狂女戦記   作:ホワイトブリム
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#011

 act 11 

 

 敵の(協商連合と思われる)隊長などが撤退していった後でエステルは地面に降り立つ。

 

「……さすがに水量が多いと本当の意味での大爆発にはならないようだね。ちょっと失敗しちゃったかな?」

 

 気絶した敵が地面に落ちていく。それだけで地面に叩きつけられれば即死するかもしれない。

 あるいは装備品に助けられるか。もちろん、運が良ければ大怪我で済む。

 

「あ~あ、あちこち弾を撃ち込まれちゃってるよ。さすがにこれは魔法で取り出せないよね……。痛た……。早く助けて……」

 

 信号術式を封入した弾丸を投げ上げる。

 全滅させられなかった事でどんな罰が下されるのか考えると気が滅入る。

 いきなり狙撃を受けたし。減給かな。少なくとも敵前逃亡には当たらない筈だ。

 命令違反は通信機器の故障だから不可抗力だ。

 治癒魔法を使うと銃弾が入ったまま傷口が塞がりそうだからどうしようか、と迷っているうちに味方が到着した。

 

「エステル少尉! 無事か!?」

「身体に銃弾が入ってると思うので看護兵(メディック)を呼んでください」

 

 慣れない空中戦闘は地上とは勝手が違うものだと疲れを感じた。

 次回までに携帯できる武器を考えておかないといけない。

 担架で運ばれたエステルと入れ違いにデグレチャフが到着し、辺りの惨状を調査していく。

 死亡している敵兵とまだ辛うじて生きている敵兵を回収するのだが、千切れた足などが散乱している事に顔を顰める。

 遠くから眺める分には平気だが、近くで見る人間の残骸というものは吐き気を覚える。

 これが生々しい戦争と言葉で言うのは、とても簡単な事だと思った。

 机上の空論は異世界ファンタジーを語っているようなものだから。

 もし、自分が一人で中隊規模を相手にした場合は即時離脱許可を願う。その時は孤軍奮闘せよ、と言われてしまうかも知れない。

 命令ならば従うが、命は一つしか無い。だが、それでも無駄に散らせたりはしない。自分ならもっと上手く立ち回ろうと考えるはずだ。

 

          

 

 北方方面軍の仮設テントで看護兵(メディック)によって銃弾が取り除かれたが詳しい検査は専門医療施設に行かないといけない。

 体内に弾が残ったままというのは気持ちが悪い。そこから病気になっては困る。

 名誉の負傷で戦線離脱許可が下り、エステルは駐屯地の医療施設に搬送され、体内に残存する銃弾の全てが取り除かれた。

 便利な魔法とはいえ都合よく弾を吸いだす魔法に心当たりは無い。

 欠損した肉体は高位の治癒魔法で再生出来るので少しの間、眠らせてもらう事にした。

 慌しい一日が終わって数日後に入院している狭い病室に無理矢理に入ってきた複数の軍人に取り囲まれる事態となった。

 単独で敵部隊と戦闘し、これを撃滅。撤退へと追い込んだ。更に捕虜の確保。

 数多の銃撃にもひるまず味方の応援が到着するまで防衛した功績を認める。

 美辞麗句を並べられているのだがベッドの上で聞かされているエステルはもう少しだけ寝かせてもらえないだろうか、と言いたかった。

 狭い室内に十人近くの将校が入っているので息苦しさを感じる。

 

「上層部は君を高く評価し、栄誉を讃えて(ほま)れ高き『銀翼突撃章』を授与する」

 

 枕元に置かれる小さな勲章の後、拍手が起こった。

 話しぶりでは命令違反などの罰則が無い様だったので自分の判断は間違っていなかった事になる。

 武器があれば全滅させられたかもしれない。

 敵を逃がしたのはエステルにとっては不名誉な事だ。後で報復されるのではないかという危惧が残ってしまう。

 慣れない空中戦闘で頭だけでも無事守りきれたのだから良しとしなければならない。

 治癒魔法とて頭部を吹き飛ばされれば死んでしまう。

 顔は吹き飛ばされたようだが。

 褒め称えられている言葉の中に昇進という言葉は出てこなかった。営倉入りや軍法会議が無いだけでも運が良かったと思わなければならない。

 








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