東方交換録   作:シンP@ナターリア担当

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第23章 信頼するということ~近付く真相、見えぬ深層~

~霊夢Side~

 

「夢符『封魔陣』!」

「亡卿『忘我卿-道無き道』」

「っせい!!」

「甘いわよ~。お返しに・・・」

「させないよ!!」

「んもう!よってたかって酷いんだから~」

「それで平然と戦ってられるあんたの強さが妬ましいわ・・・ねっ!!」

「強いってのも大変なのよ~?あ~んな怖い人に目をつけられちゃうんだもの」

「全然怖がってなさそうに見えるのはアタイだけかい?」

「怖がってなさそうに見えるんじゃなくて実際怖がってないのよこいつは」

「あら、ばれちゃったかしら?」

「あんたら皆あいつのこと怖がったりしてないでしょうに」

 

 妖夢が復活してからの戦いは、先ほどよりもいい調子なものの、やはりというかこいつの強さがおかしすぎる。こっちの3人分の弾幕をかいくぐりながら、妖夢の近接攻撃も悠々とかわし、あまつさえさっきみたく反撃までしようとする始末。自分がいかにルールに守られた戦いに守られてたかよく分かるわ・・・。

 

「やはり一筋縄ではいかないですね」

「だって貴女のご主人様なんですもの~簡単に負けちゃあダメでしょ~?」

「確かにそうですね。では、胸を借りるつもりでもう一歩踏み込ませてもらいますっ!!」

 

 言うや否や剣をバツ印を描くように振り払い、その奇跡に沿って細い弾幕が波のように現れる。1秒ほど停滞したかと思えば、すぐに幽々子に向かって行く。

 

「素敵な弾幕ね。でも、これでどうするのかしら?」

「こうします!!!」

「きゃっ!いきなり切りかかるなんて怖いわよ~」

「幽々子様なら大丈夫です・・・よっ!」

「なるほどね。弾幕よりも先に切りかかって注意を引いて遅れてきた弾幕で攻撃する・・・ように見せかけての」

「っ!!」

「本命はその逃げた後のもう一回の攻撃よね?」

「まさかあの一瞬で完全に見切られるとは・・・」

「ふふっ、図星突かれて止まっちゃうなんて、ほんとに妖夢はわかりやすいわねぇ」

 

 妖夢の出した弾幕はそれほど速くない速度だった。それを妖夢は自分で抜き去り、一気に切りかかる。突然のことながらも幽々子もしっかりとあのよく分からない扇子で受け止める。そしてすぐに横っ飛びで逃げた妖夢の後ろから遅れてきた弾幕が迫り、弾幕を避けるかと思いきや、逆に逃げた妖夢に向き直り、その場を動かず、見ることすらなく弾幕を相殺していた。このやり取りがあの一瞬でおきて、流石に援護も何も無いわよ・・・。

 

「あんた、あの動き出来る?」

「弾幕の速さにもよるけど、今のくらいならなんとかかねぇ」

「じゃあその後の避けられたり云々の時は反応できる自信はある?」

「間違いなくあそこで返り討ちだったね」

「そうよね、あいつがおかしいだけよね」

「さっきの発破のせいで普段よりも動きがいいみたいね」

「発破かけた本人が言うなら間違いないねぇ」

「これ終わったら覚えてなさいよ」

「じょ、冗談だってば」

「さ、そんなどうでもいいことは置いといて、私達も援護に戻るわよ」

「おっと、いけないいけない。ちゃんとやらなきゃね」

 

 私達が話してる間にも戦闘は続いており、妖夢がフェイントや弾幕を織り交ぜつつ攻撃するも、幽々子はどれも悠々と避けている。妖夢の『剣術を扱う程度の能力』が無いからってのもあるでしょうけど、このままじゃまずいわね。仕方ない・・・妖夢には悪いけど、これも勝つためだもの。

 

「あんた達、私の後に続きなさい!霊符『博霊幻影』!」

「上手く避けなさいよ!舌切雀『大きな葛篭と小さな葛篭』」

「さっきまでの自分と重なって身震いが・・・ごめんよ!!恨霊『スプリーンイーター』」

「あらあら、また一気に弾幕が増えたわね。それじゃ、幽曲『リポジトリ・オブ・・・』」

「させません!!」

「っ!!この中にそのまま来るとは予想出来なかったわ。そんなことして大丈夫かしら?」

「もちろん。だって私は、西行寺幽々子様の従者ですから!」

「言ってくれるわね。それなら、やれるものならやってみなさい!!」

「言われずとも・・・参ります!!」

 

 一瞬妖夢が離れたのを見計らい、今度は3人で同時にスペカを放つ。先ほどよりも一人分少ないものの、やはりとんでもない弾幕になる。今度も幽々子はスペカで相殺を狙ったけど、ここでこちらとしてもまさかの事態で、妖夢がこちらの弾幕の渦中に飛び込み、幽々子のスペカ発動を阻止した。完全に見えない位置からなのに、最低限の回避でかわしつつ、幽々子と近接戦闘を演じてみせる妖夢。ほんと、どうなってんのよ今のあいつは・・・。ってヤバイ!忘れてた!!

 

「妖夢!!一度引きなさい!!」

「ですが!!今チャンスを逃したら!」

「いいから!!早く!!」

「ちょ、何をそんなに慌ててるのよ」

「私の今使ったスペカ、一定時間で効果範囲に爆発を起こすように改造されちゃってたのよ!!それがもう時間が無いの!」

「誰だいそんな馬鹿なことしたのは!」

「魔理紗よ!『お前にはパワーが足りないんだぜ!』とか言いながら勝手にスペカに術式みたいなの書きやがったのよ!」

「ってもう明らかに時間が無さそうな発光してるよ!?」

「チッ!出来るか分からないけど、やってみるしかないわね!」

「ちょ!パルスィ!?」

 

 爆発が起きるあで後数秒のところで、パルスィが妖夢の下へと走り出した。あああああもう!!なんでこんな大事なこと忘れてたのよ!!全部終わったら魔理紗のやつ一回ぶん殴ってやるんだから!!!あぁもう時間が!!

 

「パルスィ!!!妖夢!!!!」

 

 ・・・眩い光の後、凄まじい音とともに眼前の範囲が爆発を引き起こした。その威力は凄まじく、空中5メートルほどにいるにも関わらず、地面にまでしっかりと爆風の痕跡が残る程だった。明らかに前よりパワーが上がってる・・・また勝手に改造したのね・・・。ってそんなのどうだっていい!!二人は!!?

 

「ケホッ、ケホッ!もう!!いきなりこんなの酷いじゃない!!!ほんとに危なかったんだから!!」

「わ、悪かったわよ・・・。それよりも二人は!?」

「私が見えた限りだと、ギリギリまで近場で戦ってたから、もしかしたら・・・」

「そんな・・・パルスィ・・・」

「勝手に殺すんじゃ無いわよ!!!」

「えっ!?」

 

 煙の中からまず幽々子が現れる。この謝罪は後でどうにでもするとして、他の二人が出て来る気配が無く、煙が晴れてもその場にはいなかった。最悪の事態を想像しかけるも、その爆発の位置からかなり離れた場所で二人を発見した・・・何故かパルスィが妖夢を抱きかかえたような体勢で。

 

「良かった!!無事だったんだね!!」

「ええ、なんとかね」

「妖夢も大丈夫そうね」

「は、はい・・・まさかあんな爆発になるとは・・・」

「わ、悪かったってば・・・」

「それより、どうやってあんな位置まで行ったんだい?」

「アンタの能力のおかげだよ」

「え?アタイの?」

「こいつは半人半霊なんだろう?だから厳密には死体では無いけども、半分は死んでるみたいなもんなんだし、もしかしたらアンタの『死体を持ち去る程度の能力』で、あそこから逃げるくらいは・・・って思ってね」

「あ、あの・・・」

「よくもまぁそんな無茶を・・・出来なかったら今頃二人して丸焦げよ?」

「さっきあんだけ覚悟だの勇気だの説教したんだもの・・・やって見せなきゃ説得力なんて無いじゃない」

「あの~・・・」

「ったく・・・アタイよりそいつのことを信頼したんじゃなかったのかい?」

「それだけアンタを信頼してるってことよ」

「言ってくれるじゃないのさ」

「あの!!!」

「うわっ!なんだい!?急にでかい声出して」

「耳が痛いじゃないの・・・」

 

 なんとも納得できるような、そうでもないようなって感じで逃げるのには成功したらしい。一応あれ半人半霊って種族みたいなもんなのよね・・・?それが半分死体扱いって・・・。なんて思いながら話していると、突然妖夢の大声が割って入る。

 

「あ、ごめんなさい・・・。じゃなくて!あの、そろそろ・・・おろしてくれませんか・・・?」

「ん?あぁ、悪かったわね、アンタちっさいから気にならなかったのよ」

「し、失礼ですね!!わ、私だって成長すればもっと!!」

「はいはい、話はあとあと。そろそろいい加減あいつをなんとかしないと、その成長すら見れなくなるかもなんだから」

「元はと言えば霊夢のスペカが原因なんだけどね」

「だからあれは・・・!いや、もう今はいいわ。それより、わざわざ待っててくれるなんて優しいわね」

「だって、私は足止めをお願いされてるだけだし、戦うのに興味があるわけじゃないんですもの~」

「だったらもう十分足止めはされてあげたんだから、そろそろ通してちょうだい」

「だぁめ。そんなことしたら彼に怒られちゃうもの」

「だから別に怖くなんてないんでしょうに」

「それでもだぁめ。だって、私達は協力者なんだもの」

 

 協力者・・・そこもなんか微妙なのよね。確かに集まってるやつだって、力で負けたからって従ったりするようなタイプじゃないわ。かといって、交換条件やお互いに利益を出すためといっても、こいつのやろうとしてる『力での支配』なんかに利益が出るようなやつだっていない・・・。交換条件にしたって何を条件にすればこいつらが手伝うってのよ・・・。

 

「不思議そうね。なんで私達が手伝ってるのかって」

「そうね。あんたらはそういうのに無頓着だと思ってたわ」

「そう、普段ならそんなことしようとも思ってなかったわね。でも、彼の場合は少し違うのよ」

「何が違うってのよ」

「うふふっ。おしえな~い」

「あ・ん・た・ね~~・・・」

「だって、そんなに簡単に教えちゃつまらないでしょ?」

「霊夢、こいつに真っ向から話をしようってのが間違いよ」

「まだそんなに時間は経ってないけど、大体分かったよ。この人はある意味お空以上に話が通じない」

「はぁ~・・・幽々子様ったら・・・」

 

 あぁ~もう、ほんとにイライラするわね。でも、これで何かあるのは分かったわけだし、その収穫があっただけでももういいわ。にしてもやっぱりこいつは強いわね・・・不本意とはいえあんな爆発が起きたってのにしっかり避けてるし、その前の弾幕だってなんだかんだしっかり避けてるし。どうやって倒せってのよこんなの・・・。

 

「やっぱりまたスペカでごり押すしかないか」

「いえ、もう一度私にやらせてください」

「妖夢?そんなこと言ったって、さっきの攻撃だって通じなかったし、今度はどうするってのよ」

「作戦ならあります。だから」

「やらせてみましょう、霊夢」

「あんたまで・・・大丈夫なのよね?これ以上は本当に時間がヤバイのよ?」

「分かっています。この攻撃で、必ず勝ちます」

「そ。あんたがそこまで言うならもう何も言わないわ。確実に決めてきなさい」

 

 正直なところ、スペカでのごり押しだって効果が薄いくらいは私だって分かってる。ここまで『弾幕ごっこ』と『戦闘』の違いがあるなんて思わなかった・・・。異変解決のプロって言ったって、相手がこの世界での戦いのルールから少し外れるだけで、こんなにも自分が無力になるなんて・・・。ここはもう、本当に妖夢に賭けるしかないわね。頼んだわよ・・・。

 

「では幽々子様、お覚悟を」

「ふふっ、こんな場面でもしっかり一言入れるなんて、やっぱり血の繋がりは面白いわね」

「っ!!お師匠様ですか・・・『どんな相手であろうと、相手への礼節を失してはならん。心を持たぬ剣は、己を殺すことになると心得よ』これが、お師匠様から最後に教えていただいたことでした。あの時の私には分かりませんでしたが、今なら、少し分かるような気がします」

「『分かる』って言い切らないのが貴女のいいところよ、妖夢。さぁ、雑談は終わりよ。いつでもいらっしゃいな」

「では改めて・・・。はっ!!!」

「っ!!」

 

 最後の会話が終わり、妖夢は剣を鞘に納めた。そしてその数秒後、凄まじい速度の抜刀で、先ほどとは桁違いの速度で弾幕が飛んでいく。さらにそれだけに留まらず、その剣をそのまま切り返し、さっきのと今との間くらいの速度の弾幕を続けざまに放つ。それに加え、妖夢自身もちょうどその二つの弾幕の合間を埋めるかのように迫る。

 

「こんな速い弾幕が出せるなんて驚いたわよ!」

「これも鍛錬の賜物です・・・ね!!」

「さっきよりも速いとはいえ・・・同じ攻撃が何度も通用すると思ってるのかしら?」

「思ってませんとも。だからこそ、意味があります!」

「・・・?どういう・・・きゃっ!?」

 

 一段目の高速の弾幕は、驚きながらも避けられ、続いた妖夢の攻撃も先ほどと同じく扇子で弾かれる。ここで妖夢はまた先ほどと同じように横に飛びのき、遅れた弾幕が幽々子を襲う。だけど、さっきも通じなかった同じ手が通用するはずも無く、これも先ほど同様に避けられ、幽々子が妖夢を見た。その直後だった。視界から外れた避けたはずの弾幕の一つが急停止し、そのまま幽々子に向かっていったのだ。妖夢から攻撃が来ると予想していた幽々子はこれに気付けず、後ろから弾幕が直撃。バランスを崩したところに、妖夢の刀が突き付けられた・・・。

 

「私の勝ち・・・で、よろしいですね?」

「あ~あ、負けちゃった・・・。ふふっ、ほんとに強くなったわね、妖夢。それに、いっぱい食わされちゃったわね、子猫ちゃん?」

「へ?お燐?」

「あっちゃ~気付かれちゃったか~」

「ど、どういうことよ。だってお燐は何もしてないわよ?」

「あら、私にぶつけてくれたじゃないの。この子をね」

 

 そう言いながら幽々子が見せて来たのは白いふよふよしたもの・・・ってそれって!!

 

「そう、あれは私の半霊です」

「アタイの申告してる能力は『死体を運ぶ程度の能力』だけど、アタイにはそれ以外に自前の力で怨霊や死体を操ったり出来るんだよ」

「一つ目の弾幕がすごく速かったのと、妖夢を警戒しなくちゃだったから、二つ目の弾幕の中にこの子がいるのに気付けなかったのよね。しかも、妖夢も操ってる素振りなんか全然見せないから、完全に忘れちゃってたんだもの」

「半分生きてるみたいだから長時間は操れないけど、さっきのパルスィのを見て、もしかしたらって思ってね」

「霊夢さんが幽々子様と話してる間に、後ろで確認して、作戦を立てたってわけです」

 

 なんというか・・・さっきのといい今のといい、納得できるような出来ないような・・・。まず何よりも半人半霊っていう中途半端な種族が悪いのよね。まぁ今回に関してはそれが役立ったわけだからもういいか・・・。

 

「さて、勝ったことだし、さっさとあいつのとこ行くわよ」

「ええ~ちょっとくらい休んでいったら~?」

「アンタも来るのよ!!何呑気なこと言ってんのよ!アンタは私達に負けたんだから、あいつ倒すの手伝いなさい!!」

「う~ん・・・残念だけど、それは出来ないわね~」

「こんだけ時間使わせといてまだ文句を・・・」

「代わりに、面白いお話を教えてあげるわ」

「そんなのいいから!さっさとあいつのとこに・・・」

「彼の過去と真の目的」

「「「「っ!!」」」」

「これを教えてあげるのだとしても、かしら?」

 

 突然の幽々子からの提案・・・。あいつの・・・ミクスの目的を知ることが出来るチャンス・・・。こいつが本当のことを言う保証があるわけでもないし、もしかしたらさらに時間稼ぎをするつもりなのかもしれない・・・。それとも、聞いてもどうにも出来ないような規模の事なのかもしれない・・・。でも・・・。

 

「いいわ。聞いてあげようじゃないの」

「いいのかい、霊夢。もしかしたら時間稼ぎなだけかもしれないよ?」

「それに、本当のことを言うかどうかも・・・」

「信頼」

「っ!」

「そんなに簡単なことじゃない。だっけ?たしかにそうね。でもね、私は信頼してるわ。今敵に回ってるこいつらだって、幻想卿が好きなんだって。だから、きっと本当のことを話してくれるって」

「もう~霊夢ったら案外ロマンチストさんなのね。彼になびいてたのにクラッと来ちゃいそうじゃないの~」

「馬鹿なこと言ってないでさっさと話しなさいよ!!時間無いって言ってんでしょ!!」

「あら、ごめんなさい。それじゃ、聞かせてあげようかしら」

 

「ある一人の力を持ちすぎた妖怪の、とても悲しい昔話を」

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