咲-saki- 四葉編 episode of side-M 作:ホーラ
試合が開始され、最初に動いたのは琢磨であった。
咲が動かなかった、と表現する方が正確かもしれない。
琢磨は本を開き、最初の数十ページを右手の指に挟み込んでそのページを破りとるように力を加えると同時に、そのページは紙吹雪と化した。
琢磨は一気に100万の刃で攻め立てるのではなく、初手は8万ぐらいの刃を細かくコントロールする戦術を選んだのだ。
その刃は2つに分かれ狙うのは両膝。膝にダメージを与え膝を着かせて、その間に本命の一撃を与える作戦だ。
そんな空中を進む二匹の白い蛇のような攻撃に狙われた咲は、右手を銃の形にし、蛇に狙いをつけて魔法を発動させる。
「ばーん」
サイオン弾が咲の指から発射され、それに撃ち抜かれた白い蛇は紙へと戻った。発動させた魔法は術式解体。使い手がほとんどいない希少技術であるが、咲にとっては問題なくできる魔法だ。
琢磨はこの攻防で咲にミリオンエッジが通用しないと思いしらされた。しかし、それは正面から攻めた場合のみ。咲は照準を合わせて術式解体を放っていたのでまだ不意打ちならまだいけると自分を奮い立せる。
琢磨はミリオンエッジを発動させるフェイクを入れながら、空気弾を発動させる。こんな魔法で咲を仕留められるとは思っていないが、これは目くらましだ。咲が対処しているその間、少しでもミリオンエッジが当たる確率を上げるためにエリアの端から端まで移動し、ミリオンエッジを放つ。
今度のミリオンエッジは16万、先ほどの倍だ。それを1つに重ね正面から術式解体に挑むーーと見せかけてこれはブラフ1だ。
そんな魔法を咲は先程のように術式解体を使って紙吹雪を紙くずに変える。
そんな白い雲を突き破るように時間差で解き放たれた20万の竜巻が咲に襲いかかる。
決まるかと琢磨は思ったがそんな竜巻も咲の術式解体に無効化されてしまう。
だがこれで終わりじゃない。これまでの2回の魔法はどっちもブラフ。わざと無効化させて咲の視界を奪っている間に咲の後ろに移動させた16万の紙片。白い龍が背後から咲を襲う。
今度こそ決まったと琢磨は思った。完全な不意打ちの形であったし、咲は完全に自分の方を向いている。今までの術式解体は指を向けて放っていたのでそれが必要な動作なはずだ。
琢磨の予想は外れた。それは予想ではなく願望だと気づいたのはだいぶ後になってからだ。
「惜しいわね、でも残念」
咲はそういいながら、背後からの不意打ちを魔法で防いだ。
そんな光景をみて琢磨は口が塞がらなかった。背後からの魔法を防がれたからではない。もちろんそれも驚いたのだが、そんなものどうでもよくなる驚きが琢磨を占めていた。
琢磨の紙片から咲の身を守っているのは、咲のロングスカートの裾から出たピンクの紙片。その紙片を制御している魔法こそ、自分が得意としている七宝家の魔法、ミリオンエッジだったからだ。
「ミリオンエッジを使うことができるなんて流石はお姉様です」
「なんであんなスカートの中に本を仕込んでいるのか気になっていたがそういうことだったのか」
達也は咲のスカートの中に文庫本サイズの本が仕込まれているのも気づいていたし、いつもより裾が広いものだと気づいていた。本を持っているのを見せず、スカートの中から紙片を出してびっくりさせたいがために裾を広くしたのだろう。
「咲さんは相変わらずやることが派手だね達也」
「まあな。咲ならミリオンエッジぐらいの魔法ならイメージしたらできそうだし、読めないぐらいボロボロの本だけどなにかに使えそうって言っていたしな」
目には目を。歯には歯を。ミリオンエッジにはミリオンエッジを。いかにも咲らしい考えだ。
琢磨の白い紙片のミリオンエッジをピンクの紙片のミリオンエッジで防いでいる咲は、まだ何かやるのだろう。楽しそうな表情をしている。
ここからが楽しみだと達也は珍しく年相応な好奇心に目を光らせていた。
琢磨は好奇心を持つどころではなかった。七宝家の魔法ミリオンエッジ、魔法は知られていても術式は公開されていないはずである。どうして四葉である咲が使えるのか。
そんなことを考える琢磨は動きが止まっていた。
そんな琢磨を桜の花びらのようにピンクの紙片を自分の周囲に撒き散らせながら咲は見ていた。そんな咲の目はこれで終わりかと言っているようで、琢磨は頭に血が上ってしまう。
琢磨は残りの40万全てを一気に放った。不意打ちも何も効かないなら数でねじ伏せるしかない、そう思ったからだ。
やっときたかという顔をした咲はポケットから文庫本サイズの本を取り出してミリオンエッジを発動させ、スカート内の紙片とともに琢磨のミリオンエッジを防ぐ。
数は琢磨の方が多いのだが、干渉力が咲の方が強く、互いに相殺し合った。
琢磨はミリオンエッジ全てを打ち切ったが咲を倒すことができなかった。しかし、咲もミリオンエッジを打ち切ったようでこっからは普通の魔法戦になると琢磨はそう予想していた、この時までは。
琢磨が正面に目を向けると対面する咲は笑っていた。この時を待っていたかのように。
「卍解」
咲以外の皆が聞きなれないような言葉を咲が言い放ちながら、手に持ったもう既に中のページがない本を手から床に落とす。
「千本桜景厳」
戦闘エリアの境界線に演習場の天井にギリギリ迫るぐらいの巨大な刀身が何本も地面から立ち上った刹那、それらが全てピンク色の紙片と化した。
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私は一昨日ミリオンエッジを見た時、どこかで見たことがあると思っていたが、昨日それを思い出した。それはBLEACHのキャラである朽木白哉。彼はミリオンエッジのように剣を花吹雪にして攻撃していたのだ。
しかし、それを再現にしようにも花吹雪の数は足りない。ボロボロになって読めない本は何冊かあるので、それを媒体としてミリオンエッジもどきを使えばいいのだが、せいぜい30〜40万程度の紙片しか作り出せない。
それならば相手の紙片をプラスで使えばいいじゃないと思ったので今回の私の神依のキャラは亦野だ。
亦野誠子
白糸台高校の2年であり、打ち筋は鳴きスタイル。3副露したら5巡以内であがると言われており河から自在に牌を釣り上げるフィッシャーというあだ名がついている。
この世界に置き換えると、相手が過去に使用した物質を使った魔法の強化だ。彼女が他の人が捨てた牌を利用して能力を発動させていたように。
今回の場合は七宝君が発動して私が無効化したミリオンエッジの紙片。
私は七宝君が使ったミリオンエッジの紙片と私のミリオンエッジを再利用して、ミリオンエッジもどきを発動させた。
私はミリオンエッジの術式は当然知らないので、ただ本のページをバラバラにしてピンク色に染めて硬化した紙片を群体制御で操っているだけである。亦野の神依をしてると言えどもこんなことをするには魔法力、特にスピードが足りなくなる。
何せミリオンエッジはスピードを上げるために遅延型術式のシンボルを先に書いておくという方法を取っているため、その準備が出来ない私の魔法は発動スピードは遅いものとなってしまう。亦野はスピードはあるのだが鳴きを三回しなくちゃいけないという無駄があるのでそこまで魔法速度の上昇は起きないのだ。
しかし、簡単に発動できたのはもう1人の神依のおかげである。
龍門渕透華
龍門渕高校の2年であり、打ち筋は基本デジタル。しかし、天江衣の従姉妹なだけあって目立ちたいと思ってデジタルを捨てると流れに乗って倍満を和了ったりしていた。
この世界に置き換えると大規模魔法、特に目立つような魔法を発動する時、魔法力が大きく上昇するというものになる。
今回の魔法は、床から刀身を出して花吹雪のような紙片を舞わせるというド派手なものであるので、魔法力が上昇しているのだ。
ちなみに去年クラウドボール1回戦でもこの神依を発動させている。
そんな2人の神依をした私は今約150万のピンク色の紙片を操っていた。これで攻撃してはさすがに怪我をしてしまうので、ただ見せたかっただけなのだが、これで十分私の力を七宝君に見せつけることができただろう。
「吭景・千本桜景厳」
私は紙片で相手の周りを取り囲み、群体制御でその中の酸素分子の密度を低下させて七宝君に低酸素症を引き起こさせた。
「それまで。勝者、四葉」
七宝に怪我がなくて少しホッとした様子の服部先輩からの勝利宣言を受ける。私が吭景・千本桜景厳で七宝を押しつぶしてしまったと思ったのかもしれない。まあ本来そういう技なのだが。
私は七宝君に近づき、その横に膝をついた。
「七宝君、大丈夫?」
低酸素状態で意識が朦朧としていて、床に座っている七宝君に話しかける。意識がギリギリ残るぐらいに酸素濃度を調整したので大丈夫なはずなのだが。
「大丈夫です、ありがとうございます」
頭を振りながら七宝君は答える。驚いたことに七宝君の私を見る目が試合前から変化していた。悔しそうではあるが、試合前までは敵意や軽蔑などが混じった目であったのだったものが、今はなんとなく深雪が私を見るような目に変化していたのだ。
「じゃあ立って、壁際で休んでいてくれるかしら」
「はい」
七宝君は私のいうことを素直に聞いて壁際まで移動する。私はそれを確認して私は達也の方に目を向ける。
「どうした咲?」
自分を見る目に悪寒を感じたのか達也が私が口を開く前に水を向けられる。
「達也さん、十三束君と試合してくれないかしら?」
私がそういうといつもの何言っているんだ、頭大丈夫か?みたいな目で私を見てくる。
「達也さんの実力を七宝君に見せてあげて欲しいのよ」
「訳がわからないんだが?」
私の言葉に達也はさらに困惑を深めたようだ。
「本当の実力者同士の対決を七宝に見せてやって欲しいんだ」
事前にこのことについて私と打ち合わせしていた服部先輩が援護射撃してくれる。
「本当の実力者同士を見せるのなら咲や服部会頭、沢木先輩が試合をする方が適しているのではありませんか?」
「四葉、お前の実力を見せることに意味があるんだ」
服部先輩と私の説明は十分なものではなかった。
「お兄様、よろしいのではありませんか」
だが、ここで私たちにとって最強の援護射撃が放たれた。
「下級生に実力を示すというのであれば、風紀委員会に相応しい役目だと思います。それにお姉様の貴重なお願いを無下にする必要はないと」
「お前がそういうのなら…」
深雪のいうことを達也は拒否することは基本できない。十三束君の方を見ると試合が決まって少し嬉しそうだった。
達也と十三束の試合は達也が勝利した。
十三束君の二つ名「レンジ・ゼロ」と呼ばれる所以となった接触型術式解体に達也は苦戦するが、無系統の振動魔法を攻撃に組み込むことにより、十三束君の周りを纏っている身体のサイオンを少しずつ引き剥がした。
それに恐怖したのか、十三束君は自分の切り札『セルフマリオネット』を使用するが一撃で達也を仕留めるまでにはいかず、達也はセルフマリオネットを分解して十三束君の体勢を崩した間に、サイオンの高濃度弾「徹甲想子弾」により十三束君を吹っ飛ばして勝利したのだ。
そんな高レベルの試合を見て七宝君は衝撃を受けたようで演習場の外へ駆け出していった。
77局で第7研の琢磨が倒されるのは運命を感じる
咲vitaで育成した亦野は原作と違って強いのでおすすめです(ポン1回したら有効牌しか引かなくなる)