咲-saki- 四葉編 episode of side-M   作:ホーラ

76 / 91
恒星炉実験の説明読んでもイマイチよくわからん…キンクリでいいか…


第73局[仕度]

翌日、いつもの家に私が戻って話をすると同じ話を黒羽姉弟から達也たちも聞いたらしい。なぜ東道老人はわざわざ私の家に来たのかわからなくなったが、まあ気まぐれということで片付けた。

 

神田議員がやるだろうことはマスコミを引き連れてのパフォーマンス。

彼は魔法師の権利擁護を名目に、軍に魔法師が入ることを一方的に悪と決めつけ、魔法師を軍と関わることを避けさせようとしている。

もし彼のような思想を持つ人たちが権力を握れば魔法師は防衛大に進むことも、魔法大学の卒業生が国防軍に入隊することもできないだろう。さらには魔法師が国防に関心を持つことすらも制限しようとする思想統制にも繋がる可能性がある。

 

それならば魔法教育が軍事目的以外にも成果が出ていることを示せばいい。そう達也は考え、神田議員の来校に合わせ行おうとしているのは加重系魔法三大難問の一つである、常駐型重力制御魔法式熱核融合炉である。

 

去年、鈴音が提案したのは断続型の核融合炉であり、今回達也がやろうとしているのは持続型である。

もし達也の恒星炉が実現すれば、昼夜の区別なく、気象条件に影響を受けずエネルギーを供給することが可能になり、寒冷化に怯えなくても良くなる。

軍事目的以外の魔法の使用法としてこの上ないデモンストレーションになるに違いない。

 

この実験は生徒会が主体となって実験を行うことになる。課程外で実験を行う場合、部活動であれば顧問、それ以外であれば担当教師に申請して学校の許可を得なければならない。

今回はこの実験の提案者である達也が、魔法工学科の教諭のジェニファー・スミス教師に申請し、許可が降りた。

 

許可は条件付きであり、先生の監督がつくものであったが、被曝の可能性もあるので、当たり前であろう。

そして、その実験の監督である廿楽は生徒会室に足を運んでいた。

 

「実験の手順を見せてもらいました。面白いアプローチだと思います」

 

ピクシーが淹れたお茶で喉を潤した廿楽は続けた。

 

「それで四葉君。役割分担はどのように考えていますか?」

「まず、γ線フィルターは光井さんにお願いしようと思ってます」

「私ですか!?」

 

いきなり達也に指名され、ほのかは驚きの声をあげる。ほのかはこの段階で実験の詳細を聞かされていないのでしょうがないだろう。

 

「電磁波の振動数をコントロールする魔法において、俺の知る限りほのかの右に出るものはいない。ほのか、引き受けてくれないか」

「わかりました!頑張ります!」

 

達也のお願いに張り切って頷いた、碌に話も聞かなかったのはほのかの気持ちを考えれば仕方がない。

 

「クーロン力制御は五十里先輩にお願いします」

 

五十里は無言で頷くのを見て、廿楽もこの人選に納得していた。

 

「中性子バリアは一年生に心当たりがありますので、彼女にお願いしようと思っています」

「1年生に……大丈夫なのですか?」

 

廿楽も不安を禁じ得なかったのだろう、思わず口を挟んだ。

 

「ええ、名前は桜井水波。実家と少し関係している子で対物理防壁魔法にかけては天性の才能を持つ子です」

 

廿楽は安心した様子で前のめりになっていた姿勢を戻した。実家と関係している、つまり四葉の家の者。それだけで十分な力を持つことがわかるからだ。

 

「要となる重力制御は妹に任せようと思いますが、第四態相転移は誰に頼むかまだ決めてません」

「咲さんでも難しいのでしょうか」

「私は工業系の魔法があまり得意じゃなく今回はお役に立てそうにないです。申し訳ございません」

 

咲は第四態相転移が達也に聞いても、全くイメージできなかったのだ。というか咲は実験内容が去年の鈴音とどう違うのかもあまり理解できてなかった。

 

「咲にはもし実験が失敗して被曝が起きそうな場合の対処に回ってもらいます」

「それも確かに大切ですね」

 

咲を水波の場所や五十里の場所ならイメージすることができたので、その場所なら活躍することはできた。

しかし咲は未来視で1日前に成功か失敗か確認できるので、成功するにしても失敗するにしても達也としては咲を自由なポジションにおいておきたかった。なので事前に2人で打ち合わせして、こういう役割となったのだ。

 

「それならば中条さんではどうでしょうか?」

「中条先輩には全体のバランスを見てもらいたいと思っています」

「なるほど、確かにその方が適切ですね」

 

廿楽は自分の提案を引っ込め、思案顔になる。

 

「あの、よろしければ、私たちにお任せいただけませんか」

「私たちというのは泉美と香澄の2人ということかい?」

「はい。私1人では力不足かもしれませんが、香澄ちゃんと2人でなら、お役に立てると思います」

 

泉美の言葉を聞いて7人中4人が戸惑った表情を浮かべる。

 

「……廿楽先生がご存知なのはともかく、四葉先輩や咲先輩にまで知られているとは思いませんでした」

 

泉美にとっては疑問に思われる方が自然であり、当然のように受け入れられると警戒してしまう。

 

「その話はまた別の機会に。廿楽先生、光井さんと七草さんは実験の詳細は知りません。確認をするという意味でも一通り説明しておこうと思うのですが」

 

廿楽の了解を得て、実験の詳細を改めて生徒会メンバーに説明する。ほのか、泉美以外は知っている内容だが、暇そうな顔をしているのは咲だけであった。

 

 

 

 

 

 

恒星炉実験の準備期間は4月21〜24日までの4日間。その日数は論文コンペの準備期間と比べ絶望的に少ない。

さらに今回は全校生徒を総動員するわけにはいかない。これはあくまで達也が生徒会の協力を得て行う実験。投入できる人員は生徒会と有志の協力者でしかない。

しかも、私たちは野党議員とマスコミが来校するのを知らない上でこの実験を行うことになっている。

 

しかし論文コンペのように実際に作動する実験装置を組み立てようというわけではないので、達也は十分に準備が間に合うと判断していた。

準備が進みゴールが見えてくるにつれて、実験に参加しているメンバーの焦りの色も無くなっていった。

有志の中には十三束君や十三束君に無知の善意で巻き込まれることとなったが一時も手を休めることのない平河さんや、達也に憧れ一高に入学しロボ研とバイク部の諍いの原因となったらしい隅守賢人などの姿があった。

 

 

 

そして4月24日の火曜日。

本番を明日に控え、最終リハーサルが行われた。

その最終リハーサルも順調に終了し、私たちは生徒会室へ移動した。私は会長なので生徒会室の戸締りもしなくてはいけない。

 

「お帰り」

 

私たちを出迎えたのは雫。

風紀委員の部屋と生徒会室は中の直通階段で繋がっており、千代田先輩や渡辺先輩と同じく、生徒会室に入り浸っているのだ。

 

「1人で待たせちゃってごめんなさい、雫。すごく助かったわ」

「別に気にすることはないよ。特に何もなかった」

 

私がお礼の言葉を言うと、気にするなと言う風に首を振りながら雫が言う。

そして雫は親友へ目を向けた。

 

「あれは、ほのか?」

 

雫の言葉を聞いて、ほのかは怯んだ表情を見せる。それだけで質問の答えがわかったのであろう。ほのかの背後に移動し、肩を掴んでほのかを無理やり達也と対面させた。

 

「あの、達也さん!」

 

ほのかが意を決したように言う。

 

「今日、達也さんのお誕生日ですよね!つまらないものですが一生懸命考えて選びました。どうか受け取ってください!」

「ありがとう、もちろん受け取らせてもらうよ」

 

達也がほのかのプレゼントに触れた瞬間、氷刃にも似た貫くような視線を深雪は達也に一瞬向けたが、それは一瞬だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

水波という家のメンバーが1人増えたが咲や深雪の時と同じく、誕生日会が開かれた。終始ハイテンションだった深雪と咲に水波はちょっと呆れているようだった。そんな水波を巻き込み3人で合唱し始めた時は水波を不憫に思ったが、咲と深雪は明日の実験に備えての気分転換になってほしいと考えたのだろう。

 

そんなことを考える達也は今自室で寛いでいる。今日のパーティで咲に披露された無駄に上手いマジックの時に見せた、咲のドヤ顔を思い出し1人で笑っていると控えめなノックの音が届いた。

 

「深雪です。お兄様、今よろしいでしょうか」

 

声もギリギリに室内に届くようなボリュームの声。その意図を読み取り達也は静かにドアを開けた。

 

そこには華やかにドレスアップした深雪と咲が立っていた。色違いのワンピースは背中と胸元を大胆に露出したローブ・デコルテ。この露出度は咲の好みじゃないので、咲が深雪に頼まれて着させられたのだろう。その証拠に咲は顔を赤くして恥ずかしそうにしている。

衝動を奪われている達也でさえも、征服欲に駆られるような色気があった。

 

「ん?」

「あの、お兄様?」

「ああ、ごめん。入って」

 

不覚にも達也は2人に見とれてしまっていた。その達也が入り口を塞ぐ形となっていたので、2人の声を聞いた達也は横にずれて2人を招き入れた。

 

折りたたみ式の机と椅子を出し、狭い机で顔を向かいあわせる。

 

「去年のこの日を覚えておいででしょうか?」

「覚えているさ、もちろん。2人で振袖姿で現れたあの時は何事かと思ったよ」

 

今回のドレス姿にも驚かされたが、とはまだ口に出さない。

 

「そんなこともあったわね…」

 

深雪と咲は視線を外しながら言う。その時は大真面目にやったことでも時間を置くと、自分でも気恥ずかしさを抑えることはできないのであろう。

 

「それは脇に置いておくとして、去年はお兄様とお姉様、私の3人だけでお祝いしました」

「そうだね」

 

達也はこの段階で既に深雪が言いたいことに察しがついた。咲も深雪を優しい目で見ている。

 

「一昨年も3人だけでした」

「それも覚えているさ」

「今年は水波ちゃんがいるので4人でしたが…」

深雪は言葉をきって恥ずかしそうに俯く。

 

「でも、やっぱり、3人の時間も欲しいんです。私のわがままを聞いていただけませんか?」

 

そんなことを言う深雪の頭を、身を乗り出しながら撫でてあげると深雪は嬉しそうにした。そんな深雪を咲は今度は嬉しそうに見ていた。

 

「2人とも乾杯するわよ」

 

そう言い、咲自身が持ってきていたグラスにシャンパンを注ぐ。

3人分注ぎ終わると3人でグラスを掲げる。

 

「達也さん、ハッピー・バースディ」

「お兄様がここにいてくださることに感謝します」

「ありがとう2人とも。2人と一緒に暮らせることに、感謝する」

 

3人は同時にグラスを傾けた。

 

 

 

 

咲と深雪が自分の部屋に戻り、2人のプレゼントを見てみると、深雪は月と星と太陽をモチーフにした彫金が施されたロケットペンダント。その中には2人のドレス姿のバストショットが入っていた。

咲はマネーカードを入れるための財布と写真立てであった。写真たてにはどうやったのか知らないが、咲がマジックを成功させたシーンの第三者視点の写真がすでに飾ってあった。

 

咲がマジックを成功させることで見せたドヤ顔、そのマジックを見て驚く深雪と水波の顔、そんな光景を見て笑っている達也自身の顔。そんな写真が飾られた写真立てを達也は自分の机にそっと立てかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




[第42局]咲の誕生日の時に2人が送ったプレゼントの意味の解説

達也が送ったオルゴール
オルゴールを送ることは心から感謝していると言う意味が篭ってます。そして潜在意識の観点でいうと本当に心の底からあなたのことが好きだという表れです。あんまりベタベタしないけど本当は咲のこと愛している達也らしい贈り物。



深雪が送ったブレスレッド
アクセサリーとしては定番ですが込められた意味は独占。独占欲が強い深雪ならでは。ちなみに指輪やネックレスなども独占の意味を持ちます



おまけ
原作でほのかが達也に送った時計
あなたと同じ時を刻みたい、あなたと一緒に過ごしたいという意味を持ちます。依存心が強いほのからしい贈り物ですね。



贈り物の意味は色々あるので調べてみると面白いです




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。