~早苗Side~
呆然とする私たちを前に、萃香さんが魔理沙さんを安全な位置に寝かせる。まさかあの一瞬で魔理沙さんがやられるなんて・・・やっぱりこの人は本当に強い・・・。
「さてと、今のを見て言うのもなんだけど、本気で来なよ?じゃない、アンタ達もすぐああなっちゃうよ?」
「えぇ、分かってますとも・・・貴女相手に手加減だなんて、冗談でも言えませんからね」
「あ、文様・・・やっぱり無理なんじゃ・・・」
「椛、それ以上言うのはあの人の機嫌を損ねますよ。それに、何よりもそんな泣き言、私が許しません」
「天狗のガキは分かってるじゃないか。どうだい?今なら尻尾巻いて山に帰れば見逃してやるよ?犬は犬らしく、自分の家の番でもしてたらどうだい?」
「わ!私は誇り高き妖怪の山の警備役、白狼天狗です!!」
「じゃあその誇りとやらがどんなもんか、アタシに見せてみな!さっきみたいな泣き言言ったら、幻想卿中に広めてやるよ!」
「あややや、それはいいですねぇ。椛の泣き顔が目に浮かびそうです」
「文様まで~!!早苗さんもなんか言ってくださいよ~!」
「ここで私に振るんですか!?」
もう・・・三人ともこれから戦うというのに・・・緊張感がまるで無いんですから・・・。と、思った矢先、付近の空気が一気にピリピリと張り詰めた。
「さて・・・世間話はこの辺でいいかい?」
「えぇ、もう十分ですよ。さぁ、椛、早苗さん、気を引き締めてくださいね」
「分かってます。もう大丈夫です!」
「は、はい!!」
「よし、いい返事だ・・・さ、行くよ!」
その言葉を言い終えると同時に、萃香さんはこちらに走ってくる。手加減してるのか、動きは普通に目視出来るくらいの速さ。それを迎え撃つべく、3人掛かりで弾幕を放つ。
「そんなんでアタシを止めようなんて、甘いよ!!」
「止まるなんて思ってませんからご安心を!」
「へぇ・・・天狗のガキが、ずいぶん速くなったもんだね」
「お褒めの言葉と受け取っておきますよ。椛!!」
「はい!!せぇい!!!」
「相手にわざわざ攻撃が来るのを教えるなんて、優しいねぇ?」
「くっ!!」
「まだですよ!!風符『風神一扇』!」
弾幕をかわしながらもこちらに迫る萃香さんに対し、文さんが一気に詰め寄り蹴りを放つ。萃香さんはそれを悠々と受けきり、横から追撃に来た椛さんの剣を、またも手首の枷で受ける。ですが、ここで文さんがゼロ距離でスペカを発動。手に持つ団扇を横に薙ぎ、その軌道に弾幕が出る。そして、間髪入れずに萃香さんに向けて飛んでいく。萃香さんは反応出来なかったのか、そのまま動かずに弾幕で付近が煙に包まれる。そして、一瞬の後、文さんと椛さんが煙から出てくる。
「お二人とも!大丈夫ですか!?」
「私は大丈夫です。それより早苗さん、スペカの準備を」
「え?ですが・・・」
「何を呑気なことを言ってるんですか!!相手はあの萃香さんです!!早く!!」
「は、はい!!」
「椛!風を使って煙を飛ばしなさい!!あの中で何かしてるかもしれません!!」
「はい!文様!!ええ~い!!!」
文さんに言われスペカを構える。確かに、あの距離で受けたとしても相手は鬼。しかも、弾幕ごっこと違って当たったら負けなんてルールじゃないんでしたね。椛さんが『風を操る程度の能力』を使って一気に煙を飛ばすと、そこには・・・。
「誰も・・・いない?」
「っ!!二人とも!すぐに背中合わせで警戒を!!私は空から見ます!!」
「その必要は無いよ」
「ぐっ!さ、早苗さん!!今です!!」
「文様!!」
「で、でも!!」
「あぁもう!!岐符『サルタクロス』!」
「おっ!今のから反撃とはやるね!そう来なくちゃな」
突如文さんの後ろに現れた萃香さんが、さっきのお返しとばかりに蹴りを放つ。声で一瞬だけ反応した文さんは、不完全ながらもそれをガードするも、その威力に苦悶の表情を浮かべる。しかも、そのままスペカを撃てとまで・・・そんな状態で撃ったら危険だと言おうとしたけど、そのまま文さんがスペカを発動。萃香さんは驚きながらもそれを後ろに飛んで避ける。
「文様!」
「文さん!大丈夫ですか!!」
「・・・たちは・・・」
「え?」
「貴女たちは・・・何をやってるんですか!!!??」
「「!!」」
「敵の姿が見えなければ警戒する!!攻撃の隙があれば攻撃をする!!驚くのや味方の心配なんて二の次なんですよ!!相手はあの萃香さんです!!そのくらいじゃないと勝てないんですよ!」
「で、ですが・・・」
「あの時!早苗さんがスペカを発動していれば、確かに私にも危険はあったかもしれません。ですが!!逆に言えば萃香さんにもダメージを与えるチャンスでした!!それに、私が避けられればさらに追撃のチャンスにもなった!!そんなチャンスを貴女は潰したんですよ!!」
「あ、文様・・・」
「椛!!貴女も何をボサッとしてるんです!!私が指示を出さなければ動けませんか!?それともまだ怖いですか!?どちらにしろ、そんな犬みたいな仲間は必要ありません!すぐに山に帰りなさい!!!」
「あ・・・」
「お待たせしてすみませんね、萃香さん」
「あぁ、構わないよ。で、続きはアンタ一人でやるのかい?」
「えぇ、このお二人はどうやら戦いたくないようなので」
「それで、アタシに勝てるのかい?」
「勝ってみせますよ」
私たち二人に捲くし立てるように言葉を告げた後、文さんと萃香さんはまた向き合う・・・。そうだ・・・私は何を勘違いしてたんでしょうか・・・そう、相手はあの萃香さんなんです・・・さっきそう考えたところじゃないですか・・・!心配することだけが仲間じゃない・・・信頼し合うからこそ、躊躇うことなく攻撃が出来る。そんなことに気付きもしないなんて・・・。ふと横を見ると、椛さんもこちらを見た。多分、気付いたんでしょう。二人で頷き合う。もう、迷いません!!
「ずいぶん速くなったようだけど、まだまだだねぇ」
「いつもはもっと速いんですがね!貴女のところの大将さんが、私の能力を持って行ってしまいましたから・・・ね!」
「おっと、でも、それを言い訳にするのは良くないんじゃないかい?」
「それもそうですね。要は地力で貴女に負けてるってことですからね・・・もっと鍛錬しないとです・・・ね!!」
「捕まえた!」
「な!?」
「鬼相手に接近戦を挑もうなんてのが間違いだよ。何回も受けてれば次がどこから来るかくらい分かるもんさ」
「ここまで・・・ですね・・・」
「あぁ、アンタはよく頑張ったよ、ゆっくり休んでな」
「秘術『グレイソーマタージ』!!」
「「っ!??」」
凄まじい速さで一撃離脱を繰り返していた文さんの放った拳が、ついに萃香さんに捕まる。チャンスはここ・・・!
「早苗さん!!」
「ちっ!ここで奇襲とはね!!」
「逃がしませんよ!!」
「椛!?」
「やってくれるねぇ・・・!」
3人が一塊になってる場所へ私の弾幕が飛ぶ。もしかしたら、お二人も危ないかもしれない。ですが・・・
「二人とも、分かってくれたみたいですね」
「えぇ、もう、大丈夫です」
「文様、今度は貴女が足を引っ張らないでくださいね」
「言ってくれますね・・・」
煙の中からお二人が出てくる、少し掠めたのか、無傷とは言えませんが、どうやら無事みたいです。ですが、そうなれば萃香さんも・・・
「アッハッハッハ!!やるじゃないかアンタ達!!!」
「全く・・・今のでびくともしてないんですか・・・」
「鬼の頑丈さを舐めんじゃないよ。それに、ようやく面白くなりそうなんだ。おちおち寝てらんないね!」
「あややや、私では物足りなかったですか」
「アタシからしたらただのガキのお守りだよ」
「いい加減、そのガキって呼ばれ方も気に食わなくなってきましたね・・・」
「そうかい?だったらアタシに認めさせてみな?そしたら今度からちゃんと呼んでやるよ。おいで、天狗のガキ」
「今度のお相手は、文さん一人じゃないですけどね」
「私たちもフォローしますよ、文様」
「この人たちはほんとに・・・早苗さん!椛!!しっかり付いてきてくださいね!!この幻想卿最速の私に!!」
「「はい!!」」