咲-saki- 四葉編 episode of side-M 作:ホーラ
第1局[邂逅]
3月末、魔法界全体を震わせる噂が流れた。それは四葉の一族3人が同じ一年生として国立魔法科学校に入学するとのことだった。
そして四月、入学式の日がやってきた。
「やっぱり納得いきません」
入学式という華々しい日に似つかわしくない喧騒が校門前で起こっていた。
「どうしてお兄様が補欠なのですか!入試の成績だってトップではあったでありませんか!」
「まだそんなこと言っているのか」
達也は頭が痛そうにしていた。そういう私も頭を抱えていた。この話はもう幾度となく入学前にやっているのだ。
「深雪あのな、ここは魔法科学校なんだ。いくらペーパーテストがよくたって魔法技能が優先されるのは当たり前だろ?俺の技能からしたら二科生の中でも下から数えた方が早いぞ、逆に受かったのが奇跡だと思う」
「そうよ深雪、そんなに怒ると雪が溶けて深水になるわよ」
達也の言ってることは事実であり、私も、そしてその話を聞いていた妹も納得していたのに深雪だけは未だ納得していなかった。しかし私も何を言っているのだろう。
「そんなこと言って!お兄様に勉学や体術で勝てる人はいません!それにお姉様は私に新入生総代を譲るために点数調整したでしょう!」
怒りの矛先が私に向いた。
「深雪の可愛い姿を見たかったのだけどダメだったかしら?」
「申し訳ございません、あのようなこと言ってすみませんでした」
私はちょっとショックを受けたふりをしてごまかすことにしたが深雪はそれにうまく引っかかってくれた。
入試の結果はこうだ。
総合
1位四葉深雪 2位四葉咲
魔法技能
1位四葉咲 2位四葉深雪
これを魔法強度と魔法発生速度に分けると、
速度
1位四葉深雪 2位四葉咲
強度
1位四葉咲 2位四葉深雪
ペーパーテスト
1位四葉達也 2位四葉深雪 3位四葉咲
このように上位を四葉が占めてしまった。お母様が四葉の力を見せつけるためにある程度本気を出せと言ったので、このような結果になったのであった。達也は世間では知られていないが、私は「四葉三姉妹」の長女、深雪は次女と世間では言われている。深雪と私は姉妹ではないのだが世間には間違って伝わっているようだ。まあ、秘密主義の四葉であるので、私たちの身の回りの人間しか従姉妹という事実は知らないのだが。ちなみに一番有名なのは十四使徒の1人三女みなもである。
「それに深雪、今さらそんなこと言ってもしょうがないだろ」
達也の冷静なツッコミが深雪には追い討ちとなった
「申し訳ございません、お兄様…」
「謝る必要は無い。お前は何時も俺の代わりに怒ってくれる。それだけで俺は救われてるんだ」
「嘘です…」
二人の世界に入ってしまった二人をほっておいて、私は本を読むために手頃なベンチを探した。入学式まであと3時間はある、一冊は読めるだろう。なぜこんな早い3時間前などという時間に入場したかというと深雪が新入生総代として答辞を読むための打ち合わせをするためだ。
構内には人数がそれほど多いわけではないが準備で早くきている生徒もいる。木を隠すなら森の中というが、人数が少ないので早く来て本を読んでる私は異端で目立つはずである。
しかし通り過ぎる人も誰も視線を向けてくる人はいない。
それもそのはずだ。
私が人除けの術を敷いている。東横桃子のステルスモモという能力だ。
原作では、自分や自分の捨てた牌を相手の意識から排除し、他の人に振り込ませたりしていた。
風景の一つとして意識に入れないことにする魔法であり、カメラを通すと意味がない魔法なのだが、排除とか警告を含めていない術式ならば感知されにくく、まず意識に上りにくい。
これは遮音壁も同時展開することが一応できるので、私たちの会話が大声などを出さない限り外に漏れることもなく、私が設定を変えない限り外の音が私たちに聞こえることはない。だが私はこれを使うときはほとんど本の世界に入り込んでいるので使うことはまずない。
この能力を使えば、よほど感知系や空間認知能力に優れた魔法師でなければ、気づかれることはないだろう。
しかも、この魔法は古式魔法に似たようなものがあり、固有魔法に見えない。
本気を出せば達也の精霊の目のような知覚能力者持ち以外に対して透明人間のように使うことができ人に対して強度は高いのだが、先に述べたようにカメラに対して無力であるので、そこは古式魔法より使い勝手が悪い。逆に言うとカメラを通して見ると何も魔法を使っているように見えないので魔法の探知もされにくいという利点もある。
「ここにいたのか」
「よくわかったわね」
「目を使わなくてもこれぐらいはもうわかる」
深雪には効くが達也にはステルスモモはもう効かない。深雪に対して使うとびっくりするので驚かす時によく使っている。
「そろそろ行くぞ」
「そうね、そろそろ時間だわ」
腕時計を見ながら言う、私は本や腕時計などのアナログ的なものを前の世界の記憶から手放すことはできなかった。
講堂への道を歩いていると幾分か賑やかな声が聞こえてきた。新入生やその両親などが入場しているのだろう。
一科生で晴れやかな顔、二科生で落ち込んだ顔、何より一番多かったのは恐怖や緊張の顔であった。
「達也さんあんまり怖がらせるのはよした方がいいですよ?」
「あいつらが勝手にビビっているだけだ、俺は関係ない」
入場していく人達は今年同学年で入ってくる四葉の三人、特に達也にビビっているのだ。四葉にはいい噂がないのは知っている。お母様は攫われることなく七草弘一との婚約を解消しただけという風にこの世界はなっており四葉がアンタッチャブルと言われるようになったきっかけはないはずなのだが、他の事件が起き、アンタッチャブルと言われていた。私と深雪は四葉の次世代として知られていて、女子ということもあり、あまり怖がられないだろうが、知られていなくなおかつ男子の達也がよほど怖いのだろう。
「新入生ですね、間も無く式が始まりますよ」
「すみません、今向かいます」
先輩の登場に私たちは頭を下げた。その時腕にはめられたブレスレット型のCADが目についた。学校内でCADを携帯できる生徒は原則風紀委員か生徒会の役員だけである。普通の生徒は授業や部活動で使用する時以外はCADを学校に預け、放課後に引き取るという校則になっていだはずだ。ちらりと横を見ると達也も顔には出ていないが警戒しているのが分かった。
「あ、自己紹介がまだでしたね。私は生徒会長の七草真由美です。七草と書いて“さえぐさ”と読みます。よろしくね」
なるほど、やはり大まかな部分は変わらないようだ。この世界でもその噂は聞いていた。九校戦での活躍は名高いし、十師族に相応しい技量の持ち主だと聞いている。七草とは家の関係でつながりはあるが、秘密主義の四葉ということもあり四葉当主の娘である私でさえ直接会うことは初めてだ。
「自分は四葉達也です」
「四葉咲です」
余談だが私は四葉咲という名前が気に入っていた。四葉のクローバーが咲くというようで縁起が良さそうに思えたからだ。
「貴方達が四葉家の方々ね、達也くんは魔法理論平均70点のところ満点、もちろん歴代1位、咲さんは歴代魔法強度1位、その上総合歴代最高得点の深雪さん、どんだけ過去の歴史を更新する兄妹なのかしら」
どうやら成績の他は知らないような口ぶりだが嘘であろう。私と深雪の顔は売れているだろうし生徒会長ならば顔付きのプロフィールも見れるだろうし四葉が三人も入ってくるのだ。当然警戒するだろう。
魔法力は国際ライセンスに基づき、魔法を発動する速度と魔法式の規模と対象物の事象を書き換える強度で定義される。私は強度だけで言えば、深雪よりも上だったわけだ。
私は入試の時江口セーラと渋谷尭深の能力を使った
私の神依は固有魔法に加えて今の自分の魔法力に神依させたものの雀力が魔法力に置き替わり上乗せされる。
しかしどちらも上乗せされるのではなく雀力の高いキャラの方しか上乗せされない。
インターハイAブロック準決勝中堅戦では江口セーラが勝っていた。つまり入試の時では江口セーラの雀力が上乗せされていたのだ。
江口セーラの麻雀は速さより点数の高さを追い求めたものであり、それをこの世界に置き換えると速度より強度となるわけだ。
つまり速度はあまり上乗せされず強度はかなり上乗せされた、江口セーラは無能力なので上乗せされる固有魔法はないが、渋谷たかみにはハーベストタイムがある。
これはオーラスに今までの局一打目に捨てたハイが配牌に戻ってくる能力でこの能力は役満を上がりやすい、つまりこの能力も強度に関係する能力になるのである。
入試は4回魔法の強度を図って最高の値を取るのだが最後だけはハーベストタイムにより今までの強度をプラスされるので歴代最高強度となったわけだ、なお1〜3回目は手を抜いていた。
なぜこの二人を選んだかと言うとある程度本気を出せと本家に言われたのと、ある程度真面目に取り組まないと深雪になんて言われるのかわからない点、そして固有魔法を見せないためである。
ハーベストタイムはただ単純に強度が高いと言えば固有能力に見えない。
なおかつ神依時の性格は雀力が高ければ高いほど私の性格が置き換わっていく。二人共雀力が高い場合は二人の性格が混ざったものとなるのでセーラは陽気な(うるさい)関西人、渋谷は静かな子であるので混ざって性格は普通の関西人となったのである、つまり江口セーラの性格で無駄に目立ちたくなかったのである。最近は神依が馴染み、性格を乗っ取られることは少なくなったが、ある四人のキャラは未だに意識がなくなる。
余談だが神依するキャラの雀力が違いすぎると雀力大きい方が小さい方の性格を途中から飲み込んでしまう。また雀力が高くても今の性格と大きく違わないならば性格は変わることはなく口癖(例:SOA)などがうつるぐらいである。
閑話休題
だが私以上の結果を達也は残している。
「それはただのペーパーテストの結果ですよね?」
基本的に魔法実技が出来なければ理論もできないと言われる。それだけ達也の結果は実技結果とかけ離れて異常だったということだ。ちなみに私の理論はダメダメである。
私も結果を見た瞬間、驚いたものだ。
深雪も低い点数ではないし、実際理論の部門では次席だ。しかし、達也の成績は深雪の点数を平均で10点近く上回っていたのだ。私のペーパーテストはあるズルを使ったにもかかわらず、神依二人を変えずに挑んだので江口セーラが色濃くでて3位だったが、もし本気を出して偏差値70コンビ新子憧と小走やえの神依を使っても深雪には勝てても達也には勝てなかったと思う。
「そんなことはないわ。私が同じ試験を受けたとしても満点が取れるとは思わないわ。これでも理論も結構得意なんだけれどね。それに、咲さんも学校のあの機械であの強度は驚異的だわ」
「恐れ入ります」
「ありがとうございます」
会長もあの機械と言っていることだから、多少不満が見えた気がした。
その後、小柄で可愛らしい小動物のような先輩が会長を呼びに来て、私たちも会場へと向かった。その先輩は私たちをみると震えていた。
そういえば原作咲さんも龍門渕や阿知賀をビビらせていたなあと思うことで気にしないことにした。実際ああやって震えられると少し心にくるものがある。
入場するといきなり奇妙な光景を目にした。
「こんなにくっきり分かれるものかしら?」
「そうだな」
一科生と二科生がくっきりと前後ろで別れていた。
多分前にニ人で座ってもとやかく言われることはないだろう。何か言われたら家の名を出せばビビらない魔法師はいない。しかしそんなことで家の名を使うのは嫌だった。
「それじゃあ俺は後ろに行くよ、また後でな」
結局達也が後ろに座り私は前に空いている席を探しに行った。
この世界の咲さんのイメージは髪の毛ペールゴールドのロングです。咲で言えば雀明華
キャラ解説
東横桃子
敦賀学園一年 とにかく影が薄い、どれぐらい影が薄いかと言うとカブトムシより影が薄い
江口セーラ
千里山女子三年 普段は学ランを着ておりまだ体力を誇る 関西最強の強豪校の元エース
渋谷たかみ
白糸台高校二年 おもちな人でいつもお茶を飲んでいる眼鏡の静かな子。