七草先輩との会話が長かったからか入学式の会場に入ると席の半分ほどは既に埋まっていた。
「…うーん、見事な分かれ方。どうしようか、達也」
座席の指定はないためどこに座ろうが自由なのだけれど、会場は前半分が一科生、後ろ半分が二科生ときれいに分かれていた。
「…あえて逆らうこともないだろう。こんなことで悪目立ちすることもない。」
「まぁ、そうね。寂しいけどまた後でね、達也。」
「ああ、気をつけろよ。」
お互いに席を探すために別方向へと歩みを進める。
"気をつけろよ"別に達也は深い意味で言ったわけではないだろうけど、そんな些細なことが私は嬉しくて入学式の間の別行動の寂しさを消し去った。
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深雪の答辞は、予想した通り見事なものだった。
普段からその美しい見た目で周りから注目を浴びている深雪だけど、今日は一段とそれが際立つ。
見た目もさることながら深雪はその所作までが流れるようにきれいで、会場の空気は静かなどよめきに揺れた。
普段の深雪を知る私でも、深雪はこのくらいそつなくこなせるのは分かっていたが"みな等しく"や"一丸となって"や"魔法以外にも"とか"総合的に"など言葉の端から棘があるともとれるようなことを言うので気が気ではなかった。
まぁ、それでも周りが見惚れていたからか深雪がうまく建前でくるんだからか何事もなく終わったが。
深雪をちらっと見ればまだ来賓と生徒会の人垣の中だ。
まだ時間がかかるであろう深雪をとりあえずおいておき、私は自分のIDカードをもらいに人の流れに身を任せた。
IDカードをもらってから先ほどの場所まで戻れば深雪もちょうど会話が終わったのか私を見つけた途端にまだ話したりなそうな顔でいる来賓客に一礼をしてかけよってきた。
「お姉さま!お待たせして申し訳ありません!」
「そんなにあわてなくても大丈夫なのに。それよりももう良かったの?」
慌てた様子の深雪に笑いかけその後ろの来賓客へと視線を少し向ければいつの間にかもう深雪とは話せないと分かった来賓客は出口へと向かう最中だった。
「いえ、ご挨拶は終わったので大丈夫です。それよりもお姉さまのクラスはどうでしたか?」
先ほどまでの凛々しく答辞を読んでいた深雪から今はいたずらっこのような可愛い笑みになっている深雪の頭を軽く撫でて落ち着かせ、先ほどもらったIDカードで自分のクラスを確認する。
「…Aみたい。深雪は?」
「本当ですかお姉さま!深雪も同じA組です!」
達也は同じクラスにはなれなかったけれど、深雪とは同じクラスになれたことに安堵をする。
これで一緒に行動をするクラスメイトを探す必要もなくなる。
「よろしくね、深雪。」
「はい!こちらこそよろしくお願い致します。」
「それと、新入生代表お疲れ様。とても素敵だったわ。」
「お姉さまに褒めてもらえるなんて光栄です」
ある程度談笑をしたところで、IDカードをもらい終わった生徒が自分のクラスを確認し終え落ち着いたからか深雪の周りに人だかりが出来てきているのが分かった。
これだけの美少女。
壇上に登った姿は入学式で見たが近くで見たいということだろうか。
あわよくばそのままお近づきになりたいという人たちだろう。
クラスメイトとの交流は悪いことではないがそれは明日からでも出来る。
それになにより達也をきっと待たせているだろう。
そこまで考えて、私は深雪に目配せをして頷いたのを確認してから講堂の出口の方に向かって足を踏み出した。
声をかけるかどうか悩みその勇気がないのであればそのままでいてほしい。
周りからすれば深雪の少し前を歩く栞も、深雪が可憐な美少女であれば栞は気高い洗礼された美人なので立ち居振る舞いもそうだが歩いているだけで花になる二人に道を開けない者はいなかった。
「お兄様、お待たせいたしました」
講堂の出口付近で達也を見つけると先ほど私に駆け寄ったように深雪が達也に駆け寄った。
こういうところはまだ子供っぽくて本当に可愛らしい。
「待たせてごめんね、達也」
私も深雪に少し遅れて達也の側まで行けば見慣れない顔の女の子が二人ほど達也の横に居た。
私はクラスメイトかな?くらいにしか思わなかったが深雪は違ったらしい
「お兄様、その方たちは?」
「こちらが柴田美月さん。そしてこちらが千葉エリカさん。同じクラスなんだ。」
唐突ともとれる深雪の言葉に達也はすぐに返事をする。
やはりクラスメイトだったらしい。
「お姉さまという方がありながら、入学初日からクラスメイトとデートですか?」
「こら深雪、失礼でしょ?」
「そうだぞ深雪。お前を待っている間、話をしていただけだよ。」
深雪の寒気を感じ取ったのか達也のクラスメイト二人も苦笑いをしている。
にこにこと笑ってはいるがその後ろにどんな言葉が潜んでいるのか…
「初めまして、柴田さん、千葉さん。司波深雪です。」
私と達也に失礼だと怒られてしゅんとなった深雪だがそこはさすがというかなんというか。
礼儀はきちんとしている。
「私も初めまして。安倍栞です。」
「私もお姉さまも新入生ですのでお兄様同様よろしくお願いします。」
お淑やかな笑顔を取り繕って一例をして挨拶をした。
「柴田美月です。こちらこそよろしくお願いします。」
「よろしく。あたしのことはエリカでいいわ。深雪と栞って呼ばせてもらってもいい?」
「ええどうぞ。苗字ではお兄様と区別がつかないですものね。」
「私も問題ないわ。」
四人の少女が改めて自己紹介を交わす。
私も深雪もフレンドリーなエリカに好印象を抱いているのは、先ほどまでの堅苦しい式典の後だったらかもしれない。
だが、私と深雪の反応にエリカの方が意外さを隠せないようだった。
「あは、深雪も栞も見かけによらず気さくな人?」
「エリカは見た目通りなのね」
「えー、それってどういう意味よ」
どこか通ずるものがあったのか砕けた会話に私も貼り付けた笑みではなく自然な笑顔がでる
達也も意外そうに私と深雪を見ていたが、その視線はすぐに深雪の少し後ろへと移った。
「こんにちは、司波くん。また会いましたね。」
その声に先ほどまで自己紹介をしていた私たちもそちらを向いた。
達也は軽くお辞儀をする。
「深雪、生徒会の用事は終わったのか?まだならどこかで時間をつぶしているが…」
何か用があるのだろうと七草先輩とその後ろにいる男性と深雪を私も交互に見る。
七草先輩の後ろにいるということはこの人も生徒会関係者だろうか…
あまり達也に対して良い表情を向けていないことだけは分かる。
「いえ、大丈夫ですよ」
達也の質問と提案には深雪とは異なる相手から返された。
「今日はご挨拶させて頂いただけですから。深雪さん…と私も呼ばせてもらってもいいかしら?それに栞さんも。」
「あ、はい。」
「私も大丈夫です。」
七草先輩に話しかけられて先ほどまでの打ち解けた笑みではなく神妙な面持ちになる深雪
話の内容は私は知らないがきっと生徒会に関することだろう。
新入生代表を生徒会に勧誘というところだろうか
「では、深雪さん。詳しいお話はまた日を改めて。」
さすが数字付きの七草家長女といったところだろうか。
深雪に負けず劣らず、優雅に一例をし講堂の方へと向きを変えようとしたところですぐ後ろに控えていた男子生徒が七草先輩を呼び止めた。
「しかし、会長。それでは予定が…」
「あらかじめ約束をしていたわけではありませんから。別に予定があるならそちらを優先すべきでしょう?」
なおも食い下がる気配を見せる男子生徒を目で制して七草先輩は深雪に、そして達也と私に意味ありげな微笑みを向けた
「それでは深雪さん、今日はこれで。司波くんと栞さんもいずれまた、ゆっくりと。」
そのまま今度こそ講堂の方へと向きを変えた七草先輩の横で男子生徒が舌打ちが聞こえてきそうな表情で達也のほうをにらんで、すぐに講堂へと入っていった
まだ最初の方なので原作にしっかり沿って進めようと思うとやっぱり入力に時間がかかりますね。
今後、オリジナルな部分も出てくるわけですがそのころには原作に沿いつつキャラクターを好きなように会話させたり動かせたりすればなと思います。