拝啓。
昨日手紙を投函しに行って、帰ってきてみたら家のポストに手紙が。
もう宛名を確認する気にもならず、無作法に封を開けて読んでみたところ、なんと送り主はカルデア職員であってもお兄ちゃんではありませんでした。
中の手紙ごと破り捨てる勢いで封を開けた無礼、申し訳なく思います。すみませんでした。
それはさておき。
マシュ・キリエライトさん、こちらこそ始めまして。そちらでお世話になっている、藤丸立香の妹です。
……などという自己紹介に意味はあるのか。私が誰だか分かっているからこそ、そちらも手紙を送っているのではあるまいか。
そもそも、うちの兄の妹と聞いて、どんな人なのか興味を持って手紙を出してくれたそうだし。
でもまあ、それはそれ。
そもそも私なんかに貴女のような字が綺麗な方が興味を持ってくれたということ自体、ありがたいことであります。どのくらいかというと、感謝の気持ちにジャンピングしてそのままヘッドスライディングからの土下座するくらいです。
本当に感謝しております。どうもありがとうございます。
……先ほどから同じようなことを言い方だけ変えて連呼してるだけですね。私の文章力とボギャブラリーの低さが呪わしいです。
カルデア職員の皆さん!オラに文章力を分けてくれ!と叫びたい衝動に駆られること甚だしいどうも藤丸立花です。
ところで、昨日と一昨日うちの兄から手紙が届きました。そこには何も言わずに家を出て行ったことの言い訳と近況報告が綴られていました。
それを読んだところ、兄はバレンタインにチョコレートを渡されるためだけに召集されたと愚痴っているようです。
私としては信じられません。何も言わずに家を出て行くような甲斐性無しにチョコを渡すような人がそんなにいるのでしょうか。
いや、まああの見ている人を和ませると定評のある笑顔に、感謝の気持ちとか言って誰彼構わずプレゼントをあげるような天然たらしです。一人や二人くらいは毒牙にかかった人がいるかもしれませんが……。
もしやマシュさんもその口でしょうか。だとすればどうして惚れたのか、ぜひとも聞かせてもらいたいです。
何故かって? そりゃあもちろん他人の恋愛というのはとても面白いからだ。
成就した恋ほど語るに値しないという言葉をどこかで見たことがありますが、逆に言うなら成就する前の恋ほど語る価値のあるものはありません。古今東西のラブコメを見てもそれは明らかです。
さあ、馴れ初めを暴露するのです。さあ、さあ!
……話題が逸れましたね。兄の近況を記述するその筆致に我が兄に対するラブっぷりが余りにも露骨に出ていたのでついからかいたくなってしまいました。
が、そんな一時の感情で話題を逸らすのは淑女失格です。美しく調和のある淑女になるためには徹頭徹尾一貫した内容の手紙が書けることが最低条件です。
なので話を戻します。
昨日の近況報告によると、兄はバレンタインデー用のチョコを作り続ける日々を送っているそうですね。プレゼント無料配布マンであるところの兄がそんな行為に及ぶのは想像に難くなく、なんならチョコを貰うよりあげるほうがしっくり来るまでありますが、ここでちょっとマシュさんに聞きたいことがあります。
そんなに連日作ったチョコレートを、兄はいったい誰にあげるのでしょうか。
いや、どうせ感謝の気持ちというただの義理チョコだと思うんですけど、万が一本命だとしたらこれは事件です。
自分に火の粉が降りかからない恋愛の類の事件は見てて面白いので、そうであったらいいななどと黒い期待をしつつ、だけど実の兄が男にガチ本命チョコをあげるような人だとは思いたくないので、そうではないと願いつつ。
出来るなら調べておいて下さい。よろしくお願いします。
かしこ
藤丸立花
マシュ・キリエライト様
追伸
そういえば、バレンタインデーにチョコレートをあげるのは日本だけの風習だった筈ですけど、カルデアとやらは一体全体どこにあるのでしょうか?