「ええっとつまり?」
「はい、エミリア様とロズワール様は緊急の呼び出しでいません。姉様はそれに同行。つまり今この屋敷はレムとスバル君の二人きりという状態です。」
「なぜ俺が寝坊した日に限って」
「すいませんスバル君、レムがもう少し早く起こしておけば見送りくらいには出れたかもしれなかったのに、ましてやいつも通りの時間に起こしていたらスバル君、今頃竜車の上だったかもしれませんでしたのに、ラジオ体操には間に合ったのは幸いですけど」
「て言うか、ベア子は?」
「ベアトリス様は大精霊様が帰ってくるまで出てくる気はないそうです」
「いつ帰ってくるの?」
「明日の夕方になるそうですよ」
と、語るレムはどこか嬉しそうであった。
使用人達の日常は変わらない、たとえ主がいなくてもいつも通り仕事をする。
「スバル君、そっちは終わりましたか?」
「あぁ、とりあえずは」
「そうですか、では午前中の仕事は終わりですね。お昼にしましょう」
レムが昼食を作りいつも通りスバルが手伝う。準備を終え、食堂にて。
「あの、スバル君、今日は隣で食べても良いですよね?」
「お、おぉ。良いぞ」
「それでは失礼します」
そうして二人で並んで食べる。
午後もいつも通り仕事。晩御飯も並んで食べる。
「今日はいつもより楽だな」
「人が少ないとこんなものですよ。……それではレムはお風呂に入ってきます」
「おう、ごゆっくり」
部屋に戻り文字の勉強がてら本でも読むことにする。
「長すぎる!」
さすがに長い。レムの性格上、風呂からあがったらスバルを呼びに来るはず。
「レムに限って溺れてる何て事はないと思うが……」
と言いつつスバルは風呂場へと向かう。
「レムー、大丈夫かー入るぞー」
脱衣場に入るがそこには着替えがない。
「もうあがったのか?」
忘れていただけかとスバルは服を脱ぎ、一応誰も中にはいないことを確認し浴室に入る。
体を洗いやたらと広い浴槽に入った瞬間、
「引っ掛かりましたね」
と声がして後ろを振り向くといたずらが成功した子どものような表情を浮かべるレムがいた。
「スバル君ならきっと、レムがあがってこない呼びに来ないとなれば見に来ると思っていましたから」
「さすがに心配したぞ。どこに隠れていたんだ?」
「ごめんなさい。脱衣場に隠れてました」
と言いながらレムが隣に浸かる。
あわてて目をそらし後ろを向く。バスタオルをまとっていたとはいえ、直視していいものではない。
「スバル君と二人きりでどこかテンションがおかしくなっているのかもしれませんね、レム」
「かもなぁ、ラムがこの状況見たら俺今頃八つ裂きだぜ」
「あはは、レムが誘い込んでこの状況ですからさすがに止めに入りますよ」
「ならひと安心だ」
それからしばらく、お互い心地の良い沈黙に包まれる。
「それでは、そろそろ上がりますね」
と、その沈黙も背後のレムが浴室から出ていく音で破られる。
鉢合わせしないようレムが出ていくのを見計らってはいたが、さっきまでこの湯船にレムが浸かっていたという事実を思い出しどこか落ち着かない気分であった。
「そろそろ寝るか」
部屋に戻り文字の勉強を再開したは良いが落ち着かないからベッドで眠気が襲うのを待とうと決め明かりを消して目を閉じる。
やがて眠気は訪れ意識を闇に引きずり込む。
それからしばらくして「寝てますね。寝顔、可愛いです」という言葉はすっかり眠ってしまったスバルには届かなかった。
「ふわっ、よく寝た」
いつもより早い時間に目が覚めてしまった。ならばもう一眠りと目を閉じて違和感に気づく。
「俺、抱き枕とか持ってないけど」
柔らかい何かを抱えて眠っていたらしい。
「って、レム!」
「ん、おはようございます。スバル君」
「なぜここにレムが」
「昨日潜り込ませてもらいました。とてもよく眠れました」
「そ、そうか。しかし、女の子が無警戒に男のベッドに潜り込むのは良くないと思うぞ」
「スバル君になら何されても平気ですよ。今日はもう少しゆっくりできますからまだ休んでても平気ですよ。……しばらくこのままでもよろしいですか?」
「えっ、あぁ。おう」
と言うとレムは安心したように笑う。
「レムは今幸せです。この時間がいつまでも続けば良いなと思います」
「俺にとっちゃちょっと心臓に悪い状況だな」
「確かにちょっと鼓動が速いですね」
「レムも顔が赤いけどな」
「それは、仕方のないことですよ」
頭を撫でると身を寄せてくるレムは小動物的愛らしさを放つ。
しばらくそうしていると、満足したのか「そろそろ起きましょう」と立ち上がる。
「着替えてくるので、また後で」
と部屋を出ていく。
「ラジオ体操行かなくては」
とスバルも急いで着替え始めた。
「やぁ、二人とも。特に問題はぁなかったかぁな?」
「お帰りなさいませロズワール様」
「特に問題は無かったぞロズっち。ベア子が出てこなかったくらいだ。パック、さっさと会いに行ってやれよ」
「そうだね、そうするよ」と、パックはふわふわと飛んでいく。
「スバル、レムに迷惑かけずにちゃんとお仕事した?」
「おう、いつも通りだ」
「なら駄目ね、バルスがいつも通りでレムに迷惑をかけないはずないもの」
「いつも以上に頑張りました!」
所代わりラムの部屋、そこにはメイド姉妹が向かい合って座っていた。
「それでレム、詳しく聞かせてもらおうじゃないの。何があったのか」
「姉様、な、何を?」
「妹の変化にラムが気づかないはずないじゃない、聞かせなさい」
「いえ、いつも通りでしたよ」
すっと、少しだけ距離を詰めるラムに怯えを隠せないレム。
「まぁ、良いわ。姉離れも寂しいものね……」
突然の解放にレムは戸惑うがすぐにいつも通りの無表情にもどる。
「ラムはもう少し休んでから仕事に入るわ」
「はい、姉様」
「レム、バルスに何かされたらすぐにラムに言いなさい」
「はい、お姉ちゃん」
好きなキャラだからこそちゃんと表現したい。