東方交換録   作:シンP@ナターリア担当

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第25章 人間と妖怪の狭間で~最後の願い~

 どれくらい寝ただろうか・・・。ふと見えた窓から外を見ると、夕方から夜に入るところといった頃合だった。流石にこれ以上はゆっくり出来ないと思い身体を起こし扉を見やると、少し汚れた服を着た小さな女の子と目があった・・・。まずい!!

 

「あれ?お兄ちゃんだぁれ?」

「いや・・・俺は・・・その・・・そう!怖い妖怪だ!!この家を少し貸してもらってただけだ!!食われたくなかったら黙ってここから出て行かせてくれ!!」

 

 自分でも何を言ってるのかよく分かっていない。ただ、今すぐこの場を離れなければ、この子の通報でまた追われることになるだろう。それを防ぐには、この子を口止めし、すぐにここを離れる。それしかない!!と、思っていたのだが・・・

 

「そっか・・・妖怪のお兄ちゃん、おうちが無いんだね。それならここで一緒に住む?」

「え?」

「私はミドリっていうの。これからよろしくね?」

「お、俺は悪い妖怪なんだ!そんなこと言ってると本当に食っちゃうぞ!!」

「いいよ、食べても」

「なん・・・」

「だって私、生きてちゃいけない子だから」

 

 そう言った少女の顔は、とても綺麗な笑顔だった・・・。その少女・・・ミドリには、生まれた時から不思議な力があったそうだ。その力はとても特殊で、周りの人間はそれを気持ち悪く思い、ミドリが5歳になった頃、親子ともども村の中から追い出した。そして、この森の中に住むようになり、両親がこの家を建てたんだそうだ。この不恰好な家は、慣れない大工仕事をした両親の傑作らしい。申し訳ない。

 

「そこからずっとここで暮らしてるの」

「その・・・ご両親は・・・」

「お父さんは狩りの最中に、遠くの人に間違えて撃たれて・・・お母さんはそのショックで寝込んじゃって・・・」

「そうか・・・でも、それだったらここまでしてくれたご両親のためにも、しっかり生きないと!」

「それでね、お母さんが死ぬ前や、それよりもずっと前から、ごめんね。ごめんね。って苦しそうに言ってたの。どうしてだか分かる?」

「それは、こんな状況にしてしまって・・・ってことじゃないのか?」

「惜しいけど違うの。私ね、お母さんが死ぬ前に、何かを言いたそうにしてるのが分かったの。それを知りたいって強く思ったの。そしたらね、聞こえたんだ。『貴女なんか生まれてこなければ良かったって。そんな風にしか思えなくて、本当にごめんね」って」

「なっ!?」

「お母さんの最後の言葉を聞いて、私やっと分かったの。私は生きてちゃいけないんだって。でもね、自分で死ぬのってすごく怖いの・・・何回も死のうとした。ナイフで切ろうとしたり、何も食べずにいたり、野生の動物の前に出たり・・・。でもね、どれも怖くて・・・死ぬ前に止めちゃったの・・・ダメだよね。私。早く死ななくちゃいけないのにね」

 

 言葉が出てこなかった・・・。こんな小さな女の子が、同じ人間から、これほどの扱いを受けたことも。こんな小さな女の子が、自分から、何度も死のうと思ったことも。こんな小さな女の子が、ただ一人残った肉親から、愛を受けられなかったことも。何もかも信じられなかった・・・。それなのに・・・どうしてこの少女は・・・今、こんなに笑っていられるんだ・・・。

 

「だからね。妖怪のお兄ちゃんが私を食べてくれるなら、それでもいいの。だから気にしないでくれて・・・妖怪のお兄ちゃん?」

「なんで・・・なんで君はそんなに強いんだい・・・?」

「ううん。強くないよ。すっごく弱いの。だからこんな風にしか生きられないの。他の人だってそうだよ。弱いから、へんな力を持ってる私が怖いの。何があるか分からないから怖いの。でも、人を殺すのも、もっと怖いの。だから皆で一緒になって追い出したりすることしか出来ないの」

「そ・・・っか・・・」

「うん。それじゃあ改めて、これからよろしくね?妖怪のお兄ちゃん!」

「あ、あぁ・・・」

 

 断れなかった・・・。この少女を、ここに一人で残していくことが出来なかった・・・。人間に一番大切な、『愛』を知らない小さな少女・・・。この子を・・・救ってあげたいと思ってしまった・・・。

 

 この子の生活はとても大変だった。朝起きてすぐにその日一日分の水を川に汲みに行き、朝食の支度をする。ご飯は基本的に山菜で、たまに野菜なんかもある。昼前には動き、山の中へと入る。そこで山菜を探したりしており、ある程度見つけると、森のさらに奥に、小さな畑のようなものがある。あまり広くも無いスペースだが、自家栽培のようなものらしい。家のすぐ近くだと、野生の動物達が来て危ないので、森の奥で作っているそうだ。そして収穫出来そうなものを採り、手入れをしてから家へと帰る。後はゆっくりと過ごすそうだ。この小さな少女が。こんな生活をしているとは・・・。

 

「辛いと思ったことはないのか?」

「もちろんあるよ。でもね?私なんかよりも、お父さんとお母さんの方が、きっともっと辛かったの。ずっと仲良くしてた人達から、急に遠ざけられて、今までと全然違う生活になっちゃったの。だから。それを思えば私は平気なの!」

「ミドリ・・・」

「ん?ふふっ!妖怪のお兄ちゃん!くすぐったいの!!」

 

 気付くと俺はミドリの頭を撫でていた。この子の親が与えられなかった愛情を、少しでも与えられたら・・・そんなつもりだった。

 

「でも、お兄ちゃんの手・・・あったかいの・・・。まるで、すっごく小さい頃、お母さんやお父さんに抱っこされてた時みたいな。とても安心する手なの・・・」

「そうか・・・」

 

 この小さな身体に、ほんの少しでも愛情をあげられたのなら、それだけでもいい・・・。どうか、少しでも幸せを感じてくれたのなら・・・。

 

 そうして一緒に過ごし1ヶ月が過ぎた。いろんな場所を回っていた俺にとって、常人には過酷かもしれないこの生活も、問題なく過ごすことが出来た。何よりも、ミドリの存在が大きかった。この小さな少女の生きる姿・・・。死にたいと言いながらも、死ぬのが怖いという少女の姿は、とても儚げながらも、俺の世界に彩りを与えてくれた。いつしか分かれるときは来るだろうが、せめてその時までは・・・そんな風に思い始めていた・・・だからだろうか。幸せを感じたとき、すぐ後ろに不幸もいるのだということを、忘れてしまっていたのは・・・。

 

 昼を過ぎた頃。日課の山菜収集が終わり、ミドリが菜園の様子を見るから先に帰っててと言うので先に帰ることになった。手伝おうかと言ったが、ここはどうしても自分でやりたいんだそうだ。自分で作った小さな菜園。最後まで自分で面倒を見たいんだろうな。そんな風に考えながら小屋にたどり着く。だが、そこで俺が見かけたのは、もはや見慣れたとも言える大きな馬車。そう、俺を追っている妖怪退治の一団の物だった。その馬車の横には何度目かの邂逅になる団長の姿があった。

 

「情報通りだな。ようやく追いついたぞ、妖怪さん?」

「ははっ、いつまでも追いかけてくれてご苦労さんだな。俺も知らないうちに有名人・・・いや、有名妖怪になったもんだ」

「ほんとにな。あんたみたいなのがとんでもない力を持って人里を襲い、人間を食い荒らす悪の妖怪・・・だとは到底思えないな・・・」

「人は見かけによらないって言うだろ?もっとも、俺の場合は妖怪だからそれが当てはまるか知らないけどな」

「ほんと、あんたが妖怪じゃなけりゃいい友人になれただろうよ・・・でもな。俺達も仕事でやってるんだ。たとえあんたがどんなことをしていたのだろうとも、俺達はあんたを退治するという依頼を受けちまったんだ」

「おいおい、有名な妖怪退治団の団長が、そんなことを討伐相手に言って良いのか?目撃者がいてそれが漏れたら商売上がったりなんじゃないか?」

「今からあんたみたいな強いのを倒すんだ。実力は保証されるから証人はいてくれた方がありがてぇよ」

「そりゃごもっともだが・・・はてさて、今までそう言って何回俺を逃がしたんだ?」

「ありゃあんたの力を量り損ねたこっちのミスだ。でも今回は、万全に行かせてもらう」

「お~っと・・・こりゃあ団体さんだな・・・たかだか俺一人のためにこんな人数を集めてくれたのか。本当にご苦労なことだ」

 

 古くからの友人と話すような気さくなやり取りもそこそこに、団長の合図とともに俺達の周りを囲うように30人はいるだろう団員達が姿を現した。少なくとも15はいるだろうとは思っていたが、まさか倍が来るとはな・・・。さて、突破すること自体はそうそう難しくはない・・・でも、今は一つ、気がかりなことがある・・・。

 

「それで?こんな人数あわせみたいなのをいっぱい集めてくれたわけだが、こいつらは何をするためにいるんだ?まさか特攻して少しでもダメージを、なんて言わないよな?」

「き、貴様!!我等を愚弄するか!!」

「愚弄はしないさ。でもな、これでもあんたらよりよっぽど長く生きてるんだ。力量の差ぐらいは分かるつもりだ」

「それが愚弄していると・・・」

「おいおい、うちの団員をからかわんでくれ。こいつらはあくまで周りに被害が出ないようにしてくれる役さ」

「どういう・・・あ~、なるほどねぇ」

 

 話してる内に準備が完了したんだろう。俺と団長を囲っていた団員達を繋ぐように半透明の膜のようなものが張られる。かなり高等な結界のようで、どうやらこの中では妖力が封印されるらしい。なるほど、たしかにこれは中々厄介だな・・・。

 

「本当に今回は用意周到だな。でも、これで勝てる保証はあるのか?」

「保証なんてもんは無いさ。これで負けちまったらもう後がねぇ。だから、俺にとってもこれは背水の陣みてぇなもんだ」

「もし負けたらこの中を爆破するなんて言わないよな?」

「どうだろうな?手の内をばらしてばっかりも楽しくないだろう?」

「こっちは命が掛かってるってのに、そこまで悠長にはしてらんねぇっての・・・。まぁいい。それで?そろそろ戦闘開始ってことでいいのか?」

「そういうことだな。さぁ、これが最後の勝負だ。どっちが勝っても負けても・・・な!!」

「いきなりだなおい・・・しかも人間とは思えねぇ速さだよ・・・今まで手ぇ抜いてたのか・・・」

「言ったろ?あんたの強さを量り損ねてたって。今回は・・・本気だ」

「みたいだな・・・いいだろう。こっちも本気でやろう。ま、殺しはしないけどな」

「ほんと・・・嫌な仕事だな・・・」

「おいおい、うつむいてちゃ攻撃は避けれんぜ!?」

「っ!!っぶねぇなぁ!ご忠告ありがとさん!!」

 

 そこから戦闘は一気に激化した。お互いに一歩も引かない攻防。妖怪の力の大半は妖力が補っているが、もちろんのことながら人間とは比べ物にならないほどに基礎身体能力も高い。だが、驚くことにこの団長はそれに着いて来ている。最初の一撃で分かっていたが、相当強い。お互いに相手の強さを量りながらも全力を出し合う。油断をすればやられるだろう。そんな張り詰めた戦いが10分は続いたかというところで、俺達以外から動きがあった。

 

「ははっ・・・あんた本当に人間かよ・・・。並みの妖怪以上だぞ・・・」

「妖怪に・・・妖怪以上だといわれちゃ・・・おしまいだなぁ・・・」

「そう言うなよ・・・誉めてんだからさ」

「へへっ・・・なら、ありがとさん」

「ふぅ・・・よし、息も整ってきたし、そろそろ再開か?」

「いいのかい?もうちょっと休憩してもいいんだぜ?」

「そんなカッコイイセリフは、額の汗を拭いてから言うともっとカッコイイと思うぞ?」

「おっと、ばれないようにしたつもりだったんだがな。ま、あんたも似たようなもんだろ?」

「さぁ、どうかな?手の内が分かってばかりじゃあ、面白くないだろ?」

「ちげぇねぇや。さぁ!続きを・・・」

「妖怪のお兄ちゃん後ろ!!」

「っ!?」

 

 突然聞こえたミドリの声。咄嗟だったが身体は動き、なんとか少しずらした。その瞬間、甲高い炸裂音とともに肩に鈍い痛みが突き刺さる。そのまま振り返ると、先ほどの団員が銃を構えてこちらに狙いを付けていた。だが、それも束の間、怒りの表情を浮かべて声のした方、ミドリを見る。まずい!!

 

「このガキ・・・よくも邪魔してくれやがったな!!」

「止めろ!!その子は関係ない!!俺が脅してこの小屋を借りていた!!ただの住人だ!!」

「うるせぇ!!このガキが邪魔しなきゃ今頃てめぇ動けなかったってのによぉ!!邪魔したってことはそいつも妖怪とかわらねぇ!!ぶっ殺してやる!!」

「妖怪のお兄ちゃん!!大丈夫!?これはなんなの!?」

「ミドリ!!すぐに逃げろ!!俺のことはいいから!!」

「嫌・・・嫌だよ!!お兄ちゃん!!!」

 

 阻まれていた結界の壁を叩くミドリ。そこに近付こうとする団員。だが、驚いたことにミドリはそのまま結界の内側へと入ってきた。まさかこれもミドリの不思議な力なのか・・・?いや、今はそれどころじゃない!

 

「ミドリ!!」

「妖怪のお兄ちゃん!!良かったの!!無事で本当に良かったの!!」

「馬鹿やろう・・・なんであんな無茶したんだ!!俺なんて放っておけば良かったのに!!」

「でも!そしたら妖怪のお兄ちゃんは死んじゃってたかもしれないの!!そしたら・・・そしたらミドリは、また一人になっちゃうの!!そんなの嫌なの!!!」

「ミドリ・・・!!」

 

 走ってきたミドリを抱きしめる。その小さな身体は小刻みに震えており、とても怖かったのだろう・・・。自分が殺されるかもしれないことも、また一人ぼっちの生活に戻ることも・・・。そうだ・・・この子はまだこんなに小さいんだ・・・。それなのにこんなにも強く、だけど弱く生きてるんだ・・・。本当に無事で・・・。そう・・・思った時だった・・・。

 

 先ほどの炸裂音が、森の中に、響き渡った・・・。

 

「え・・・?」

「あっ・・・」

 

 抱きしめていたミドリの身体が強張る・・・。嘘だ・・・。

 

 しがみつく手の力弱くなっていく・・・。嘘だ・・・。

 

 ミドリの口の端から、血が垂れてくる・・・。嘘だ!!!

 

「ミドリ・・・ミドリぃ!!!!」

 

 ミドリの身体を急いで横にする。横たえたミドリの周りにはダラダラと止まることなく血が流れる。なんで・・・どうしてこうなったんだ!!ミドリ!!!

 

「妖怪の・・・お兄ちゃん・・・」

「ミドリ!!」

「えへへ・・・これ・・・すごく痛いね・・・お兄ちゃん・・・こんなの我慢してるの・・・偉いね・・・」

「ミドリだって我慢してるじゃないか!すごく偉いぞ!!」

 

 どうして・・・どうして!!!なんでこの子が!!

 

「私ね・・・ほっとしてるの・・・ようやく、死ぬことが出来るんだって・・・それもね?お兄ちゃんの役に・・・立てて・・・」

「役に立ったなんて言うな!!死ぬなんて言うな!!一緒にこれからも生きるんだよ!!」

「今まで・・・ずっと一人ぼっちで・・・村の人たちは、私のことを・・・化け物だって言って・・・お父さんも・・・お母さんも・・・私のせいで死んじゃって・・・」

「もういい・・・もういいから!!」

 

 なんでこの子なんだ!!こんなに辛い生き方をしてきた子が!!ようやく良い方向に行きかけたのに!!!こんなむごいことがあるのか!!

 

「私・・・誰かの役に立ったことなんて・・・無かったの・・・でもね・・・?妖怪のお兄ちゃんは・・・そんな私に・・・優しくしてくれたの・・・」

「あぁ・・・あぁ!!いくらでもしてやる!!今度からも!!いくらでも優しくしてやる!!だから!!!」

「お兄ちゃんは・・・私に・・・い~っぱいの『愛』をくれたの・・・。お父さんからも・・・お母さんからももらえなかった・・・それを、い~っぱい・・・くれたの」

「まだまだ足りない!!ミドリはもっと愛が必要なんだ!!たったこれっぽっちの愛で満足するんじゃない!!」

 

 少しずつ・・・ミドリの身体から力が抜けていくのが分かる・・・わかってしまう・・・嫌だ・・・嫌だ!!

 

「だからね・・・いっぱいもらったお返しに・・・私から・・・お兄ちゃんに・・・『プレゼント』があるの・・・受け取ってくれる・・・?」

「あぁ!もちろん受け取ってやるとも!!」

「ありがとう・・・私の・・・この不思議な力・・・お兄ちゃんにあげるね・・・?そしたら・・・お兄ちゃんの中に・・・ずっといられるから・・・忘れられない・・・から・・・」

「そんなもの無くったって忘れないさ!!だって俺達は家族だろ!?」

「あ・・・おにい・・・ちゃん・・・嬉しい・・・最後に・・・本当の家族が・・・出来たんだ・・・。もう・・・これで・・・死ぬのも怖くないの・・・ありがとう・・・お兄ちゃん・・・」

 

 嫌だ嫌だ嫌だ!!!せっかく出来た家族なのに!!この子の人生が、ようやく始まったのに!!!!

 

「ミドリ・・・ミドリ!!」

「お兄ちゃん・・・私の・・・最後のお願い・・・聞いてくれる・・・?」

「あぁ・・・なんでも聞いてやる・・・言ってごらん?」

「どうか・・・お願いだから・・・人間を・・・嫌いにならないで・・・」

「分かった・・・約束だ・・・」

「えへへ・・・やく・・・そく・・・・・・」

「ミドリ・・・?」

 

 最後の約束をして・・・ミドリの身体は・・・動かなくなった・・・。少しずつ・・・ミドリの身体から温度が失われていくのを感じる・・・。ミドリ・・・。

 

「はっはっは!!ざまーみやがれ!邪魔しやがったのが悪いんだ!!」

「貴様ぁぁ!!誰がこんなことをしろと言った!!それもこんな子供を巻き込んで!!」

「だけどよ!!俺達の目的はこの化け物討伐だ!!確実にやったほうがいいに決まってる!!それにそのガキはそいつを助けたんだ!!村の連中からは『あいつは忌み子だから巻き込まれてもいい』って言われてた!!」

「ばか者が・・・!!これではどっちが妖怪だ!!どっちが化け物だ!!!!罪もない子を殺し!挙句忌み子だから死んでも良いだと!?貴様がしたことはれっきとした殺人だ!!」

「違う!化け物を退治しただけだ!!それよりももう一匹も弱ってるはずだ!!今なら・・・」

「今なら・・・なんだ?」

「ひっ!!!」

 

 ミドリからもらった『力』を使い、結界を破壊する。先ほどまで封印されていた妖力が溢れ、傷がみるみる内に塞がっていく。とても・・・とても冷静だった・・・。何故かは分からない・・・でも、ミドリを殺したこいつへの憎悪は・・・傷が塞がった頃には影に隠れてしまっていた。今あるのは、もうこの場にはいたくないということだけだった。

 

「なぁ、団長さん・・・」

「あぁ、俺達はあんたの討伐から完全に手を引き、妖怪討伐も今回限りで止める。この子は責任を持って弔おう。出来ることなら、両親とともに、あの村の近くで。それでいいか?」

「あぁ・・・ありがとう・・・」

「に、逃がすと思ってんのかよ!!お、俺はあきらめねぇからな!!たとえここじゃなくてもまた別のとこでてめぇを追ってやる!!おめぇみてぇなやつがいたら危険すぎるんだよ!!」

「好きにしろ・・・」

 

 そこからは、よく覚えていない。ふらふらと歩き、森の奥へと入って行った。気付けばミドリの菜園にいた。この小さな菜園にも二度と来る事は無いだろう・・・。それを横目に見ながらさらに奥へと進んで行く。特に当ても無い。ただ、この場所にはいたくなかった・・・。

 

 あの男はしつこく追ってきた。もちろん相手などしない。適当に逃げ、眠り。また歩き、見つかれば逃げる。そんな生活を続けていた。そして疲れがピークに達したのだろう・・・追われているのは分かっていたが、睡魔から逃れることが出来なかった。きっと、起きればそこは死後の世界だろう・・・それもいいか、ミドリに会えるなら・・・そんな考えをしながら、意識を手放した。

 

 

 目が覚めた・・・。

 ここは・・・どこだ・・・?

 俺はたしか、人間に追われ・・・森の中に逃げ・・・そこから・・・どうした・・・?

 分からない・・・人は殺してはいない・・・だが・・・追われている気配も消えている・・・

 それに何よりも・・・『気配』が違う。

 ここは、俺のいた『世界』では無いのか・・・

 

「おや?こんなところに人とは珍しい。迷子かい?」

 

 突然聞こえた声に振り向くと、そこにいたのは、小さな姿に見合わぬ大きな角を生やし、瓢箪を傾けケラケラと笑う、少女の姿だった。

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