私は夢を見ていた。いつものあのゆめだ。
私は何も無い空間で彷徨い、お腹を空かせただただ歩いている。
真っ白で眩しいその空間は私を包み込み温かな光を浴びせ続けていた。
幼いあの日を思い出す。
親に捨てられ生きていくことさえ危ぶまれたあの時を。
徐々に空間は歪んでいき視界の端から徐々に黒ずんでくる。
あぁ、今日も何も見つけれなかったか。
私は目を覚ました。
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薄ぼんやりと意識が覚醒し出す。
アラームが鳴っている音が聞こえ眠たい眼を擦りながら鳴っているアラームに手を伸ばし止める。
起床の時間だということを嫌でもアラームが示してくれた。
体を起こさなければ…
朝食の時間に遅れてしまう。
無理矢理体を起こしベッドから這い出る。
一度伸びをしてから体を捻る。
「さ、今日も頑張りますか。」
1日が始まる。
顔を洗って歯を磨き、寝癖を直して黒い長い髪をまとめる。
寝巻きからいつもの制服に着替え『夕暮千夜子』と書かれた自室をでる。
プシュッと扉が軽快な音を立てて開く。
真っ白な廊下には何人か歩いていた。
「おはよう、チョコ」
1人の黒い肌の女性が声をかけてくる。
「えぇ、おはよう。」
「今日も時間ぴったりね。日本人みんなそうなのかしら?」
「さぁ?どうなんだろうね。さ、早くしないと朝食無くなるよ、アンナ」
一緒に食堂に向かう。
この時間なら余裕で食べられるだろう。
夕暮千夜子こと私は人理継続保障機関フィニス・カルデアで働いている。
このカルデアと呼ばれる機関は標高6000mの雪山にある施設で人類社会の存続を世界に保証する保険機関のようなもの。
らしい。
私は今は医療班の一員として働いているが、基本的に職員のバイタルチェックやメンタルヘルス管理などを行っていり。
元々私は清掃員としてこのカルデアに来たのだが…ある男のお陰と言うか原因で今のような地位にいる。
そのある男というのが…
「やあ、チョコ今日も早いね。相席いいかい?」
「Dr.ロマン今日は早起きですね。カルデアが爆発でもするのではないですか?」
「いやぁ、朝から手厳しいね…」
この男、ロマ二・アーキマンだ。
元々、清掃員の私は空き部屋を清掃しようとした時この男は空き部屋で饅頭を食べながらタブレットを触っていたのだ。
つまり、サボり。
それを見つかってしまった彼は口止めとして私を正職員として私を雇った。
それが今から半年程前のことだ。
今思うと、とんでもない事が出来る凄い地位の男だとは分かるのだが、魔術だの魔法だのよく分からない世界と無縁だった私を無理矢理引き釣りこんだのだ。
確かに私にとって利点しかない提案だったし、この業界に入ってからも何も分からない私に優しく魔術や医学など、必要な事を教えてくれた。
が、私の人生をあの一瞬で左右してしまったという点ではこの男は許されない。
「どうしたのチョコ?僕を睨んで…なんか悪いことしたかな?僕…」
「いいえ、何も…でも、腹が立ったのでその卵焼きは貰います。」
「え!?最後まで取って置いたのに…理不尽…」
卵焼きを口いっぱいに頬張り飲み込む…
「で、Dr.ロマン今日は何かあるんですか?ほかの職員が慌ただしいですけど…」
「あれ?連絡してなかったっけ?今日はレイシフトの実験があって沢山のマスター候補が来るんだって。僕もそのマスター候補のバイタルチェックの要員として行かなくちゃダメなんだ。」
すかさず、自分のタブレットを出して連絡が来てないか確かめる。
昨日の夜中2時にメールが1件。
恐らくその時間は夢の中だろう。
「すいません、Dr.ロマン連絡来ていました。それで、私は何をすれば?」
夜中にメールを送ったことを咎めてもどうせ直してくれないので大人しく引き下がる事にした。
「今日は君は僕の穴埋めとして医療班を指揮してくれ。まあ、大半がこっちの実験に駆り出されるから殆ど君1人のようなものだけどね。」
どうやら自分はその実験とやらに参加は出来ないらしい。
「分かりました。ではその手筈で。」
「よろしくね。チョコ。じゃあ、僕はもう行くから、ごゆっくり」
ひらひらと手を振りながらロマンは去っていった。
「ねぇ、チョコ。あんたってDr.ロマンと仲いいわね。」
「まあ、私がここにいる原因なんだし…なんかすごく親近感というか…」
そういいながらお茶を啜る。
「ふぅん…チョコはあぁ、いうのがいいのかー」
「ブフッ!げほっげほッ…なに言い出すのさ…Dr.ロマンは…そうね、兄みたいなものよ。」
お茶を噴き出しかけて気管にお茶がはいりむせた。
「ふぅん…まあそう言うことにしておくわ!じゃあ、私もさっきの実験のスタッフとして呼ばれているから行くわね!」
「ん、じゃあ、また」
アンナは私をからかいその場から行ってしまった。
いつもあんな感じで私をからかってくる。
困った友達だ。
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今日は例の実験があるので非常に慌ただしかった。医療班の人員は本当に私以外出払ってしまったみたいだった。
私は今日そのマスター候補達と一緒に入ってくる医療器具の集計、在庫管理などをして、お昼休憩をしようと給湯室に行くために廊下を歩いていた。
外から見える雪山はいつも通り吹雪いていた。
そんな、よそ見をしていると
ドンッと人とぶつかる。
「あ、ごめんなさい大丈夫?」
ぶつかったのは片目が隠れた紫色の女の子だった。
歳は恐らく私と同じかそれ以下のように思えた。
彼女は尻餅を着いていたので、手を差しのべる。
すると、彼女のお腹の上辺りにいたリスのような犬のようなよく分からない生きものが逃げ出した。
「あっ…」
彼女は素早く私の手を取りその生きものを追いかけた。
途中で、私の方に振り向き一礼して走っていってしまった。
彼女もマスター候補かのかもしれない。
私と同い年っぽいのに凄いんだなと思い。
私は真逆の方向にある給湯室に向った。
確か、さっき入荷した中にケーキと茶葉があったはず。
おやつはそれにしよう。
少し上機嫌な私は早足に廊下を歩いた。
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いつものようにおやつの準備をしていると困った事に気がついた。
ロマンの分も用意していたが確か彼は実験でオヤツなど食べれる身ではない。
この2切れのケーキと2杯の紅茶をどうしようかと迷っていると。
「あ、チョコやっぱりここにいたんだね。」
いつもの軽薄そうな声が聞こえる。
「Dr.ロマン貴方はなんでここにいるのですか?実験があるのでは?」
「いやぁ、マリー所長に怒られて追い出されたんだよ。それで仕方なく甘いものでも食べたいと思ったから君を探していたんだけど…」
笑いながら彼は頭をぽりぽりと掻きながら言った。
「全く、本当にどうしようもない人ですね…でも、ちょうど良かったです。今日はいい茶葉が入ったみたいで。」
ケーキと紅茶を差し出す。
「え?用意してくれてたの?流石だなぁ…」
「たまたまですよ。さ、いつもの所に運ぶのでどいてください。」
「え、僕の分は僕が運ぶよ。」
「おっちょこちょいな貴方ですから、こぼしてしまっては勿体ないでしょう?」
「あはは…信用ないなぁ僕…」
彼の分のケーキと紅茶を持っていつもの空き部屋に向かう。
廊下には人通りはなく、2人で歩いていた。
「一体何をして所長に怒られたんですか?」
「彼女酷いんだよ…僕がいたらマスター候補達の気が緩むって」
「日頃の行いってものですよ…」
いつもの空き部屋に着いた。
プシュッと音が鳴り扉が開く。
「さ、着きました。どうぞ」
「悪いね…いつも、ありがとうチョコ。」
と、彼は私の頭を不用意に撫でる。
彼の手はあまり男性らしくはない細い指をしていたが私を撫でるその手は確かに心地よかった。
「あまり、不用意に女性の頭を撫でない方がいいですよ。私の国では完全にセクハラになります。」
「えぇ…マギ☆マリはこうすれば感謝を伝えられるって言ってたんだけどなぁ…」
「まだドルオタしてたんですか…いい加減足を洗ったらどうですか?」
「そんなぁ、マギ☆マリは僕の心のオアシスなんだからむりかな!」
「はぁ…分かりました。私はもう少し片付けなければならない書類あるのでそれを処理しながら食べるので。」
「そっか、手伝おうか?」
「貴方は呼び出しがかかったりするかもしれませんのでここで待機してた方がいいのでは?」
「んー、まあそれもそういだね。ありがとう。頑張ってね」
「えぇ、食べ終わったら給湯室の流しに」
「わかった。」
私は足早にその部屋から出た。
撫でらた頭をもう一度自分で触ってみる。
本当に不用意にあんなことをしては駄目だと思う。
まだまだ撫でるのが下手だし、それに…
いやなんでもない。
「はぁ…」
心の中に溜まったつっかえやモヤモヤを吐き出す為に一息をついてから医療室に向った。
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いつもの席に座ってケーキをつつきながら書類の整理をしていた。
紅茶は少し冷めて味が濃くなっていた。
いつもは医療室に相談や怪我などを見せにくるスタッフがいるが今日は1人も来ないのですこし寂しい感じになっている。
書類も一通り区切りがついてロマンのいる部屋に様子でも見に行こうとしたその時だった。
カルデアの何処から爆発音がなった。
それは今までの日常が崩れさる音でもあった。