「デス」「DEATH」「「デース(DEEAATH)!」」   作:こそ泥

10 / 10
思ったんだ。2話がかけないなら1話を書けば良いじゃないって

その結果、今回は本気で展開が早くなってしまった・・・


2飛んで1

--ゴゴォン

 

チフォージュ・シャトーのコントロールルーム。主が外に出、その従者たるオートスコアラーのいない城の扉がうっすらと開く

 

「・・・今のうちに!」

「急いで」

「フン!言われなくても!」

 

その隙間から顔を出したのは切歌。そこに続き調、ウェル、マリアの順で室内へと侵入する

 

「ボクがネフィリムで機能を止めるまで!囮としてボクに被害が無いよう無様に動けよぉ!?」

「そっちこそ!コレで止められないとか言うんじゃないデスよ!」

 

悪態をつきあうとウェルは中央にある制御装置へ、切歌達はウェルを囲むように周囲を警戒する

静まりかえる室内。ウェルの操作音だけが響く

そんな中、正面を警戒していたからこそマリアが最初に気づいた

 

「・・・来るっ!」

 

ドオオォォォン

 

大きな轟音と共に扉がくの字に曲がり室内へ倒れ込む。巻き起こる土煙の中に見えた影は二つ

 

「・・・早苗」

「・・・・・・」

 

「・・・マム」

「・・・また戻ってきたのですか」

 

生者である凸守は口を開かず、死者であるマムが口を開く。その声を聞くだけで溢れる懐かしさを押し殺してでもマリアは宣言する

 

「マム。私たちはキャロルを止める。そのために、ここにいるっ!」

「ならば見せてみなさい。あなたの輝きを」

「早苗には今まで色々と助けてもらったデス」

「だから、今度は私たちが!」

「・・・・・・」

 

全員がその手の武器を構え戦闘態勢に入る

 

互いの呼吸音すら聞こえるほどに張り詰めた空気の中、ウェルの動作音が響く

 

「・・・・・・」

「させないっ!」

 

ならばこそ、ウェルへと向けて突撃する凸守。彼女を止めるために調がシュルシャガナを振るい動きを止める

 

「デースッ!」

「・・・・・・」

「ツッ!?」

 

横薙ぎに振るわれた円鋸を柄で受け止める凸守。そんな彼女を挟み込むように切歌が鎌を振るう

しかし、凸守は鎚から電気を流し調の手を緩めるとそのまま切歌の攻撃を避けながら離脱

切歌の方も電流を流し跳躍の姿勢に入られた瞬間に攻撃を緩め調との衝突を回避する

 

「それならっ!」

「コンビネーションデスッ!」

「・・・・・・」

「なんとっ!?」

 

調が丸鋸を放ちその影に隠れ切歌が迫る。それを受けた凸守は回避・・・ではなくその群れに突撃する

回避すると予想した切歌の鎌は未だ振りかぶられておらず逆に凸守の鎚は振るわれる寸前

 

「それを待っていた!!」

「・・・・・・!」

「デエェス!!」

 

背後の調から大量の丸鋸が迫る。切歌の肌を掠めるような挙動。そのうちの一つが切歌の鎌に当たりその衝撃で無拍子で鎌が振るわれる

大切なのは威力ではなく、凸守の頭に取り付けられた装置を壊すこと。そのために威力を犠牲に速さだけを得た一撃

 

「・・・・・・」

「これも避けるデスか!?」

「さすがは早苗・・・」

 

そんな攻撃も通らない。辛うじてギリギリのところで凸守が首を後ろに逸らし回避する

 

背後へと移動し武器を構え直す凸守と合流し凸守を見据える切歌と調。状況は振り出しへと戻った

 

「フフッ」

 

漏れ出る笑い。それは切歌か、調か。あるいは

 

「楽しいね、キリちゃん!」

「楽しいデスね、調!」

 

二人は笑う。命のやりとりをしているのはわかっているし、時間が無いことも理解している

それでも、溢れる楽しさを抑えることが出来ない

 

「今度は、コッチの番デス!」

「私たちの力、見せてあげる!」

「・・・・・・」

 

二人がそれぞれの胸元へと手を伸ばす。その手に握られているのはシンフォギアのコアであり、それをとるのは

 

「イグナイトモジュールッ!」

「抜剣デス!」

 

カチカチッと音を立ててイグナイトシステムを起動する。過去に自分たちが敗れた力。そして新しく得た力

黒く染まったそのギアは鋭利な輝きと力強い鼓動を伝える

 

「行くデス!」

「行くよ!」

「・・・・・・」

 

二人が最高速度で踏み込む。踏み込みで床は砕け砕けた破片が地に着くよりも速く凸守の元へ辿り着く

 

「・・・・・・」

「「ハアアッ!!」」

 

示し合わせたような横降りの一撃。高さも速さもタイミングも全てが同じで振るわれた双刃

 

「・・・・・・!」

「「キャアッ!?」」

 

防御も回避も不可能と悟った凸守が選んだのは迎撃。その身からあふれ出る電撃が迫る二人へと伸びる

勿論、凸守もその勢いで放出した電撃にシンフォギア越しとは言え無傷ではすまず軽い傷をつける。それでも振るわれた刃を受けるより軽い傷なのは道理

 

何度繰り返しても変わらない。二人のコンビネーションに対して凸守は最適解を出す。回避・迎撃・防御。どの選択をどこで取ればいいか知っているかのよう

 

「・・・・・・」

 

ほぼ無傷でイグナイト二人がかりに抗う凸守。その実力の高さに二人は

 

「・・・ハハッ!」

「さすがは早苗デスッ!」

 

笑った。楽しそうに。遊んでいるかのように

 

「「早苗っ!」」

「・・・・・・」

「・・・わかってるデスよ。早苗、本当は気づいてるデスよね?」

「・・・・・・」

「どのコンビネーションも私たちが早苗と一緒に考えたもの」

「反応が早いし的確すぎデス!」

 

「・・・・・・バレてるDEATHか」

 

スッ、と手を伸ばしバイザーを取る。その眼には意思が宿り口元はいつものように弧を描いている

 

「早苗、お願いデス。キャロルを止めるために力を貸して欲しいデス!」

「この機会を止めればキャロルの目的も潰える。そうすれば!」

「ダメDEATHよ。そんなこと」

 

切歌と調が必死に訴えるも凸守は首を横に軽く振る。その様子は無理矢理ではなく、自らの意思で決めたと伝えている

 

「なんで!」

「・・・キャロル、マスターの力は強大DEATH。無謀な戦いで二人には傷ついて欲しくないDEATH」

「だけど!」

「わかってるDEATHよ、そんなこと。このままだとマスターは世界を分解するDEATH。でも、凸守はマスターに一度は誓いを立てた身DEATH。なら、こういうのも良いかなって」

「・・・早苗、なにがあったの?」

「・・・マスターを悲しませたくないんDEATH。大切なパパに先立たれて、自分のみを犠牲にまでパパとの思い出に縋るマスターに、寄り添う人が居るよって。教えてあげたいんDEATH」

「・・・・・・」

 

「・・・どうやら、もうすぐ終わりそうDEATHね」

 

それは誰を見た言葉だろうか。光り輝く装置を前にしたウェルか、イグナイトを纏い過去のガングニールを纏っていた頃の自分を圧倒しているマリアか、それとも装置の映像に浮かぶキャロルか

軽く目を閉じたあと凸守は二人を睨む

 

「・・・次の一撃でケリをつけるDEATH。・・・本気で来るDEATH」

「早苗・・・。わかったデス」

「キリちゃん!?」

「大丈夫デスよ。早苗なら」

「そんな、キリちゃん!?ダメだよ!?」

 

調の制止もむなしく切歌が一人前に出る

 

凸守と向かい合い互いのエモノ(武器)を構える

 

「・・・行くDEATH!」

「っ!」

 

互いに走り寄る。ひとっ飛びに肉薄した二人が構えるのは、拳

 

「ハアアアアアアァァッ!!」

「DEEEEEEEEEEAAAAAAAATH!!」

 

互いの頬にめり込む拳。シィン、と一瞬の静寂のすえ、敗者が崩れ落ちる

 

「・・・私の、勝ちデス!」

「ハア、ハア、ハア」

「キリちゃん!さなえ!」

 

調が駆け寄る。拳を天に掲げる切歌と崩れ落ちたまま寝転がる凸守

 

二人に駆け寄った調は・・・

 

「ふん!」

「デース!?」「DEATH!?」

「二人とも!心配させないでよ!」

 

調の頭の後ろについた丸鋸が刃のついてない面で二人の頭を叩く。その衝撃でフラフラながらも立っていた切歌は倒れ凸守は・・・

 

「・・・・・・」

「・・・ちょ!?調!やり過ぎデス!」

「えっ!?あっ!ご、ゴメン!!」

 

ピクピクと潰れた蛙のような無様な姿を見せていた

 

凸守を介抱する二人。凸守は既に動く気力も残っておらずグデッと切歌の膝を枕にしている

 

「・・・二人とも」

「?」

「どうしたの、早苗?」

「・・・ゴメンDEATH」

 

しおらしい言葉に思わず顔を見合わせる。そして

 

「別にいいんデスよ」

「そうだよ。喧嘩して、謝って、仲直り。いつも通りだよ」

「・・・ゴメン、DEATH」

 

笑い合う二人。その姿を見て凸守もニヘラ、と笑う

 

仲良く大団円。だけど、それで終わるほど世の中は甘くない

 

ピカアアァァァァ、と辺りが明るくなる。それは仲直りしたことを祝福する光などではない

 

『やめろ、やめろおぉぉぉぉ!!!』

 

宙に浮いた画面からキャロルの必死な声が聞こえてくる。その切羽詰まった声も、光り輝き軋みを上げる床も、全てがチフォージュ・シャトーの崩壊を物語る

 

「・・・さて、のんびりしてる暇はなさそうデスね」

「どうしよっか」

「・・・任せるDEATH。凸守に考えがあるDEATH」

 

フラフラと立ち上がる凸守。その足はしっかりしているとは言いがたいが確実に地に立っている

 

「切歌はあのゴキブリを抱えて、マリアは切歌の補助、調はギアで落下の速度を落として欲しいDEATH」

「・・・早苗は?」

「私は、私に出来ることをするDEATH」

 

崩壊の足音が近づいてくる。段々と足場が不安定になり始め振動が止まらない

 

「凸守が道を作るDEATH。凸守のミョルニルならこの程度の壁ぶち破れるDEATH」

「・・・わかった。それでいこう」

「今度こそ皆でおうちに帰るデス!」

「お前!英雄たるこのボクをゴキブリと呼んだのかぁ!?」

「時間が無い!速く行動するぞ!」

 

全員が迅速に行動する。未だに文句を垂れるウェルを切歌が背負い、調が切歌のすぐ後ろにつき、マリアが二人の側へ寄る。その様子を見た凸守は鎚を構え壁を見据える

 

「行くDEATH!」

 

轟っ!と凸守から力が溢れあふれ出たフォニックゲインが光って見える。パチパチと音を立ててミョルニルが雷を纏う

 

「ハアアアアアァァァァァァ!!!」

 

ドンッ!と踏み込んだ音と共に凸守の姿が掻き消え前方の壁に大きなへこみが出来る

 

「まだまだ、DEEEAAATH!!」

 

ゴガガガガガガ、と連打の音が響く。数度のレンゲ機が入るとボコン!という音と共に壁が崩れる

 

「もういっちょおぉぉぉぉ!!」

 

新しく現れる壁も砕き進む5人。揺れが酷くなり立っているのもやっとというような状況だ

 

「やったDEATH!」

「みんな!」

 

遂に穴が開いた先に空が見える。急ぎマリアが、調が、穴から出る。凸守も続こうとし、

 

「ウワアッ!?」

「グエッ!?」

 

一瞬、揺れが大きくなった。悪かったのはそのタイミング。駆ける切歌が踏み出そうとした瞬間に起こった揺れにバランスを崩した切歌の背中からウェルが滑り落ちる

 

「切歌は先に行くDEATH!」

「早苗!?」

 

その様子をみた凸守は一目散にウェルの元へ走る

 

ウェルを抱え、走り出そうとして、

 

チュンッ!

 

斜め下から伸びたレーザーがチフォージュ・シャトーを貫く。振動で穴から投げ出された切歌の眼に映るのは

 

「ヒアアアアァァァァッ!?」

 

宙に投げ飛ばされたウェル博士一人

 

凸守には見えた。ウェルを抱え上げ、走り出そうとし、なにかに気がついた凸守がウェルをそのまま穴の外へと放り投げたのを

 

「早苗ええぇぇえぇぇぇぇえぇぇ!!!」

 

凸守が、レーザーに飲み込まれていったのを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、どこだろう

 

暗い暗い黒の中で目を覚ます

 

(眠い・・・)

 

とても眠い。今すぐに横になりたい。目を閉じたい

 

いや、既に目を閉じてるのかもしれない。寝ているのかもしれない

 

なにせ、なにも見えないのだから。何も聞こえないのだから

 

だけど

 

寝てはいけない気がする

 

合わなければいけない人がいる気がする

 

(誰に・・・?)

 

顔は浮かばない。声も思い出せない。名前も出てこない

 

それでも、叫びに含まれた慟哭を覚えている。悲しくて流す涙の熱さを覚えている

 

だから、眠れない。眠っている場合じゃない

 

(どうすれば・・・?)

 

こっちデス!

こっちだよ!

 

声がする。手を伸ばす姿を幻視し、一歩踏み出そうとして、躊躇う

 

自分はとてもヒドいことをした気がする。今更、合わせる顔が無いような気がする

 

だから、踏み出しかけた足を元に戻そうとして

 

大丈夫だよ

 

トン、と後ろから背を押された

 

視界がどんどんと明るくなっていく中、久しぶりと思える顔を見た

 

橙の髪に似合う太陽のような笑顔

 

きっと、大丈夫。勇気を出して

 

懐かしい顔はそう言うと白い光に溶けていった

 

 

・・・・・・

 

・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒壊したビル。窓ガラスは全て割れ、外壁のアチコチには罅が走っている

穴が開き、ひび割れた道路。停まっていた車は根こそぎ吹き飛びスクラップになっている

空は黒く濁り、暗雲が立ちこめる

 

つい数時間前まで人で賑わっていたと思えないほどの荒廃した東京。その崩壊した世界で戦う少女達が居た

 

「やるぞっ!」

「「「「ハアアアアアァァァ!!」」」」

 

五人の少女が自らを守るためのアーマーを吹き飛ばし全ての力を攻撃力に換えてぶつける。文字通り力を振り絞った攻撃が碧の獅子に突き刺さる

 

しかし、

 

「アームドギアが一振り足りなかったな」

 

煙の中から上がる声。見てみると外部の装甲も全て吹き飛び、その中身をさらしてはいるものの全くの無傷。装甲はその勤めを完璧にこなし中へのダメージを防ぎきった

 

「っ!?」

 

一振り足りなかったと言い切り、勝利を確信したキャロル。だが、キャロルが見たのは天に立つ響と響に集う奏者達の力

奇跡を纏い、力と変える少女達の最期の力

 

「奇跡は殺すっ!皆殺すっ!オレは、奇跡の殺戮者にっ!!」

「皆っ!?」

 

碧の獅子が吠える。その方向は光となって響を襲い、キャロルが下に居る奏者達に向けて錬金術による炎を放つ

 

「クッ!?」

 

響が手を伸ばすが届かない。皆は装甲すらも力と変えたため防御能力は普段に比べ格段に落ちる。今、キャロルの一撃を食らったら耐えられない

 

「ッ!!」

 

翼やクリスが衝撃に備え目を瞑る。目の前に迫った炎に対して当然の行動。だが、それをしていない者がいる

 

「・・・信じてるデス」

「うん。きっと・・・」

 

切歌が、調が。二人は知っている。自分たちにとって、頼りになる彼女はこんな時にやってくるのだと

 

「まったく、身を守る力すら残さないなんてどうかしてるDEATH」

 

 

 

そう、今のように

 

 

「凸守っ!?」

「生きてやがったのか!」

「ヒドい言いぐさDEATHねぇ。凸守はこの通り、元気潑剌DEATH!」

 

翼が、クリスが目をむいて驚く。マリア達の話を聞いた限りでは生存は難しいと思っていたから

 

「ワタシは信じてたデスよ」

「うん。きっと、助けてくれるって」

「・・・お前らはもう少し恥じらいって者を持った方がいいDEATH」

 

面と向かって言い切られ、凸守の顔が羞恥で赤く染まる

そんな彼女を見て別の理由、怒りで顔を赤く染める者がいる

 

「凸守っ!お前またしてもっ!!」

「・・・マスター」

「なぜだっ!?何故お前はいつもオレの邪魔をする!?・・・なんでどいつもこいつもパパの命題を解く邪魔をするっ!!」

 

血涙を流しキャロルは訴える。それは子供のような叫び

だが、事実彼女は子供なのだろう。なまじ頭が良かった故にゆがみ、それでもどうにかする能力があった子供

 

「マスターも、わかってるんじゃないDEATHか?」

「・・・・・・は?」

「マスターのパパはそんなことを望む人だったんDEATHか?」

「パパは・・・、オレにっ!」

「疫病から村を救った偉大な人。自分が疫病に罹る可能性があっても、その身で乗り込むような人が、そんなこと望むんDEATHか?」

「お前っ!聞いて・・・」

 

遠くまで聞こえてきたDEATHよ、マスターの想い。そう呟くと凸守は真っ直ぐにキャロルを見る

 

「マスター。凸守はマスターを止めるDEATH。・・・それをきっとマスターのパパも望んでるDEATH」

「・・・っ!ふざけるなっ!!パパの意思はもうわからない!パパはもういない!!だから、だから命題を解くことこそオレがパパに出来る唯一の・・・!」

「・・・あとに退けないんDEATHね。なら、力尽くで止めるDEATH!」

「早苗ちゃんっ!」

 

キュイイィィィンン

 

碧の獅子の口にエネルギーが溜まる。その大きさは先程の比ではなく、二回りほど大きい

 

それを見た響が手を伸ばす。凸守はその手をしっかりと掴むと共に空へと上がる

 

「・・・お願いDEATH」

「えっ?」

「虫が良いのはわかってるDEATH。お前にたくさんヒドいことも言ったDEATH。だけど、今だけ力を貸して欲しいDEATH」

「・・・・・・」

「お願いDEATHっ!」

 

いきなり頭を下げられ困惑する響。少しして思い出す。確かに、凸守と喧嘩したままわかれてしまったと。心配が先に立ちそんなことはすっかり頭から離れていた

 

だから

 

「アハッ!大丈夫!!全然気にしてないっ!」

 

笑った。安心させるように、問題ないと伝えるために。満面の笑みで太陽のように笑う響

 

「・・・・・・」

「おりょ?大丈夫?」

「・・・!な、なんでもないDEATH!」

「え?でも・・・」

「何でも無いDEATH!・・・来るDEATHよ!」

(ホントに、ココの人たちは調子狂うDEATH・・・)

 

向こうのチャージも限界。コチラも、今のやりとりの間に蓄えられた力が臨界点を超える直前まで溜まっている

 

「行くよっ!!」

「止めるDEATHっ!!」

「全部燃やして力と変われっ!!」

 

ゴウッ

 

言葉にするならばそんな音だろう。一瞬のうちに放たれた臨海を越える力同士のぶつかりはシンフォギアを纏っている地上の奏者達すら数メートル引きずるほどの衝撃

 

「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

「デエエエエエエエエエェェェェェェェェェェスッッ!!」

「はあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

少女達のぶつかり合いは果たしてキャロルに軍配が上がる

 

だが、キャロルが戦っているのは響と凸守だけではない

 

「二人に力をっ!アメノハバキリ!!」

「イチイバル!!」

「シュルシャガナ!!」

「イガリマ!!」

「アガートラーム!!」

 

背を押され、拮抗を巻き返す。キャロルの側にあった軍配を奪い取る

 

「ガングニーーールッ!!!」

「ミョルニーーールッ!!!」

 

響のガングニールを元とし、拳の形状になったアームドギア。そこに凸守のミョルニルの力が加わり拳が更に大きく、硬くなる

 

ドッ!

 

ついにその拳が獅子に突き刺さる

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

世界の分解に失敗し、奥の手も破られたキャロル。その頬には涙が伝う

それは世界を分解できなかった悔しさによるものか、分解せずにすんだ安堵によるものか

 

 

そんな涙も背後からの爆発で吹き飛ばされる

 

「キャロルちゃん!」

「マスターッ!!」

 

獅子の身体は既に限界を超えていた。ため込んでいたエネルギーは無理矢理押さえ込まれ

獅子の身体の内部に残された。そのエネルギーが行き場を求め暴走する

その爆風に押されたキャロルの身体はかなりの速度で地へ向かう。その速度はシンフォギアの全速でも届かないほどに

 

「手を取るんだっ!」

「手を伸ばすDEATH!」

 

「・・・ハッ!」

 

手を伸ばせば確実に助かるだろう。この高度、さらにその後の爆発に対してエネルギーが霧散し自分臣を守るものが何も無い今、耐えるにはどちらかの手を取るしか無い

 

「お前らの歌で救えるものかっ!誰も救えるものかよぉっ!!」

 

だからコレは負け惜しみ。最期の悪あがき。目の前で自分の命を散らせば目の前の二人に傷を残すことぐらい出来るだろうという考え

 

だが、目の前の二人はその程度で諦めるほど諦めが良くは無い

 

「それでも救うっ!」

「絶対に救ってみせるDEATH!!」

 

諦めず手を伸ばす二人。速度が段々と上がり始めるがこのままでは地面との激突か、獅子の爆発の方が早いだろう

 

「手を!!」

「!わかった!!」

 

そんな中、突如凸守が響へと手を伸ばす。すると察した響はその手をしっかりと握り、

 

「いっけーーーっ!!」

「DEATH!!」

「なっ!?」

 

キャロルへと向かい放り投げる。シンフォギアの力で投げられた凸守はその勢いのままキャロルへ抱きつく

 

 

 

 

ゴオッ、ドオオオオォォオォォォォオォォンン!!!

 

 

 

 

凸守がキャロルを抱きしめた直後、爆発。周囲一帯の建物は爆発の衝撃だけで折れ、砕け、灰となる

 

 

そんな、爆発の衝撃で吹き飛んだキャロルと凸守は、その後の懸命な捜索にも関わらず発見されることは無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・エルフナインちゃん」

 

あの事件から三日がたった。そんな時、S.O.N.G本部にて、エルフナインのお見舞いが終わった響達は一同に介していた

 

「・・・早苗」

「どこにいるんだろう」

「爆発の衝撃で壊れるほどシンフォギアの構造は甘くは無い。必ず、どこかにいるはずだ!」

「つっても、こんだけ探しても見つからねぇとなると・・・」

 

最近の話の話題に上がるのはいつも二つだけ。怪我の影響か日に日に悪化するエルフナインの容態と行方不明になっている凸守のこと。どちらも何一つ好転することなく今に至っている

 

「でも、いくらなんでも--」

ビービービー

「--!?」

「なんだぁ!?」

 

突如本部内に鳴り渡る警報。あまりのうるささに顔をしかめていると通信機が震える

 

「おいおっさん!一体なんの--」

『すぐ外でシンフォギアの反応があった!』

「--!?」

「それって!」

「もしかして、もしかするデスか!?」

「あっ!おい!」

 

弦十郎の言葉を待たず調と切歌が外に向けて走り始める。それを追うようにマリアも走る

 

「それで司令、その反応は・・・」

 

『ああ。彼女だ』

 

 

 

 

「「早苗っ!」」

 

外へ駆けだした切歌と調、マリアが見たのは・・・

 

「地獄のそこから舞い戻ってきたDEATH!」

「早苗~~っ!!」

「ちょ!?抱きつくんじゃないDEATH!」

「よかった。本当に良かった!」

「ちょ、ギブ!ギブDEATH!」

「もう!本当に心配かけさせて!」

「マ、マリアまで!?ちょ、やめ・・・・・・」

 

あとから駆けつけた響達が見たのは押しくらまんじゅうのように三人にたかられて潰される凸守

だが、彼女たちは全員とても良い笑顔で笑っていた

 

 

 




弦「というわけで、改めてS.O.N.G預かりとなった新しいシンフォギア奏者の凸守早苗くんだ!」
凸「よろしくDEATH!」
切「よろしくデス!」
弦「更に!早苗くんは次学期からリディアンへの編入も決まったぞ!」
みんな「おお〜〜!」
凸「これからもよろしくDEATH!!」
弦「切歌くんたちのクラスに編入予定だからよろしくやってくれ!」
凸「一緒に勉強できるDEATH!」
切「・・・!早苗早苗!私が勉強見てあげるデスよ!」
凸「本当DEATHか!?」
切「モチロンデス!」(これで出来るとこを見せてやるデス!)
凸「・・・。なら微分積分について教えてほしいDEATH!」
切「・・・へ?」
凸「微分積分ぐらい知ってるDEATHよね?」
切「・・・モチのロンデス!ビブンセキブンぐらい知ってるデス!本当デス!!」
調「・・・キリちゃん、遊ばれてるよ」
マ「まあ、早苗は昔から頭が良かったから・・・」

響「ビビンバセンベイ?」
未「微分積分。私たちが今やってるとこ」
響「うえっ!?私たち、今そんなのやってたっけ?」
未「ハア。今度また勉強合宿だね」
響「そ、そんな〜!?」

凸「ほらどうしたDEATHか?早く教えてほしいDEATH」
切「えっと、えっと〜。・・・し、調〜!」
調「・・・頑張って、キリちゃん」
切「デーーーース!!??」






というわけで一応、コレで完結です。ここまで付き合ってくださったかた(いるかわからないけど)有難うございました。
そしてあと2時間でシンフォギアAXZが遂に始まります!
絶唱しすぎて熱中症にならないよう、注意してください!
では、また会うその日まで笑顔のサヨナラだっ!

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