転生者ゲット君の日記 ブリテンぐらし!
──1人の男がいた。その男の本質は凡百の性質であり凡そ勇者と呼ばれる者達のような性質を持っている訳ではなかった。故に男は勇者のように他者の為に戦う事はせず唯己の為だけに戦った。始まりは無理矢理だったとしても最後は己の意思を持って戦ったのだ。
──それは大切な家族の為に
──大切な少女の為に
男の名は小さな勇者ゲット。超獣世界と呼ばれる世界で戦い続け、太古の昔。ありとあらゆるモンスター達を支配した超常の存在、王と呼ばれた五体のモンスターを討ち滅ぼした勇者である。
彼の偉業は遥か先の未来まで語り継がれるだろう。小さな幼子がその名の通り世界の未来を掴み取ったのだから。
モンスター達は待ち続ける。彼がいなくなった今、再び彼がこの世界に現れる事を、そして彼があの戦いで生き残っている事を
──少女の話をするとしよう。
見目麗しく、純粋。まるで白百合のような少女。そんな少女にはこれより逃れられる事が出来ない鮮烈で苛烈すぎる運命が待ち構えている。キングメーカーと謳われし1人の魔術師によって少女は一国を統べる王となる。少女という己を捨て王という名の人民を支配する統制機構に。名を捨て、女である事を捨て、国の為に全てを捧げる苛烈な運命が。
──その剣を抜けば運命は定まる。逃れられない破滅の運命へと。
──あの時、逃げる事を選択出来れば運命は変わっていたのだろうか。最愛の者の命を奪わずには済んだのではないのだろうか
これは運命を壊し先へ先へと進んでいく物語。小さな勇者は白百合の少女の運命を見てどう進むのか。全ては己の心が思うがままに
──夢を見ている。どうしようもない程優しくて、残酷な夢を。今はもう逢えない大切な人達との記憶。絶対に忘れられないあの最後。
──彼等の背中が見える。彼等はこちらをチラリと見るも直ぐに前を向き楽しそうに談笑しながら先へ先へと進んでいく。
俺はその背中を追う。だが、幾ら走ろうともその背中に追いつく事はない。そしてその背中が見えなくなり世界が暗黒に包まれる。俺はただ蹲る事しか出来ない、震えを誤魔化しきれず嗚咽しながら
ただ泣くだけしか出来ない
「待ってくれ……待ってくれよ……なんで俺を置いていくんだ」
そんな俺の身体を鮮烈で全てを焼き尽くす赤色の炎と優しく暖かな緑色の炎が俺を包み込む。その炎に包まれて俺は
「……うぁ……あ?」
目を覚ました。目に入る風景は知らない天井、そして誰のものか分からないベッド。
「知らない天井だ」
いや本当に何処だよここ
/\月^^日
どうやら俺はまた違う世界に来てしまったようだ。まぁそれはどうでも良いとして、今日は色々あったので取り敢えず現状確認の為に日記を付けようと思う。
まぁ付けるのは脳内にだけどな!エア日記である。
先ず第一に。ここは超獣世界ではない。仙界王共との戦いが終わってからの記憶がない俺は目が覚めると良く分からん所で寝かされていた。そして俺を寝かしていた者の話を聞いてみると、どうやら俺は血塗れで森の中で倒れていたと言う事らしい。そしてその者……面倒臭いから名前を書こう。その者……ケイは血塗れで倒れている俺を自宅へ連れていき応急処置をした後ベッドで寝かしていたらしい。見ず知らずの人を助けるあまりの聖人っぷりに泣いてしまった俺はきっと悪くないと思う。
目覚めた後、ケイと色々な話をした。
Q.お前は何処から来た?
A.ヒューマノイドの里です
Q2.それは一体何処だ?
A.火文明にある小さな集落です
Q3.お前は一体何を言っているんだ?
A.逆に何故分からないのか
ケイの質問に答えれば答えるほどお互いに混乱し、取り敢えず俺が逆に質問をする。すると俺はこの現状を完全に理解が出来た。いや出来てしまった
Q.ここは何処?
A.ブリテンにある小さな村だ
ブリテンってお前……地球じゃねーか
暫く話をした後、俺は記憶が混乱していると判断されたのかケイからまた寝ていろと言われる。しまった、キチガイ扱いされてる。
第二にここが転生する前の俺が生きていた時代じゃないという事だ。俺が生きていた時代はパソコンだのスマホだのなんだのがあったから自給自足してそうな雰囲気全開のこことは確実に時代が数百年は違う。元現代人、現ヒューマノイドの俺がこの時代についていけるのか少し不安になった。
これが最後なのだが食事が異常に不味い。目覚めてケイからスープを貰ったのだが味付けが酷くとても食えたもんじゃない。ヒューマノイドの俺にここまで言わせる料理とは一体何なのか
未来のメシマズ国家は格が違ったと言うべきなのか。俺はただ震え、必ず彼にマトモな調理方法を教えることを決意した
PS.ケイには妹がいて名前はアルトリアというらしい。俺と同じくらいの年齢と聞いたがどんな娘なのだろうか気になる
ついでに森で俺を見付けたのも彼女らしい。俺の中でアルトリアちゃんへの感謝メーターが鰻登りである。ありがとうアルトリアちゃん
/\月☆日
うゎアルトリアちゃんかわぃい。なにあの子天使の生まれ変わりかなにか?美少女で性格も良いとか完璧かよ。時代が時代なら大人気アイドル不可避だよ。おい誰かPさん呼んでこいPさん。
トップアイドルアルトリアちゃんは血塗れの俺を心底心配していたらしく。ベッドで普通に寝ていた俺を見るや否や心底嬉しそうに笑い。俺は大天使の笑みに感動した。
そんな大天使アルトリアちゃんと話をしているとケイが部屋に入ってきて昨日の話の続きをした。そしてまたケイは困惑していた。
Q.お前の名前は?
A.小さな勇者ゲット
Q2.お前が全身に付けていたアレは何だ?
A.火文明の兵器の一つでありヒューマノイド専用の武装。名前は機神装甲、ヒューマノイド以外が付けようとしたら大変な事になるから気を付けて欲しい
Q3.お前は倒れているまで何をしていた
A.ちょっと世界救ってた。
そんな話をした後、俺はケイから頭の心配をされ、アルトリアは俺の話を興味津々にしていた。やだ、この娘天使過ぎない?エンジェルコマンド(笑)はこの娘を見習って?
/\月><日
ケイからそろそろ動いても良いと言われたので何か手伝える事はないのかと聞いてみる。するとケイは俺に斧を渡すと
それなら薪を作っておいてくれ
と言い残し何処へ消えていった。四大文明連合軍火文明代表である俺を薪割りに使うとはコヤツやりおる。ならば俺の薪割りスキルをとくと見るが良いっ!
あっ力入れ過ぎて斧が割れた。
その後帰ってきたケイに謝り倒し許して貰った。なんかケイの頬がひくついていた、正直すまんかった
因みに薪は取り敢えず素手で割りました。それを聞いたケイがドン引きしてた。理由は分からん事もない
/\月§§日
ケイの飯が不味い。しかし、身寄りがなく家に置いてもらっている状態ではそんなワガママは言えない。取り敢えずこの家の食事事情をどうにかしてやろうと考え、一つの案を思いついた。
家事の手伝いとして俺が料理を作れば良いじゃない。
そう思いついた瞬間、ケイに恩返しとして俺が料理を作ると言うと暫く逡巡した後それを許してくれた。サンキューケイ
アルトリアちゃんも俺の料理を楽しみにしてくれると言ってくれた。やはりこの娘は大天使か
そんな大天使の期待に答えるべく今ある材料で適当な料理を作ると二人して驚いたような顔をして俺を見てきた。良いぞドンドン見るが良い、ケイが俺にレシピを聞き大天使は俺を見た後無心で料理を食べ始める。
ケイにレシピを教え、俺も食事をとる。調味料とか殆ど適当な匙加減な男料理だが何とかなって安心しその日はマトモな食事にありつけた。やったぜ
アルトリアちゃんがお代わりを永遠と要求し、そんな姿を初めて見たらしいケイが俺に嫉妬の視線を向けてきた。いや、お前さんの料理に問題があったんだからな?
これは余談だが、ブリテンの近くには蛮族と呼ばれる人種が居てブリテンを侵略しようと良く村を襲ったりしてるらしい。マジかよ蛮族、この村に来たら機神装甲でボコるわ
──本来ならば何時も通り蹂躙する筈だった。自分達に手も足もでない村人を殺し犯し壊す、気に入った女は連れて帰り男は皆殺しにする。今日もそうする予定だった。
その筈だった。
「ヒィッ!何だよ何なんだよあの化け物は!」
「騒ぐな!アレに場所が割れる。騒がず急いで逃げるんだ!」
「畜生!畜生っ!」
恐怖しただ訳も分からず逃げる。逃げなければアレに殺される。実際に俺達数人を残しその他全ての仲間は殺された。
逃げるしかない。逃げなければ死ぬ、追いつかれたら殺される。それだけが頭の中で一杯で他の事なんて考える事も出来ない
……おーい!何処にいるー?逃げずに戦えー!そんな姿を見せて恥ずかしくないのか?俺みたいな子どもから必死に逃げて恥ずかしくないの?
馬鹿なの?死ぬの?一族郎党まとめて殺されたいの?
「ああああああ!アイツの声が!アイツの声が聞こえたぞ!?」
「もう駄目だ!誰が助けてくれーッ!」
「大きい声を出すなって言ってんだろうが!」
隣で発狂する仲間達に声を掛けるも何の意味もなさない。それを見た瞬間、俺は仲間を切り捨てて1人で逃げる事を決意する。このままコイツらといたら絶対にアイツに追い付かれて殺される。間違いなく。
「(俺は生き延びてやる……絶対にだ!)」
その直後、後ろから聞こえてくる仲間達の絶叫に耳を塞ぎ逃げる。俺は絶対に生きて帰ると。そして2度とこの国に攻め込む事をせず、兵士を止めて余生を過ごす事を心に誓い。
……どれだけ走っただろうか。自分の足音と心臓の鼓動。そして自分の呼吸音しか聞こえない中でただただ走り続けている。森を抜ければ良い。森さえ抜ければ流石のアイツも追い掛けて来ない筈だ。
そんな事を考えていたら目の前が開けていき木の一つもない平原が視界に入る
助かった!俺は助かったんだ!生き残ったんだ!
縺れるように森を出てそのまま転がるように倒れる。生き残った……助かったんだ。
「帰ろう……我が家に。もうこんな国に攻め込むなんて真似はせずに……そうだ。畑でも耕して一生を終えるのも結構良いじゃないか、畑を耕し続けて死んだ親父の真似をして畑に縛られて死ぬのは嫌だったけど、それはそれで良いんじゃあないか」
「生きてるだけで幸せなんだ。そうだ!生きてるだけで良いんだ!」
刹那の享楽に生きてるのは今日で終わり、これからの俺は真っ当に
「全くだ。俺も心底思う。だから次はお前が奪われる番だな」
えっ……?
/\月。ゝ日
今日は森の中で猪を狩りを行っていると、蛮族と思われる奴等が村に攻め込もうとしていたので離れの森の中で殲滅しておいた。ケイの奴が蛮族は生命力がめっちゃある化け物みたいな扱いしてたけど普通にただの人間だった。蛮族を殲滅した後は家の手伝いをして終わった。
今日もまたアルトリアがお代わりを要求してきてケイが嫉妬に満ちた目で俺を睨んできたがそれはスルー
料理が上手にならないケイさんサイドに問題があると思うの