武宮達に着いて行って、辿り着いた先は至極一般的な
「何、ファミレスじゃあ不満かしら?」
そんな僕の心情を表情から読み取ったのか、眉間に皺を寄せながら武宮が訊ねてくる。
「まさか、僕は大好きだぜファミレス。良心的な価格設定に、徹底された分煙システム、庶民の僕らの舌に合わせた美味しい料理。非の打ち所がないね」
「そ、そう?」
まさかのべた褒めに、少し引き気味の武宮。しかし、別に
と言う訳で、久しぶりに別の大衆洋食店に来て、僕も心が少々浮き立っているのである。全国展開している此の店は、テレビの宣伝広告等で良く見る程には有名だ。家からも近いので、僕も高校受験や大学受験の際にはお世話になった物である。いや、大した注文もしないで、四人席を一人で占領し、ドリンクバーだけで粘り続ける受験生と言うのは店側からすれば嘸や迷惑だっただろうが、僕は兄弟が多く、家では集中出来なかった為、図書館の自習室等が満席だった場合にはこうするしか無かったのだ。
店員のお姉さんに人数と、禁煙席の希望を伝えると、休日の夕飯時にも関わらず数分の待ち時間だけで席まで案内された。席に着いた際に橋本ちゃんが武宮では無く、僕の隣に座った為、睨まれもしたが、橋元ちゃんの「ここの方がママの顔が良く見える」と言う一言で頬を弛ませていたのは流石の親馬鹿っぷりと言った所だろう。
「さて、少し話でもしないか?」
「話? 別に構わないわ。何の話をしようかしら、男色? 薔薇? それとも、衆道?」
「何で選択肢が全部BL関係なんだよ!? 他に話題は無いのかよお前には……」
「他に……駄目ね、後は魔術関係くらいしかないわ」
話題の選択肢が
僕が彼女に訊ねたい事は、其れ程長くは無いので、其の前に彼女と趣味の話に花を咲かすと言うのも悪くは無いだろう。但し、僕はBLの話を嬉々としてする趣味など無い為、此処は彼女の持つもう一つの話題である“魔術”の方を選択させて貰おうじゃないか。しかし、魔術だの何だのと言った物に対して、僕は
「お前の言う魔術って何処で覚えたんだ?」
「あら、私の根源を探ろうと言うのかしら? まあ、構わないわ」
急に芝居掛かった口調に変わる武宮に、少しばかり呆れた様な視線を向けてしまうが、彼女としても何か譲れない所があるのだと思われる。そんな『ママ』の姿を見ても大した反応を見せない所を見ると、橋元ちゃんも既に慣れきってしまっているのだろう。そんな僕と橋元ちゃんの態度を気にする事も無く、口調の割に真剣な表情の武宮が口を開く。
「……我が魔術は、他に由来する物では無く、私の心象世界に封ぜられた前世の記憶から生じる物よ」
……まさかの
「そ、そうか、ちなみに、どういった物があるんだ?」
「どういった物とは?」
「例えばほら、呪いだったり、占いだったり色々あるだろう?」
占いと言う言葉に武宮が不快そうな顔をしたのが気になったが、占いと言う物は色恋が関わる物も少なくは無い。(男女の)色恋に対して良い感情を持っていない武宮が、そういう表情を浮かべるのも無理からぬ事だろう。
気に食わなさそうな表情を浮かべ乍らも少し考える様な仕草をした武宮は、手提げ袋から一枚の紙片を取り出すと不等辺三角形を組み合わせた謎の幾何学模様を描き始めた。其れを白と黒に塗り分け、僕に差し出して来る。
「簡単に貴方とその周囲の人間について占うわ。その模様を見つめながら、この魔草を咬みなさい」
そう言って、武宮が取り出したのは何処から見ても其処らに生えていそうな枯草だった。
「いや、それ、枯草だろう?」
「いいえ、魔草よ。枯れて見えるのはこれに宿る
「いや、それが事実だったとして、危険度が増しただけだぞ!」
枯草を咬むと言うだけでも嫌だが、そんな危険物は更に口にしたくは無い。必死に拒む僕だが、武宮は御構い無しにぐいぐいと僕の口許に謎の枯草を押し付けてくる。そんな僕と武宮の攻防は、料理が運ばれてくる迄続いたのだった。
食事を終え、さてと小さく呟いて、僕は居住まいを正して武宮に向き直る。僕の様子から真面目な雰囲気を感じ取ったのか、武宮も姿勢を正して僕を見てくる。そして、数瞬見詰め合ってから、僕は咳払いを一つしてから口を開く。
「なあ、武宮。僕の卒業した後の、穂綿の話を訊きたいんだが」
「貴方の卒業した後の?」
「ああ、大した事じゃあ無いんだが、中等部で不登校だった奴が高等部進学を機に復帰したとか、逆に辞めてしまったとか、そう言った噂を聞かなかったか?」
僕の言葉に竹宮は、何故そんな事を訊くのかと少し不思議そうな表情を浮かべたが、直ぐに言葉を返してきた。
「分からないわ。私、友達がほとんどいなかったから、噂とかそう言った類いの物は聞く機会が少なかったから……ましてや、中等部の話なんて興味もなかったわね」
「そうか……」
安堵と落胆の二つの感情が胸に去来する。……僕は其の話を聞いてどうしたかったのだろうか? 彼女が復学していて、再会する事を望んだのか。其れとも、彼女が退学し、出会わない事を望んだのか。儘なら無い感情の渦は、ぐるぐると綯い交ぜになり、
何れ程に黙り込んでいたのだろうか、怪訝な視線を向ける武宮と、心配そうな橋元ちゃんに問題無いと手を振る。誤魔化せた訳ではないのだろうが、二人が深く訊ねてくる事はなかったのは有り難かった。兎も有れ、女性二人を沈んだ表情にするのは僕の本意ではない。場の空気を変えるために、多少おちゃらけて見せるのも一興だろう。
「ところでこの前、亘が猪上を押し倒したらしいん」
「何それ詳しく!」
……どうやら話題の
後は語るべき事など特には無い。二人を家まで送り届け、帰宅し、入浴の後に就寝と言う極々平凡で、当たり前の家での習慣を