咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

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ミラージバット決勝


第34局[天使]

九校戦9日目午後

 

 

観客席は既に一杯であったのと深雪のそばにいてあげようということから私は珍しく本部にいた。

 

「深雪、体調はどうだ?」

「はい、気力体力も充実していますし、最初から全力でいきたいのですが」

「全力というとあっちか?」

「そうです」

「そうか、一応きついなら切り替えろよ」

 

達也と深雪の会話の意味がわかったのは私だけで、先輩達は再び疑問符を浮かべていた。

 

「咲さん、全力ってどういうことかしら?」

「予選と同じ飛行魔法ですよ、まあ普通の飛行魔法ではないですが」

 

咲特有の見ればわかりますよ発言に控え室の期待は高まった。

 

「そういえば咲、お前と二高の生徒会長が午前中仲良く一緒に観戦してたという噂は本当か?」

 

深雪を送り出した後、渡辺先輩がこの発言をするまでは。控え室にいる人たちは試合への期待より、まず私がなんと発言するのかに期待を変更した。

 

「事実ですよ、何か問題でも?」

 

事実でありやましいこともないので素直に答える。

 

「いや、九校女子人気一位の男子の二高生徒会長と男女人気一位の女子の咲が付き合っていたらと思うとな」

「彼は婚約者候補の1人ですよ、趣味が合うので他の婚約者候補よりは仲良くさせて貰っていますが」

 

いつ私は男女人気一位になったのであろう。達也も我関せずという顔してないで助けてほしい。

 

「二高の生徒会長も大変ね、そんな噂たったら絶対男子から襲撃されるわよ」

「まあ自業自得じゃないですかね、それぐらい咲と一緒に2人で観戦することは価値があると思います」

 

味方か敵かよくわからない発言を達也がする。やっと深雪の試合が始まりそうになったので私は逃げることができた。今度からは怒りで認識阻害をふっ飛ばさないと心に誓った。

 

 

 

ミラージバット決勝が始まると達也の予想通り一高以外深雪が予選で使った飛行術式を使った。深雪はというと

 

「なんなのあれ!?」

 

「背についてる羽みたいなのはなんなんだ…」

 

「応用飛行術式ですね、咲と深雪のためにアレンジしました」

 

先ほど私にお願いしたのもう片方はこれであった。深雪が使っているのは達也が汎用化飛行魔法を作る過程で、和の術式を翻訳し少し効率化したものであった。達也曰く、羽を出す工程がものすごくサイオンを必要としているらしく、汎用化する上で省いたのそうだが、省いたら省いたで飛行術式の空を飛ぶスピードや旋回性などの飛行能力が格段に落ちたらしい。なのでサイオン量を持つ人、例えば深雪のような人は羽を出した方が性能を高めれるのだ。

深雪は私の神依と同じ力を使うことに少し引け目があり私に許可をもとめたのであった

 

「妖精っていうよりまるで天使じゃねえか…」

 

観客や一高の人間には、使い慣れない飛行術式を使っている他校の生徒を寄せ付けず、さらに高性能な飛行術式を使いこなし得点を重ねていく深雪はまるで天使のように見えるが、他校の選手から見たら悪魔であろう。

空は既に天使とそれに従う妖精という光景となっている。

サイオン切れで退場や休んでいる他の選手を尻目に深雪は一人得点を重ね優勝を飾った。

 

 

 

深雪の優勝で総合優勝が決まった第一高校だったが、モノリスコードが残っているとのことで祝勝会は先延ばしになった。しかし半数のメンバーが手持ち無沙汰なのも事実。七草先輩はプレ祝勝会的な意味合いのお茶会を開催した。エリカや吉田君、レオや美月までいるのは七草先輩の意図があるのだろう。

しかし達也の姿はなかった。

 

「あれっ、お兄さんはもう寝ちゃったの?」

「ええ、さすがに疲れたと申してまして」

「そうだろうね、昨日まで八面六臂の活躍だったんだし」

 

千代田先輩と五十里先輩が腕を組んでというより千代田先輩に引っ張られてやってきた。見るに明日の調整してたところを無理やり引っ張ってこられたのであろう。

深雪達が話してるのを見て、私はそっと魔法を使った。

 

 

 

 

 

 

 

 

達也は小野先生から情報を貰った後、何か見えないものに話しかけられた。目を使って見ると霊子が不自然に固まっている。精霊のような何かであろう。

 

「あんたが達也さんやな」

「誰だ」

「うちは咲の精霊やで、枕神怜ちゃんとでも呼んでもらおうか」

 

なるほど、やはり咲の精霊魔法か。枕神怜という魔法は咲から聞いたことがなかったし、精霊と会話するのも初めてであったが、バスの時の事故を止めたのはこの魔法だと直感的に感じた。

 

「それで咲が何の用だ」

「咲の伝言を伝えにきたんや、伝言は"うちも行きたかったけど今回はゆずったる、これは1つ貸しやで"だそうや」

 

枕神怜が咲の伝言を関西弁に直し伝えてくれる。

 

「わかった」

「うちは疲れたし帰るわ、お仕事頑張ってや」

 

そう言い残し枕神怜は消えた。深雪には嘘が通用したが、咲には通用しなかったようだ。それでも達也の気持ちを汲み取り、追ってこなかった咲に心の中で感謝するのであった。




枕神怜すごく便利
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