着任まで書こうと思ったのですが、寒さでキーボードを叩く手がつりはじめたので結局プロローグ止まり……
次の投稿から本編始まります、多分。
拝啓
春の日差しが暖かく感じる季節となりました。
家を離れてから1年経ちましたが、父上、母上共にお元気でしょうか?
こちらは、つい先ほどまで元気に過ごしておりました。
男性初の艦娘…艦息?の適性があると分かってから本日まで、多大なる期待を寄せられていた私ですが、本日の調査で給糧艦としての適性がある事が判明いたしました。
現在、軍の上層部が緊急会議を行っておりますが、非常に居心地の悪い状態となっております……
思わず両親への手紙風にまとめてしまったが、要はその位ショックだったのだ。
何せ全国初の艦息、そして全ての艤装を扱える謎の才能を持ちながら、結局適性のある艦は給糧艦だったのだから。
そりゃあ給糧艦だって軍艦なわけだし、砲くらいは積んでたとは思うが、流石に魚雷や艦載機を搭載していたとは思えない。
かと言って、実際に訓練用の艤装は扱えたわけだから、適性云々の誤検知という訳でもない。
そんなこんなでまたもや軍部大混乱。いっそレ級の適性でもあれば……いや、やっぱり嫌だな。超美白+尻尾はいらないや。
「はぁ……俺、どうなるんだろ」
もはや頭の中はこの1行で埋め尽くされている。
そのまま給糧艦として配属されるのか、はたまた無かったことにされて帰らされるのか。
まさか某昆虫仮面のように改造される訳は……無いと信じたい。
(無駄に料理好きだったことが仇になったか?)
間宮といえば料理や甘味が大好評だったはず。
そういう意味では確かに適性があったのかもしれないが、それならいっそ料理が美味しい艦でもよかったのではないだろうか?
居酒屋や小料理屋の女将として書かれることの多い鳳翔さんをはじめ、つみれやら南蛮漬けで有名な川内とか、フーカデンビーフの大鯨、名前がそのまま使われてる龍田とか。
そもそも、甘味とかあんま作ったことないぞ。配属して羊羹せがまれたらどうしようか……
と、そんな感じで悩んでいたら、先ほどの調査員が戻ってきた。
「すいません、こちらへ来ていただけますか?」
「あ、はい……」
どうやら俺の処遇が決まったようで、待機していた調査部屋から連れ出される。
心配は尽きないが、さてどうなることやら……
「こちらへお入りください」
「……ここは?」
「艦娘の適性を定着させる為の部屋です」
「定着……?」
連れてこられたのは10畳もない位の部屋。
中央には何やらどでかい機械が設置してあり、機械の中央部には椅子がある。
どうやらこの装置で、適性の定着とやらを行うらしい。
調査員曰く「適性のある艦の歴史や知識を定着させ、自分だけの艤装を出現させる為」に必要な作業との事。
つまりは、某ネコ型ロボット漫画の暗記パンを食べつつ、艦を建造する的な話か。
そう言えばこの世界では同じ艦娘がダブる事は無いらしいし、さっき挙げた艦娘はもう定着済みで、既に戦場で頑張ってるのかもしれん。
もういいや、なるようにな~れ。
「ここに座って下さい」
「分かりました」
「今からハッチを閉めて定着を行いますが、知らない記憶が一気に頭に入ってきますので、慌てないで身を委ねて下さいね」
「了解です」
機械中央の椅子に腰かけると、調査員によってハッチが閉められる。
微妙に閉所恐怖症の気がある身としては若干落ちつかないが、致し方あるまい。
目をつぶってたら多少は楽かな?と思い瞼を閉じた瞬間、頭の中に見た事も無い風景や知らない知識が流れ込んできた。
とめどなく流れ込んでくる知識の奔流に、なるべく逆らわないよう力を抜こうとするのだが、そもそも自分が今どうなっているのかさえ曖昧になる。
ふと奔流の感覚が変わったような気がして意識を戻すと、流れてくる風景も知識も全く別の物になっていた。
これは?
瑞鶴
これは?
伊勢
これは?
伊19
これは?
由良
最初こそ間宮だと理解できていたのに、次々と別の艦が現れては流れ込んでくる。
そして100をとうに越えた後、ブツン!と、モニターの電源が落ちるように視界が真っ暗になる。
一瞬だったのか、はたまた数時間経ったのか。
実際は数分しか経っていなかった訳だが、意識が戻った俺は数時間のたうち回ってたのかという位、全身汗だくの状態で椅子にへたり込んでいた。
直後に、慌てた顔をした調査員が大急ぎでハッチを開けた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「な、何とか……」
「普通なら数秒で終わるのですが……」
「も、もしかしてダメだったとか?」
「いえ、成功した事は成功したのですが……」
「?」
何やら煮え切らない態度の調査員に、段々と不安になってくる。
怖いからはっきり言ってくれ、頼むから……
「装置に入っている間、どういうイメージが浮かびましたか?」
「うーん……最初は間宮としての記憶や知識が入ってきて、その後急に別の艦のイメージがいろいろと……」
「別の艦?そんな筈はないのですが……」
心底不思議そうな顔で首を傾げる調査員。
そんな事言われても嘘は言ってないしなぁ。
ふと何かを思いついたような仕草をした調査員が、改めてこちらに向き直る。
「ではまず、間宮の艤装を展開するイメージを浮かべて下さい」
「は、はぁ……」
言われた通り艤装を展開するイメージを思い浮かべる。
まぁイメージを浮かべろと言われても、ゲームとしての間宮しか知らないのだが。
……あれ、間宮さんの艤装ってどんなんだったっけ?
アイテム使った時しか出てこないし、イマイチよく覚えていない。背中に艦の一部がくっついている感じだったような気はするんだが。
そんな曖昧な記憶でも問題なかったようで、気付けば自分の背中に艤装が展開されていた。
大きな煙突?みたいなのがあったり、クレーンみたいなのが付いてたり……うん、どう見ても非戦闘艦です本当にありがとうございました。
「艤装は問題ないみたいですね。まぁ給糧艦だと艤装あってもアレですが」
「ですね……」
思ってた事をズバッと言われてしまった。
でも口には出さんでくださいとは思う。これでもだいぶ凹んでるんですから。
「では、そうですね……何か他の艦の艤装をイメージしてください」
「他の艦、ですか?」
「ええ、戦艦でも空母でも何でもいいので、定着時にイメージの浮かんだ艦の艤装をイメージしてみてください」
「わ、わかりました……」
ちょっとだけ「何言ってんだこいつ」的な視線を投げかけつつ、とりあえずイメージを思い浮かべる。
何がいいかな……分かりやすく空母あたりにしておくか。
色々候補はいたものの、とりあえず正規空母「赤城」の艤装をイメージする。
するとどうだろう。艦の一部のような艤装は矢筒になり、腕には立派な飛行甲板が現れたではないか。
「!?」
「あれ、空母の艤装も展開できた……」
「そんなバカな……ちょっと失礼します!」
調査員は慌てて内線を手に取り、どこかへ報告を始めた。
この慌てっぷりからすると、恐らく普通はありえないのだろう。
手持ち無沙汰になったので現れた艤装を眺めていると、艤装がフッと消えてしまった。
「あれ、消えちゃった?……うぐっ!?」
「どうしましたっ!?」
「か、身体が急に重く……っ!?」
艤装が消えた途端に体が鉛のように重くなり、気付けば床に倒れ伏していた。
何やら調査員が慌てて声をかけて来ているようだが、倒れた直後から意識が途切れそうになっており、もはや言葉すら聞き取れない。
程なくして部屋に数名の人がなだれ込んで来たあたりで、耐えきれず完全に意識を手放したのだった。