス・ジーガス)赤竜の心臓(魔力炉)にも比肩する出力。

自分のような特別な加護も才もない癖にただその智を欲した故に学び身に着けたとされ魔術の技量は、踏みしめた土地の霊脈に直接介入して瞬時に支配下へと置けるほどに高い。

 

だからこそ今、何の構えを取らずに待つこの男を前にして私は未だ踏み込めずにいる。

踏み込めば、その場で切り伏せられるのが容易に分かる。

 

嗚呼それでも、やらなくては。

 

その決意は、

 

 

 

 

 

 

 

 

「やああああああッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ゃッ!!?」

 

空から降ってきた大盾とそれを振り下ろす少女の姿で吹き飛ばされた。

 

轟音。

 

マシュの戦意に満ちた、そしてどこか怒ってるような声。

その声に篭った力そのままに振り下ろされ私とルキウスの間に割って入るように地面に叩きつけられた盾は大地を抉り飛ばし陥没させる。

当然突風でも吹いたように砂埃が巻き上がり周囲は一瞬見えなくなるが、少し経てばそこにいる少女の姿が見えてきた。

私に背を向け大楯(円卓)をルキウスへと構えるマシュ。

その背は小さくて線も細くて、でも二本の脚でしっかりと己と盾を支え私をルキウスから守るように立っている。

それはどこかもう居ないはずな彼のことを憧憬させる、儚いけれど気高い強さだった。

 

「さっきから聞いてればごちゃごちゃ、ごちゃごちゃ……」

 

大地を歩く音がする。

後ろからだ。

 

「詰まらないだとか救われないだとか……」

 

別に大きな音じゃない。

決して大きな声じゃない。

けれどその声は戦場によく通った。

 

「確かに弱いし口煩いしメンタル蛞蝓レベルだし、その癖私は美少女とか言っちゃう残念アラサーだけどさ」

 

……いや戦場に響き渡んないでよ、大分というかかなりぼろ糞言われてるじゃない、私。

 

「おまけにメンヘラで、貧乳だし……」

『あー、確かに』

「ダ・ヴィンチちゃん、スタッフルームの冷蔵庫からドクター用の三時のおやつを抜いておいて下さい。王妃は小さくて可愛らしいだけですロリは無敵ネトランスロット死ね王妃様万歳、と私のなかの誰かが早口で囁いています」

『最近僕への当たり強くないかい!?マシュ!?』

 

っていうか空気固まったわよー、おーい。

ルキウスのやつ、凄い曖昧な表情で沈黙してるよー、ねーったら。

 

「料理と魔術ぐらいの取り柄はあるッ!対魔力で無効化されるけどッッ!」

「それはあんまり褒めてないと思います、先輩……」

 

あれー、可笑しいなー。

ここフォロー入る場面よね、あとかなり緊迫してて一触即発だった空気どこいったのかなー?

 

そう思う私の隣に立って、ちらりと此方を見た立香はにっと笑って言ってくれた。

 

「そんなんでもさ、私を守ってくれて私と一緒に戦ってくれる大事な仲間なんだよ。だからさ……」

 

そう言って立香は一歩前に出る。

その曙光のような瞳が真っ直ぐ見据えるのは剣帝。

私どころか円卓の騎士ですらまともに正面からぶつかれるのはそういない程の豪勇。

それを相手に決して臆せず、彼女は胸をはって両手を広げる。

マシュの後ろにいるからだなんて関係ない。

気がつけば手が震えていた自分を守るように。

マスターである筈の彼女が何の役にも立たない私を護る為に其処に立っている。

 

「うちのギネヴィアに文句があるならッ、まずはマスター()に話を通してからにしろッ!このトマト野郎ッ!!」

 

人理を否定してでも己の欲と夢を通そうとした男に、そうやって啖呵を切る。

次の瞬間には首を断たれていたっておかしくない、象と蟻なんて比喩ですら足りない格上の超常に対して、私なんかの為に怒る少女達。

それがどれ程眩しいか、どれ程美しいから自分では測りきれないから。

つい、恋い焦がれるように、暖かな太陽を見上げるように、目を細めて惚けたように二人の背を見てしまう。

 

ルキウスが口を開くのは、まるでその輝きの余韻にあいつ自身が浸っていたかのように暫く経ってからだった。

 

「……それが今の、お前の主人と仲間か、ギネヴィア」

「……えぇ、いい子達でしょ?ルキウス」

「成る程、忘れていた。お前は女を選ぶ趣味だけは確かに真っ当だったな」

「なによそれ」

 

別にそれに対する返事はなく、無造作にルキウスは背を向けた。

 

「止めだ」

 

その声色は淡々としていて、少しだけ呆れているようにも聞こえるもの。

そしてそのままこちらの返事なぞ気にする様子もなく、呆気に取られるほど軽やかな歩調で気負うこともなく自然なままに戦場を立ち去ろうとしていた。

 

「見逃すなんてッ!……珍しいこと、するじゃないの……」

 

言ってから思わず耳が熱くなる。

逃げるのかと問うならまだ良かった。

虚飾と言われても侮蔑を乗せられたのだから。

けれど見逃す、そう言ってしまえばそれは正しく戦っていたら自分は負けていた、そう認めるようなものだ。

とことんまで情けない呼びかけ、恥じるべきその言葉にルキウスは笑ってくれることなく静かに返す。

 

「見逃す、か。お前にしては随分と殊勝な言葉だ……気が変わった、ただそれだけだ。あの方と違って俺は見定める必要なぞ、たった一欠片すら持ち得ていないと決め込んでいたが」

 

こちらに向けられた顔に浮かぶのは微笑。

よく知っている。

それは好意を示すものではない。

この男の笑みの意味は、

 

「今のお前は悪くない。ああ、認めてやろう。騎士王を喪ったお前など何の価値もないと思ったが、あの娘達は別だ。お前がアレらを守るのなら此度の戦争にも少しは値打ちがでる。ああ、そうだ」

 

 

 

---お前ごとあの娘達を手に入れるのも悪くない

 

 

 

獲物を見つけた獣のそれなのだ。

 

 

 

 

 

 

「こ……こわかったぁ……」

 

ルキウスが去って暫く。

とさっと軽い音がした。

ぺたんと地面にへたり込む立香、それに慌てて駆け寄るマシュ。

正直に言えば、何を言えばいいのか分からない。

好機ではあった。

あれは単体としても強いすぎるが軍団を率いるとなるとそれ以上に厄介になる男なのだ。

だからこそ、ここで刺し違えても傷の一つか二つは与えたかった。

けれど、それが果たされることはなかった現実をああだこうだ言う気にもなれない。

物凄く単純に、誰かが自分の為に怒ってくれた。

その事実で信じられない程に、胸が軽くなって涙が溢れそうなぐらい嬉しかった。

だから胸が苦しくって何にも言えなかった。

 

「先輩!お怪我は!?」

「ないない、心配しすぎだよマシュ」

「当たり前です!ギネヴィアさんもいきなり剣を構え始めますし先輩は先輩で当然のように敵サーヴァントに向かって行きますし!」

「どうどう、私の可愛いナスビちゃん」

「私は馬でも茄子でもありませんッ!」

 

そんな可愛らしげな言い争いの途中。

まあでも、と事も無げに立香言ってから。

私の方へと顔を向け、にっと何時ものように笑って言いきった。

 

「これで大丈夫。次なんか言われたときも、私が言い返すからさ。だからもう、大丈夫だよ」

 

その言葉が、どれ程尊かったか。

 

「いえぇ!?ちょ、ちょ泣かなくてもいいじゃん!」

「わー!お、落ち着いて下さいギネヴィアさん!ほらやっぱり先輩言い過ぎだったんですよ!」

 

その言葉が、どれ程優しかったか。

 

「えー私の所為?マシュも何だかんだ結構言ったじゃん!」

「私の純粋なフォローです!ほら先輩!私も一緒に謝り……って」

 

その言葉が、どれ程暖かかったか。

 

「あー、もうボロ泣きじゃん。ほらこっち来なよ、一緒にネロんとこまで帰って作戦会議しよう?」

 

私なんかでは決して言葉で表せなくて。

結局立香に抱きしめられても頰を伝う雨を止められなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「随分と、上機嫌では無いか」

 

ふと、声を掛けられ此度の現界で初めて降り立った戦場から拠点へと帰還したルキウスは脚を止めた。

何時からそこに居たのか。

声をかけたのはもの憂げに柱へともたれ懸かる華やかな衣装で着飾った美丈夫であった。

 

「これはこれは、我らが偉大なる先達カエサル様。(ローマ)のような若輩者に召喚されてからこれまで一度たりとも口を開けなかった貴方様が如何な御用で?」

「あれ程不機嫌だった貴様が小躍りしそうな様子で帰還すれば硬く閉じた貝とてその身を差し出すであろうよ」

 

おやそれ程不機嫌でしたかな、と至極詰まらなそうに返す男にこれまたカエサルは不愉快そうに鼻を鳴らしながら返す。

 

「下らん問答をする気分ではなくてな。何より貴様は私の好みの貴婦人諸兄でもない。故、私の主義に反するが、単刀直入に聞くとしよう」

「ほう……ではなんなりと」

 

その芝居掛かった言葉に何を返すでもなく、言葉通り鋭くカエサルは問うた。

 

「---何を見た、ルキウス・ヒベリウス、神祖の定めた人の域を超えて神の領域(神秘)に触れてまで滅びに抗わんとした男よ。お前はあの()()に何を見た?」

 

それは疑問。

 

「何故ただの凡百な少女にあの方は警戒する。何故貴様を相手にして震える童女にあの方は過剰な戦力をこの特異点(戦場)に投入する。何故……何故貴様のような幻霊に()()()()()()()()()()()()()()()。お前は、いや、あの者は一体何なのだ?」

 

何故、人理焼却という栄えあるローマの歴史全てをなかった事にする暴虐に荷担する形をとってまで神祖ロムルスは過剰で無意味な戦力を欲するのか。

それこそがカエサルを召喚した不遜にも魔神を名乗る宮廷魔術師が神祖の手で討たれて以来の疑問であった。

 

それへの答えを、ルキウスは何でもないように口にする。

 

(ローマ)には世界の全てが美しかった。忘却の果てに消え幻想となった幻想種(彼ら)すら愛を向けるに値する美しさがあった。だからこそ全てを欲しこの手の内で永劫愛し続けたかった」

「……何を」

 

その言葉だけ言うとルキウスは歩き出す。

その目に映るのは今ではなく、この特異点より遥か未来。

嘗てルキウスが生者としてあった時代。

即ちブリテンと戦争をしていたあの落日。

 

「だからこそアレを見た時理解した。何と詰まらない、血袋なのだろうかと」

「……何?」

 

それはつまりギネヴィアという王妃の居た時代。

 

「悍ましい程に慈愛に溢れまるで全てを愛しているとでも言わんばかりの瞳が、()()()()()()()()()()()()。そうすることしか知らない、そうする機能しか持たない木偶の坊、そんな女なのだと異国の者である俺だからこそ理解出来た」

 

最早カエサルは何も返さずただ答えを待っている。

それにふっと苦笑いを浮かべるようにルキウスは頰を吊り上げ、そしてカエサルへ詫びを口にする。

 

「正直に言えばだ、偉大なるカエサルよ。(ローマ)にも神祖殿が何をお考えなのか等、露の一雫とて理解出来んのだ。ただまぁ一つ言える事は、だ」

 

心底愉快なのだとでも言いたげに喉をくっと鳴らして嗤い、ルキウスはまるで熱に浮かされるように言う。

 

「これまで決められた台詞しかなぞれなかった人形が、ここにきて初めて自分の意思で誰かの、ブリテンの者ですらない少女達の為に生きようとしている。俺はそれが酷く愉快なのだよ。そうまるで……」

 

 

 

 

 

 

 

---誰かが必死に書き上げた脚本(シナリオ)をぐちゃぐちゃにするような、飛び切り愉快な凌辱劇が始まる、そんな予感と期待だよ

 

 

 

 

 

 

 

そう言ってルキウスは言葉を止め、されど歩みは止まる事なくカエサルの元を去って言った。

 

 

 

 

 

 




外見十代前半、実年齢三十路間近、精神年齢一桁クラス。
そんな面倒臭い残念系メンヘラオリ主がうちの主人公。
いや、ほんとすまない。

そして蒼銀読めば読むほどヤバさが分かる、そんなルキウス。
FGOでの実装、待ってます。

それと告知なのですが、活動報告の方で連休中ぐらいに投稿する予定の短編のアンケートを取っています。
もしよろしかったら書いていただけるとすっごく嬉しいです
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