インフィニット・ストラトス ~鴉は再び羽を広げる~ 作:外道野郎
というよりかはfaの最後を改変しております。許せない!という方はここで引き返すべきです。
嗚呼……何故、こうなったんだろう。その気持ちだけで自分の心は一色に染まる。
どうしてだろうか?なぜだろうか?問いかけても返す言葉はない、ありはしない。鋼鉄の桶に一人だけでいるのだから当たり前だろうか
膨大な情報が自分の中に入っていき、最初は気持ち悪かったが……結局、十二年後でも未だそれは治らない。最低ランクの適性じゃ当たり前だ。粗悪品だ。それは十二年前に言われた言葉通りだ。伝説?救世主?大層な事を言われてもそれだけは変わらない。
「---聞こえてる?」
インカムから良く知っている声が聞こえた。良く知った、十二年前から少しも変わってない声で自分に聞いてくる。
「ああ、聞こえているよフィオナ」
よく聞こえるさ。昔から、もう十二年間聞けばその声は聞き間違えたりはしないさ。少女から女と言える歳になったとしても、決して間違えたりはしない。
「ミッションを説明するわ。
人類種の敵である首輪付きが乗るストレイドを破壊して
彼はアルテリア・カーパレスを占領した後にそのまま空へ飛び立ち、クレイドルを攻撃しているそうよ。
貴方に課せられたミッションはただ一つ……首輪付きの殺害です。満身創痍である貴方にこんな事は頼むべきではないと理解してる……だけど、もう対抗出来るリンクスはもういないの」
--その通りだ。もう首輪付きを、アイツを止める事が出来るのはもういない。首輪が解き放たれた男を止める事は殺すしか止める方法はない。だからこそ、病み上がりの俺が飛び立っている。
「あのホワイト・グリントはもう使えないけど…だけど、良かったの?この機体はもう旧型なのよ…?」
「もう残ってる良い機体となるとこれしかないだろう?もう、この"ホワイト・グリント"しか残ってないだろう?」
俺の戦友が使っていた。ジョシュアが使っていたこのホワイト・グリントしか良い機体は残ってなかった……と言えば、嘘になる。俺の最初の相棒だった03-AALIYAHも残っていたのだからな。だが、俺は何故か。アスピナから用無しとなり、買い取ったこの機体を何故か駆っていた。
「だけど、その機体の整備は最低限……補助AIも積んでない……それでも「やるさ」……そう…」
「ジョシュアの魂がここに残っている。お前の想いが俺の胸に残っている。なら、いける。絶対にあの首輪の外れた男を殺す事が出来るさ」
本来ならモニターに彼女は映ってくれる筈なのだが、俺達はインカムを通して話し続けた。
それが幸いした。俺には最後の幸運なのかもしれない、何故なら…
「……そう思っているの?」
「思っている(思ってない)」
「……生きて帰って来てくれるの?」
「保証する(保証出来ない)」
「約束……してくれるの?」
「ああ、必ず生きて帰って来るよ(帰って来れるかわからない)」
嘘を言っているからだ。
優しいとは程遠い、嫌な嘘だ。帰って来れる気なんてないのに帰って来るなんて俺はこの期に及んで口に出していた。汚い、薄汚れた嘘だ。そもそも、俺は病み上がり、数年間は戦いから遠ざかっていたとは言え元々はあの時の戦いで蝕みを受けていた身。あのホワイト・グリントに乗ってからはAIに戦闘補助を頼んでいた始末だ。そんな俺がカラードランク1から4とオリジナルリンクスの一人、合計5人を相手にして勝ってしまったあの獣を倒すなんて俺が考えても、彼女が考えても、誰が考えても無理だ、不可能だとも言っても良い。しかも機体はロクな整備もしていない為に全て俺のマニュアル操作。勝てる見込みも殆どない
しかし、彼女は
「絶対に勝って帰って来て」
そう言ってきた。モニターに彼女の苦い笑みが映りながらも優しく、そして案じてくれる声で言ってきた。
……あの時と変わらない。あの時と、数十年前に、いつ言われたかもわからない。だが、聞き覚えだけはあった。心だけは覚えていた。だからこそ、俺は言えたんだろう。
「了解」
…と。
そして、決まって彼女はこういう時に鋭い。俺の顔を見て、確信したんだろう。苦い顔からもぎこちのない笑みを向けながら言ってきた。
「……嘘、バレバレ」
--やはり、彼女にはお見通しだったようだ。俺もヤキが回ったのか?…まっ、悪い気分じゃない。
「…すまないな。どうしたら許してくれるんだ?」
そしてまた、俺も悪くない気分でいつも通りにこの言葉をかけた。昔から変わらない、一字一句変わらないこの言葉を投げ掛けた。答えはわかっているのに投げ掛けた。聞きたい…という気持ちだった。あの笑顔で、少し怒ってるような笑顔で、あの……愛しい声で
「……嘘を本当にしてくれたら許しますよ。
貴方なら出来る筈でしょ?ね?伝説のレイヴン」
「……ああ、そうだな。やってみせるさ……見ておいてくれフィオナ。最後の鴉の戦いを」
「……ええ、見ている……貴方に幸運を」
「……ありがとうフィオナ」
嘘を本当に。嘘つきの俺にはちと難しい依頼だ。だが、やりごたえのある……唯一無二の依頼でもある。いくら積まれようがこの依頼だけは達成させてもらおう。それが……アナトリアの傭兵としての、最後のレイヴンとしての誇りのようなものだからだ。
「……そろそろ来るわよ」
わかってるさ。アイツが見えてくる筈だからな…獣がな
「レーダーに気鋭、ストレイドよ。機体はラインアークの戦闘と変わらないローゼンタール社の標準機のTYPE-LANCEL。武装は「あの時と変わらずにライフル、ブレード、チェインガン、ミサイル」…ええ、そうよ」
だろうな。アイツはそういう男だ。そして、恐らくあいつは
「APと武器満タンなんだろう?」
「…ええその通りよ」
やっぱりな。死にたくないお偉いさんが殺さない代わりにと、やったんだろう。おかげでこっちは罰ゲームだ。
「…これが本当のラストミッションよ。お願い、生きて帰って来て!」
「フッ…了解した。ホワイト・グリント、交戦に入る!」
そして、獣に俺は戦闘を挑みに行った。
---どれ程の時を戦ったんだろうか?
分かる事は目の前の敵とずっと交戦していた事だった。こちらが牽制で撃ちに行った後に直ぐに奴もライフルでこちらを狙いながら頭上に拡散ミサイルで牽制、それを直ぐに躱して互いにクイックブーストを使いながらレーザーブレードでの切り合い……長くなるから考え込むのはやめよう。
状況は互角……いや、こちらが若干不利だ。数少ない遠距離武器であるレーザーキャノンを撃ち尽くしてしまってるせいだ。まあ、向こうはミサイルを撃ち尽くしてしまっているがそれだけだ。あちらにはレーザーブレード、ライフル、チェインガンが残ってる。アサルトライフルとレーザーブレードだけで武器の差があった。唯一勝ってる点といえば軽量の為にこちらが速いという点だった。白き閃光と呼ぶには確かにうってつけの機体だ。もっと早くに使っておけば良かったな……まあ、嘆いたところで仕方ないが……まずは奴を殺さないとな。
そして、背後から来る機体に対して牽制をかけながら俺はクイックブーストを駆使しながら離れながら雲に隠れた。しかし、獣はお構い無しに突っ込んで来る。そして、そのまま俺はレーザーブレードを振るわせる事にした。
「バカが…ッ!」
しかし、奴はわかっていた。こうなる事に
そのままクイックブーストとエンジンカットで下に下がると下からチェインガンとライフルの突き上げが来やがった。なんとか躱そうとするも、そうもいかない
「AP40%に減少……ヒットアンドアウェイで相手を仕留めて、相手は軽量2脚の仕留め方にも熟知している……侮れない」
「わかっている…!」
そして、右手のアサルトライフルを撃ちながら俺は機体を動かす久々のマニュアルだったが意外にもなんとかなるものなのか、アイツと戦い続けられている。経験か、カンか、それとも……いや、思いふけっても仕方の無いことだ。今は獣を狩る鴉となるしかないからな
「残弾は…チッそこまで持たんか」
アサルトライフルの弾数は三割を切っていた。もう牽制もマトモに入れる事も出来ん……ならば
俺はすぐに2段クイックブーストを駆使して、獣へと接近する。相手はそれに反応してチェインガンとライフルで迎撃して来るがそれは甘い。あまりにも短調的な攻撃だった。いや、こちらの攻撃には反応出来ていたし、迎撃としてもなかなかの味だ。このまま行けば俺は蜂の巣になる。だが…俺はこれだけしか出来ないと一言も言ってもいない。
「あまり…使いたくはねぇ……なっ!!」
軽口を叩きながら久々ともなるクイックブーストキャンセルを行い、その弾丸を回避、再び2段クイックブーストで接近しプライマルアーマーを消し飛ばすかのようにレーザーブレードを振るう。そのままクイックブーストを吹かせてPプライマルアーマーなくなった獣の機体にアサルトライフルをぶち込み、レーザーブレードをもう一度振るう。流石に奴もバカではなく回避はしたが…まあ、問題は無い。チェインガンはとったのだからな。そのままヤツはクイックブーストを吹かせながら後方へと下がり、距離を置いてくる。こちらもブーストを吹かせ過ぎた為に少し合間を置くしかないために好都合とも言えた。
「相手のAPももう僅かの筈よ。このまま勝利を…お願い」
「わかってるさフィオナ」
分かりきっている。順調に奴を殺す。確実にな
……奴がライフルで少し牽制しながら様子を伺ってきた。相手は中量2脚射撃性能とかは向こうの方が上だ。近付こうにもこちらは長時間の戦闘ともあり、負荷がかかっている。インターバルは置かなくてはならない。"戦いはなるべく万全に"最初に教わる基本はその通りだ。無闇に突っ込めば死ぬ。新米は大半はこれだ。万全にしないで感情で行く……が、残念ながらこっちは15の時からの根っからのAC乗りだ。そういう事にはならんさ
「ストレイドのプライマルアーマーが回復……来るわよ!」
「…!」
獣はオーバードブーストでこちらに突っ込んで来た。
「何考えやがんだ…!」
直ぐにクイックブーストで右側面に周りレーザーブレードで斬り付けようとした。だが、それは甘い考えだ。奴は獣。俺のその反応を待っていたのだから
「高濃度コジマ反応…!逃げて!」
遅い。ストレイドはもう緑色の粒子を身にまとっていた。逃げる事は不可能、喰らえばこの機体も危険になる……だが
「ハッ…考えろマヌケ」
この瞬間を待っていた。
「直ぐに退」
彼女の言葉はアサルトアーマーの音によって掻き消された。機体に強い衝撃と耳障りなアラームの音が鳴り響く。ああ、この瞬間を待っていた。この耳障りな音が聞こえる時を。
…そうだ、強敵はこういう時やってくる行動は決まっている。
「……単純なんだよ」
そう言いながら俺はレーザーブレードを頭上に振るった。ああ、こういう時こそこうなる。分かっていたさ……なぜならそれは
「十二年前に俺がやってた事だ」
ストレイドのブレードは俺の機体の右腕を持っていったが……残念だったな、これは俺が上手だったようだ。
「……嘘…だ…ろ」
青年の声が聞こえた。齢にしてまだ10代だろうか……これが奴の正体だったということか
「残念だったな。リンクスはそれで倒せても……レイヴンはそれじゃ倒せんよ」
「……鴉を仕留めることは出来なかった……か」
そのまま、俺は少しストレイドから離れた。そして、奴の機体は力無く下へと落下して行く。糸の外れた糸人形のように
「……飼い主を殺せば、こうもなる。勉強になったな首輪付き」
奴に聞こえてるかはわからんが俺は不思議とこう言ってしまった。奴は確かに俺と似ていたが俺と異なる事をやった。それは飼い主を殺した事……残念ながら俺はこれだけはやってない、やろうともしない。そこだった。そこだけが俺と奴の違いだった。
「APは10%を切っていたわ……本当に心配させないでよ」
そして、飼い主の……いや、相棒の声が聞こえた。
「ああ、すまなかったな。奴を殺すにはこうしかない……って思ってな」
「……怒りたいのは山々だけど、それは整備兵達の叱りの後ね」
「嫌な事を思い出させないでくれ…」
「戦闘結果を伝えたら整備長はもう怒り心頭よ?」
そりゃそうだな。前のホワイト・グリントも壊し、このジョシュアが乗っていたホワイト・グリントすらも壊したのだからな、整備費用を考えれば怒り心頭になるのもわかるが…
「なんとか言ってはくれないか?フィオナ」
俺はモニターを繋げて彼女の顔を見ながら頼んだ。だが、彼女は普段通りに少し苦笑しながら
「…諦めた方が良いわよ」
と言ってきた。
「……だよな」
俺は溜息をつきながら言うと、フィオナはそんな俺を見ながらクスクスと笑ってくる。そんないつもの会話がどうしても
「ああ……たまらないな」
たまらない程に嬉しかった。
「どうしたの?」
彼女は少し心配するように聞いてくる。
「いや、たまらなくてな…たまらないほどにこうなってくれたのが嬉しいんだ。生き残って、こうやって喋り合えるのは」
「ええ……ちゃんと帰って来て。そうしたら酒を交わして、また語り合いましょう」
「ああ、そうだな」
帰ろう。帰って、祝杯をあげて契約通りにラインアークの存続に酒を向けよう。
……そんな事を思っていた時だ。
「ッ!」
機体に衝撃が走る。エンジンの故障だろうか急に降下を始めやがった。
「これは……直ぐに脱出して!ホワイト・グリントはもう……!」
フィオナの叫ぶような声が耳に入るも直ぐに機体のチェックを行うと想像通り、エンジントラブルであった。だが、それはありえないトラブルだった。
「整備不足じゃねぇ!コイツは……チィ……クソッタレが!!」
ゴン!
俺はモニターを殴りながら状況整理をした。
エンジン故障による高度確保が出来なくなった事、こんな時に起こった事、他はともかくエンジンだけはしっかりと出撃前に整備でもらっていた事……ならば、こうなる。
「企業の奴らめ……俺を返さない気か」
ラインアークの英雄の帰還の阻止。
人類種を実質は救った俺だ。クレイドルでもそれなりに名は上がる筈だ。だが、そうなると困るのは企業側だ。ラインアークを大々的に悪ということで潰せなくなる。しかし、せめてホワイト・グリントが落ちたという事にすればどうだろうか?そうすれば、ラインアークに切り札はもういない。潰れるのは時間の問題となるだろう。
……考えてみれば、そこら辺の学生でも考えつくような簡単なものだった。
「貴方だけでも脱出を!!」
俺もそうしたいさ、だがな
「……フィオナ、ソイツは無理だ。この高度じゃパラシュート降下は自殺行為だ」
高度が足りない。故障してから墜落までが早い為か高度が足りなくなるのも早かった。俺もヤキが回っていた為にそのタイミングをもう逃していた。
「約束はどうなるの?守ってくれるんじゃ!」
心配するな。
「……守るさ。だから、待ってくれフィオナ。ラインアークを守る為に、お前を守る為に約束は必ず守る」
絶対にだ。
「……ッ……必ず、帰って来て!!!」
そのつもりだ。
「ああ…!」
俺はそのまま彼女に笑みを向けた後にモニターを切り、直ぐに姿勢制御に集中した。幸いにもサイドブースターは生きている。メインブースターがイカレていてもなんとか着水はしてやる。
「運が良いのか、悪いのか……まっ、海の上だったのは幸運だったな」
そして、俺は急降下している機体にブレーキをかけながら着水の準備を始めた。
「…47…46……持ってくれよ…ホワイト・グリント」
着水までの時間を見ながら、戦友が乗っていた機体に叱咤する。流石、戦友が乗っていた機体だ。旧型でも根性はあるようだ。
「生きて帰るんだよ……アイツを笑顔にさせなきゃならねぇからな……ああ、あんな顔でさよならはさせねぇ」
あんな…今にも泣きそうな顔を最後にさせて死ぬ訳にはいかない。絶対にさせちゃならない。そう思いながら出来うる限りの事を限られた時間内に終わらす。
「……あとは幸運頼りだな…!」
その誓いを、帰って笑顔にする誓いを胸にしながら、幸運を頼り海へ着水し、その衝撃によって俺は意識を手放してしまった。
ということでfaの首輪付きが人類虐殺ルートを止めたという感じのシナリオとなっております。
アナトリアの傭兵がカラードランク9のホワイト・グリントのリンクスだったという設定でして、4時代はアリーヤを駆って戦場にいたという設定です。
アレサ戦後に記憶欠如や機能障害を患い、少しの間はネクストから離れて、ラインアークに潜り込み暮らしていましたが企業がこのラインアークを狙っているという事を知ってからはまたリンクスへと再び戻り…という感じです。
ふざけんな!旧ホワイト・グリントにアナトリアの傭兵を乗せるな!とか、新ホワイト・グリントの方はジョシュア説とかあるだろ!と思う方々もいると思いますが、この小説ではこうなってしまいました。本当に申し訳ありません。
この設定おかしくない?とかあれば、教えていただけたら幸いです。