モンスターハンター ~憧れを追いかけて~   作:朔紗奈

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はじまり。

「っひぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「嬢ちゃん! 早く体勢を整えるニャ!」

「そんな事言われてもぉぉぉぉぉぉへぶっ!?」

「嬢ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!ギニャッ!?」

 

 森と丘、と通称される狩場のエリア11にて。

 サシミウオ釣りの為に赴いた新米ハンターの少女とそのオトモは、新米ハンターの中では中々恐れられる牙獣種・ブルファンゴに、二人仲良く跳ね飛ばされた。

 

 

 

 

 

「あのエリアでファンゴ先生は卑怯だって。てか師匠、ファンゴ先生の話は聞いてない」

「気持ちは分かるニャ、だが、ハンターたる者あの程度の不測の事態には備えておくべきニャ」

「だってさぁ・・・・・・」

 

 何とかブルファンゴをやり過ごし、釣りを何とか成功させて、少女は生まれ故郷にして現在ハンター活動の拠点としているココット村へと帰って来ていた。ハンターを始めるに辺り、なけなしのゼニーで買ったレザーライトシリーズのヘルム――ヘルム、とは言え、他のシリーズに比べて鉄板を加工しただけのシンプルなものだ――を、狩り帰りの食事の為にやって来た集会所の座席の隣に置き、見るからに疲れ切った様子でぐてっとテーブルに突っ伏す。

 

「だっても何も無いニャ。大体、」

 

 師匠、と呼ばれたアイルーが、突っ伏した十代後半程の少女が背負う武器に目をやって続ける。

 

「何でハンターになったばかりで双剣なのニャ?」

 

 それは、双剣を持っている事、双剣を選んだ事、双方に対する問いだった。

新米ハンター、特に何でも屋に近い依頼しか受けられない程に駆け出しのハンターは、基本的に片手剣から始める事が多い。武器自体の軽さによる移動の容易さ、小さ目とは言え盾を持っているので、ある程度なら攻撃を防げるという安定性を兼ね備えているからだ。

 

 他の武器種としては、切断系で最大の大きさを持つ大剣、打撃攻撃のハンマー、突き、という性質上切断と打撃双方の攻撃を与えられ、また、大きな盾を共に持つ事で防御がし易い代わりに移動が著しく遅くなるランス、弾丸を用意する事で遠距離を攻撃可能であり、軽量で機動性の高い代わりに威力が低めのライトボウガン、機動性が低い代わりに威力が高いヘビィボウガンなどがあり、それぞれ多少のクセをもつ武器ばかりだ。この村から離れた街では更に数種類の新しい武器が開発されており、この村でも作成自体は可能だ。だが、それは遠方から訪れたハンターの武器を整備・強化する為にやむなく村長が取り入れる事を許可した技術であり、この村でハンターを始めよう、という新米ハンターは村長の許可が無ければ制作を注文する許可が下りない。

 

 双剣、という武器種は、言ってしまえば片手剣で盾を持っていた手にも剣を持つスタイルを指す。盾を捨て、簡単に防御出来るという安定性を捨てる代わりに攻撃に特化した双剣は、つまるところモンスターの攻撃を避け続ける必要があるのだ。これが、新米ハンターには中々難しい。新米ハンターは、モンスターに対峙する際に必要になって来る、所謂度胸が足りていない場合が極めて多い。最初から狩りを目指してハンターになろうと言う者は訓練所に通い、武器の扱い方を学んで自分に合う武器種を選んで狩場に出るのだが、お使い程度の依頼をしている内に討伐にも手を出すようになっていくパターンの者は訓練所に通っていない者が殆どだ。

 

 だからこそ、そういう新米ハンターには一番扱いやすい片手剣を勧められ、同時にそれは、一番選ばれている武器種なのだ。

 

 だが。

 

 少女が背に装備しているのは、基本の片手剣である『ハンターナイフ』では無く、双剣としては基本の、しかし、この村では村長の意向で片手剣を強化していく事でしか手に入れる事が出来ない、『ツインダガ―』だ。

 

 装備は『レザーライト』、実力も採取すらおぼつかないペーペーもいいところなこの少女が、訓練所どころか、そこまで片手剣を強化していけるほどの依頼数をこなしたとは考えられない。

 

 ジョッキに入ったマタタビ入りのミルクを傾け、師匠――名をゼクスと言い、灰色の毛並みで左目に古傷を持つ、外見は渋いがハードボイルドとまではなりきれないアイルーだ――は、ミルクで白いひげを口の周りに生やしながら考える。

 

 彼は、元々この村の住人だった訳では無い。言ってしまえば、色々な地方を旅しながら依頼を受ける、流れのハンターのような事をしていた。故に、双剣を始めから武器屋で売っている村を見て来た彼は、「まあそんな奴もいるニャ」と始めこそ思っていた。だが、この村に住み着くようになって少し経ち、気付いたのだ。武器屋に双剣が売っていない事に。村長の意向、と知ったゼクスが村長に訊ねてみると、「双剣(おうよう)を使うには、先に片手剣(きそ)を学ぶのが一番じゃろ?」と、まあもっともな言葉が帰って来た。さらに言えば、新米だと村では買えない、作れないだけで、他の場所で買う事を否定しなければ、それを使う事も否定はしなかった。結局は道具、一応の規則とし、推奨はしても強制はしない、との事だった。

 

「んー・・・・・・まあ、なんというか、お守りと憧れ?」

 

 お守りと憧れ。

 

 それを聞いて、ゼクスはふむ、と納得気に声を漏らし、更にジョッキを傾ける。

 

 ハンターと言うのは、存外ジンクスと言うものを重要視することが多い。経験上のものであるとか、天気で決めるなんて者もいれば、この装備やこの食事をすればクエストに成功しやすい、などと言ってクエスト前に必ず食事をするハンターもざらに居る。彼女の『ツインダガ―』も、憧れのハンターから貰ったものなのだろう。確かに、双剣としては入門用のものだ。新米が使う分には丁度いいだろう。

 

「まあ、頑張るといいニャ」

「ん、ありがと師匠」

 

 ゼクスの軽い応援に対して少女は顔を上げてにへら、と笑いながら返したところで、テーブルに近づく気配を感じて体を起こす。

 

「ゼクス、フィリス、狩り帰りかね。腹へっとんの」

「あ、村長。うん、とりあえずアプトノスサンドを頼んである。もうすぐじゃないかな」

「よく食べてしっかり休むとええ。ゼクス、ちょいと失礼するぞい」

「どうぞニャ」

 

 村長がゼクスの隣に座ったタイミングで、フィリス、と呼ばれた少女の前にとん、とやたらにボリュームのあるサンドイッチが乗った皿が置かれる。

 

「いらっしゃいませ、村長」

「うむ、ヴィヴィー、腹へっとんの」

「いつもの事です――ご注文は?」

 

 皿を持ってきた主、黒いメイド服のような服――プライベートシリーズ、と言う列記とした防具の一種らしい――に身を包む女性、ヴィヴィーが、いつも通りの愛想の無い態度で村長のビールと焼いた腸詰の注文をメモし、厨房に消えていった。

 

「可愛いなぁ・・・・・・」

「もう少し愛想があればもっと可愛いんじゃがのう」

「余計なお世話です」

 

 厨房に居ながら聞こえたのか、本人の姿は見えないのに聞こえて来る不愛想な声に、おおこわいこわい、と笑う村長を見て、フィリス、と呼ばれた少女は呆れた顔になる。

 

「いつもいつも、そんな事言うから村長は不愛想な対応が多くなるんですよ」

「勿体ないと思ってしまうと、ついの」

「まったく・・・・・・可愛いのはヴィヴィーさんもですけど、あの服ですよ。あれって、防具なんですよね?」

「うん?まあ、そうじゃの。ああいった見た目ではあるが、飛龍の一撃すらも防ぎうる一級品じゃ。ヴィヴィー本人も、一角竜モノブロスを単独で狩猟可能な実力は備えているしのう」

「・・・・・・ぅえ?」

 

 一角竜モノブロス。

 

 今や伝説と言っても過言ではない『ココットの英雄』が、ハンターズギルドが無く、現在よりもハンターの狩りが安定しているとは言えない時代でありながら、獰猛かつ、岩山にすら突き刺さるランスのような一本角、それを可能とする強靭な身体、地中を移動し、奇襲すらして来る飛龍を単独で狩猟に成功したと言う逸話から、モノブロスを単独で狩猟可能、という事は、現在では英雄とは呼ばれないにしても、一流のハンター、と呼ばれるようになる一つのラインである。

 

 あの服が防具である、という事もだが、あのモノブロスを単独狩猟可能、という事実に、驚きを隠せなかった。

 

「えっと、なんでそんなハンターのヴィヴィーさんが給仕なんか?」

「さての。ハンター稼業もずっとしていると疲れるものじゃ。気分を変える為かも知れんし、他の理由かも知れん。まあ、人手があるに越した事は無いし、実力のあるハンターがこの村に居る、というのはいざと言う時にありがたいものじゃしな」

「まぁ、それはそうだけど」

 

 辺境の村だからこそ、大型モンスターの出現で流通が止まり、生活に影響が出てしまう事がある。そんな時に、ココット村に新米ハンターしか居ない、という状態になると、他方のハンターに依頼を出す他無くなってしまう。何時依頼を受けて貰えるか定かでは無く、解決がいつになるかも分からないとなると、本格的に住民の生活に支障が出かねない。そんな時、腕利きのハンターが居ると迅速な解決が望める、という事である。

 

 ステーキ用のアプトノスの肉に衣をつけて揚げ、野菜と一緒にパンで挟んだ結果、相当な分厚さになっているアプトノスサンドを押しつぶすように圧縮しながら――パンが潰れはするが、こうでもしないと食いつけすらしない厚さなのだ――かぶりつく。あふれ出る肉汁と、さくり、シャキッとした衣や野菜の食感、それらにかかった甘めの特性ソースが絡み、

 

「ん、美味し」

 

 すごく、とは言わないにしても、無難な美味しさと言うのか。毎日食べたい、とまでは言わないにしても、ボリュームも相まってちょくちょく食べたくなる味。

 

「村長、お待たせしました」

「おお、すまんの」

 

 ヴィヴィーが持ってきたテーブルに焼いた腸詰の乗った皿とビールが注がれたジョッキを受け取った所で、そういえば、と村長がゼクスに声を掛けた。

 

「ゼクス、フィリスはハンターとしてどんな具合かの?」

 

 村長のゼクスへの問いに、フィリスは思わずピクリと聞き耳を立てる。まだハンターになって間もないとは言え、やはり評価は気になる。

 

「まあまあ、と言うか、なり立てのハンターならこんなもんじゃないかニャ」

「ふむ」

「ブルファンゴに転がされたり、ランポスにおっかなびっくり立ち向かう様なんか、正に新米ハンターだニャ」

「ぐぬぅ・・・・・・!」

 

 フィリスが唸るのを聞いて、ふぉふぉふぉ、と村長が笑う。

 

「ハンターたる者、誰しも最初はそんなものじゃとも」

「ま、それもいい経験だニャ。最初から無謀に突っ込んで行くよりも、多少臆病な方がよっぽど見込みがあるってもんだニャ」

「そう、なのかなあ・・・・・・?」

 

 不機嫌そうにも疑問に思っているようにも見える顔をしたまま、フィリスはもそっとアプトノスサンドにかぶりついた。

 

 ハンターは、モンスターの行動や習性を理解し、それに対応する形での行動が必要になって来る。ランポスのような、噛み付く程度の攻撃しかしない小型モンスターならばまだ何とかゴリ押しで勝てなくもない相手だが、飛龍種などの大型のモンスター相手となるとそれは通用しなくなる。初見のモンスター相手であれば、事前に調べたとしても慎重に観察し、対策を練って狩りに向かうに越した事は無い。無謀にただ突っ込んで行って死んでしまっては、元も子もないのだから。

 

「無駄に自信を持っている訳でないのは良い事じゃて。まずは、一つの区切りとしてイャンクックを狩る事を目標にするといいじゃろうなぁ」

「イャンクック、かぁ」

 

 大怪鳥、とも呼ばれる大型の鳥竜種、イャンクック。大怪鳥の異名の通り、鳥の姿に似ているとは言え飛竜種に近い姿、行動をし、飛竜種狩りの登竜門とも言われるモンスターだ。桃色の甲殻と大きな嘴、そして頭部をぐるりと殆ど一周するようについている大きな耳が特徴的なイャンクックは、その耳の大きさが示す通り、大きな音が弱点となってしまっているらしい。

 

「まあ、ランポス狩りが安定しないようでは、先は長そうじゃがのう」

「ラ、ランポスくらいなら何とかなるし・・・・・・!」

「ほう?」

「一対一なら、だけどニャ」

「余計な事は言わなくていいから!」

 

 バン、とテーブルを叩きながらゼクスに指を突きつけつつ叫んだフィリスを見て、村長はふぉふぉふぉ、と笑いながらジョッキを傾ける。

 

「美味いのぅ」

「そう? 私、ビールって飲めなくは無いんだけど苦手なんだよねぇ・・・・・・苦くてさ」

 

 村長はそれを聞いて、今度は何か思い出すような様子を見せながら、また笑う。

 

「ジーグも同じことを言っておったのう」

「ジーグ、って言うと、ジーグ・グランエスト?あの悪戯っ子の?」

「んむ。丁度あやつは、お主がハンターになったのと入れ違いで街に出たんじゃったかの。何かにつけイャンクックに挑ませろ、挑ませろと言っていたと思えば、この村での討伐までの最短記録を更新して意気揚々と村を出ていきおった。まだまだヒヨッコだと言うに」

 

 まあ、今頃街で揉まれてる頃じゃろ、と付け加えて楽し気に笑いながらビールをあおり、村長は中身が減って来たジョッキを持ち上げながらビールの追加を注文をする。

 

「・・・・・・ねぇ、村長」

「なんじゃ?」

「ジーグは、どの位でイャンクックを倒したの?」

「秘密じゃ」

 

 プチ、と音をたてながら笑顔で腸詰を齧り、続ける。

 

「大体、そんなもの聞いてどうするつもりなんじゃ?他人は他人、自分のペースでで上達して行けばええ。下手に焦っても早死にするだけじゃて」

「その通りニャ。普通に自分のペースで狩りをしていても死んだハンターだってごまんと居るんだしニャ」

 

 片や納品分とは別に自分用に釣っていたらしいサシミウオを頭から咥えて尻尾をてろんと口から垂らしているアイルー、片や腸詰をさも美味しそうに口に運ぶ竜人族の老人。絵面こそか愛らしく説得力が無いが、ゼクスはソロで飛竜を狩る事が可能なほどに熟練したニャンターであり、村長に至ってはハンターという概念を生み出した伝説のハンター、英雄と称される人物だ。

 

 ハンターとして成功、或いは成長する前に失敗して死んだ新人を何人も見て来ていると分かるからこそ、世間話のように軽い口調であってもそれなりの重さを感じさせた。

 

・・・・・・今の外見でその重さが薄れている感は否定できないけれど。

 

「ところでゼクス、サシミウオは残ってたりしないかの?」

「さっきのクエストで納品したのを食べればいいニャ。どうせその為のサシミウオニャんだしニャ」

「むぅ・・・・・・」

 

・・・・・・もう、本当に。ただのおじいさんとアイルーにしか見えないけれど。

 

「そんじゃま、当面はのんびりイャンクックを目標にしていきますか」

 

 今は少しずつ進んで行こうと、そう思った。

 

 

 

 

 




 という風に取り敢えず始めてみる感じで。

 メタぺ湿密林(所謂初代密林、この名前wikiで最近知った)とかいうマップで久しぶりにやりたいけどPSP死んでるしそもそもソフトどこよ、って感じでちょいテンション下がっちゃったマンであります。

 あの密集具合と言うか、THE・密林って感じ超好きなんだけど復刻まだですかねぇ・・・・・・

 まぁ、そんなこんなで、これからもちまちまと更新していきたいな、と思いつつこれにて。

多分不定期更新な!
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