お隣さんは幼馴染? ~俺と果南と時々ダイマリ~   作:グリーンやまこう

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作)ダイヤ姉さん、やりましたよ!!
ダ)どうしたんです? 騒々しい……。
作)ついに、ダイヤ姉さんのメイン回です! ダイヤ姉さんが主役ですよ!!
ダ)それはいいんですけど……このタイトルになぜか悪意を感じますわ。
作)ギクゥ!? い、イヤダナァ。ソンナコトナイデスヨ。
ダ)反応からすべてバレバレです!! 
作)う、うるさい、うるさい!! これも全てダイヤ姉さんがポンコツ可愛いから悪いんです!!
ダ)褒めるか、貶すか、どちらかにしなさーい!!

※もはや、作者自身も何を書いていたか分かりません。


お気に入り100突破特別編 ダイヤ姉さん、TSUTAYAに行く

「あっ、GReeeeNって新しいアルバム発売したんだ」

 

 ある日の夜。いつも通り果南さんの部屋に集まって適当に話していた中、パソコンを開いていた祥平がそう声を上げる。

 

「祥平って、昔からそのユニット好きだよね?」

 

「本当の初期からファン……ってわけじゃないけどな。それこそルー〇ーズからだけど。でもそこからはずっとファンだし、ファン歴は結構ある方かな」

「確かにGReeeeNって顔は出さないけど、心に響くというか、とにかくいい曲が多いもんね。私もたまに祥平からアルバムとか借りてるけど、直接心に訴えかけてくるようで感動するんだよ」

「そうなんだよ!! GReeeeNは顔こそ出さないけど、それをカバーするだけの作詞力、作曲力があって――」

 

 熱を帯びてきた祥平の口調に、果南さんは思わず苦笑い。

 まぁ彼がえっと、ぐりーん? のことで熱くなるのはいつも通りのことですし、あまり気にすることはありませんわ。

 

「って、back numberも新アルバム出すんだ! うわ~、チェックするの忘れてたよ」

 

 すると、今度は果南さんが大きな声を上げる。

 

「果南はおれのGReeeen好きと同じで、back number大好きだよな。やっぱり歌詞とか、曲調とかに共感できるの?」

「うん! 切ない歌詞とか、工夫された曲調とか、大好きだよ! ま、まぁ、私も祥平と同じで、初期からのファンってわけじゃないんだけどね」

 

 えへへと頬をかく果南さん。その姿はとても可愛いですわ~。ばっくなんばー? というのはよく存じ上げませんけど……。

 後ろの番号って、一体どういった意味があるんでしょう?

 

「それじゃあ、今週辺り一緒に買いに行こう……って言いたいところだったんだけどな。いかんせんお金もないし、バイトが忙しくて時間もない」

 

「あっ、それ私もだ。大ファンだし、買いたいのは山々なんだけど、今月はお金がね……。祥平と一緒で時間もないし」

 

 二人が財布を確認してため息をつく。どうやら、よっぽどお金が足りないらしい。

 その気持ち、すごくよく分かります。私もスクフェスで、エリーチカのイベントやガチャが来ている時は、いつもひもじいですから。

 

 あまり言いたくないのですが、果南さんや鞠莉さんに助けてもらったことも、一度や二度やありませんし……。あの時はその日、生きていくことに精一杯でした。

 しかし、二人とも時間がないみたいですわね……。

 

「果南さん、それに祥平。時間がないのなら、私が買ってきましょうか?」

 

『えっ!? だ、ダイヤ姉さんが(ダイヤが)!?』

 

 なぜか大げさに驚かれる。ど、どうして、そんなに二人は驚くんでしょうか?

 

「い、いや別に大丈夫だよ。ダイヤ姉さんの手を煩わせるまでもありません!」

 

「そうだよ! それにアルバムって意外と高いから、ダイヤのお財布を薄くしちゃうかもしれないし」

 

 むっ……お財布が薄くなるのは困りますわね。いつ来るか分からないイベント、ガチャに備えてお金を常に持ち合わせていないといけませんし。

 うーん、今回は仕方ありませんわ。二人の言う通り、ここは素直に引きましょうか。

 

「だったら、TSUTAYAで借りればいいじゃない?」

 

 そこまでポチポチと、スマホをいじっていた鞠莉さんが声を上げる。つ、ツタヤとはあれですわよね。CDとか、漫画とかが借りられる、素晴らしい施設ですわよね?

 

「ダイヤも、TSUTAYAくらい知ってるわよね?」

 

「ま、まぁ一応……」

 

「それじゃあダイヤ。忙しい二人に代わって、GReeeeNとback numberの新作CDを借りてきて頂戴。確か、今週末は何も予定は入っていなかったはずだし」

 

 どうして鞠莉さんが、私の予定を知っているのでしょうか? いささか疑問ですが、まぁ二人の役に立てるのならば別に構いません。

 

「ダイヤ、無理しなくていいからね? 私たちだっていつでも借りられるわけだから」

 

「そ、そうだぞダイヤ姉さん。ダイヤ姉さんは家でゆっくりしてもらえれば……」

 

 どうやら果南さんと祥平は、よっぽど私をツタヤに行かせたくないらしい。あそこまで露骨に言われると、負けず嫌いの自分が顔を出しますわね。

 

「別に無理なんてしていませんわ! それに家でダラダラしていても暇なだけですもの」

 

 私はグッと親指を立てた。いつもなら一人で行かない場所ではありますが、自分の知見を広げるいい機会です。今回はその機会を、有効利用させてもらいましょう。

 

「ほ、本当に大丈夫ダイヤ?」

 

「大丈夫ですわ、果南さん! 私だって子供じゃないんです。それにこちらに来てもう一年なんですから」

 

「そうよ、果南! ほらっ、可愛い子には旅をさせよってよく言うじゃない。可愛いダイヤにも旅をさせなくちゃ!」

 

「だから、子ども扱いをしないで下さい!!」

 

 全く、鞠莉さんはいつもいつも……。ふふんっ! しかし、私を子ども扱いできるのも今のうちですわ! 今回、この重要なミッションをコンプリートして、みんなをぎゃふんと言わせてやるんです!

 

「それじゃあ、果南さんに祥平! 二人のCDを私が無事借りてきて差し上げますから、大船に乗ったつもりで待っていて下さい」

 

「ダイヤ、ついでに私が借りたかったアルバムも借りてきて! ONE OK ROCKってバンド名だから」

 

「わ、わんおくろっく? なんだかよく分かりませんが、了解しましたわ!」

 

 メモ帳を取り出し、当日借りる最新アルバムのアーティスト名をメモしていく。

 

「えーっと、ぐりーんに、ばっくなんばーに、わんおくろっくですわね。しっかりメモできました! これで今週末のミッションはバッチリです!」

 

「ねぇ、鞠莉。まさかと思うけど、ダイヤで遊んでない?」

 

「そんな事はありませーん! 可愛いダイヤの反応を見て、楽しんでいるだけでーす!」

 

「結局、遊んでるのと何も変わらないじゃん……」

 

 何やら果南さんが呆れたよな表情を浮かべていますが、今はそんな事気にしている余裕はありません。

 来る日に向けて、しっかりイメージトレーニングを積んでおかないと……。

 

「本当に、大丈夫かなぁ?」

 

 ぽつんと呟いた祥平の心配そうな声は、鞠莉達の声によってかき消されてしまったのだった。

 

 

● ○ ●

 

 

「さて、ツタヤに無事到着したわけですけど……想像よりもずっと広いですわね」

 

 透明な扉越しに見ても、そう思うことができる。後、すごく人が多い。人が少ない想定で来たんですけど、流石は人口の多い東京というわけでしょうか。

 休日という事も相まって、かなりの人がうろうろとしています。ひ、人ごみに酔いそうですわ……。

 

「いえ、こんなことで怯んでなんかいられません! 果南さんたちの為にも、今日は頑張るのですわ!」

 

 扉の前で拳を高々と掲げたため、近くにいた人がギョッとしている。

 しかし、強い気持ちをもって臨まないと、簡単に負けてしまいますわ。だからこそ恥ずかしがらず、堂々と自分をさらけ出していく必要があるんです。

 

「レッツゴーですわ!!」

 

 意気揚々とツタヤに足を踏み入れる私。すると、まず目に飛び込んできたのは、大きな本棚に所狭しと詰め込まれた書籍の数々。このエリアは、古本や中古ゲームのコーナーですわね。

 これもネットで予習済みですわ。

 

「今日は時間もありますし、少しぶらぶらしてみましょうか」

 

 興味本位で私は、古本コーナーをうろうろとし始める。ほんと、色々な本が置いてあるんですね。

 マンガや、小説、参考書なんかまで……。ん? あ、あれは!

 

「ミューズの公式ファンブックですわ! こっちにはそれぞれの写真集……ここは天国ですの!?」

 

 そのうちの一つを手に取り、まじまじと見つめる。これは最終予選の前でしょうか? 一人一人のインタビュー記事が載っています! 

 

 あっ、エリーチカ……いいことを言っていますわね~。流石かしこい、可愛い、エリーチカですわ! 今でもモデルや、女優業で活躍していますし、いつまでも私の憧れでいてほしいものです。

 それに恋人がいると、ファンの前で堂々と宣言したりしていましたわね。多くのファンがいるのにもかかわらず、あの潔い姿。もはや憧れを通り越して、神様のような存在ですわ。

 私も初めて聞いた時には驚きましたが、彼女の勇気を肌で感じて納得したのをよく覚えています。

 

 ただし、付き合い始めてもう10年くらいたつと聞いた時には、腰を抜かすかと思いました。つまり、高校時代からずっと……よっぽど好きなんでしょうね。羨ましい限りです。

 おっと、話が逸れてしまいました。それにしても、気になる本が多いですわね……。

 

 取り敢えず私は、手あたり次第、本棚を物色していく。すると、次から次へと出てくるミューズの関連本。

 気付くと約一時間。時間を忘れて、ミューズの本を熟読していました。

 

「はっ! か、完全に目的を忘れるところでしたわ……危ない、危ない」

 

 しっかりと元あった場所に本を戻して、CDコーナーへと歩いていく。

 

 それにしても、このままCDを借りることなく、アパートに帰ったりしたら、鞠莉さん辺りにバカにされるところでしたわ。

 きっと「あははっ! ダイヤってばやっぱり、お・ば・さ・ん!」って感じに。

 …………。

 

「一文字抜けてますわーー!!」

 

「っ!?」

 

 いきなり大声をあげたことによって、隣にいた人がギョッとしていた。

 

「あっ……す、すいません。なんでもありませんわ……」

 

 隣の人に苦しい笑みを浮かべる。は、恥ずかしいさと通り越して、もう何が何だか……顔が熱いです。

 恥ずかしさで顔を真っ赤にしつつ、私は二階のフロアへ。中古ゲームのコーナーは見ていませんけど、別に興味はありませんし、いいでしょう。

 階段を上がった先には、また違った世界が広がっていた。

 

「またマンガですか……でも、一階と少し違うような」

 

 少しだけうろうろしてみると、『10冊まとめ借りで〇円お得!』と書かれた張り紙が目に入る。

 なるほど、漫画は漫画でもここはレンタルコミックのコーナーでしたか! どうりで全部の漫画が、箱のようなものに入っているわけです。

 

「あら、このマンガは祥平がよく読んでいる」

 

 飾られていたうちの一つを手に取る。

 

 このマンガは祥平に「ダイヤ姉さん! これ読んでみませんか?」と薦められたのですが、時間がなくて断ってしまったんですわよね……。

 私があまり漫画というものに興味がない、というのもありましたけど。……うーん、あの時の祥平、目に見えて沈んでいましたし、少しだけ読んでみましょうか。

 

 私は箱の中からマンガを取り出して読み始める。

 

 えっと、これはバスケの漫画ですか。主人公の影が薄すぎな気がしますけど……。まぁ、きっとここも面白い所なのでしょうね! 

 

 ……ほほぅ、影が薄いからこそできる技もあるのですか。……コートのどこからでもスリーポイントシュートが入るだなんて反則です!! ……はぁっ!? 何ですこのプレイヤーは!? そんなのチートや、チーターやん! ……ぐすっ、負けてしまいましたわ。でもここからです。ここからまた強くなればいいのです! 

 

 結局、祥平が進めてくれたマンガは、意外なことに読みやすく、尚且つ面白かったため……気付くと私は、夢中になって漫画を読み続けていました。そして、

 

「……はっ! ま、また目的を忘れるところでしたわ」

 

 先ほどから何をしているのです!! 今日の目的はCDを借りることですのよ、ダイヤ! しっかりしなさい、ダイヤ! 

 こんな姿を内浦にいるルビィに見せたら、失望されてしまいます。ちなみに、我に返った時には、結構な時間が経過していましたわ……。

 時間にして約一時間。……ま、マンガというものは時間を忘れられる分、恐ろしいものですわね。怖さを再確認しましたわ。

 しかし、すぎてしまったものを気にしても仕方がありません。まだ途中で名残惜しくはありますけど、帰ってから祥平にまた借りることにしましょう。今はミッションの遂行が、何よりも大事ですわ。

 

 そうして私はレンタルコミックコーナーを離れ、更に上の階へ。

 

「や、やっとたどり着きましたわ」

 

 無事にというか、ようやくたどり着いたCDコーナー。私はハンカチで額の汗を拭う。

 

 ツタヤに入ってからここに来るまで、約二時間ほど。予定より、はるかに多くの時間を要してしまいました。それでも、疲れてなんかいられません! 

 疲れているのは否定できませんが、本当の意味で今からが本番なのですから!

 

「さて、それでは早速……まずはぐりーんから探し始めましょうか!」

 

 そう言って新作CDコーナーを見て回る。祥平は新作がどうとか言っていましたし、多分ここで間違いないでしょう。

 すると、一つのアルバムが目に入った。

 

「GReeeeN……これって、メモに書かれたグリーンと同じものでしょうか?」

 

 確かにグリーンと読めなくはない。でも本来の綴りはgreenのはずだ。しかし、このぐりーんはeが四つもある。

 それに、なんかロゴの形が歯に見えなくもないけど……。

 

「変なロゴですわね……」

 

 うーん、本当に正しいのかしら? ですが、他にぐりーんらしきアルバムは見当たりませんし……。

 

「まぁ、いいです。新作コーナーにあるという事は、多分これで間違いないはずですから。取り敢えず、これを借りていきましょう」

 

 近くに置いてあった籠を手に取ると、その中にCDを放り込む。よし、これで目的の一つ目は完了ですわ。

 ふふんっ! 我ながら順調ですね! よく皆さんにはポンコツポンコツ言われますが、私だってやればできるんです! この勢いのまま、サクッと任務を片付けてしまいましょう。

 

(GReeeeNの皆さん、並びに関係者の皆さま。素敵なロゴを、ダイヤが変なロゴと言ってしまった件について、真摯に謝罪させていただきます)。

 

 えっと次は……ばっくなんばーにしましょうか。再び見て回ると、近くにそれらしきアルバムが置かれていた。新作コーナーに置かれていますし、間違いないはずです。

 

「back number……うーん、相変わらずバンド名の意味は分かりませんが、借りていきましょう」

 

 先ほどと同様に、CDを籠の中に放り込む。よしっ! これでミッションの二つ目をクリア。

 後は鞠莉さんが言っていた、わんおくろっくだけですわね。そう思って新作コーナーを見渡しますが……わんおくろっくという名前は、どこにも見当たらない。

 

「おかしいですわね……鞠莉さんが頼んだのは、新作ではないのでしょうか?」

 

 一度新作コーナーから離れ、五十音順に探していくことにする。「わ」から始まるバンド名なので、かなり後ろの方にあるはずだ。

 

「わんおくろっく、わんおくろっく……」

 

 ぶつぶつ呟きながらそのバンドを探すこと約二分。私はあるアルバムを手に取る。

 

「……ONE OK ROCK。わんおーけーろっく? 名前が似てますけど、少しだけ違いますわね。バンドって意外と似ているものが多いと聞きますし、多分別物でしょう」

 

 しかしその後、どれだけ探してもわんおくろっくたるものは出てこなかった。

 

「おかしいですわ……。まさか鞠莉さん。大手CDショップにも置いてないような、マイナーなバントCDを、私に探すよう頼んだんじゃありませんわよね?」

 

 仮に今の予想が本当ならば、どれだけ探したところで絶対に出てこないだろう。全く鞠莉さんってば、誰にも認知されていないような、マイナーバンドを私に探させないでいただきたいですわ。

 

(先に謝っておきます。ONE OK ROCK、並びにその関係者の皆様。先ほどからの失礼な発言、謹んで謝罪させていただきます。本当にすいません)。

 

 だけど、何もしないで引き下がるよりは、一度店員さんに尋ねてみてからのほうがいいでしょう。もしかすると、倉庫の方にあるのかもしれませんからね。

 マイナーバンドはやっぱり探すのが難しいですわ。ブツブツ呟きながら、ちょうど暇そうにしている店員を捕まえる。

 

「あの、すいません。ちょっといいでしょうか?」

 

「あっ、はいっ! なんでしょう?」

 

「わんおくろっくというバンドのCDを探しておりまして」

 

「はいはい、ONE OK ROCKですね。ついて来てください」

 

 えっ? 着いてきてくださいという事は、普通に置いてあるんですの!? いやいや、そんなはずはありませんわ! 『わ』行の所に少なくとも、わんおくろっくというバンド名はありませんでしたし。

 

 もしかすると、倉庫まで連れて行ってくれるのでしょうか? ま、まさか、密室に連れ込んで私の事をあれこれ……はわわっ!? 

 

 想像力……いや妄想力が素晴らしいダイヤさん。

 

 あわあわしつつ、言われるがまま店員さんについていくと、先ほど私が探していた場所まで戻って来てしまった。

 

「えっと、どこにあるかな……おっ! あったあった。はい、こちらですね。ONE OK ROCKならここにありますよ。アルバム名は分かりますか?」

 

「ちょ、ちょっと待ってください! これはわんおーけーろっくですわよね? 私が探しているのは、わんおくろっくというバンドなんです!」

 

「あー……このバンド、これでワンオクロックって読むんです」

 

 私に向かって笑顔を浮かべる店員さん。対照的に私は恥ずかしさのあまり、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

 どうりで見つからないわけです。は、恥ずかしいですわ……。まさか読み方を間違えていただけなんて。

 

「す、すいません。私のせいで余計な手間を……」

 

 私が頭を下げると、店員さんは再び笑顔を浮かべ、「いえいえ」と手をふった。

 

「いいんですよ。店員はこういう時の為にいるんですから。むしろ、もっと頼ってやってください!」

 

 こ、この人は神様か何かの生まれ変わりですの!? どうしようもないミスをしていた私に対して優しすぎですわ……。

 流石はおもてなし王国、日本。涙が溢れてきそうです。改めて感動いたしました! これならいつ、オリンピックを開いても大丈夫ですわね!

 

「それで、もう一度伺うんですけど、アルバム名は分かったりします?」

 

「えっと、よく分からないんですけれども、多分ここに置いてあるものの中で、一番新しいものだと思いますわ」

 

「一番新しいものですね。それだと……あっ! これですね」

 

 手渡されたCDを見て、私はホッと一息をつく。色々ありましたが、これで全てのミッションが完了ですわ。

 予想以上の時間がかかりましたわね。結構疲れてしまいました……。

 

「お客様。これでお求めの物はすべてお揃いですか?」

 

「はい、問題ないです。あなたの力で全部揃いましたわ!」

 

「それは良かった……えっと、すいません。余計なことなんですけど、一応5枚借りるとお得なんです。なので、もう二枚借りていかれたりはしませんか?」

 

「そ、そうなんですか?」

 

 うーん、そう言われると五枚借りたほうがいい気がしてきますわね。ですが、私が知っているアーティストなんて数少ないですし……。

 一応、知っているアーティストの名前でも出してみましょう。

 

「あのー、つかぬことをお伺いしますが……」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「μ'sというグループのアルバムは置いてあったりしますか?」

 

「μ'sですか? もちろん置いてありますよ」

 

「ほ、本当ですの!?」

 

 μ'sがあるだなんて、ここのツタヤは流石です!! ツタヤ万歳!! 気づくと私は鼻息荒くして、店員さんの肩を掴んでしまっていた。

 

「うひゃあ!!」

 

 驚いたような声を上げる店員さんに、私は我に返る。わ、私はなんてはしたないことを……。

 しかし、肩を掴まれた店員さんはなぜか顔を真っ赤にさせ、固まっていた。ど、どうしたんでしょう?

 

「も、申し訳ございません。少し気持ちが高ぶってしまいまして……。それにしても、お顔が真っ赤ですわよ? 大丈夫ですか」

 

「ひゃ、ひゃい! だ、大丈夫ですよ」

 

 声がかなり上ずっていますわね……。でも、本人が大丈夫だとおっしゃるのなら、変に詮索するのはやめて差し上げましょう。

 

「え、えっとですね、よろしければご案内しますけど、どうしましょうか?」

 

「いいんですか!? 是非ともよろしくお願いします!!」

 

 ま、また鼻息が荒く……μ'sのことになると興奮する癖、どうにかしないといけませんわね。Aqoursの皆さんにも何度か咎められましたし……。

 少し落ち込んだまま、店員さんに案内されてμ'sのCDがある売り場まで歩いていく。

 

「こ、ここでひゅっ!」

 

「ありがとうございます!! あなたのご恩は一生忘れません!!」

 

 私は店員さんの手をしっかり握り締めると、感謝の気持ちが伝わるように頭を下げた。そして、ニッコリと笑顔を浮かべる。

 

「い、いや、わた、わた、私は店員として当然のことを、し、したまでであってですね……」

 

 一方頭を下げられた店員さんは、さっきよりも顔を真っ赤にして焦っている。一体どうしたというんでしょう? まぁ、いいですわ。

 それよりも早速μ'sのCDを……うわぁ! μ'sのCDがこんなにたくさん! まさにこの空間こそがユートピア! オアシス!! 天国ですわ!! 

 しかも、今はちょうどエリーチカの特集を……。

 

「うーん、どれを借りていきましょう? アルバム自体、ほとんど網羅しているとはいえ、お金がなくて購入を見送ったものあるんですのよね~」

 

 たっぷり十分ほど悩んだ後、私は借りていくアルバムを決定する。

 

「お借りするアルバムは決まりましたか?」

 

「はいっ! このアルバムを借りられたのは、あなたのお陰です!」

 

「こ、ここっ、こちらこそ。あなたの様な美人さんのお手伝いができて光栄です!!」

 

「ふふっ! あなたは優しいだけじゃなく、人を褒めるのも得意みたいですわね?」

 

 美人と言われて悪い気はしません。ほんと、このお方は優しいですわね。日本人の鏡と言っても、過言ではありませんわ。

 

「それではアルバムも借り終えたことですし、お会計に移りましょうか?」

 

「はい!」

 

 うーん、それにしてもいい気分ですわね。沢山借りることができて、私は大満足です。

 そのまま私は店員さんに連れられ、会計を済ま……せたかったのだが、

 

「……それでは5枚レンタルで1000円になります。えっと、お客様。Tポイントカードはお持ちですか?」

 

「てぃーぽいんとかーど?」

 

 はて? と首をかしげる。てぃーぽいんとかーど……初めて聞く単語ですわね。カードというのは単語を聞いて分かるのですけど……それがないと、何かまずいのでしょうか?

 

「えっと、持っていませんけど……ま、まさかそれがないとアルバムが借りれなかったりするんですの!?」

 

「まぁ、そうなりますね」

 

 ガーンッ!

 私はショックのあまり、膝から崩れ落ちてしまった。そして、一筋の涙が頬をつたう。

 

 な、なんてことですか……。せっかく……せっかく、ここまで来たというのに。あと少しで、ミッションがコンプリートで来たのに……。たかが、カード一つで私は負けてしまうというのですの!? 

 まるで魔王を最後の最後まで追い詰めた勇者が、まさかの反撃を受け、撃沈したような気分ですわ。

 

「お、お客様! 安心してください。カードが無い場合は、ここで作ることが可能ですから!」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

 地獄に仏とはまさにこのこと。私は勢いよく立ち上がると、店員さんの顔を覗き込む。

 

「はい、大丈夫ですよ。今からご用意しますので、少々お待ちください」

 

 そう言って店員さんが机の下から、そのてぃーぽいんとかーどとやらを取り出した。

 

「むぅ……流石ティーと言った通り、黄色でTマークが描かれていますわね。それでこちらをどうしたらよろしいでしょうか?」

 

「まずは住所などを教えていただきたいので、こちらの紙に必要事項を記入していって下さい」

 

「分かりましたわ! えっと、名前は黒澤ダイヤっと……」

 

 指示通りに必要事項を記入していく。住民票を移していなかったら面倒でしたけど、幸い移してありましたからね。そこら辺は少し楽ですわ。

 

「書き終わりましたわ!」

 

「はい、少し確認しますので……大丈夫ですね。それではこちらが黒澤さんのTポイントカードになります。最後に、カードの裏に自身の名前を書いてもらう所がありますので、そこにもう一度自身の名前を書いてください」

 

 なんと、カードの裏にまで名前が必要なんですね。ダイヤ、びっくりですわ。……バカなことを考えていないで、早く名前を書かないと。すらすらと名前を書いていく。

 

「はい、確認しました。それではお会計に入りますね」

 

 店員さんが籠の中身を取り出し、会計を済ませていく。

 

(ふぅ、色々ありましたけど無事終わってよかったですわ。後はこれを持って帰るだけ……)

 

 そこでなぜか、本当になぜかわからないけど、祥平の顔が頭に浮かんだ。そういえば、祥平にはいろいろやってもらっているのに、まだお礼ができていませんわね……。

 

「あ、あのっ!!」

 

「はい?」

 

 最後のCDを取り出していた店員さんに声をかける。本当はここまで手伝って下さった方にこんなこと、とてもおこがましいのですが……。

 

「その最後のCDを返却して、新しいCDを探したいんです……こんなタイミングで申し訳ございません」

 

 キュッと目を瞑って頭を下げる。流石にこれは呆れられましたわよね?

 

「……分かりました。ここまで一緒に探してきたことです。今はちょうど人もいませんし、最後まで付き合いますよ」

 

 ハッと顔をあげると、そこには先ほどと同じ笑顔を浮かべる店員さん。

 

「ほ、本当によろしいんですの?」

 

「もちろんです! 俺の言葉を信用して下さい」

 

「……ありがとうございます。このご恩は一生忘れません!!」

 

「全く、大袈裟ですよ。それで、どんなアルバムを借りたいんですか?」

 

 菩薩のような店員さんに感謝をしつつ、私は口を開く。

 

「えっとですね、私の友人がGReeeeN好きなんです。それで、GReeeeN好きの人が他に好きなアーティストって想像つきますか?」

 

 な、なんだか少し恥ずかしいですわね……。いやいや、何を恥ずかしがっているんです! 

 ただ、祥平には借りがあるだけで、その借りを返しておきたいだけですわ! そこに他意も何もありません!!

 

「ま、まぁ、ある程度なら想像つきますけど……どうしてそのアルバムを借りたいんですか?」

 

「……その友人にはいつも助けられているのです。だからせめてものお礼をと。まぁ、こんなので代わりになるとは思えませんけど……」

 

「いや、その気持ちが大事だと俺は思いますよ。その人がどこの誰かは分かりませんけど、気持ちは絶対に伝わります。だから自信を持ってください!」

 

 ……どこまでも優しいんですか、このお方は。本当に今日の出会いに感謝したいです。

 

「何度目か分かりませんが、本当にありがとうございます!」

 

「気にしなくて大丈夫ですよ。それじゃあ早速、友人を喜ばせるためのアルバムを探していきましょう!」

 

「はいっ!!」

 

 そう言って私と店員さんは、最後のアルバム探しを開始したのだった。

 

 

● ○ ●

 

 

「だ、ダイヤ、本当にアルバムを借りてこれたんだ……」

 

「果南の言う通り、本当に借りてこれるとは……明日は吹雪だ」

 

「ダイヤ、こんなこともできるようになって……成長したわね」

 

「皆さん、揃いも揃って私を馬鹿にしていますわよね!?」

 

 ダイヤ姉さんが憤慨しているが、驚くのも無理はない。だって俺、ダイヤ姉さんが本当にCDを借りてこれるだなんて、微塵も思ってなかったから。

 それに借りれたとしても、絶対違うやつを借りてくるもんだとばかり……。

 

「それにしても、ダイヤ。よくONE OK ROCKを見つけられたわね。メモだとわんおくろっくって書いてあったのに」

 

「ふふんっ! 私も成長したのです! いつまでもポンコツ扱いしていたら、痛い目を見ますわよ!」

 

 果南や鞠莉より圧倒的に寂しい胸を張って、ダイヤ姉さんが得意げな顔になる。とっても子供っぽい。

 しかし、俺には一つだけ気になることがあった。

 

「なぁ、ダイヤ姉さん。GReeeeNのアルバムを借りてきてくれたことはいいんだけど……これはどうしたの?」

 

 俺が手にしたのはMr.childrenのアルバム。なぜかGReeeeNのアルバムと一緒に入っていたのだ。

 

「えっ? 祥平、そのアーティスト、嫌いでした?」

 

「いや、全然嫌いじゃない……って、そんな悲しい顔しないで! 本当に嫌いじゃないから! むしろ俺の好きなアーティストのアルバムでびっくりしてるんだよ!」

 

 シュンとしてしまったダイヤ姉さんに、慌てて捲し立てる。俺がミスチル好きだというのは嘘じゃなく、本当の話だ。

 しかし、どうしてこの事をダイヤ姉さんが知っているのだろう? 一度も話してないはずなんだけど。

 

「祥平にはぬいぐるみを取ってもらったり、色々としてもらったでしょう? ですからこれは、せめてものお礼です」

 

「お、お礼って……別に俺は気にしてないのに」

 

「私が気にするんです!」

 

 少しだけ頬を膨らませたダイヤ姉さんが、俺に人差し指をビシッと突き付ける。

 

「ま、まぁ、正直に言うと、この選択ができたのも、店員さんが協力してくれたおかげなんですけどね。だけど」

 

 するとダイヤ姉さんが恥ずかしそうに、だけど嬉しそうにはにかんだ。

 

「……このアルバムを一生懸命選んで良かったです。こうして祥平に喜んでもらえて。祥平の喜ぶ顔が見れたんですから」

 

「っ!?」

 

 はぁ、やられた。今のダイヤ姉さん、滅茶苦茶可愛い。彼女のはにかんだ笑顔に、不覚にもときめいてしまった。

 

「祥平、顔が真っ赤みたいですけど、どうかしました?」

 

 そう言って、グイッと顔を近づけてくるダイヤ姉さん。こんの、鈍感娘がぁ!!

 

「な、何でもないから。大丈夫だから!」

 

「ほんとですの? 風邪っぽいのなら早めに言って下さいね」

 

「あはは……」

 

「…………」

 

ぎゅぅううううう

 

 果南さん、無言でわき腹をつねるのはやめて下さい。痛いっす。ついでに鞠莉は笑ってないで助けなさい。

 

「それはそうと鞠莉さん! 私がツタヤで体験した全てを、お話しして差し上げますわよ! これはもう一冊の本にできるレベルですから!!」

 

「……ダイヤってば、鼻息がベリーハードよ? まぁいいわ。気のすむまで付き合ってあげる」

 

 ダイヤ姉さんが鞠莉の方に向かっていく。た、助かった。

 

「……祥平、ダイヤ見てデレデレしてた」

 

「ご、ごめんって果南! あれは不可抗力で――」

 

 ご機嫌斜めの果南を宥めること約5分。ようやく彼女の機嫌も直り、二人で元気よく今日あったことを、鞠莉に話しているダイヤ姉さんを見つめる。

 

「ほんと、よくダイヤ姉さん。一人でTSUTAYAに行けたよな。本気で無理だと思ってたのに」

「もしかすると、よっぽど優しい店員さんがダイヤに手取り足取り、教えてくれたんじゃないのかな? ちなみに祥平」

 

「ん? どうした?」

 

「ダイヤが店員さんと一緒に選んだアルバム……持ってるよね?」

 

「……うん。まぁな」

 

 ダイヤ姉さんが借りてきた、ミスチルのアルバムを天井にかざす。

 果南の言う通り、俺はこのアルバムをすでに所有していた。それも初回限定版を。

 

「優しいよね、祥平は。持ってるってこと、ダイヤに言わないんだもん」

 

「そんなの当たり前だよ。だってさ、持ってるなんて言ったらダイヤ姉さん、きっと悲しむだろうからな」

 

 そう言って、俺はダイヤ姉さんを見つめる。相変わらず彼女は幸せそうな笑顔で鞠莉と話していた。

 

「……俺的には、幸せそうなダイヤ姉さんを見れただけで十分だよ。果南もそう思わない?」

 

「ふふっ♪ 確かにあんな笑ってるダイヤ、久しぶりに見たかも。祥平のお陰だね!」

 

 まぁ、初回限定版のアルバムは、厳重に隠しておかなきゃいけなくなったけど……。うーん、どこに隠しておこう?

 

「それにしても、ダイヤ姉さん。どれだけ優しい店員さんに出会ったんだろうな。多分一人じゃ借りてこれなかった……って。……ふふっ、果南。ダイヤ姉さんがお呼びみたいだよ?」

 

「えっ?」

 

「祥平、それに果南さん!! 二人にも話してあげますから、こっちに来てください!」

 

 その言葉通り、こっちに来いと言わんばかりのジェスチャーを繰り返すダイヤ姉さん。彼女の姿を見た俺と果南は……笑って頷きあった。

 

「今行くよ!」「ダイヤ姉さんの面白い話。俺は聞きたいなぁ~」

 

「ふふんっ! そう急かさなくてもゆっくり、いくらでも話して差し上げますわ!」

 

 いつもより輝いた笑顔で、ダイヤ姉さんが話しだす。そんな彼女の話を俺たち三人は、何だか幸せな気分で聞いていたのだった。

 

 

● ○ ●

 

 

 後日、大学にて。

 

「実はさ、先週の土曜日、俺の働いてるTSUTAYAにダイヤ姉さんが来たんだよ!」

 

「っ!! ……へぇ~、そうなんだ」

 

 全てに納得がいった。どうりでダイヤ姉さんが何事もなく、CDを借りれたはずだよ。恐らく、対応した店員さんがこいつだったんだろうな。

 それにしても順平に気付かないダイヤ姉さん……どれだけ必死にCDを探していたんだよ。一生懸命対応した順平が不憫である。

 

「優しい対応をして、すごく感謝されてさ。働いてる最中だったから、順平ですとは言えなかったけど、あれは絶対ダイヤさん、俺に惚れちゃったよ!」

 

 俺はため息をつきつつ、真実を伝えてやった。

 

「ダイヤ姉さん、店員がお前だったって一ミリたりとも気づいてないぞ?」

 

「ダニィ!?」

 

 順平はその日、ずっと泣いていた。




 はい、唐突な特別編でした。少し見返しましたが、もう完全に遊んでいましたね。ダイヤファンの皆様、彼女をポンコツ扱いしすぎてすいません。

 どこかで言った気もしますが、あらためましてこの作品のお気に入りが100人を突破いたしました。これも皆さんの応援のお陰です。
 一応次の特別篇は150人突破したら書こうかなっと考えていたんですけど、現時点で既に突破しており、200人に変更します(笑)。みんなお気に入りよろしく!! ちなみに次は鞠莉が主人公です。

 さて最後に、お気に入り等、いつもありがとうございます! 学校が始まって亀更新となっておりますが、頑張ります!
 それじゃあ、また次回!! 
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