お隣さんは幼馴染? ~俺と果南と時々ダイマリ~ 作:グリーンやまこう
ダ)それは良かったですわ。ありがとうございます。
作)やっぱりダイヤ姉さんは和装が似合いますね。ルビィちゃんとのコンビも本当にもう……尊かったです。
ダ)と、尊い? ま、まぁ、一応褒めてくれているのですわよね?
作)もちのろんですよ。後は足が最高でした。もう、鼻血もんでした。
ダ)っ!? ど、どこを見ているのですか! は、破廉恥ですわ!
作)あの足に踏まれて死ねるなら本望です(`・ω・´)
※取り敢えず作者は変態。後、新曲最高でした。
「あっ、そうだ祥平」
「ん? どうかした?」
今日も俺の部屋にやってきて、一緒に遊んでいた果南から声がかかる。
今現在の果南は、Tシャツにショートパンツという何ともラフな出で立ち。ショートパンツから覗く生足が眩しいぜ。
ちなみに、今は様々なところに色を塗って陣地を増やし、その面積が多いチームの勝ち! みたいなゲームをやっていた。説明下手くそでごめんなさい。取り敢えず有名なゲームなんです!
「今日の夕方ごろにね、私……私たちの友達が遊びに来るんだ」
「うん……えっ? 私たち? というか、今日の夕方!?」
それはそれは、随分と急な話で……。
果南の友達だと思って話を聞いていたのだが、どうやらそれは違うみたいだ。
「私たちってことは、鞠莉やダイヤ姉さんの友達でもあるのか?」
「それでもあってるんだけど、言い換えると部活の後輩みたいなものかな」
「部活の後輩……そ、それってまさかAqoursのメンバー!?」
「そうだけど……ちょっと祥平、興奮しすぎ」
思わず大きな声を出してしまい、ジト目で睨まれる。だけど、これが興奮せずにいられるものか。
「いやー、知り合いがチラホラいるとはいえ、やっぱり生で見てみたかったんだよ。千歌や曜、ルビィちゃんとも久しぶりに会いたいしな」
幼馴染二人やルビィちゃんももちろんだが、まだ会ったことのない他の三人とも会ってみたい。
動画では見たことあるけど、やっぱり生で見るのとではわけが違うと思うからな。それに、動画で見た感じではかなり可愛いし。
「なんか少し心配だけど、まぁいいや。取り敢えずダイヤたちと最寄り駅まで迎えに行く予定だから、祥平はその間少し待っててね」
「了解だ。じゃあ俺はゲームでもやりながら、のんびり待ってることにするよ」
その後はゲームの続きをしていたのだが、時間になったということで果南は部屋を出ていく。ここから最寄り駅までそんなに離れていないのだが、夕食の買い物もしてくるとのことなので1時間ほどかかるらしい。
「ふわぁ……なんか眠くなってきたな」
最近夜更かしばかりしていたせいか、もの凄く瞼が重い。きっとAqoursのメンバーが集まれば、強制的に起きていなければならないだろうし、今のうちに眠っておこう。
そう思って俺はベッドに寝転ぶ。するとあっという間に強烈な睡魔が襲い、俺は意識を手放したのだった
☆ ★ ☆
(……ん? なんか身体が重いような……というか、何かが俺の腹にのっているような)
お腹に重さを感じた俺は、夢の世界から現実世界へと戻ってくる。
別に死ぬほど重いというわけではない。むしろ軽いくらいだ。あと、おもりにしてはやけにやわらかい。気になった俺はゆっくりを目を開ける。すると、
「…………」
「…………」
俺の上にまたがる女の子と目が合った。
輝くルビーのような赤い瞳。特徴的なオレンジ色の髪。ぴょこんとはねるアホ毛。
身体つきは随分大人っぽくなったけど、この女の子がいったい誰なのか。記憶の中で一人の女の子の特徴と一致する。これで間違ってたら恥ずかしすぎるけど、多分間違っていないだろう。
そんなわけで、未だ俺の身体にまたがる女の子の名前を呼ぶことにした。
「千歌?」
「祥ちゃん!!」
「むぐぅ!?」
懐かしいあだ名と共に抱き付いてくる彼女。どうやら、久しぶりの再会を喜んでくれているらしい。しかし、俺はそれどころではなかった。
(千歌の、千歌のおっぱいが、おっぱいが俺の顔に押し付けられてぇえええ!?)
千歌は自身の胸に抱きよせるように、俺を抱き締めている。
そんな事をすればどうなるか。正解は、千歌の成長したおっぱいで窒息死しそうになります。
いや、やわらかいしいい匂いするい、最高なんだけどね!
「祥ちゃん、久しぶり!! おっきくなったねぇ!!」
お前もな。無邪気な声を上げる千歌に俺は心の中だけでツッコむ。どことは言わん。
それにしてもここは天国か何かかよ。こんな場所で窒息死できるなら、俺も本望かもしれない。バカなことを考えていると、
「はーい千歌、そこまでだよ。それ以上すると祥平が窒息死しちゃうから」
「わわっ!」
結構な力で抱き付いてきていた千歌が、あっさりと引き剥がされる。引き剥がしたのはもちろんは果南。
危ない危ない。やわらかい感触を堪能しすぎて危うく、本当に死ぬところだったぜ。ちなみに少しだけ残念な気分になったのは内緒。
そんなわけで俺は改めて起き上がる。千歌がいるということは、恐らくあいつもいるだろう。
部屋を視線を引き剥がされた千歌の左に移すと、これまた特徴的な銀髪を見つける。俺は銀髪と水色の瞳を持つ彼女に笑顔を浮かべた。
「曜も久し振り」
「うんっ! 久しぶり、祥平君。ヨーソロー!」
「ヨーソロー!」
千歌のように抱き付いてきたりはしなかったものの、ニッコリと笑顔を浮かべる曜。そしてお互い、昔と同じようにピシっと敬礼のポーズをとる。いやー、この挨拶も昔のまんまだな。
しかし、身体つきは千歌と同様、かなり大人っぽくなっていた。胸なんか千歌より大きい……ゲフンゲフン。
うーん、内浦の人間は総じて発育がよろしくなるのだろうか? 果南や鞠莉も然り。ダイヤ姉さんは……ノーコメントで。
「それにしても、ちゃんと私たちの事を覚えてたみたいで良かったよ」
「子供の頃は毎日のように遊んでたからな。忘れろって方が無理な話だよ。特に、千歌には散々迷惑をかけられてきたしな」
「ちょっと、それってどーいう意味?」
ぷくっとほっぺたを膨らませる千歌。本人は怒っているということを伝えたいのだろうが、全く怖くない。こういう所は昔と何も変わっていないので安心した。
そこで俺は曜の隣に佇む、もう一人の女の子に視線を移す。
腰まで伸びるワインレッドの髪。瞳の色は黄色で、ツリ目気味ではあるのだが、全体的に御淑やかな雰囲気を身に待っているため、そこまで気にはならない。
身体つきは千歌、曜と比べ、若干スレンダーではあるのだが、二人にはない色気を感じる。その雰囲気がより一層彼女を魅力的に映していた。
「えっと、あなたは桜内梨子さんですよね?」
一応、Aqoursのライブ映像などは擦り切れるほど見たので、全員の名前と顔くらいは知っている。
まぁ、生で見るとより一層可愛くて美人なんだけど。おかげで俺は若干緊張していた。
「はい! 私は桜内梨子です。私の名前を知ってくれているだなんて、ちょっと照れちゃいますね」
恥ずかしそうにはにかむ梨子さん。その笑顔がまた可愛くて……俺の顔がだらしなく緩む。
「あー!! 祥ちゃんってば梨子ちゃんにデレデレしてる!!」
「なぁっ!? べ、別に、デレデレなんてしてねぇし!!」
「嘘だぁ~。祥平君ってば、梨子ちゃんの笑顔見て顔が緩みまくってたよ?」
「ふ、普通だ、普通!!」
「まぁ、梨子ちゃんは確かに美人さんだからね。祥ちゃんがデレデレするのも仕方ないかな」
「だから、俺がデレデレしてる前提で話し進めるのやめろって!!」
幼馴染二人が俺の事をいじめてくる。泣きそう。
「ち、千歌ちゃん! 私は別に美人なんかじゃないよ! むしろ地味な方で……」
「いやいや、梨子さんクラスの女子が地味なんて言ったら、世の中に存在する98%の女性が全員地味ってことになりますよ?」
思わずツッコミを入れてしまった。
俺の言葉に千歌と曜はうんうんと頷き、梨子さんは若干顔を赤くする。
「だよね! ほら~、祥ちゃんも認めれくれてるんだよ? 梨子ちゃんも、もっと自信を持たなきゃ!」
「で、でも、えっと、祥平さんだってお世辞で褒めてくれてるのかも――」
「いや、本気で美人だと思ってるんで安心してください」
「そこで迷わず美人って言える辺り、祥平君はある意味凄いよね……」
梨子さんの顔がさらに赤くなり、曜は呆れたような声を上げる。なぜ曜が呆れているのか。俺には理由がよく分からない。
首を傾げていると、果南がパンパンと手を叩く。
「はいはい、それ以上は梨子が困っちゃうからやめておこうね。祥平も、改めて梨子に自己紹介」
ここで話の軌道を元に戻すあたり、果南はちゃんと先輩なんだなと感心する。最近は俺に甘えてくることが増えたので、余計にそう感じるのかもしれない。
……俺に対する視線が若干冷たいのは無視の方向で。
「それじゃあ、改めて自己紹介な。俺の名前は二宮祥平。こいつら二人と果南の幼馴染。そんで、好きなものは果南。好きな人も果南。果南さえいれば、何もいらないと思っています!」
バシッ!!
元気よく宣言した俺の頭に、ものすごい衝撃が走る。叩かれた頭をさすりつつ後ろを見ると、果南がゆでだこのように顔を真っ赤にしこちらを睨んでいた。
一方、梨子さんは突然の展開に口をパクパクとさせている。千歌と曜は、「やっぱり変わってなかった」と呆れ顔だ。
「痛い……果南、急に人の頭を叩くのは人としてどうかと思う」
「しょ、祥平が悪いんでしょ!! いきなりあんなバカみたいなこと言うから!!」
「バカみたいって、本音なんだから仕方ないだろ?」
「だ、だからって、あんな正直に言うことないじゃん!」
「別に今更なんだし問題ないって。それに、隠しててもいずればれるから大丈夫大丈夫」
「何にも大丈夫じゃないよ!!」
そういいつつ果南は手で顔を覆い、「うぅ、梨子の前なのに……」と呟いている。
「あんなに取り乱す果南さん、初めて見たかも……」
「良くも悪くも、祥ちゃんがマイペースだからね~。まぁ、昔から祥ちゃんはあんな感じだけど」
「祥平君は本音で生きてるから仕方ないよ。それに、果南ちゃんも祥平君の事が好きだし問題ないって!」
「ちょっと! 曜も余計なこと言わないで!!」
口を滑らせた曜に果南が大きな声を上げる。しかし、口を滑らせた後ではすべてが遅い。
「えぇっ!? 果南さんって、祥平さんのことが好きなんですか!?」
「へっ……? えっと、その……」
もごもごと果南が口ごもる。頬もこれ以上真っ赤にならないくらいに赤く染まっていた。
これでは本当のことも言えないだろうし、俺が代わりに答えてやろう。
「もちろん、果南は俺のことが好きだぞ!」
「どうして祥平が代わりに言ってるのさ!!」
再び脳天に直撃する果南のげんこつ。だから、暴力は良くない。
「り、梨子! さっきの祥平の言葉は何というかその……とにかく違うから!!」
「酷い! 果南が俺に対してしてきた事は、全部嘘だって言うの!?」
「祥平はちょっと黙ってて!!」
一喝した後、再び梨子さんへの弁明を始める果南。しかし、梨子さんは「果南さん、可愛い!」って感じの目をしている。なんだか、梨子さんとは気が合いそうだ。
その後、弁明の言葉を繰り返していた果南だったが、疲れてしまったらしく「ふぅ……」とため息をつく。
「全く、なんか無駄に疲れたよ……」
「疲れるも何も、最初から俺の言葉を認めてくれればあんなことには――」
「祥平?」
「……何でもございません」
今回ばかりはまずいと思い、俺は口をつぐむ。ちょっとからかいすぎたかもしれない。千歌と曜も果南の視線に怯えてるし……。
「はぁ……じゃあ、私は下に行って鞠莉達を呼んでくるね。まだ挨拶を済ませてない子たちもいるから」
そう言えば、Aqoursのメンバーはまだ他にもいるんだった。
後はルビィちゃんと堕天使と発育がよろしい子だったな。俺が少しウキウキしながら待っていると、階段を上がる音が聞こえてくる。そして、
「ハァーイ! 祥平、三人を連れてきたわよ!」
元気な声と共に飛び込んできたのはもちろん鞠莉。その後ろには隠れるようにして鞠莉に引っ付く三人の姿が。取り敢えず、初対面の二人に声をかけるわけにもいかないので、俺は久しぶりに見る真っ赤な髪を持つ少女に視線を移す。
赤色の髪をツーサイドアップに纏めた彼女は、不安げな瞳を俺に向けてきていた。そんな彼女に向かって俺は両手を広げる。
「久しぶり、ルビィちゃん」
「っ!!」
名前を呼ぶと彼女の顔がぱぁああっと輝く。そのまま鞠莉の後ろから飛び出し……俺の胸に飛び込んできた。
「お兄ちゃん!!」
甘えるように頬をすり寄せてくるルビィちゃんの頭を優しく撫でる。正直怯えられたらどうしようかと思っていたのだが、杞憂に終わったらしい。それにしても、小動物のような可愛さは相変わらずだ。
「ルビィちゃんも大きくなったなぁ」
思わずじじくさいセリフを吐いてしまう。だけど、自分にもし孫ができたらこんな感じなんだろうな。
「えへへ~。そういうお兄ちゃんもすごく……かっこよくなったよ?」
なんだ、ただの天使か。頬を少しだけ赤く染め、上目遣いで「かっこいい」と言ってくれたルビィちゃんに、でへへと顔が緩む。
あれっ? 今日の俺って顔が緩み過ぎじゃね?
「見た曜ちゃん? 祥ちゃんの顔、酷い緩みようだよ」
「まぁ、ルビィちゃんが覚えてればこの展開になると思ったけど……まさかこんなになんて」
「祥平って元々ルビィを甘やかしがちだけど、久しぶりに会ったらそれがもっと酷くなってるね……」
幼馴染三人、うるさいぞ!
そういえばルビィちゃんが、俺の事をお兄ちゃんと呼ぶ理由について説明していなかったな。説明するほどの理由なんてないんだけど仲良くなった時、ルビィちゃんからそう呼びたいと言ってきたので今の呼び方になっている。
俺としては全然問題なかったのだが、しばらくダイヤ姉さんからの視線がきつかった。ダイヤ姉さんはルビィちゃんの事大好きだからね。仕方ないね。
「る、ルビィが……あのルビィが、あろうことか男に、しかもあんな笑顔で抱き付くなんて……」
「み、未来ずら……」
懐かしいことを思い出していると、呆れる幼馴染の二人で絶句する別の二人が目に入る。恐らくまだ挨拶をしていない、堕天使と発育のよろしい二人だろう。
「ルビィちゃん、後ろにいる二人を紹介してくれないか?」
彼女の頭をもう一度なで、二人の紹介を促す。恐らく状況を理解できてないだろうし、きちんと俺の方からルビィちゃんとの関係を説明したほうがいいはずだ。
「うん、わかった! 花丸ちゃん、善子ちゃん、こっちに来て!」
「ヨハネ!!」
ちょいちょいと、後ろの二人をルビィちゃんが手招きする。
未だ状況を理解できていない二人だが、ルビィちゃんの呼びかけに応じて、取り敢えずこちらに来てくれた。
一名、自分の呼び名が不服だったらしく抗議の声をあげているけど……。
「お兄ちゃん、まずこちらが国木田花丸ちゃんだよ」
「よろしく、花丸ちゃん」
「こ、こちらこそ。よろしくお願いします。えっとおら……じゃなくて私は」
「あっ、別に方言でも構わないぞ。俺だって元は内浦出身だし。それに、方言のほうが花丸ちゃんも楽だら?」
最後、俺の語尾に付けた言葉を聞いて花丸ちゃんの表情がやわらかくなる。こっちに出てきてからはあまり使わなくなった方言だが、たまに使うと悪くないもんだな。何というかしっくりくる。
「それじゃあ、おらは国木田花丸ずら。ルビィちゃんの親友で、一緒にスクールアイドルをやってたずら!」
自己紹介を済ませ、花丸ちゃんがペコっと頭を下げる。茶髪のふわっとしたロングヘアーが特徴的。くどいかもしれないが発育もよろしい。後はやっぱり女の子が方言を使うと可愛いってことくらいか。
さて、自己紹介をされてことだし、こっちも改めて自己紹介をしないと。
「俺は二宮祥平。千歌達と同い年で大学一年生。ルビィちゃんとはダイヤ姉さんつながりで知り合ったんだ。仲がいいのもそれでだよ」
俺の言葉になるほどと頷く花丸ちゃん。仲が良くなってからは忘れがちだけど、ルビィちゃんって極度の人見知りなんだよな。だからこそ、花丸ちゃんも最初驚いていたのだろう。
そして俺は、もう一人にシニヨン美少女に目を向けた。
「っ!!」
しかし俺の視線に気づいたシニヨン美少女は、サッと花丸ちゃんの後ろに隠れてしまう。
「善子ちゃん、何してるずらか?」
「だ、だって……」
「大丈夫ずらよ。確かに最初は驚いたけど、とってもいい人ずら。それに、ルビィちゃんだって信頼してるわけだし」
こっちにチラチラと視線を向けながら、何かを話し合っている様子の堕天使ちゃん。大丈夫だよそんなに警戒しなくても。俺は別に悪い人じゃないから。
「善子ちゃん、お兄ちゃんは優しいから大丈夫だよ」
そういって、ルビィちゃんがニッコリと微笑む。俺は感動のあまり涙を流していた。
どうやったらこんな純粋でいい子が育つんだろう? お兄ちゃん、ルビィがもし彼氏を連れてきたら発狂しそうです。
「ほらっ、善子ちゃん!」
「善子ちゃん、覚悟を決めるずら!」
「ま、待って、そんなに引っ張らないで!」
二人に引きずられるような形で俺の前に出てきた善子ちゃん。まぁ、若干距離があるのは気にしないことにしよう。
しばらく視線を右往左往させ、口をもにゅもにゅさせていたが、
「つ、津島善子……です」
小さな声であいさつをしてくれた。そんな善子ちゃんを見て、ルビィちゃんと花丸ちゃんがニヤニヤしている。
「学校とは大違いずら」
「大違いだね」
「う、うるさいわよ! ルビィにずら丸!!」
恐らく、今みたいに大声を上げる善子ちゃんが素の姿なのだろう。そんな善子ちゃんに向かって俺は笑顔を浮かべた。
「こんにちは善子ちゃん。……いや、堕天使ヨハネって言ったほうが嬉しかったかな?」
堕天使ヨハネといった瞬間、善子ちゃんが目を輝かせる。口には出さないけど、単純だなぁ。
「だ、堕天使ヨハネでお願いしま……っ!?」
興奮気味にこちらへと近づいてきたと思ったら、何もないところで躓く堕天使ヨハネ。
受け止めないわけにもいかないので、そのまま倒れていたヨハネちゃんを抱き締めるような形で受け止める。
「おっと、大丈夫か?」
彼女の無事を確かめるために声をかける。
それにしても、大人気スクールアイドルを事故とはいえ抱き締めてしまった。これはファンからの苦情待ったなしだろう。
「◎△$♪×¥●&%#!?」
しかし、俺の声が聞こえていないらしい堕天使は、顔を真っ赤にさせて固まっている。まぁ、不可抗力とはいえ、急に、しかも今日初対面の男に抱き締められたらある意味当然か。
「…………」
そして、果南から刺さるような視線を感じる。俺の背中に冷や汗が流れた。だ、だから事故であり不可抗力だったんだって!
「ワァーオ! 善子ってば大胆ね!」「よ、善子さん、破廉恥ですわよ!!」
そこの二人! 余計なことをいうんじゃない!!
「っ!! す、すいません!!」
鞠莉とダイヤ姉さんの声に、善子ちゃんは無事再起動して俺から離れていく。若干名残惜しいなとか思ってたら、果南にもっと睨まれました。やっぱり女の子はエスパーらしい。
「ご、ごめんなさい。私、不幸体質らしくてよく何もないところで転ぶんですよ……」
まだ少しだけ赤い顔で善子ちゃんがシュンと俯く。これは本当のことなのかとルビィちゃんに視線を移すと、うんうんと頷いていた。どうやら本当のことらしい。
アニメとか漫画ではそういうキャラいるけど、まさか現実にいるだなんて……。
「いや、気にしなくていいよ。むしろ、転んで怪我しなくてよかった」
俺は善子ちゃんの頭を撫で……すぐにその手を引っ込めた。
「ご、ごめん。いきなり頭撫でちゃって。嫌だったよね?」
「あ……い、いえ、大丈夫です。あ、ありがとうございます……」
ぽしょぽしょと、小さな声でお礼の言葉を述べる善子ちゃん。ヨハネとか言ってるけど、根は凄くいい子なんだな。
そんな彼女に笑顔を浮かべていると、なぜか女性陣の一部から冷ややかな視線を感じる。
「な、何でしょうか?」
「いえ、祥平さんが善子さんをナンパしている、クソ野郎に見えただけです」
「ダイヤ姉さん、何気に酷くないですか? みんなもそう思う……って、ダイヤ姉さんと同じ顔してる!?」
どうやらこの場に俺の味方はいないらしい。果南に至ってはものすごい形相で俺の事を睨んでいる。
俺は唯一、そこまで冷ややかな視線を向けていない、ルビィちゃんと花丸ちゃんに助けを求めた。
「る、ルビィちゃんに花丸ちゃん。今の俺って何か悪かった?」
「え、えっと……あ、あはは」
「ま、まぁ、えっと、その……え、えへへ」
二人にすっごく苦い顔で笑われました。お兄ちゃん泣きそうです。
「取り敢えず、祥平は女心のわからないすっとこどっこいってことでーす! よく覚えておきなさい!!」
鞠莉にすっとこどっこい認定されたところで、千歌が「お腹すいたよ~」といった為、俺たちは夕食を食べることに。
夕食中は特に何も起こらなかったが、食べ終えた俺のスマホに一件のメッセージが届く。
「ん? 誰からだ……」
スマホを開いてメッセージを確認する。そして俺はメッセージを確認した後、スマホをポケットの中にしまった。その後は、なぜか俺の部屋に集まって喋ったりトランプをしたりして(超狭かった。後、むらむらした)、この日は寝ることになった。
☆ ★ ☆
その日の夜。俺はみんなが寝静まったのを確認し、自分の部屋を抜け出していた。
理由は、メッセージアプリによって果南に呼び出されていたから。まぁ、呼び出された理由は何となくわかる。
ちなみに、俺の部屋では千歌と曜が眠っていた。何度も俺は一人でいいと言ったのだが、この二人(特に千歌が)聞く耳を持たなかったのである。
そんな事はいいとして、俺は指定された場所に歩いていく。まぁ指定された場所と言ってもさほど離れてはいない。2,3分くらいで着く小さな公園だ。
俺が公園内に入ると、果南はベンチに腰掛け俺の事を待っていた。
「待ったか?」
「ううん……」
果南の隣に腰掛ける。昼間はすさまじい日差しによってとんでもない暑さになっているが、夜は幾分かましになっていた。
俺はそのまま果南が話し出すのを待つ。しかし、呼び出した果南の方から話しだそうとはしない。
俺は一つ息を吐くと、果南の身体を抱き締めた。
「……祥平、暑い」
「俺は暑くない」
「なに、その理由」
呆れたような声。だけど、彼女の腕はしっかりと俺の腰にまわされていた。
「果南こそ、言葉と行動があってないぞ?」
「……私はいいの」
甘えるようにして俺の胸に顔を埋める。
「何だよその理由」
そのまま俺と果南は抱き締めあう。いつものポニーテールをおろしている果南の髪を指で梳くと、ふわっとシャンプーの香りが漂ってきた。
俺も同じものを使っているのだが、こんな甘い香りはしない。男を誘惑するようなその香りに頭がクラクラしてくる。
「……それで、そろそろ俺を呼び出した理由を教えてほしいんだけど」
流石にこれ以上はまずいと思い、俺は果南に話を促す。
「理由って……祥平も大体分かってるんじゃないの?」
「まぁ、何となくな。恐らく、果南を放っておいて他のメンバーと絡んでたからだろ?」
今日は久しぶりに会ったとはいえ、果南そっちのけで話していたからな。それに善子ちゃんを抱き締めたりもしちゃったし……。
だけど俺は、一種の違和感も感じていた。
「でもそれにしては今日の果南、いつもより冷静だった気がするんだよな。嫉妬にしても、睨まれたりしただけだし」
俺の指摘に果南がピクッと反応する。どうやら俺の感じていた違和感は間違いじゃなかったらしい。
「……何でそう思うの?」
「だって、いつもならもっと嫉妬を全開にして怒ってるだろ? なのに今日はげんこつぐらいだし、あとは睨まれるだけ。プールで俺がナンパされてるときは、もっと怒ってたからさ」
ルビィちゃんの時はいいとして、善子ちゃんの時はもっと反応してもよかったと思うからな。
俺がそこまで指摘すると、果南の抱き締める力が強くなる。耳がいつにもまして赤い。
「………………いの」
何かを呟いたらしい果南だが、末尾の言葉しか聞き取れなかった。
「へっ?」
「だ、だから、恥ずかしいの! 千歌たちの前でこんな私を見せるのが!!」
瞳を潤ませ、顔を真っ赤にさせた果南が顔をあげて叫ぶ。一方俺は首を傾げていた。
「は、恥ずかしい? えっ、何で?」
「だ、だって、私は一応千歌たちより年上で先輩なんだよ。それなのにみんなの前で甘えるって……恥ずかしくてできないよぉ」
腰にまわしていた手で顔を覆い、いやいやと首を振る。どうやら果南は、みんなの前で今みたいに甘える姿を見せたくないらしい。
「みんなの前で祥平と普段通りに過ごすことを想像したら、すごく恥ずかしくて。ほ、ほらっ、私って鞠莉やダイヤに比べたら少しだけ落ち着いてるから」
「あー、確かに。あの二人に比べてたら年上感があるもんな」
別に、ダイヤ姉さんとか鞠莉に年上感がないとは言わないけど、果南の方よっぽどお姉さん感が強いからな。昔から千歌とか曜とか俺の面倒を見てた節もあるし。
だからこそ、余計に甘えにくかったのだろう。一度ついたイメージを崩すって、結構怖いことだからな。俺が果南の立場なら、同じ風に悩んでいたかもしれない。
「だからね、頑張って気持ちを抑えてたんだけど……」
「我慢できずに、こうして俺を呼んだってわけか」
こくんと頷く果南。そして、弱々し気に言葉を吐きだす。
「……ごめん、やっぱりめんどくさいよね私」
涙が混ざった声色。
あぁ、もう! 全く、果南は妙なところでセンチメンタルだよな。
そう思い俺は果南の頭を少しだけ乱暴に撫でる。
「わわっ!? な、なに? どうしたの祥平」
「果南!」
俺は果南の髪を撫でながら少し大きめの声を出した。
「そんな風に自分を卑下するな。前も言ったけど、俺は果南が好きなんだよ。もちろん、果南の優しいところだったり、お姉さんなところも好きだ。でも、果南のめんどくさいところだって、すぐ嫉妬しちゃうところだって、少しエッチなところだって。全部、全部好きなんだよ!!」
恥ずかしかったが、これで果南の不安を取り除けるならどうってことない。元々は俺が原因みたいな部分もあるからな。
一方果南は、俺の言葉に驚きと恥じらいが混ざったような表情を浮かべる。
「……祥平はやっぱり変わってるよ」
「それでも果南が好きだから」
「も、もぅっ! ……ばか」
今度は果南の方から抱き付いてくる。そんな彼女の身体を優しく抱き締め直した。
「それに、最後の言葉は余計だよ。別に私、エッチじゃないもん……」
「いや、それはないだろ」
思ったことを素直に言ったらわき腹をつねられました。その後、何も言わずに抱き締めあう。
「……なぁ、別に無理して千歌たちの前で今の果南を出さなくてもいいんじゃないか?」
「えっ……で、でも……」
「その代わり……嫉妬したら、後からいくらでも俺に甘えたらいい。今みたいにな」
パチッと、慣れないウインクをした俺を見て果南が「ぷっ!」とふき出す。
「なっ! わ、笑うことないだろ!? せっかく果南を励ましてたのに」
「ご、ごめんごめん。あまりにもきまってなかったから、つい」
「どうせ俺のウインクは決まらないですよーだ」
そっぽを向く俺。拗ねた俺の頬を果南が両手で優しく包む。
「……キスはしなくていいのか?」
「うん。今日はしなくていいよ。それよりも今は……このままギュってしててほしい」
うちの果南は可愛すぎかよ……。俺はお望み通り、果南の身体をギュッとすることを継続する。
「ねぇ祥平」
「どうした?」
「好き」
「……勘弁してくれ」
俺は顔を赤くしてそう呟くのが精いっぱいだった。
☆ ★ ☆
「ねっ? 面白いものが見れたでしょ?」
「面白いものって、これのことでしたの?」
茂みの後ろで二人の様子を見つめていた鞠莉が後ろを振り返り、パチッとこちらは様になっているウインクを決める。
ここにいるのは果南と祥平を覗いた8人。もちろん連れてきたのは鞠莉。ダイヤはあきれ顔。
一方、この甘々な果南を見たことのない6人は少しだけ面食らっていた。
「うわわわ……果南ちゃんってば完全に別人だよ」
「た、確かにそうね。見てるこっちが恥ずかしくなってきたわ……」
「昔から祥平君の事を好きだってことは知ってたけど、ま、まさかこれほどなんて……」
二年生組(今は大学一年生)は、見たことのない果南に赤面し、
「果南さん、とっても可愛いね!」
「乙女ずらね、果南さん!」
「何というか、果南さんのイメージがいい意味で崩れたかも」
一年生組(今は高校三年生)は、なぜか今の果南をみて感心していた。
読了ありがとうございます。
本当は今週に投稿する予定はなかったんですけど、昨日のダイヤの尊さに充てられて投稿することになりました。やっぱりダイヤは足がいいですよね、足が!!
さて、次回の投稿もいつになるか分かりませんが、なるべく早いうちに投稿できればと思います。