fate+DM+オリ主=大惨事   作:ヤマアラシ齋藤

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戦争終結

心地好い風が頬を触る。晴れ渡った青空に輝く太陽。後ろに感じるキチガイ共の熱気を感じて涙を流しそうになるが必死に堪え眼前にいる存在に圧倒的存在感に小便を漏らしそうになるが必死に堪える

 

「余は王である。臣下である貴様らは余の為に生きて死ぬのが道理である、違うか?」

 

「ハッ!俺達に王なんていねえよ!俺の目の前にいるのは自分を王様扱いしている痛い野郎だけだ!」

 

そこから巻き起こる大爆笑。自然文明の野次が英霊王に飛び交い火文明がそれに増長し更に笑いながら先程よりも汚らしい言葉を使い英霊王に野次をいれ揶揄する

 

そして大勇者の言葉に自然の軍勢は覇気を高めこれから始まる死闘に固く意思を決めて英霊王を睨み付ける。

 

「……余は王である。王である余は反逆を成そうとする臣民である貴様達をどう処罰すれば良いのか少し分からんのだ」

 

「ふん、貴様の言葉など聞くに耐えん。お前など我が主であるあの御方と比較出来ぬ。貴様は王として余りに未熟、一時の感情で臣民を虐殺し恐怖によって統治を成そう等呆れて笑いもでん」

 

「……闇の騎士よ。その言葉、取り消せぬと思え」

 

「最初から取り消すつもり等ない。ここで死ぬが良い、英霊王」

 

そう言いザガーンは剣を抜く。堂々とその剣を掲げる姿は今はいない主への忠誠を天へと掲げているかのようで、その姿を見た闇の軍勢は吼えるように歓喜の声をあげる

 

「……ふむ。そうか、それで……貴様らも同じ考えか?我が臣民、光の軍勢よ」

 

英霊王の言葉にウルスは淀みなく宣言する。貴様は自分達の王ではないと

 

「元より私の王は聖霊王ただ一人、貴様は我ら光の軍勢の王として相応しくない。我等、光の王は聖霊王アルカディアス唯一人」

 

「フハハハハ!飼い犬に手を噛まれるとはまさにこの事か!」

 

哄笑、心底愉快そうに笑う。だが、笑っていても目が何一つ笑ってはいない。底冷えする怒りのような感情を目に載せて眼下にいる者達へと向ける。

 

「しからば死ね。塵も残さず鏖殺してやろう。王自ら死を与えてやるというのだ、安心して死ぬが良い」

 

「その魂、仙界へと帰れると思うな」

 

「して……火の軍勢、そしてそれを束ねる童よ。貴様はどう思っている。貴様はどのような死を望む?ここにいる者達らは死を持って王へ刃向かった事を償う事は確定している」

 

英霊王は問う。先程の威圧感を抑え、まるで気に入った玩具を見るように笑いながら言葉を続けていく。

 

「だが、余も童を殺すのは少し躊躇われるのだよ。それも無限の可能性を秘めた童はな。故に貴様に選択肢をやろう」

 

「貴様が余に未来永劫尽くすというのならばお前達火の軍勢だけは助けてやらん事はない」

 

「選べ童よ。」

 

沈黙が続く。余りにも長い沈黙、誰もが火の代表の言葉を待った。そして火の代表、小さな勇者ゲットはその顔を嫌悪感で歪ませて宣言した。

 

「俺がお前に尽くす?バッッッカじゃねえの!?俺達ヒューマノイドが、ドラゴンが、ワイバーンが誰かに尽くすぅ!?」

 

「諦めてくれ!火文明にそんな殊勝な考えを持ってる奴はいない。諦めて死んでくれ、ここでお前は俺達に負けるんだよ」

 

「俺はさっさと終わらせて帰って姉さんの食事を取りたいし」

 

慇懃無礼、英霊王の存在なんて食事に劣ると言い切った男の言葉に全種族から歓声が沸き起こる。小さな勇者ゲット、その名の通り圧倒的存在に啖呵を吐く勇気、目の前に現れた救いの蜘蛛の糸を千切り天に向かって唾を吐く蛮行。

その姿こそ火文明、戦闘狂、キチガイ。馬鹿の極みである。

 

「……余がどれ程の存在なのか、貴様は気付いているだろう。いや……貴様以外にこの場にそれに気付いているものはいない。それでも貴様はその言葉を撤回せぬのか?」

 

「うん。お前に尽くしていたら姉さんと一緒にいれないし。この際だから言うけど俺、シスコンだからさ。早く姉さんと会いたいんだよ」

 

ゲットの言葉に全ての軍勢は野次を飛ばす。家族に勝る者はなし。自称王様は帰って升でも掻いとけ!

良いぞー!シスコン野郎ーっ!お前がそんな男って知ってドン引きしたわーっ!

ジャスミンと仲良くしておるようで儂は安心したわい

坊主ーっ!ジャスミンと仲良くしてくれよー!

 

そんな言葉を背中に受けてゲットは笑う。足や手が震え、歯を噛み合わせないほど恐怖しているのを誤魔化せていないのに英霊王を蔑むように笑う。

その姿をみて全ての者達の気合いは最高潮へと至る。あんな餓鬼が啖呵を吐いたのだ。自分達が恐れてどうすると

 

「……分かった。ならばもう言葉は重ねん!今日、全ての文明を滅ぼす事をここに宣言する!」

 

その言葉を皮切りに戦いは始まった。二つの文明を持つ存在、レインボー獣達と全てのモンスター達が咆哮し英霊王に襲い掛かる。

英霊王が手を振りかぶるだけで四大文明連合軍の半数が致死傷を受けて一人、また1人と倒れていく。

火の実力者である機神装甲の1人ヴァルディオスが英霊王の一撃で有象無象の者達のように吹き飛ばされ命を落とす。

ヴァルカイザーは機神装甲を纏い襲いかかりその肉体に攻撃を加えようとしたが意味を成さず、返しの一撃でヴァルカイザーは存在そのものを維持出来ず消し飛ばされる。

そしてゲットの父親であり最強の機神装甲であるヴァルボーグですら太刀打ち出来ず命を落とす事になる。

光の軍勢は反撃も許されず精霊王に尽く蹂躙され殺されていく。

大勇者達は動かない、彼等は機を待っている。この戦いの要と言える存在、それは自然の力を組みし存在。彼等は待つ、もう直ぐ発動する逆転へのチャンスを逃さんと唯必死に待ち続けるのだ。

 

英霊王が動かぬ大勇者達に疑問を呈してたその瞬間、その機は訪れた。フィオナの森。そこに立つ1本の聖樹、そこで祈りを捧げれば無限の力が手に入るという伝説のある聖樹からその力が湧き出し始めたのだ。聖樹の元でスノーフェアリーが美しい舞いを見せビーストフォークが荒々しい演武を舞い森に住む全てのモンスター達がその聖樹の前で歌って踊る、その踊りや歌に呼応するように聖樹は力を自然文明に力を授け戦場にいる自然文明、大勇者達が天をも貫く怒声をあげた

 

今こそ王を狩る時なりと

 

無限に等しい超常の力を授かった大勇者達は最早恐れる者なしと突き進む。本来英霊王の一撃で消し飛ぶ筈の肉体は一撃、二撃、三撃と食らってもビクともせず英霊王目掛けて襲い掛かる。

 

インビンシブルパワー。フィオナの森の加護を授けられた存在だけが受けられる無力な者が超常と対等の戦いが出来る程の力を与えられる時間。

だが、それを持ってしても大勇者達では英霊王に敵わない。そんな彼等の後を引き継ぐように無頼勇気ゴンタ率いるフィオナの森の加護を受けし自然のマナを持つレインボー獣達が一斉に襲い掛かる。

英霊王とレインボー獣。色の土俵は同じ、ならば後は実力を増やしてしまえば負ける事は無い。無頼勇気達と精霊王の戦い、それは熾烈を極めた。血で血を洗う闘争。倒れ行く無頼勇気達、そして遂に傷を負い苦しみ始める英霊王。

この機を逃してはならないと闇文明は発動すれば自身すら巻き込み周り全てを滅ぼす超兵器インビンシブルアビスを起動させる。傷を負った英霊王にそれは直撃し英霊王は大ダメージを負う。しかし英霊王はそれでも倒れない。自分に傷を付けた愚か者、闇文明に狙いを付け一瞬にして殲滅する。数少ない精鋭だけが残るも全て息も絶え絶え。何時死ぬのか可笑しくない状況、英霊王は闇の軍勢を捨て置き未だ余力の残っている火文明に狙いを付けた。

 

ボルメテウスホワイトドラゴンとボルシャックドラゴンを中心としたアーマードドラゴンの軍団にクリムゾンワイバーンやガトリングガンドラゴンを中心としたワイバーンの軍団。

襲撃者エグゼドライブ……いや水文明との戦いの中で進化した甲冑神龍エグゼキューター引きうるドラゴノイド部隊が

そして一撃勇者ホノオ、小さな勇者ゲット率いるヒューマノイド残党兵。

 

火文明対英霊王。それは英霊王の圧倒的な蹂躙だった。アーマードラゴン達が一瞬にして殺されワイバーン達も同じく死に、ドラゴノイドは仲間の死んでいく姿にエグゼキューターが怒り聖剣炎獣バーレスクへと進化し戦いを挑むも、英霊王の圧倒的な力の前に重傷を負い戦えない身体になってしまう。

圧倒的、残る実力者はホノオとゲットとなり2人はいたぶられるように蹂躙され、それでも立ち上がれば立ち上がる程英霊王に攻撃を受ける。死なない範囲で遊ばれるように

先に倒れたのはホノオだった。ゲットはフィオナの森の加護を受けているからインビンシブルパワーの恩恵に授かり戦う事が出来た。だが、それでも圧倒的な壁が、英霊王とゲットの前には立ちふがっている。

単色と2色、レインボー獣か否かという大き過ぎる壁だ。最後の一人になっても戦い続けるゲット。一騎当千の戦いぶり、正しく火文明の頭領。だが、そんなゲットに遂に限界が訪れる。

それを逃さぬ英霊王ではない。熾烈を極めた戦いで力が殆ど残っていない拳でゲットの命を刈り取らんと襲い掛かる。

その時ゲットの脳裏に大切な家族。姉であるジャスミンの事を思い浮かべる

 

約束破った。悪いジャスミン

 

そう思いながら襲い掛かる拳を見詰めていたその時、眼前に自分を守る存在が現れた。それは紛れもなく自分の母親。家でジャスミンと共に帰りを待ってくれている筈の自分の母、母親はゲットを庇うと英霊王の拳を受けて絶命する。

即死、その姿を見たゲットは茫然自失となる。だが英霊王はその母親を見ると汚れたように手を振り払い嘲笑する

 

「愚かな者だ。実力の比較すら出来んとは」

 

その言葉を聞いた瞬間、ゲットの中で何かが外れた。沸き上がる激情、殺意のままに動けない身体を動かし襲い掛かる。獣のような戦い方、本能のままに眼前の敵を殺さんと戦う。だが、その戦い方は英霊王に通用しなかった。即座に反撃を喰らい倒れふすゲット。

命は最早風前の灯、諦めていた。生きる事を放棄していた。そんなゲットの前に1人の少女が盾となるべく英霊王の前に立ち塞がる。霞妖精ジャスミンがこの戦場に来てしまったのだ。ゲットは吼える今すぐ逃げろと。だが、ジャスミンは1歩も動かない、ただ眼前の英霊王を睨み付けているのだ。圧倒的な存在を前にして恐れること無くただ前を向く。

死ぬ前に会えた事の喜びと何故この場に来たのかという怒りに苛まれているとジャスミンが自分の身体にあるマナ全てをゲットへ譲渡しようとしているのが分かった。

英霊王はジャスミンに問う

 

小娘。死にに来たのか

 

妖精は笑う

 

弟を助けに来ましたと

 

その言葉を聞いて英霊王は沈黙する。少女の行動を容認したのだ。下手をすれば逆転される可能性がある行動。それを良しとした。少女の強い意志の強さが英霊王の心を動かしたのだ。

 

ごめんなさいゲット……お姉ちゃんが約束破っちゃうね

 

霞妖精ジャスミン、マナに最も近いスノーフェアリーだからこそ出来る技。

自らの命を捧げ自分の全てのマナを譲渡する力。

止めてくれ、やるな、やらないで。ゲットの懇願の声

その声にジャスミンは優しく微笑むと

 

──私は貴方の中で生き続けるから。

妖精の命(フェアリーライフ)

 

それが発動した。

悲しみと自分への不甲斐なさでゲットは咆哮する。愛する者を失った悲しみと疲労感が失せて全能感が溢れてくる肉体、一番大切な者を失った。ジャスミンによって自分の身体に自然のマナが溢れているのが分かった。

ジャスミンの献身がゲットを英霊王と戦える領域、レインボー獣へと進化させたのだ。

怒りのままに攻撃するゲット、英霊王も必死にそれに応戦するが同じ領域に立ちインビンシブルパワーの加護を受けたゲットに敵う者などもうこの戦場にいない。怒りのままに放った拳が英霊王を打ち砕く。断末魔の叫びすら出せなかった英霊王はマナへと霧散して消えていく。

その瞬間、仙界へと莫大な量のマナが流れた。今までの戦いでも沢山のマナが仙界へと流れて行った。故にこれは当然の結論だったのかもしれない。仙界より残り4体の王が復活しゲットの元へと向かう。

同じ王を倒した存在。それを感じ取った4体の王がそう行動するのは自然である。

だが、ゲットと相対した瞬間四体の内三体の王は一瞬にして討ち滅ぼされる。残った王、暗黒王デスフェニックスはゲットの力に驚愕し撤退する事を決意するも、ゲットの手元にあったバジュラより授かった宝玉が光り輝き1本の鎖へと変化する。その鎖はデスフェニックスを縛り上げるとそのままちぎり捨てた。

 

全ての王は倒れ四文明は勝利した。だが、その代償は多すぎる。あらゆる文明の強者達の殆どが死に絶えたのだ。これからの時代、文明同士で戦いをする事など出来ないだろう。

 

そして……戦争が終わった今、ゲットを見る者はいない。

 

 

 

「……誰か倒れてる?……大変です!ケイ兄さーん!怪我人が!私と同じくらいの男の子が!」

 


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