~輝夜Side~
「お師匠様ーー!!!」
「なーになっさけない声出してるんだい、お前んとこの兎は」
「まっさかアンタなんかに永琳を助けてもらうことになるなんてね」
「へぇ、援軍の登場・・・ってとこかい?」
「ありがとう・・・本当に助かったわ・・・」
小町の鎌が永琳に振り下ろされる直前、白と赤で出来た影が二人の間に割って入った。真っ白な長い髪をなびかせて、白のシャツに真っ赤なズボン。ほんと・・・いいタイミングで入ってきたもんね・・・恩でも売るためにわざと待ってたんじゃないでしょうね・・・。妹紅・・・。
「お前今絶対失礼なこと考えたろ」
「そんなことどうだっていいのよ。なんでアンタがここにいるわけ?」
「なんでも何も、いつも通り客を連れてお前らんとこに行ったら留守番してる因幡しかいねぇし、そいつに聞いたら異変が起きてるらしいじゃねぇか。だから手伝いに来たんだよ」
「貴女はこの異変の被害を受けてないのかしら?」
「さぁな。私の能力は『老いることも死ぬこともない程度の能力』だ、老いなんて実感できるわけないし、死ぬかもしれないのを試すわけにもいかないだろ」
「馬鹿!!そんな状態のアンタがなんの役に立つってのよ!!」
「今こうして永琳を助けたわけだが?」
「それとこれとは別よ!!それに!こいつは例え不死身だろうと殺せる力を持ってるの!!」
「だったらなおさら何もかわらないじゃないか」
「あああもう屁理屈ばっかり言って!!!」
「う~ん・・・同じことを何回も言うのは好きじゃないんだがねぇ・・・お前さんたち、アタイが敵だってことを忘れてないかい?」
突然私の後ろから声が聞こえる。まずい!!完全に存在を忘れてた!!こっちが話してて忙しいってのに!!と、思ってるといきなり妹紅に突き飛ばされる。
「おっと、私はその言葉は初耳だな。しっかり覚えておくことにするよ」
「おや、アンタはずいぶんと冷静だねぇ。お姫様を守る騎士なんかよりよっぽどカッコイイよ」
「こいつらみたいにのほほんと何年も暮らしてたわけじゃないんだ。危機管理くらいは出来なきゃな」
「つくづく女にしとくのが惜しいねぇ。どうだい?そこの医者の薬とかで男になってみるってのは」
「お生憎と、色恋沙汰には縁も無ければ興味も無くてね、他を当たってくれ」
「アンタなんかが男になった気持ち悪いだけだものね」
「あぁそうだな。ずっと引きこもりのお姫様が男になんかなった日にゃ、誰も助けてくれないクソみたいな奴が出来上がるが、それに比べりゃマシだろうけどな」
「これは完全に妹紅の言い分が正しいわね、姫様」
ったく・・・こいつら人のことをニートだのなんだの好き放題言ってくれちゃって・・・やることが無いんだから仕方ないでしょ!!だいたい、妹紅だって普段は筍を採って回って、たまに迷子見つけたら家に連れてきてるだけでしょ?ほぼニートみたいなもんじゃないのよ!!まだまだ言いたいことはあるけど、とりあえず・・・
「このイライラは、アンタで晴らさせてもらうことにするわ」
「アタイは何もしてないんだがねぇ・・・ま、やる気になったってんならお相手してもらおうかね?」
「妹紅、コイツ相手にスペカは使うんじゃないわよ。自滅することになるから」
「みたいだな、さっきのお前らが避けてたの、お前のスペカだったし、なんか面倒な事になるのはよくわかったよ」
「『距離を操る程度の能力』・・・思った以上に厄介ね・・・」
「お師匠様、無事で本当に良かった・・・私ももう大丈夫です!」
「さぁ、こっからが本番よ」
まず、こいつにはさっきの通りスペカは効かない・・・かといって、普通の弾幕や永琳の弓も効果は薄いでしょうね・・・。となれば肉弾戦なわけだけども・・・あの鎌はまずい・・・。致命傷を受ければ私たちの負けが確定する・・・。さて、どうしたもんかしらね。
「よし、じゃあ私が突っ込むからお前たちは援護な」
「ええ・・・って!!何言ってんのよこの馬鹿は!!」
「あぁ?だって弾幕もスペカも効かないってんじゃ、接近戦しかないだろ」
「だ!か!らあ!!それが危険だからどうするかって考えてるんでしょうが!!そんくらい分かりなさいよ!!」
「ちょ、ちょっとお二人とも・・・今はそれどころじゃ・・・」
「そういうことだ。敵も待ってはくれないんだし、さっさとやるぞ」
「ああああもう!!勝手にしなさいよ!!こっちの援護に巻き込まれてもしらないわよ!!!」
「妹紅、くれぐれも無理はするんじゃないわよ」
「分かってるよ」
「さて、話はまとまったようだね。カッコイイお前さんが私のお相手かい?」
「あぁ。悪いが女なもんで、女は殴れないなんてセリフは期待しないでくれよ?」
「言ったら私がぶん殴るわよ」
「その前に殴ってやるよ」
「また内輪もめかい?」
「ただの日常会話よ。時間稼ぎの、ね」
「へぇ・・・アンタ、見かけによらずえげつないことするじゃないのさ」
ケンカのような言いあいをしてる最中、少しずつ展開していた設置型の弾幕。これで大幅に動きを制限できるはずね。後はあいつが上手く戦えるかだけど・・・。
「行けるわよね?」
「何百回お前のこれを見たと思ってんだ。目を瞑ってたって当たらねぇよ」
「永琳!イナバ!戦いが始まれば隙を見て弾幕と弓で援護よ!私と妹紅は気にせず撃ちなさい!」
「そ!そんなこと!!」
「えぇ、分かったわ」
「お師匠様!?」
永琳は分かってるみたいね。それなら大丈夫。
「さぁ、この監獄の中で戦ってもらうわよ」
「嫌だと言ったらどうするんだい?」
「何百回でもその弾幕を張るだけよ。アンタが戦うまでね」
「まったく・・・強情なお姫様だねぇ・・・いいよ。乗ってあげようじゃないか」
「そうこなくちゃな。おい輝夜、偉そうなこと言って先にへばるんじゃねぇぞ?」
「アンタこそ、大口叩いて自滅なんてしないでよ?」
「お師匠様・・・大丈夫なんですか・・・?」
「大丈夫よ、あれは姫様のスペカで作り出した結界のようなものなんだから」
「そ、そうなんですか!?でも、スペカの宣言なんて・・・」
「あら?弾幕ごっこでも無いのに宣言の必要があるかしら?」
「うわ・・・本当にえげつない・・・」
自身の能力を応用した弾幕型擬似結界。結界と言ってもバリアみたいなのと違って、私のはこの範囲内で動くものを感知する探索型結界。これなら急に動いたとしても反応できる。
「さぁ・・・始めましょうか?」
「じゃ、遠慮なく。せい!!」
「おっと!いきなり能力全開か?」
開始するや否や、一気に距離を詰めた小町が鎌を振るう。こいつはこの感知の恩恵は受けられないけど、元より身体能力は高いし大丈夫でしょ。さて・・・
「動きを止めても大丈夫なのかしら!?」
「お前さんたち相手くらいなら、そのくらいはハンデだよ」
「ずいぶん大口叩くじゃないか。でも、そう簡単に行くかな?」
そこからは一気に戦いは加速した。振られた鎌を妹紅が掴み、その隙にこちらが蹴りかかるも、当たる前に距離を変えられ、掴んでいた妹紅も蹴られてその鎌を放す。その隙に外から永琳の矢が飛んできたが、寸前で身体を捻りかわされる。もちろんそこに二人で畳み掛けるも、相手のリーチが長すぎるせいで、どうにも攻めあぐねる。だが・・・ここで一つの違和感に気付いた・・・。こいつ、何故この弾幕の中でここまで動ける・・・?
「まさか・・・!」
「おらぁ!!」
「ふっ!はぁ!!!」
「チッ!」
ちょうど妹紅が小町から距離を取る時、小町が、笑っているのが見えた。
「!?待ちなさい妹紅!!後ろはダメ!!」
「何言って、がっ!!?」
「気付いたみたいだけど、ちょっと遅かったようだね」
「妹紅!!」
「大丈夫だよ。でけぇ声出すんじゃねぇ、こんなもん、どうってことねぇよ・・・」
「アンタ・・・最初っから・・・!」
「アタイの能力は『距離を操る程度の能力』。自分と周りの距離を調べることも出来れば、自分以外のものの距離だって操れるのさ・・・こんな風にね」
小町がそう言った直後、止まっていた弾幕達が反発し合うかのように動き、私たちの周りを囲う・・・配列もバラバラになり、結界としての機能も消えてしまった・・・こんなことが・・・!
「姫様!!妹紅!!」
「皮肉だねぇ・・・アタイを閉じ込めるために作ったこの場が、どんな動きをするか分からない地雷原になっちまったんだ」
「ここまでとはね・・・完全に想定外だったわ・・・」
「輝夜、もう諦めるつもりか?」
「まさか・・・久々に燃えてるだけよ」
とは言ったものの、かなり絶望的な状況ね・・・この弾幕たちも消えるまでもう少し掛かる・・・その間この危険地帯で戦うっきゃないわけね・・・。
「妹紅、行けるかしら?」
「2回も聞くな、目を瞑ったって避けれるよ」
「さて、それじゃ、第2ラウンドと行こうか?」
「「望むところよ(だ)!!」」