尚、登場する艦娘は適当チョイスです。
もちろんそのうち増えます。
出迎えてくれた提督たちの元まで歩み寄り敬礼をする。
第一印象は大切と言うし、なるべく綺麗な敬礼を試みる。
訓練が始まった当初は、やれ猫背だのやれ表情が硬いだの散々に言われていたが、流石に1年半も経てばそれなりのものが出来上がるものだ。
「給糧艦 間宮、着任致しました!これからよろしくお願い致します」
「長旅ご苦労様です!私がこの泊地の提督をしている、松田 恵美(まつだ えみ)です。階級は中尉です」
形式ばった挨拶の後、「よろしくね!」とフレンドリーに右手を差し出す提督。
ああよかった、肩が凝りそうな厳しい人じゃなくて。
ビシッと軍服を着こなしてはいるけど、どちらかというと可愛い系だろうか。中尉とか言ってたし、一番着任が新しいと聞いているから、年齢もまだ若い方なんだろうな。
長く艶やかな髪が腰の辺りまで伸びており、見ただけで「サラサラしてそう」と分かる。
これは頑張れる気がする。色々と。
提督と握手を交わした(手を握ったらちょっと照れてた。カワイイ!)後、横で控えていた艦娘達と挨拶を交わしていく。
ひのふの……出迎えてくれたのは5人か。
「えっと、秘書艦の五月雨です!白露型の駆逐艦です!」
「同じく白露型駆逐艦の、春雨です。」
「長良型軽巡洋艦の由良です。よろしくね。ね?」
「球磨型軽巡の球磨だクマー。よろしくだクマ!」
「軽空母龍驤や!よろしゅうな♪」
みんな若干興奮気味に、それでいて矢継ぎ早に挨拶をしていく。
だがやはり皆男にはあまり慣れていないようで、ひっそりと「本当に男の人だ……」とか聞こえてくる。
そしてそんな中俺は笑顔で挨拶を交わしながら、心の中では喜びを隠せないでいた。
だって、みんなゲームと同じ姿なんですもの!
もちろん2次元と3次元という違いはあるけど、コスプレとかそんなチャチなものじゃなくて、なんというか全く違和感が無い。
そりゃあここは正真正銘艦これの世界なわけだし、当然と言えば当然なのかもしれないが、五月雨の青髪や春雨のピンク髪にも違和感が無いというのはすごい。
あれ?でも訓練の時にいた他の候補生は誰も見た事なかったんだが……もしかして定着の儀式をすると見た目も作り替えられるのか?それともゲーム内ではまだ未実装の艦娘達だったのかな?
……まぁ、敢えて聞かない方がいいかな。変な質問して仲が拗れたら面倒だし。
「じゃあ間宮さん、とりあえず鎮守府に行こうか!」
「あ、はい。了解です」
「……んー、堅いなぁ。ここでは敬語禁止!いい?」
「はい……じゃなくて、わかったよ」
「よろしい!……で、早速頼みたい仕事があるんだけど」
おっと、到着早々任務が発生した模様。
長旅で多少の疲労はあれど、そこは厳しい訓練を終えて来た身。
よっぽど過酷な進撃じゃなければ行けるはず。
「もちろん大丈夫だよ。出撃かな?それとも遠征?」
「よかったぁ。ああ、出撃とかじゃないから安心して!」
ありゃ、違うのか。
進撃でも遠征でもない、となれば残すは……
「来て早々で申し訳ないんだけど、料理作ってもらえないかな~……なんて」
「そっちかぁ。まぁ給糧艦としての本分はそっちだし、もちろんいいけど……」
「ありがとう!」
承諾すると、艦娘達と共に大喜びする提督。
しかし、元の世界でよく読んでたSSなんかみたいに、歓迎会とかって開いたりしないのね。
などと自分勝手なことを考えてると、五月雨がバツの悪そうな表情で語り始めた。
「あの、本当は歓迎会を開きたかったんですよ!みんな間宮さんの着任を心待ちにしてましたし。ただ……」
「ただ……?」
「うちの鎮守府のメンバーって、誰も料理作れなくて……」
「……えっ?」
そう言いながらしょんぼりと項垂れる五月雨。
見ると提督もその他の子達も申し訳なさそうにしている。
まぁ艦娘は戦う事が本文だし、提督が料理を作るなんてそれこそSSの中だけの話だろうし、仕方ないか。
ん?という事は……
「今まで食事はどうしてたの?」
「えっと、本土から送られてくるレトルトとか、インスタントとか……」
「Oh……」
マジか、不摂生極まりないじゃないか。
自分が料理を始めたきっかけの1つに、コンビニ弁当とかレトルトとか、そういう食事を避けたいというものがあった。
あまり深くは語らないが、元の世界では片親だったので、どうしてもそういう食事に頼りがちになっていたのだ。
だが学校の調理実習で料理の楽しさを学んでからは、せめて料理位はという事で頑張って勉強した。
最初こそ失敗続きだったものの、それでも親は大層喜んでくれたし、自分も楽しいし一石二鳥だったわけだ。
「そういう事なら仕方無いか……よーし、腕を振るいますか!」
「ありがとうごさいますっ!」
「食材とかはあるんだよね?あと、他の艦娘は何人くらいいるの?」
流石に料理が得意とは言え、食材がなければどうにもならない。
それに人数くらいは把握しておかないと……
「食材は間宮さんが来る前に揃えておきました!人数は、間宮さんを含めて7人ですね!」
「そうか、7人……7人!?」
「は、はい。ここにいるのが全員ですけど……」
「Oh……」
本日2度目のOh……が出た。
するってーと、うちの鎮守府には戦艦どころか重巡すらいないのか。
でも艦娘がダブらない上に新興の鎮守府ともなれば、それも仕方ないのかもなぁ。
「まだ私も着任して1ヶ月だからねぇ。でも、これからドンドン増える……予定だから!」
慌てて取り繕うように話しかけてくる提督。
大丈夫、少し驚きはしたけどガッカリしたわけじゃないから。
人数が少ない分料理の手間は省けるし、戦闘だってより活躍できるだろうし。
「なるほど。じゃあまずは料理で皆に活力をあげないとね!」
そう言いつつ明るく振る舞うと、しょんぼりしてた皆も元気を取り戻していく。
さてさて、料理も戦闘も活躍の機会は多そうだ。頑張らねば!
そう意気込みを新たに、提督たちと鎮守府へ向かうのだった。
いつの間にか陽が落ち、夜の帳が降りる頃。
「はいっ、油淋鶏できあがりっ!誰か持ってって~」
「はいよ!……うは~、美味そうやなぁ」
元気よく返事をして、龍驤が油淋鶏をテーブルへ運んでいく。
次は……エビグラタンがもうすぐ完成しそうかな。
オーブンの様子を見ながらも、パエリアを炒める手は止めない。
鎮守府に到着した俺は、すぐさま料理に取り掛かった。
鎮守府自体の大きさは大したことないが、新しく建て直したらしく非常に綺麗だった。
もちろん調理場もしっかりとした作りになっており、器具や調味料の類もちゃんと揃っていて安心した。
食材に関しても概ね新鮮なものが揃っており、とりわけ海産物に至っては非常に新鮮でおいしそうなものばかりだった。
野菜類は本土から都度取り寄せるらしいのだが、海産物は周辺の住民が捕りたてのものを持ってきてくれたらしい。
なるほど、愛されてるじゃないかうちの鎮守府。
残念ながら下ごしらえまではしてないので、時間のかかる料理は作れないが、それでも常日頃レトルトやインスタント頼りな彼女達には目の毒だったようで、今にもつまみ食いし始めそうな表情を浮かべている。
ここまで楽しみにされるとは……給糧艦冥利に尽きますなぁ。
「ほいっ、グラタンとパエリア完成!とりあえずこんなもんかなぁ」
「うひゃぁ~、こんな手の込んだ料理は何日ぶりだろう……」
エプロンを外した俺は、大皿に乗せたパエリアを持ちながらテーブルへと向かう。
とりあえず今日は立食スタイルというか、「食べたいものを食べたいだけ持って行け」スタイルにしておいた。
普段どうするかは……後で提督と話し合おう。もう料理しか目に入ってないみたいだし。
「はやくっ、早く食べたいですっ!」
「匂いだけで我慢が……」
「むしろもう食べてもいいよね、ね?」
「鮭のムニエルが球磨を呼んでるクマー……じゅるっ」
「落ち着かんか君ら!気持ちはわからんでもないけど」
五月雨を筆頭に、今にも食いつかんとする4人を嗜める龍驤。
なるほど、ここでは龍驤は姉さん的な立ち位置か。そんな龍驤も目がキラキラしてるけど。
そんな龍驤の言葉に我に返ったのか、料理に見入っていた提督がコホンと咳払いをしつつ口を開く。
「えーそれでは、間宮さん本人に作ってもらっちゃったけど歓迎会という事で、皆で親睦を深めましょう!かんぱーい!」
「「「「「「かんぱーい!」」」」」」
挨拶もそこそこに、一斉に料理に手をつけて行く皆。
失敗はしてないと思うけど、やっぱり最初ばかりは反応が気になるわけで。
とりあえず様子を伺っていると、皆大輪の向日葵が咲いたような笑顔を見せてくれた。
「おいし~~い!!!さすが間宮さん、期待を裏切らない見事なおてまえ!」
「んん~、感激ですぅ!」
「麻婆春雨もおいしいです!」
「はふ、はふ……ぷりぷりのエビが入ったグラタンも……ん~、とろける♪」
「バターのきいたムニエル最高だクマー!」
「これは後でたこ焼きも焼いてもらわんとな……パエリアおかわりっ!」
ふむ、とりあえず喜んでもらえてるようでよかった。
皆の反応に満足しながらカルボナーラを食べる……うむ、茹で加減も丁度良さそうだ。
「俺が来た以上は、皆にレトルトとか食べさせないからな!覚悟したまへ!」
「「「「「「わ~い!!!」」」」」」
大喜びの面々は、瞬く間に食事を平らげていく。
歓迎会ってなんだっけ?と思わなくもないけど、これはこれで。
そんなこんなで、大歓迎のまま鎮守府での1日目は更けていった。
ちなみに余談だが、この後2回ほど追加で料理を作る羽目になったのは内緒だ。