「デス」「DEATH」「「デース(DEEAATH)!」」   作:こそ泥

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凸守が切歌を助け翼とクリスが調を助けた。だが、この場にはまだ一人居る

 

「んん~?ジャリンコォ何でソッチにいるんダ?」

 

オートスコアラーのミカ。二課の面々の敵であり凸守の仲間

 

「凸守はマスターに助けられたDEATH。でも、マスターの目的に逆らってでも凸守には助けたい親友がいるんDEATH!」

 

否、この場合は仲間()()()と言うべきだろう。既に凸守の目には迷いはなく未練が無いように見える。そんな凸守の様子を見て密かに安堵していたのは彼女と知り合いであった元フィーネのメンバー。特に仲の良かった切歌はその目に軽く涙を浮かべながら目の前に立つ小さく、けれど大きく見える背中を見つめている

 

「早苗・・・」

「・・・なんDEATHか?しばらく見ない間にずいぶんと泣き虫になったみたいDEATHね」

「なっ!?余計なお世話デスよ!」

「久方ぶりの再開も後の楽しみにしておけ。・・・来るぞ!」

「ならお前らみ~んなまとめてバラバラに分解ダゾ!」

 

懐から取り出した結晶からノイズを呼び出しながら突撃してくる。ミカの行く手にいるのは・・・凸守

 

「切歌。さっさと戻るDEATH」

「でも、それじゃあ!?」

「安心するDEATH。・・・さすがに凸守もミカを相手に誰かを庇ってられないんDEATH、よっ!!」

「キャア!?」

「特に裏切り者は念入りに解剖ダゾ!!」

「それでも、凸守は友達と一緒にいたいんDEATH!!」

「なら先にお前の友達を解剖してやるゾ!」

「そんなこと!」

「させると思ってんのかよ!」

 

ミカの手から出てきたカーボンロッドと凸守の鎚が激突する。吹き飛ばされた切歌に近づくノイズを翼とクリスが協力して吹き飛ばし飛ばされた切歌を調が助け起こす

 

「二人とも!さっさと退け!」

「それまでコイツらはアタシ達が食い止める!」

「キリちゃん!」

「っ!・・・わかってるデス!!」

(二人とも無事みたいDEATHね」

 

二人の撤退を視界の端で見届けた凸守は少しだけ安堵の息を漏らす

 

「戦ってる時に余所見は良くないゾ!」

「アグゥッ!?」

 

振り切られたカーボンロッドによって凸守の体が打球のように横に飛ぶ。鎚の柄を地面にさしガリガリという音を立てながら凸守の体がどうにかコンテナにぶつかるのを避けるがそこはすでにミカの殺傷圏内(キルレンジ)

 

「もらったゾ!」

 

体勢が整っていない凸守には飛びかかるミカから身を守る術がない

 

「「させるか!!」」

「なっ!?」

 

だが、この場にいるのは凸守だけではない。左からは翼の刀が、右からはクリスの弓が弾幕となって襲いかかる。宙にいるミカにそれを防ぐ手立てはなく逆にミカがコンテナまで吹き飛ばされる

 

「もう一発DEATH!」

 

凸守がその手に持った鎚をコンテナに突っ込んだミカへと投げる。普通ならば土煙の中の敵に当てるのは難しいだろうが

 

「食らうDEATH!」

ガッ、ドオオォォォン

 

鎚が凸守から離れ飛んでいる最中に肥大化し稲妻を纏う。直径が優に3mを超えたハンマーの雷がコンテナ内の物質に引火、爆発をおこす

爆発したコンテナを未だに見つめながら翼とクリスが凸守の側へと寄る

 

「助かったDEATH」

「人に目配せしておいてよく言う」

「追撃なんてして良いのか?一応お仲間なんだろ?」

「もう凸守はマスターの仲間と見なされてないDEATH。それに、このぐらいはしないとミカにはダメージなんて通らないDEATH」

「よくわかってるじゃないか」

「「!!」」

「やっぱりDEATHか・・・」

 

土煙が晴れる。そこにはミカだけではなくもう一人、キャロルが居た。キャロルはその手の防壁を消しながらミカへと指示を出す

 

「ここからはオレの出番だ。お前は先に戻っておけ」

「わかったゾ!」

 

ミカがその手のジェムを使用して瞬時に撤退する。だが残されたキャロルは帰還する様子もなく三人を睨むように立つ

 

「マスター・・・」

「親玉がノコノコ出てきやがったのか」

「貴様を倒せば此度の戦いも幕が下りる」

 

「ふん。たかだか三人ぽっちでオレを止められると思うなっ!」

 

バッとキャロルが右手を振るとその先の虚空から紫の竪琴が現れる。武器ではないことに呆気にとられるも三人とも即座に身構える

キャロルが竪琴を弾くとどこからともなく流れ始める伴奏。三人は、いや、この場を見ている全員がその琴がなんなのかに気づく

 

「聖遺物の起動!?」

「錬金術ってのは何でもありかよ!?」

「マスター・・・」

 

シンフォギアは聖遺物を元に作られた兵器でありその作成方法は国家機密に値する。それすら作りだしているのだからキャロルの扱う錬金術は既存の技術をも上回る。先程までは幼子と呼ぶべき姿だったのが今の一瞬で大人と呼べる見た目に変わったのだから

 

「ナリを理由に本気が出せないなどと言われたくなかったのでな」

「マスター」

「・・・」

「なんでマスターはこんなことしてるんDEATHか」

 

一歩、凸守が踏み出して問いかける。その顔は苦虫を噛んだようだ

 

「いくらなんでもやり過ぎDEATH。こんなことしなくてもどうにかなるんじゃないDEATHか?」

「・・・・・・」

 

また一歩。反応しないキャロルに訴えるように声を上げる

 

「凸守はマスターと戦いたくないDEATH!マスターは凸守にとって命の恩人DEATH!!なんで凸守の命を救ってくれたマスターが簡単に人を殺せと言えるんDEATHか!?]

 

涙を流しながら詰め寄る凸守。そんなときだからだろうか。ふと思い返すのは先日相対した少女。友達を狙われながらもそれでも戦いたくないといった少女はこんな気持ちだったんだろうか

 

「・・・言いたいことはそれだけか」

「!!」

 

そんな言葉もキャロルの心には届かない。微塵も動揺を見せないキャロルはその手を天に掲げる

 

「ハアッ!」

「マスターッ!――アグゥッ!?」

「危ねえっ!」

 

天に掲げられた左手から伸びる糸が凸守へ襲いかかる。回避するそぶりも見せずに直撃した凸守はコンテナにぶつかる――直前、間一髪のところでクリスが凸守を抱き留める

 

「っ、なんで!なんで、なんでDEATHか!!なんで――」

「ふん!」

「ングッ!?」

 

抱えられながらもキャロルへ手を伸ばす凸守にクリスの拳が落ちる

 

「何するDEATHか!」

「バカかお前は!?あのままだったら死ぬとこだったんだぞ!?」

「どこで死のうが生きようが凸守の勝手DEATH!初対面のお前なんかに心配される筋合いはないDEATH!」

「・・・ムカつくんだよ」

「・・・は?」

 

思わず凸守はクリスの顔を見上げ、そして理解する。彼女が言ってるのは本気だと

 

「昔のアタシを見てるみたいで、ムカつくんだよ。恩人だからって理由でバカみたいに従って!捨てられたら自棄になって!!」

「な、何を言って――」

「止めたいんだろ?」

「!それは・・・」

 

望んでいる。マスターと戦いたくない。だが、止めるための力が無い。だから話し合って止めようと思った。・・・止まらなかった

 

「だったら一言言やぁいいんだよ。手を貸せってな」

「・・・・・・おねがい、です」

 

消え入るような声で呻くように訴える

 

「手を・・・貸して欲しいです」

「「任せろ」」

 

クリスが、横に来た翼が、応える。三人が並び立つ

 

「ふん。茶番は終わったか」

「わざわざその茶番を待って手出ししないでくれるとはな」

「隙を突かれたから負けたなどと吠えられても迷惑なのでな」

「ハッ!そっちこそあとで吠え面かくんじゃねーぞ!!」

 

クリスのマシンガンが火を噴きキャロルに襲いかかる。だが、糸を炎上に回転させたキャロルの防御を突破するには火力が足りない

 

「DEEAATH!!」

 

だからこそ凸守が追撃にかかる。糸を束ね銃弾は止められてもミョルニルの振り下ろす一撃までは止められない。足を止めたキャロルには躱しようのない一撃

 

「小賢しいっ!」

「グッ、キャアアァァァッ!?」

 

だが、躱せないのは振りかぶり宙にいる凸守も同じこと。キャロルは自らの背と一体となった弦を弾きそこから豪炎を放つ。渦を巻く豪炎と握られた鎚。リーチの短い鎚では勝てるべくもなく弾き飛ばされる

 

「もらった!!」

 

クリスの銃撃も、凸守の一撃も囮。前に上にと注意を引きつけてからキャロルの背後に回り込んだ翼の鋭い一閃。即席のコンビネーションとは思えない練度の連係攻撃

 

「・・・クッ!」

「それで終わりか?」

 

そんな連係もキャロルには通じない。手の糸を束ね円錐に固め絶刀を阻むその顔に驚愕の色はなく冷淡と言うほどに冷めている

 

「今度はコチラから行かせてもらうっ!」

「グアアッ!?」

「センパイ!?――ガアッ!?」

「グウウゥッ!!」

 

 

鍔迫り合いを強引に力で押し切り、逆の手で反対側にいたクリスへと竜巻のごとき風を放つ。押し切った手を開くとそこから放たれる豪流が横へ回り込んでいた凸守を狙う。力尽くで押し切られた翼と風に吹き飛ばされたクリス。辛うじて凸守は防御が間に合ったがそれでも無傷とは言い切れない

 

三対一というアドバンテージを根こそぎひっくり返して余りあるキャロルの力。これこそが自動人形(オートスコアラー)を生み出したキャロル(錬金術師)の実力

 

「ふん。三人がかりでその程度か」

「クソッタレ!」

「・・・やれるか雪音」

「・・・()()をやるにはギリギリ大丈夫ってとこかな」

「アレ?・・・!イグナイト、DEATHか」

 

イグナイトで得られる圧倒的な力。過去に凸守が一人で切歌と調を圧倒したのは事実でありその力は本物だ

 

「イグナイトは心の闇を増幅させるDEATH・・・。()()()()()()()()気をつけるDEATHよ」

「ぶっつけだがやってやるさ!」

「ああ!これ以上の醜態をさらすわけにはいかないからな」

「奥の手を待ってばかりと思うな!」

 

振るわれる右腕。伸びた糸が合流した三人へと迫る

 

ガリイッ!

 

「ここは、凸守が時間を稼ぐDEATH。二人はさっさとやるDEATHよ」

「すまねぇ!」

「かたじけない!」

 

イグナイトを起動しその身を黒に染めた凸守がキャロルの一撃を受け止める。クリスと翼が合流し一歩下がる中、凸守だけは前へ進む

 

「マスター。・・・悪いDEATHけど止めさせてもらうDEATH」

「お前一人でオレを止められるとでも?」

「やってみなきゃわからないDEATH!」

 

黒い稲妻が駆ける。一息に十数メートルはあろう距離を詰め、まさしく目にもとまらぬ速さで鎚を振るう

 

「喰らうDEATH!!」

「ハアアアァァ!!」

 

キャロルの眼は常人ならば視認することすら出来ない速度の凸守を見切る。束ねられた糸と稲妻が激突しその衝撃は足下のコンクリートを砕き蜘蛛の巣を描き出す

 

「グウッ!?」

「DEEEAAATH!!」

 

鎚が振り切られる。ガリガリガリと音を立てながらキャロルが踏みとどまる。纏うだけで歯が立たなかった相手を圧倒できるイグナイトが強いのか、それと対峙しながらも戦いになるキャロルの戦闘力が凄いのか。一つだけ確かなのは今この場において凸守が最も強いという事実

 

「グウッ!・・・不甲斐ない!!」

「あんな小せえのに戦わせてアタシは・・・!」

 

その様子を歯がみしながら翼とクリスが見つめる。イグナイトの闇に呑まれこそしなかったものの克服できなかった彼女たちは手出しが出来ない

ダメージの蓄積もあるがそれ以上に次元が違う二人の戦いを前にわかってしまった

 

自分たちは足手まといであり迂闊に手を出せば邪魔になるだけであることを

 

「ハアッ!」

「DEATH!」

「ガアッ!?」

 

数度目の激突。だが、結果はわかっている。最初こそ地面を削りながらも踏みとどまれたキャロルは今では踏みとどまることすら出来ず地面と平行に宙を跳ぶ

 

「クッ!・・・なるほどな。これほどとは思っていなかったぞ」

「・・・もう、やめるDEATH」

 

ガラガラと砕かれたコンテナから現れるキャロル。土埃にさらされ、攻撃を何度も受けたキャロルは傷のない場所がなくアチコチから値が流れている。・・・そのほとんどが凸守の攻撃によるものだ

 

「こんなこともう諦めるDEATH!凸守はこれ以上マスターを傷つけたくないんDEATH!!」

「腐抜けたことを!」

 

確かに、キャロルの体には無数の傷がある。それでもキャロルが戦えているのは凸守が攻撃の当たる直前に攻撃を緩くしているから。この戦闘で凸守は攻撃の手を抜いている。押し切るのが一番早いのは理解しながらも後遺症を残さず、治療すればすぐに直るように攻撃の威力を下げている

本当は傷つけたくないから。話し合う余裕が生まれるから。しかし、今回に限りその凸守の優しさは間違いだ

 

「そう言って、お前がこれ以上本気で戦えないと言うならば!戦えるようにしてやろう!!」

「!!やめるDEATH!マスター!!」

「もう遅い!!」

 

ジャラリと取り出した結晶を宙へとばらまく。ばらまかれた結晶から現れたノイズは瞬く間にその数を増す。増え続けるノイズたちはあっという間に視界を埋め尽くし辺りへ広がっていく

 

「全力で戦わないというならば分解される者の悲鳴をそこで聞け!!」

「なっ!?」

 

ドカアアァァァン!!

キャアアァァァ!!

 

広がったノイズがビルや民家、道行く人へ襲いかかる。辺りから悲鳴が聞こえてくるその様はまるで地獄のよう

 

「なっ!?」

「テメェッ!!」

「――!二人ともしゃがむDEATH!!」

 

地獄は人を選ばず襲いかかる。膝をつく翼とクリスへノイズが飛びかかる。凸守の言葉通りに伏せた二人の頭の上をブンと音を立てて巨大化した鎚が通過し襲いかかるノイズを全て吹き飛ばす

 

「す、すまない」

「ク、ソがぁ・・・!」

(状況はジリ貧、このまま続けても悪化するばかりDEATH)

 

満身創痍の二人。とても戦える状況ではなく自分も戦闘力では圧倒できるが二人を守りながらでは全力を振るえないし時間制限もある

 

決断するならば今しかない

 

「・・・二人とも、自分の身ぐらいは守れるDEATHか?」

「なにを・・・?」

「・・・まさか!」

 

凸守の表情に見覚えのある翼は気がつく。その顔は自分と共にあった片翼が最後に浮かべた表情。・・・己が命を燃やす覚悟

 

「待て!そんなことをすれば無事では済まない!!最悪、命を落とすことになるのだぞ!」

「じゃあどうしろって言うんDEATHか!?これ以上の方法があるとでも!?」

「それは・・・!」

「・・・!来たみたいだぜ、もう一つの方法が!!」

『ウオオォォォォッ!!』

 

自分がよく扱い、自らも経験があるからこそ接近してくる()()にクリスがいち早く気がついた。空気を裂きながら遠く、二課本部がある方向から飛来するミサイル。宙に浮かぶ巨大なノイズを狙って飛ぶミサイルの中の一つに誰かが、乗っている

 

「オオオォォォォォッ!!」

 

ミサイルの衝突と同時に腰の入った拳を突き出した彼女はミサイルが爆発する直前にその身を躍らせ三人の元に降り立つ。ミサイルと拳を喰らった衝撃でノイズが爆発し、他の飛来したミサイルも狙いを違うことなく宙に浮かぶノイズの数を減らす

 

「お待たせしました!」

「病み上がりの身に助けられるとはな」

「大丈夫なのか?」

「ハイ!もう、大丈夫です!!」

 

立花響。以前、凸守が対峙した時は戦いたくないと言っていた彼女がシンフォギアを纏い戦場に凜と立っていた

 

「・・・ふん、今度は戦うつもりがあるみたいDEATHね」

「早苗ちゃん!」

「ふん!なんの用DEATHか?凸守は――」

「ありがとう」

 

時間が止まる。思ってもみなかった言葉をかけられ目を丸くする

 

「・・・ハァ?」

「あの時は言う暇が無くて遅くなっちゃったけど。私達を助けてくれて、ありがとう」

「―――ッ!う、うるさいDEATHよ!あの時はソレが最善だと思ったからやっただけDEATH!」

「うん。だから、ありがとう!」

「」

 

面と向かって照れもせずに真っ直ぐ伝わってくる言葉に思わず顔を赤くする。翼は、それでこそ立花らしい。と何度も頷きクリスは、本当にバカだな。と暖かく笑う

 

「そ、それより!・・・どうするDEATHか?時間は無いDEATHよ」

 

事態は確かに好転した。戦える戦士が一人増え、攻める者と守る者の二手に分かれることが出来る。しかし、そこまででもある。今なお辺りから聞こえる悲鳴は増えこそすれ減ることがない。救う者が、いない

 

そんな状況を打破できるとすれば、

 

「イグナイトモジュール、もう一回やってみましょう」

「なに言ってるDEATHか!?」

 

真っ直ぐに響が放った言葉に凸守が噛み付く。しかし、これは仕方の無いことだろう。精神面に左右されやすいシンフォギアは多少心が揺らぐだけでも身に纏うことが出来なくなる。ある程度時間をおいたならば別だが先程試して失敗したものを再度試して上手くいく確率なんて砂漠の中から一粒のダイヤを見つけるようなものだ

 

「未来が教えてくれたんです。自分はシンフォギアに救われたって」

「な、なにをいきなり・・・」

「シンフォギアが誰かを救うための力であるなら、私達だって救ってくれるはず。だから、強く信じるんです!胸の歌を、シンフォギアを!!」

「・・・む、無茶苦茶DEATH・・・」

「だが、それでこそ立花らしい」

「その無茶につきあわされるコッチの身にもなれってんだ」

 

凸守にはわからない。なぜ、たったあれだけの言葉で先程失敗したことに挑戦できるのか。どうして、そこまでシンフォギアを信じ切れるのか

 

(・・・少しだけ、羨ましいDEATH)

「「「イグナイトモジュール!抜剣!!」」」

 

三人がシンフォギアのペンダントを掲げる。カチリという軽い音と共にシンフォギアが浮かび鋭い虹色の針が現れる。人の腕ほどの大きさをした針と言うには大きすぎるソレが胸めがけて飛んでくる。普通ならば反射的に目をそらすか恐怖に顔を歪めるところを真っ直ぐ揺れることなく見つめる三人

 

ガアアアァァアァァァァァッッ!!

 

獣の咆哮と聞き違えてもおかしくない絶叫が響き渡る。針の刺さった場所からは黒いもやが現れ身体を包む

 

「やっぱり、そう簡単には・・・!?」

 

ウオオオォォォォォォッッ!!

 

絶叫が変わる。獣の咆哮が鼓舞する雄叫びへと。呼応するかのようにもやが急速に晴れていく

 

「・・・あ、ありえないDEATH」

 

黒い輝き。各所に黒がちりばめられ、鋭利になったシンフォギア。歌声にも力強さが乗りズンと重く響く

 

「・・・・・・・・」

「早苗ちゃん」

 

目の当たりにした奇跡に絶句する凸守へ響が話しかける

 

「キャロルちゃんの相手は私に任せて早苗ちゃんはノイズを倒して欲しいんだ」

「・・・ハア?何言ってるDEATHか!?凸守は――」

「大切な人、なんだよね?」

「お、お前なにを・・・?」

 

ギュッと響が凸守の手を取る

握られた手が、温かい

 

「私も、大切な人と戦う辛さを知ってるから。だから、ココは私達に任せて」

「あ・・・」

「防人として当然の務めだ」

「ポッとでた後輩に情けねぇ醜態さらしただけで終われるかってんだ」

「うっ・・・あぁ・・!」

 

涙が溢れそうになる。でも、今は我慢して伝える

 

「・・・お願い、です。マス、ターを、止めて・・・!」

「「「任された!!」」」

 

歌が始まる。希望を信じ、諦めないと誓う歌。力強いその歌に思わず聴き惚れそうになるが今はその時ではない

 

「・・・っ。凸守だって!」

 

走り出す。脚が向かうのは市街地。時間制限は近づいているが今の凸守の速度ならば間に合う

 

「だ、誰かーーぁぁぁ!」

「DEEEEAAAATH!!」

「・・・・・え?」

 

崩壊し煙の上がるビルから走り出た女性を狙うノイズを間一髪吹き飛ばす。数体残っていたノイズを吹き飛ばしシェルターの前まで誘導する

 

「あ、ありがとう!」

「――――ッ!」

 

それはシェルターへと避難する直前に思い起こしたかのようにかけられた一言

たった一言に顔がにやける。笑みを抑えきれない

 

忘れていた。感謝の言葉とはここまで心に染み入るものだということを

 

「!!」

 

一際大きな轟音。予感がして思わず音の方へ走る

 

 

「マスター!」

 

ボロボロになり立つことも出来ないキャロルとその前に立つ響。その様子に思わず凸守は走り近づく

 

「マスター!!」

「――――で、誰かを救えるなどと思い上がるな」

「!!」

 

『化け物め』

 

足が止まる。心が握られたように痛い。自分は何を考えていた?たかが一人二人を救った程度で浮かれているがそれまでに一体何人の犠牲を産んできた?

 

脂汗が垂れ動悸が激しくなる。目の焦点が合わない

 

(あ・・・、れ・・・?)

 

目の前に広がるのは空でも、今見ていたはずのキャロルでもなくネズミ色の壁

 

どこか遠くで悲鳴が、絶叫が聞こえた気がした

 

 




今日の戦姫絶唱しないシンフォギアはお休みです
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