咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

60 / 91
おまたせ(小走先輩風)


第57局[再臨]

私は夏から毎週月曜日、町外れの森で衣の神依の練習をしている。

それは夜に行なっているが、なぜ夜かというと当然夜の方が力が増すからである。達也に1人で出歩くのは危ないと言われ、最初の頃は送り迎えをして貰っていたが、深雪の習い事と9月から重なり始めたので送り迎えは無しだ。深雪は申し訳なさそうにしていたが、私と深雪だったら当然深雪を優先して欲しいという意見で合意したのであった。

月曜日じゃなくすればいいだろというツッコミが入りそうだが衣と月はセットであるのでこれは譲れない。

 

この毎週の練習のおかげか衣の神依時でも5割は意識を保っていられるようになった。喋り方や性格などは完全に衣であるのだが。

 

今日は満月、いい練習ができるだろうと思いながら森への道のりへの中間地点を通過した時、精霊達が尾行に感づいた。

中間地点まで私が尾行とは気づかない距離であるので、こちらのことを視認できないだろうが、何か衛星か何かで追跡してるのかもしれない。

街中で魔法戦するのは一般市民にも被害が出る可能性が大きいので、予定通り森へ向かった。

 

 

私が森に着くと待ち伏せされていたのだろう。四方からサブマシンガンの弾の嵐が私を襲う。当然枕神怜により予測していた私は、ダブルバウンドにより撃たれた弾を全て跳ね返す。こんなこと普通はできないがダブルバウンドを領域型にすることでこれを可能とした。何人かそれで倒れたが、銃弾を障壁魔法で防いだ人たちは私に飛びかかってきた。

それを魔法でいなしながら相手の正体を探る。

覆面で人相を隠しているが、サイオンまでは隠せていない。明らかにサイオン波がこの国のものとは一致しないので、USNAか大亜連合だろう。普通の人間にも見えないので、強化人間だと仮定するとUSNAの方が可能性高いかもしれない。

倒して覆面を取ればわかることに気づいた私は、放出系魔法の"スパーク"で敵全てを気絶させた。

 

全員処理し終わった後、敵の国を特定するために覆面を剥がしに向かったところ枕神怜のアラートがなる。

10秒後プラズマビームが飛んでくるらしい。いつもはナビモードが対処方法教えてくれるのだが、今回は対処方法不明らしい。これは初めてのことだ。

 

精霊を使って周りを見回すとリーナが正面にいるだけで他の人影は見えない。ということはリーナが正面から放ってくるのであろう。プラズマを防ぐ障壁魔法を何重にも展開しプラズマビームに備える。

しかしプラズマビームは私の障壁を貫き、私の腕を消しとばした。

 

激痛に脂汗を流し膝をつく。私は達也と違い痛みに耐性がそこまでない。こんな大怪我をしたのは初めてである。

 

「サキ、投降しなさい。アナタがいかに魔法に優れていたとしても、その状態では集中して魔法を使うこともできないわ」

近づいてきたリーナが投降勧告をしてきた。魔法は集中力が必要となる部分が大きい。怪我をすれば魔法力が落ちるのは必然である。

 

「リーナの任務は私の拉致暗殺でやはりあってたようね」

「そうよ、わかっててサキは放置するとか私を舐めすぎよ」

 

リーナはパレードを発動しているが姿しか変えていない。それほど先ほどのプラズマビームは魔法力のキャパシティのいる魔法なのであろう。

 

「さっきのビームはヘビィメタルバーストかしら」

「そうよ、私のヘビィメタルバーストとブリオネイクを防ぐ手段はないわ」

「相変わらず口が軽いわねリーナ。ブリオネイクということは元ネタはたぶんブリューナク。ケルト神話から取ったのかしら?」

「そんなことが気になるの?今サキは生きるか死ぬかの瀬戸際なのに」

 

傷を抑えて立ち上がると鼻先に高エネルギープラズマビームが再び飛んできて私を脅す。

 

「名前は重要よリーナ。そのものの本質をつくことが多いわ」

「余裕かましてるからもう一度いうけど、投降しなさい。もうあなたに勝ち目はないわ」

 

リーナの勧告を聞いて私は笑った。

 

「私を捕らえて何がしたいのかしら?人体実験?それとも私を雌馬とした交配かしら。もしかしたらさっきの人たちのように意思を奪って尖兵とするのかもね」

 

私の回答にリーナは口を閉ざす。リーナもそのことについて考えていたのだろうが、実際そうなるかもしれない本人に言われるのは優しいリーナにはキツイものがあるのかもしれない。

 

「Why does the sun come up? Or are the stars just pinholes in the curtain of night?(太陽はなぜ登る、月はなぜ輝く)

それと同じで投降する理由なんてないわ」

 

私が流暢な英語を交えて返すとリーナはビックリしたようだが、すぐに顔を引き締める。

 

「交渉決裂のようね」

「そうね、だって私が勝つんだもの」

 

サイオンの嵐が咲から放出された。天空から咲めがけ光が落ちてきて、咲を照らす。リーナは目を離すまいとして咲を見ていたが、信じられないことが起こった。先ほど消しとばした腕が一瞬で再生したのだ。幻術かと思ったがそうではない。一瞬で咲は腕の怪我を回復してしまったのだ。

 

サイオンの嵐が収まった時、そこにいた咲は人を超越していた。

リーナは力のある魔法師であるから、わかりたくないこともわかってしまった。そこにいたのは神。

 

絶対に勝てない

人は神には勝てない

竜の逆鱗に触れてしまった

ということを。

 

 

「外の国の有象無象の下等生物が、よくも咲を傷つけてくれたな……生猪口才。お前を根の堅洲国に送り込んでやる」

 

リーナはほとんど言ってることの意味がわからなかったが、とても怒っていることだけはわかった。

恐怖で震える体を抑え込み、ヘビィメタルバーストを放つ。生身の人間が受ければ先ほどの咲のように体が消し飛ぶ。しかし戦略級魔法でもあるそれを受けても咲は体が消し飛ぶどころかダメージを食らっていないようであった。

 

「夜の帳が下り、月が満ちている時に通用すると思っているとは烏滸言」

 

リーナは今のでもう一度再確認してしまったのだ。咲には勝てない。USNA最強の魔法ヘビィメタルバーストを受けてもダメージがない相手。そんな相手に勝つ手段などない

 

咲が右手を横に広げると周りが闇に移り変わる。一瞬光ったと思うと激痛が膝に走り、膝をついてしまう。奇しくもさっきと逆の体勢になった。

 

「楽に黄壌に去れると思うな。気息奄奄となるまでいたぶってから送ってやる」

 

次に腕、腹に何かが通ったような穴ができる。確かこの魔法は四葉真夜の魔法だったはず、と思うと同時に、リーナは激痛により意識がなくなった。

 

 

 

 

 

 

達也は深雪を習い事に送った後、急いで咲がいるはずの森に向かった。虫の知らせのような嫌な予感がしたからである。近くまで行き目を向けてみるとやはり集団に襲われているようだ。

森まで1kmというところまで来た時、咲との繋がりが揺れた。これを経験したのは三年前。深雪が撃たれた時以来だ。見ると咲はリーナに腕を消しとばされている。込み上がる怒りを抑えながら森に着くと、同時に、地域一帯に停電が起きた。たぶん咲かリーナの力であろう。

 

目を向けながら急いで咲の元に向かうと、咲はリーナにとどめを刺そうとしているところであった。流石にそれはまずいので術式分解でその魔法を無効化する。それにより咲は達也が来たことに気づいたようだ。

 

「なぜ止める達也。この者は咲を傷つけた。咲を傷つけるものは、一切合切、烏有に帰せばいいのだ!」

「落ち着け。殺した場合、国際問題になり、また咲を傷つけるものが現れるぞ。衣もそれは本意ではないだろう?」

 

難しい古典風な喋り方から衣と検討はついていた達也はそう話しかける。

 

「そうよ衣ちゃん。後のことを考えると殺すのはよくないわ」

「咲がそういうなら」

 

達也は驚いた。天照大神の神依中、咲の意識があることは今までなかった。しかし今は二重人格のように二つの意識があるようである。これも練習の成果だろう。

今見ると腕も再生している。清水谷竜華のように回復系の神依も他にあるのだろうか。

 

「この後はどうするのだ達也」

「USNAがリーナを切り捨てるはずがない。まずはバックアップチームを潰す」

「有象無象には生路を与えないということか」

 

リーナを再生で治しながらいうと、衣はニヤリと笑う。2人でバックアップチームを潰しに森の奥へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




衣の口調難しいなあ…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。