「デス」「DEATH」「「デース(DEEAATH)!」」 作:こそ泥
「ガリィ、凸守」
「そんな顔しないでくださいよぉ。このちっこいのに邪魔されなければ上手くいったんですからぁ」
「・・・・・・」
ガリィに遅れること数秒、凸守が戻ってくると同時に玉座よりキャロルの声がかけられる。それはねぎらいではなく苛立ち。この程度の仕事もこなせないのかという呆れから来るものだった
「だいたい、この小娘に任せようとしたのが間違いだったんですってば~。私ならもっとウマくやりましたって」
「ふむ・・・」
キャロルは考える。このままガリィに任せるべきか、他の手段をとるべきか
「・・・上手くいったかはわからないDEATH」
「アァン?」
小さく、しかし確かな声が凸守から漏れる。その内容に思わずガリィの声が荒くなる
「ッ!イグナイトは精神面に大きく左右されるDEATH!あのまま進めて精神が不安定になれば計画に致命的な影響が出る恐れがあったDEATH!!」
それは使用者であるからこその考え。元よりシンフォギアは適合者の精神面に大きく左右される。その上でイグナイトの絶大な力は揺るがぬ意思と類い稀なる精神力の元にその真価を発揮する。精神的に不安定になれば結果は火を見るより明らかだろう
「ちんたらやってる余裕がないってのにそんな悠長な真似してられっか!」
「急ぎすぎて大本から崩れたら意味が無いDEATH!」
「ガリィ、凸守」
ヒートアップする二人。もとより喧嘩っ早いガリィの手が冷気を纏い凸守の手が胸元のペンダントに伸びたとき、キャロルの声が二人を止める
「二人の言い分は理解した。だが、これ以上計画の遅延は計画が滞る。よってガリィ、これからはお前が指揮を執れ」
「りょうか~い」
「凸守、お前は奴らの動向を見張れ」
「・・わかったDEATH」
「ミカ。お前はガリィと共に行動しろ」
「いいゾ!」
「全員、計画遂行のためになすべき事をなせ」
(凸守は・・・)
計画のためならば民間人相手にも容赦しない。改めて認識した
翌日、暗い部屋の中、一人で凸守は外を、否、外の映る投影を見つめながら考え込んでいた。幸いにして今は丁度計画や調整のために他のメンバーは出ているためそれを咎める者は居ない
(凸守は昨日、どうするべきだったんDEATHか・・・?)
考えるのは先日の出来事。戦う力を持ちながら戦いたくないと叫んだ少女と、そこに寄り添い立つ昔の仲間。戦わせようと手段を選ばなかった今の仲間とその横で行動を諫めた自分。自分が仕えるマスターも無関係の人間を巻き込むことを是としており凸守だけが馴染めない今の空間と互いに心配し合い助け合っている相手達
(凸守は、本当に・・・ん?)
そんな時、ふと視界の隅に変化が生じる。視界を前に戻し見ると見張っていたS.O.N.Gの船から数名の人間が出てきたところだ
「あれは・・・!」
そこに映るのはかつての仲間。切歌と調、それに加え変装しているがおそらくマリアらしき人物。小雨の降る中で他に連れ立ちもなく船を出たかつての仲間を見た凸守は気づくと監視の目を彼女たちに向け操作していた
『ねえ切歌。本当に買って行くの?』
『当たり前デス!これは絶対に必要デス!』
『キリちゃん、こっちの普通のと減塩醤油ってどっちの方が良いかなぁ?』
「・・・アレは一体何をしているんDEATHか?」
最初に花屋に向かい花束を買った。それはまだわかる。彼女たちの向かう方向と漏れ聞こえてくる会話から推察した場所に行くのに花束はわかる。だが、なぜ彼女たちはスーパーで醤油を吟味しているのだろう
凸守がここまで正確に会話を把握できているのには訳がある。ノイズを始め多様な技術を持つ錬金術による空間への映像投影。小型の虫を錬成し作り出した偵察機を使い、その見ているものを映し出す。遠く離れた地点を見張るのに至極優秀な目である
科学と違う方向性で進化し続けたキャロルの錬金術の産物
『・・・本当にコレでいいのかしら・・・?』
『あ、調!マムは濃い味が好きって言ってたからこの濃口醤油っていいんじゃないデスか!?』
『そこは普通のにしておこうよキリちゃん』
錬金術の研鑽の結果今の光景を見ていると考えるたところで凸守の頭には今までなかった頭痛が走る
「・・・またバカなことをしてるみたいDEATHねぇ」
だが、その光景を見つめる凸守の口は優しい笑みを浮かべていた
『お一人様一本198円!?ちょっと二人ともあと二本買って行くわよ!』
『ちょ、マリア!?そんなに買って行かなくても大丈夫デスよ!?」
『二人とも、お店の中では静かにしないとダメだよ』
「・・・・・・・・・」
本格的に頭が痛くなった凸守の口元には先程の笑みは欠片も存在しなかった
『遅くなってごめんなさい、マム』
ところ変わって郊外。ここは二課が管理している墓地でありノイズから人々を守るために逝った人々を祀る墓の中に紛れ込むように少しだけ豪華な墓があった
その中で眠るのはナスターシャ教授。マリアや切歌達と供に武装組織フィーネとして世界に宣戦布告し、最後には月の欠片の落下を防ぐため単身月へと向かいその身をかけて地球を救った人物である。武装組織として決起したという過去と月の欠片に関する様々な思惑のため公の場所に墓を据えることが出来ずこうしてひっそりと祀られていた
『マム。私達ね、早苗と会ったの』
『今は別のところに居るけれど』
『元気そうだったデス!』
「!!」
マムへの挨拶もそこそこに(醤油は墓前に備えられている)マリアが語りかける。調と切歌もそれに続きどこか嬉しそうに続ける
『早苗が居なくなった時は大変だったわよね』
『セレナが居なくなったすぐあとだったから私もキリちゃんも凄くへこんでて』
『マリアも毎日遅くまで泣いてたデス!』
苦笑しながら話す三人。だが、話している内容の割にはその顔は明るい
『でも、生きてた。生きててくれた』
『今はどんな事情があるのかわからないけど』
『生きてたらまたやり直せるデス!』
「・・・ッ!」
三人は知っている。諦めずに話し続ければいつかはわかり合える。今敵対していてもわかり合えないなんてことは無い。その事を彼女たちは二課にいる皆から教えてもらったから。世界がこんなにも温かいと手を繋いで引っ張ってくれたから
『だから今度は早苗も連れてくるわね』
『早苗もマムには凄くお世話になってたから話したいこともあるだろうし』
『一緒にいっぱいお話するデス』
「・・・なんで、DEATHか・・・?」
ポロリと凸守の頬を雫が流れる
「なんで、なんで・・・!」
酷いことをした。切歌と調をミョルニルで殴り飛ばしたあの感触は今でも手に残っている。いくらシンフォギアを纏っていたとは言え軽傷ではすまなかったはずだ。それなのに
「どうして、そこまで優しくできるんDEATHか・・・?」
もし面と向かって今の言葉を言われてもここまで心を振るわせなかっただろう。だが今、凸守がこの会話を聞いていることは知られていない。それが意味することは彼女たちが喋っているのが限りなく本心に近い言葉であるということ。紛れもない本音だということ
『早苗は大切な親友だもの』
「!!」
それは偶然にも凸守の問いに答えとなっていた。勿論、ただの偶然だ。だが、だからこそ劇的に心を揺さぶる
『みんなが私達を助けてくれたみたいに』
『今度は私達が手をさしのべる番デス!』
「うっ、うああぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」
誰も居ない部屋の中に慟哭の声だけが響き続けた
あのあと、三人の端末に連絡が届き急ぎ船に帰っている最中にガリィとミカが帰還した。どうやら今度はガングニールの破壊に成功したらしくガリィに「やっぱりこんな小娘じゃなくて最初からガリィちゃんに任せてれば良かったんですよ~」と小言を言われた
それから1週間。キャロルの話では次の段階に移項するまではまだ時間があるらしく何事もないまま時間だけが過ぎていた
(凸守は、どっちに着くべきなんDEATHか・・・)
何もないということは考える時間が山ほどあったと言うこと。しかし、それでも未だに凸守は結論を出せないで居る
心情的にはマリア達と共にありたい。許されるのであれば今でも尚自分のことを友達と言ってくれる彼女たちに謝りたい
だが、
(凸守は・・・)
謝りたい。でも誓いを破りたくない。この1週間その事だけをずっと考えていた
だが現実は無情であり答えが出るのを待ってはくれない
ジリリリリと凸守のいる部屋にベルが鳴り渡る。それが意味するのは呼び出し。このタイミングで広間に集合するのに他の理由はない
「計画を次の段階に移す」
案の定、広間に全員揃うとキャロルが口を開く。ガリィやミカなどはニィと笑みを浮かべる中、凸守だけは困った顔を浮かべる
「奴らの本部周辺の電力施設を根こそぎ破壊する。全員それぞれの持ち場に行け」
「ま、マスター。凸守は」
「凸守。お前も早く持ち場に向かえ」
「・・・了解DEATH」
話しかけるもののとりつく島もなく諦めたように凸守は肩を落とすと装置を使いシュンという音と共にその姿を消す
「・・・頃合いか」
凸守の消えた辺りを見つめながらキャロルがポツリと呟いた・・・
「DEEEAAATH!!」
鎚が振り下ろされる。精密機械で構成された設備に加わる衝撃は機械を一つのゴミに変える。振り下ろされた鎚からは黄金に輝く雷が現れ地を這い周辺を舐める。過剰な電力は機械をショートさせもう正常には働かない
そうして壊れた元精密機械の山と地面で倒れ伏す多くの従業員を尻目に見ながら凸守は一人だけその場で立っていた
「ココの施設もそろそろ破壊完了DEATHね」
「う・・・ぁ、が・・・」
「・・・命までは取らないDEATH」
凸守がいるのはとある発電施設。海沿いにあるその施設に入り込んだ彼女はすぐに破壊を開始した。勿論従業員や警備員、途中からは動きが変わったのでおそらく政府の関係者が襲ってきたが凸守の敵ではない。既存の重火器ではシンフォギアのプロテクターを抜くことは出来ずその手に持つミョルニルから放たれる雷撃はたとえ直撃を避けたところで神経を麻痺させ動きを止められる
彼女を止められるとしたら同じような力の持ち主か風鳴弦十郎のような規格外ぐらいのものだ。そんな存在がホイホイといるはずもなくこうして全員倒れているのは予定調和と言うべきかもしれない
「マスター。こちらも終了したDEATH」
発電施設の数ある施設も今破壊したものが最後。凸守は仕事が完了したのを見ると懐からテレポート・ジェムを出す
「ば、化け物め・・・」
「・・・・・・」
ある程度回復し喋れるようになった男の言葉に悲しそうな目を向けると手元のジェムを握りつぶす
(・・・お似合いの言葉DEATHね)
自身の行いを省みてその通りだと想いながらシャトーへと帰還した凸守。他のメンバーは未だおらず残っていたのはキャロル一人
「マスター、ただいま戻り、まし・・・た・・・?」
帰還を告げようとする凸守の目にある映像が飛び込んでくる。その映像は今の仲間であるミカとかつての仲間の切歌と調が対峙する姿。周辺にはいくつかの煙の筋と破壊された設備が映り込む。どうやらミカが施設を破壊している最中に二人が応戦を始めたらしい
「ようやく戻ったか」
「マスター!コレって・・・」
「見ての通りだ」
見ている限り二人には攻撃をし続けるも余裕はなく対してミカの方は攻撃こそまばらだが余裕を残している。勿論、二人の動きは悪くない。だがそれすら圧倒する程にミカが強いだけだ
凸守は知っている。ミカが自動人形の中で最強と呼ばれていることもその実力も。なにせ凸守の奥の手であるイグナイトを使用してもミカに
(お願いDEATH。どうか・・・!)
『子供だと馬鹿にして・・・!』
『目にもの見せてやるデスよ!!』
(ダメDEATH!それじゃ勝てないDEATH!!)
二人が懐から取り出したのはLiNKER。使用者の適合率を強制的に引き上げ無理矢理フォニックゲインを高める薬。だが、二人の元々の適合率も使用時の強さもおおかた把握している凸守には未来が読めてしまう
凸守の知るよしはなかったが前回凸守と戦ったときに使用したものに比べ二人の手にあるのはかつて双翼の片翼を担った女性が使用していた当時のもの。前回のものに比べ副作用も大きく適合率の上昇もさほどではない
だが、二人はコレを使わねば戦いにすらならぬと知っている。だからこそ決死の覚悟で互いに薬を打ち込み歌を紡ぐ
(二人とも・・・)
『マスター、この調子ならこの子でもいいかもダゾ』
「?」
「いや」
突如、ミカの声が広間に響く。計画の一端しか知らぬ凸守には何のことかわからないがキャロルには今の一言で十分に伝わったようだ
「適合係数を上げてこの程度なら用はない。好きに始末しろ」
『わかったゾ!』
「マスター!?」
キャロルの言葉を聞き凸守が詰め寄る。しかし全て予想通りと言いたげにキャロルは動じることなく言葉を返す
「なんだ」
「ッ!!」
「お前はそこで黙って見ていろ」
「っ!・・・。・・・・・・!!」
「・・・フン」
ダッ、と凸守は見ていられないとばかりに画面を背に走り出す。その目からは一筋の涙が流れポタリと広間に痕跡を残す。だが、キャロルはそちらを一瞥することもなく不敵な笑みを浮かべながら戦場の行く末を見つめていた
戦場では先程までと違い一方的な蹂躙が行われていた
「アグッ!・・・ウ、アァ・・・」
「キリちゃん!!」
「そろそろ終わりにするゾ!」
キャロルの指示のあと、今までよりも出力を上げたミカの攻撃に二人は防戦一方となる。LiNKERの追加投与による増強をしているにも関わらず戦況はミカの方に軍配が上がる。二人は確信する。ミカは圧倒的な実力差があったにもかかわらず手を抜いて遊んでいたということ。・・・遊ばれていたということ
「・・・なんで、デスか」
「キリちゃんに手は出させない!」
「お前ら二人とも解剖ダゾ!」
負傷した切歌は既にシンフォギアが解除され戦える状況ではない。調の方も一人ではいつまで持つかわからない。一生懸命努力して強くなったはずなのに親友を止める力も無くパートナーの脚を引っ張っている状態
「こんなに頑張ってるのに・・・、なんでデスか!このままは嫌デス!変わりたいデス!」
「キャアァァ!?」
「調!?」
「始めるゾ!バラバラ解体ショー!!」
ジャラリとミカの手に大量の結晶が持ち出される。その一つ一つがアルカ・ノイズを呼び出すための触媒でありその数は優に百を超える。万全の状態ならばともかく今の調に時間稼ぎ以上のことは出来ない
「調!!」
「私はキリちゃんに救われた。だから、この命はキリちゃんを救うために全部使うんだ!」
「!良いこと思いついたゾ!」
スッとミカが手を上げるとノイズが調を取り囲む。方位が完了したのを見るとミカが切歌の方に向き直る
「そんなに大切なら目の前でバラバラに解体ダゾ!!」
「なっ!?」
「させるかあぁぁぁ!!」
調が一直線に切歌の元へと向かう。だが包囲しているノイズの攻撃によって近づくのには時間がかかる。そんな中を無理矢理押し通ろうとすれば当然、
「きゃあぁ!?」
「調!?」
一瞬の隙つかれノイズの攻撃がシンフォギアへと当たる。分解器官を強化された一撃は調の身に纏うシンフォギアを破壊する
「両方すぐに同じトコロへ送ってやるゾ!」
「キリちゃん!!!」
調が叫ぶも状況は変えられない。調の周りにはノイズが未だ多数残っており今の調にはそれを防ぐ手立てがない。切歌が死ぬのとほぼ同じタイミングで調の命の灯も消えるだろう
「っ!早苗、マリア・・・調っ!!」
「バイナラー!!」
切歌に出来たのは襲い来る衝撃に堪えるために、大切なパートナーが分解される様子が見たくなくて目をつぶることだけ。だから、轟音が聞こえるのに衝撃が襲ってこないのも、調の悲鳴が聞こえないのも不思議だった
ただ、これだけはわかった
「まったく。勝ち目がないんならさっさと逃げればいいんDEATHよ。危なっかしくて見てられないDEATH」
親友がいた。ブンという音と共にノイズを触手ごと吹き飛ばし間に割って入るように立つ親友が顔だけ振り向いて立っていた。それに、そこに居たのは彼女だけではない
「まったくだ。私達とていつまでも後人に任せきりでは居られぬからな」
「んなことより、今はとりあえず味方って考えていいんだよな?」
二人の先輩。それこそ武装組織フィーネとして敵対していた頃から自分たちを気にかけてくれていた頼もしい先輩が
「そんなの当たり前じゃないDEATHか!・・・切歌」
「さ、早苗・・・!」
「助けに来たDEATH!」
頼もしい仲間が、そこにいた
スーパーにて
マ「まさかお醤油以外にジャガイモとお肉もセールだなんて・・・。スーパー、恐るべしっ!」
切「今日の晩御飯は肉じゃがデース!」
調「2人とも、今日はマムのお墓まいりだよ・・・?」
二人「「ハッ!?・・・忘れてた(デース)」」
凸「・・・何してるんDEATHか・・・?」
発電所のその後
モ1「それにしてもあの襲ってきたのはなんだったんだろうな・・・」
モ2「カワイイ子だったけどメチャクチャ強かったな」
モ3「てかなんだよアレ?電気出たりしてたぞ?」
モ1「あんな目に合うだなんて本当、俺らついてなかったな・・・」
モ4「それなんだけどさ、俺らついてたんじゃねーの?」
モ2「ハ?何言ってんの?」
モ3「アレか?アニメみたいな体験が出来たーってか?俺はもう2度と御免だね」
モ4「いや、少しそれもあるんだけどさ、ほらあの日他のトコでも襲撃があったらしいじゃん?」
モ1「ああ、聞いたわその話。他も似たり寄ったりだったんだろ?」
モ4「それがさ、他のトコだと生き残ったやつより死んだやつの方が多かったんだって」
モ2「マジで!?・・・そういえばウチって誰か死んだりしたっけ?」
モ3「・・・いや、そういえば怪我人はいたけど死んだやつはいなかったわ」
モ4「それ考えたらさ、俺らって運良かったんじゃねーの?」
モ1「・・・そうかもな」
モ2「俺あの子に酷いこと言っちゃったわ・・・」
モ3「俺も・・・」
モ4「まあ、こんな事しないのが一番なんだけどさ」
そんな会話があったりなかったり・・・