惑星サダラのサイヤ人   作:惑星サダラ

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村で修行

「宇宙船に興味があるのかい? 珍しいなあ」

「まあ、色んな最新技術の集合体ですから」

 

 脱出のために使いたいだけで技術者になるつもりはないけど、ここは技術者になるつもりで言っといた方がいいよね。

 

「そういう反応が珍しいんだよ。サイヤ人としてはね」

「まあ僕は、戦いが好きなわけじゃないですから」

「えっ!? 本当かい!? きみ、かなり修行しているだろ? 両親がエリートサイヤ人じゃないのに君がエリートサイヤ人の子ども並みに強いってことは」

「はい。まあ修行はしますよ。僕も死にたくないので。でも別に戦いたいわけじゃない。気楽に宇宙を旅する方が楽しそうです」

「へー、そんなサイヤ人がコンサイとダイコちゃん以外にいるとはねえ」

 

 コンサイは村長の名前だ。無口なおっさんだから性格は分かりにくいが、実は戦いが好きではなかったようだ。ダイコもドレッシに対する態度を見る限り、おとなしいようだな。普段は本当の性格を隠してサイヤ人っぽく振舞っているのだろうか。

 

「ゴギョウくん。君もだったなんて」

 

 ダイコがうれしそうに俺を見る。俺も純粋そうな笑顔を作る。

 

「仲間ですね、僕たち」

 

 どうだ。この笑顔! かわいいだろ!

 

「うん、仲間だね! きゃーっ、うれしい!」

 

 ダイコは喜び、俺を抱きしめた。ふふふっ、上手くいきそうだな。

 

「まあ何にせよ、今は戦争に勝たないとね。夢を叶える前に目の前の敵を倒さないと」

「そうだね」

 

 うっ。ダイコのやつ、逃げる気はないらしい。ドレッシも同意か。

 まあそうだよなあ。村の人間が命かけて戦っているのに、自分だけ逃げて楽に暮らそうなんて許されないよなあ。サイヤ人はなんだかんだ仲間意識が強いし。

 

「そのためにも、修行! 私だけじゃなくて、村の子ども達みんなでいっぱい修行して、今よりずっと強くなって、べジータ軍をやっつけないと!」

「そうだね。僕もできる限り協力する。ゴギョウくんもやってくれるかい?」

「もちろんです」

 

 修行はするけど、負けるだろうからなあ。密かに逃げる準備もしておかないと。

 

 俺はいろいろ考えて、地下室を作ることにした。敵のエネルギーボールが村に飛んできたときに、中に入って身を守るためだ。原作ではピッコロの全方位攻撃に対し、天津飯が気功方で穴を掘ってブルマ達を隠していた。俺もあれをやる。食料も中に入れておく。敵の攻撃で燃えてしまう可能性があるからな。また、地下空間から地下道を伸ばし、秘密の抜け穴も作っておきたい。

 根気のいる作業だが、修行だと思えばさして辛くない。亀仙流でも畑を耕す修行はあったしな。俺はそれに加えて、穴を掘る時に気の刃を使うつもりだ。腕に刃物のような気を纏わせて、地面を彫る。そうすれば気のコントロールの練習になるだろう。うまくいけば気円斬のような技を使えるようになるかもしれない。 

 

 早速家に帰り、庭に穴を掘り始める。

 手のひらに気を集め、鋭い爪のような形に圧縮していく。そして、それを地面にぶつける。

 

「うわっ」

 

 地面にぶつけた瞬間、気が弾けた。爆発の勢いで俺は2mほど飛ばされてしまう。ダメージはさしてないけどね。

 難しいな。もっと圧縮しないといけないのか。

 

 もう一度挑戦。手に気を纏い、刃物のような形に圧縮し、圧縮し、圧縮を意識したまま地面にぶつける。

 

「うっ、と」

 

 地面をザックリと掘ったところで、圧縮を続けることができず刃物は消えた。しかし爆発はしなかったぞ。いきなり進歩した。この調子で続ければ完全な穴堀の刃ができるだろう。

 

 そうして眠くなるまで掘り続けた。3時間ほどで深さ3mくらいの穴になった。気を刃にするのはできるようになったが、気を運用する効率がとても悪く、ドッと疲れた。穴を掘りながら眠ってしまった。

 

 翌日。ゆっくりしてから保育施設に向かう。早寝早起きは嫌いだからな。重役出勤だ。

 ドレッシからトレーニングメニュー受け取る。ほとんどは保育施設でやっているのと同じだが、重りトレーニング、医療カプセルによる休息、徹底した食事コントロールというのが違うな。こういうのはやってみたかった。そこそこ効率がよさそうだ。

 

 ドレッシの指示に従い、トレーニングをこなしていく。

 筋トレが多い。なんか動きが型に嵌ってるなあ。柔軟性がなくなりそう。適当にねじりとかも加えておこう。

 食事は新鮮なものを村長の土地から提供してもらう。食材を集めるのも料理を作るのは村長の使用人達だ。これがとてもおいしい。うちの母親の料理は適当だったからな。土地は痩せてるし。奴隷もやる気ないし。

 

 毎日毎食ここで食べたいが、そうはいかないだろうな。いくら村長の土地が広いと言っても、いつまでも村長の土地だけで賄えるわけではないからな。いつかは限界が来るだろう。いや待てよ。俺の奴隷をここで働かせて、ここで料理を作らせたら、いつまでも美味いもんが食えるんじゃないか?

 

 俺はダイコに頼むことにした。が、ダイコは他の子供の世話に忙しく、話しかけるタイミングがなかった。ドレッシに伝言を頼むことにした。

 

「ドレッシさん、うちの奴隷をここで働かせて、料理を教えて欲しいのですが」

「うん? ああ、それについては、もっと大きな計画を考えていてね」

「どういうことです?」

「今僕の修行メニューをこなしているのは君たちだけだけど、いずれは村全体でやってもらうつもりなんだ。そうすると村長の土地だけでは、栄養豊富な食事も医療ポッドもいきわたらなくなる。だから村全体の異星人にも協力してもらいたいのさ。栄養豊富な食事や新しい医療ポッドを生産することに」

「なるほど。それはいいですね。僕の奴隷に話しておきましょう」

「そうだねえ。本当は君たちに結果を出してもらってから、食量や医療ポッドの生産体制を整えるつもりだったけど、計画を早めようかな? その方が効率がいいからね」

 

 そうして話を打ち切り、俺は修行に戻った。

 ドレッシはこの日の夜にダイコに計画の前倒しを伝えたようだ。翌日、保育施設へ向かうと、ダイコが子ども達を並べて話をしていた。

 

「あなた達の使用人をこの保育施設に連れてきてください! 医療ポッドや新しい農業の計画を伝え、実行させます! 今までは異星人には単純に仕事をしてもらっていましたが、計画的に行った方が効率がいい!」

 

 この村の子ども達はなんだかんだ村長の娘を信頼している。指示に従わない子もいたが、概ね全ての子がそれぞれの奴隷を連れてきた。俺も全員連れてきたぞ。

 奴隷に対しては、村長の使用人が計画を伝えていた。ドレッシ当人は俺たちの修行のトレーナーだ。

 そうして使用人(奴隷)にとって新しい生活が始まる。サイヤ人は相変わらず特訓だ。

 

 

 1ヶ月後、修行の成果を見ると言って、村で武道大会が開かれた。

 対戦は一対一の形式。対戦相手はダイコが指名する。が、裏で指示しているのはドレッシだ。ドレッシの命をつなぐため、ドレッシのトレーニングを受けた子どもが全勝できるような、それでいて1ヶ月前で比べると若干分が悪い相手にぶつける。

 

 俺の相手は8歳の少年だった。俺より6つも年上だ。この子は父親がエリート戦士で、母親はふつうの戦士。この子自身も子どもとしてはエリートと下級戦士の真ん中くらいの戦闘能力を持つ。

 

「チッ、ガキが相手かよ」

「はあ。なんでこんな強そうな相手と戦わないといけないのか」

 

 向こうの方が30センチくらい背が高い。

 しかしドレッシは俺が勝てると判断しているらしい。まあ気は俺の方が多いかもしれないが。でも全力で気を開放するとスタミナがもたないんだよなあ。

 

「始め!」

 

 まあ、全力でやるけどさ。

 

「ずええい!」

「何!?」

 

 俺は全力で気を高め、少年に飛び込む。そしていきなり腹パン。

 油断していた少年はまともに受ける。油断してなくても俺の方が速いから避けられないかもしれないけど。

 

「ふんぐううっ」

「ずえい! つえい! オラァ!」

 

 俺は腹にもう二発アッパーをぶち込み、最後には顎を蹴り飛ばす。どうだ? これで終わったか。

 

「ぐっ。くそっ。調子に乗んなよ! ガキがああああああ!」

 

 少年は口から血を流すが、まだまだ元気いっぱいだ。叫びながら突っ込んでくる。

 強引な右ストレート。そしてハイキック。俺は下がってかわす。少年は俺を追いかけ、先ほどより狙い済ましたジャブを放つ。

 

 くそっ、冷静になってしまったか。強引な右ストレートにカウンターを合わせるべきだった。いきなりだったからチャンスを逃してしまったな。

 というか、こいつ動きはかなり雑だな。身長が同じならいつでもカウンターできる。でも今は俺の腕の方がかなり短いから難しい。

 

「卑怯もんがあ! 逃げるだけか!」

「いい子ちゃん気取りがよお! 逃げるだけじゃねえか!」

「弱虫! 弱虫!」

「サイヤ人の恥さらしめ!」

 

 外野がうるさいな。その全てが俺より年上で且つ俺より弱いの子ども。やはり優秀過ぎるゆえに嫉妬されているのだな。

 だが残念、俺は勝利への道筋を見出してしまったぞ。

 

「ほい」

「がばはあ!?」

 

 俺は相手のパンチに合わせてカウンターのパンチを放った。腕は届かないのでパンチに合わせて気弾をぶちこんでやった。初めてだがうまくいった。穴掘りで手のひらに気を纏うのには慣れていたから。

 

 少年は溜まらずダウンした。

 対格差のために俺の攻撃は軽いのだが、カウンターはさすがに効くようだ。しかも気弾なら体重はあまり関係ないしな。

 

「あ、当たって、なかったはず。何故だ!?」

 

 少年はよろよろになりながら立ち上がった。

 

「そいつはエネルギー弾を撃ったんだ!」

「気をつけろ! パンチに合わせて撃ってくるぞ!」

 

 少年は気付いていなかったが、観衆が種明かししてしまった。まあ気付かれたからと言って防げるもんでもないけどさ。カウンターだから。

 

「なんだと!? このガキめえ。味な真似をしやがってっ!」

 

 少年は叫ぶと、よく分からない構えをした。

 

「俺に二度同じ策が通じると思うなよ!」

 

 少年は叫び、俺に突っ込んできた。今度は重心を後ろにしており、蹴りやジャブが中心だ。カウンターは仕掛けづらい。しかし避けるのは簡単だ。持久戦になりそうだな。ああ、一番嫌なパターンだ。

 

 少年は重心を後ろにしたまま鋭い攻撃を重ねる。俺は時たま殴ると同時に気弾を放って攻撃する。少年の攻撃はほぼ当たらず、俺の攻撃はけっこう当たる。しかしカウンターのようにうまくは決まらない。決定打にならない。

 結果、俺が不利な状況に追い込まれていく。思ったより早く体力がついてきたのだ。

 

「ぜえ、はあ、はあ」

 

 攻撃に気弾を使っていたせいだ。あれでいつもより体力が無くなるのが速かった。

 

「へへへっ。俺はまだまだ行けるぜ。はあ、はあ」

 

 対して、少年は軽く汗を流す程度。

 もう無理です。ぼく負けます。

 

 でも、こんな後ろ向きの戦法で負けるのは情けないな。最後は華々しく散ってやろう。

 大きなダメージを負ってしまうかもしれないが、それもパワーアップのためには吉だ。

 

「うおおおおおおおお!」

「何!?」

 

 突然、俺は少年に飛び込んだ。

 驚いた少年は一瞬反応が遅れる。俺の拳が顔に当たるが、浅い。やはり腕が短いから決まらない。少年の後ろなのも災いした。

 

「こなくそ!」

 

 少年の反撃。俺の顔面に命中。首をひねって衝撃を和らげるが、首が短いから大して軽減できない。

 

「うらうらうらうら!」

「く、ぐっ、つえい!」

 

 少年の連続攻撃。パンチにキックが雨霰。

 とても痛い。俺はガードしつつ反撃の隙をうかがうが、やはりリーチの差がしんどい。反撃しても届きそうにない。ガードしている腕の骨が軋む。ガードの隙間から顔を打たれ、鼻血が流れる。痛い。本当にボロボロだ。

 

「やれやれー!」

「いいぞマット! やってしまえ!」

 

 観衆もうれしそうだ。

 

「はあ、はあ。へへへっ」

 

 と、観衆に釣られたか、少年がうれしそうに笑ったぞ。そして重心が前に来た。

 勝てると思って慢心したな。踏み込んできたぞ! 右ストレートだろ?

 

「つえええい!」

「ぐばはあああっ!」

 

 俺は最後の力を振り絞るつもりで、渾身の気弾ストレートを放つ。それは見事少年の顔面を捉え、吹き飛ばす。

 よし来た。大チャンス!

 

 俺は吹き飛んだ少年の下へ掛ける。

 起き上がろうとする少年。俺は急いで上に乗り、マウントポジションを取りつつ、殴りつける。もういっちょ殴りつける。ぐっ、向こうも殴り返してきた。

 

「んげっ」

「べへえっ」

 

 殴り合いになった。向こうはガードを無視して全力で殴りかかってくる。俺もマウントポジションというチャンスなので、ガードを無視して応戦する。

 ここからは精神力の勝負。俺もなんか燃えてきたぞ。ここまで痛い思いをしたのだから勝ちたい。ここは負けたくない!

 

「ぐっ、ぐはっ、ぐうっ」

「ずえいっ! かはっ、死にやがれ! あうっ」

 

 何度も何度も殴りつける。しかし向こうも全く引かない。獣のような眼光で俺をにらみつける。サイヤ人の本能丸出しだな。

 いいだろう。とことん付き合ってやるよ!

 

「ひゃああああ! ぎっ、ぎぎゃあああ!」

「どりぇあああ! しゃりゃあああ!」

 

 殴る殴る殴る。頭の中はそればかり。いつしか痛みさえも忘れていた。

 

 そして気がつくと、俺は医療ポッドの液体の中にいた。

 

「気がついたかい? 全く無茶をする」

 

 ドレッシの声が聞こえた。

 

「俺は、負けたのか」

 

 俺がここにいるということは、そういうことなのだろう。

 とても悔しい。勝ちたかった。

 以前はああいう血まみれの野蛮な戦いはしたくないと思っていたが、そういう嫌悪感は全くない。いい気分だった。楽しかった。でも負けたからケチがついた。気分が悪い。悔しいな。

 

「まあ、マットくんが先に目覚めたという意味では、君の負けだけどね」

 

 ドレッシは俺の隣の医療ポッドをとんとんと叩いた。そのポッドの近くに血溜まりが見える。マットも気絶してここに連れられていたのだろうか。だったら勝負は引き分けと言うべきかもしれないな。多少悔しい気持ちは薄れる。でも、薄れるのもよくないな。この悔しい気持ちは今後の修行の糧にした方がいい。

 

「体に不調はないかい? 治療できる分は治療したけど」

 

 俺はこくりとうなずいた。

 液体が抜かれ、医療ポッドが開く。呼吸器が外れ、他の拘束も解かれる。

 

 俺は医療ポッドを出て、軽くストレッチする。特に異常はないようだ。

 待てよ。

 

「ふんっ」

 

 よし、予想通りだ。

 

「どうかしたのかい?」

「エネルギーを高めてみました。強くなってるかなって」

「戦闘中に何かつかんだのかな?」

「まあ、そんな感じです」

「それは行幸」

 

 後でそれとなく教えよう。サイヤ人は死の淵から蘇ると強くなるのだと。

 ところで、施設の外へ出てみると、辺りは夜だった。俺はずいぶん長く気絶していたらしい。

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