皆それぞれの好きなことをしていた。
兵士に混ざり酒を飲み交わしたり。
腕相撲大会に参加したり。
それを見て楽しんだり。
一方で
「ここにいたのか。」
「なんだ。もう解放されたのか。」
城壁に座っていた装甲を外した神子に手首を擦りながらリチャードが話しかけた。
「まぁな。隣いいか?」
「どうぞ。」
リチャードは神子の隣に座った。
「何してた?」
「別に。ただ空を見てた。」
「空?」
リチャードは空を見上げた。
そこには満天の星空があった。
「私の先生が言ってた。星はみんなの願いの数だけあるって。私の夢もその中にあるから探してみなって言われてね。だから探してた。」
「夢か…」
お互い少しの間黙った。
「ねぇ。もし聖杯が願いを叶える願望器なら何望む?」
唐突にリチャードに聞いた。
「願いか…私はただアーサー王に会いたい。だが、今回のような会い方では無く。それと出来れば円卓の騎士にもなりたいぐらいだな。」
「いい願いだね。いつごろから思ってた?」
「アーサー王の存在を知った時だ。親の読み聞かせだったが憧れた。だから私が王になったらアーサー王のように立派な王になりたい。そう思っていた…だが…」
「そうは行かなかった。」
「あぁ…私は夢だけを追い求め現実を見失った。結局私は交渉でしか力を出せなかった。」
リチャードは悔しそうに唇を噛んだ。
「なら良くない?」
「はっ?」
神子の言葉に驚くリチャード。
「誰しも成功したってことをとるけど結局後悔しかない人生だと思う。例え神でさえね…」
「誰しもが…か…あなたはど…」
リチャードはそこで言うのをやめた。
神子の赤い目には今にも流れ出しそうなほどの涙が溜まっていた。
「すまない…変なこと聞いたな…」
「いえ…大丈夫です。」
神子は涙を吹き立ち上がった。
「そろそろ私は入ります。それとあなたと話せて楽しかったです。リチャード1世…いや獅子心王。」
「こちらもだ。名も無き騎士よ。」
「名前はありますよ。」
「ではなんだ?」
神子は再び空を見上げ言った。
「紫龍…」
神子はそう言った。
その頃
「ライダーの治療をしながら拷問してますが未だに口を開きません。」
ジャンヌをアーサー王の前に連れ出した男が報告した。
「やはり聖女は力づくでは無理か…」
「…」
アーサー王の横には全身黒の甲冑に包まれた男がいた。
「どうしますか我王よ。」
ヴラドがアーサー王に聞く。
「あれの準備はどうだ?」
「いつでも行けます。」
「なら頃合いだな…」
「始めるのですね。」
「あぁ…さぁカルデアのマスター達よ…私を止めてみろ!」
アーサー王は窓の外を見た。
夜明けは近かった。