インフィニット・ストラトス ~鴉は再び羽を広げる~   作:外道野郎

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2話

 織斑千冬との出会いの日から1週間経った。

 この1週間、俺はこの世界の常識を教えられる。ISとは何なのか、IS学園はどういうところなのか、そしてなぜISが中心になったのか。また、昔にACに乗る際に読んだ事のあるような参考書すら渡されていた為に数年ぶりに俺は勉強机に向かっていた気がする。元より勉学はあまり好みではない俺であったがこうなっては仕方ない為にやるしかないと割り切るしかなかった。だが……どうにも、この居心地には慣れない。俺のいた世界よりもここはとにかく平和であった、紛争はあれど戦争はない。人が人を蹴落とし、空の安全区画にいる人々が地上の人々を見下すなんて光景もない。それは好ましい事の筈であった。しかし、どうにも慣れなかった。どうしても慣れなかった。

 何故なのか?ここ数日間はずっと考え、俺は3つの答えに辿り着く。

 1つ目ははフィオナの不在であった。リンクス戦争の時からの付き合いだ。相棒を超えたような存在としていた彼女に俺は心を預けていたのだろう。彼女が消えた為に心に穴が空いたような感覚が出来ている。

 2つ目は戦争の無い世界だ。これは俺にとっては大き過ぎる。よく平和が良い、平和が1番という謳い文句のようなものは元の世界にもあった。無論、この世界も同様である。しかし、その平和が俺に対しての1番の刃となっている。平和な世界がなかった。平和でいられるような、戦わなくても良いような場所にはいなかった。人を殺し、人々を殺し、住む場所すらも殺し、報酬を貰っていたような男なのだ俺は。そんな男がこの世界に馴染めるわけがなかった。

 3つ目はIS学園という存在に身を置くという事である。飯を食わせてもらっているからに文句は言えんがあまりにも平和的過ぎて、女子学生気分が抜けてないような彼女達を見るのはどうにも不安だ。……他にも色々とあるが別に良いだろう。

 そして俺はそんな事を考えながら時計を見る。身支度を終えて、久々に小綺麗な格好をして

 

 

 彼はある人を待っていた。約束時間になれば自室に来るという彼女の事を。しかしながら、10分経っても相手は来ない。

「なんかあったんだろうが…まあ、良いか」

 そう言いながらゆっくりとしようとした時にようやく、部屋がノックされた。

「すまない、手続きに手間取ってな、遅れてしまった」

 その言葉を聞くと少し溜息をしながら、彼は部屋の外を手早く確認した後に彼女がいる事を確認すると部屋から出る。そして、彼女に答えを返した。

「気にするな千冬、予想の範疇にはある。」

「予想とはなんだ?私はそんなに時間にルーズだと言いたいのか?レイヴン」

 レイヴンは少し笑いながら肩を叩いて彼なりのフォローをするが千冬にとっては逆効果だったのかむっとした顔になる。元々、かなりの美形に入る彼女のその顔は彼から言わせてみればかなり微笑ましいものであり、笑いが込み上げてくる。

「あの部屋を見れば誰でもはそう思うさ」

 レイヴンが笑いながら言ったあの部屋とは千冬の部屋である。1度、立ち寄った事はあったがかなり悲惨なものであり、まさしくぐうたらと言わんばかりの部屋であったのだ。ゴミは散乱し、服は散らばっていた。流石にその時は驚き、部屋の掃除をしたのは言うまでもない。無論、その話をされた側にとっては嬉しくはない、弱みとなるようなものを見られているような形なのだから

「あ、あれと関係はないだろう……」

 少し顔を赤くして、千冬は苦し紛れの言い訳をする。それを見た彼は意地悪な笑みとなり、からかい始める。

「関係無くは無いと思うが…まあ、蒸し返すのも良くないな。今日はデートのようなものに付き合ってもらうんだからな。中年の俺としては若い子にしてもらえるなんて早々にないからな」

「なっ…!デートだと!?今日はただ、お前の私生活品を買い物しに行くためであって、それに合同するだけの事であってだな…」

 色恋沙汰には疎い彼女、ブリュンヒルデの称号を貰っているとはいえ、この手の話には弱かったのか取り乱し始める。

「おいおい、オジサンの考え方がおかしかったかい?男女2人で買い物なんてデートそのもんだろう?それにその反応…お前、まさかデートした事ないな?」

 完全にからかい顔で彼は言っていた。こういう女性はからかうのが1番楽しい為に彼にとっては彼女の反応は嬉しいばかりのものであった。

「あ、あるに決まっているだろう……何を言っている」

「弟とのはデートに入らんからな」

「うっ…ええい、私をからかって楽しいか…!」

 彼女は少し惨めな気分になりながらも目の前の男に牽制をかける…が、流石にやり過ぎたと苦笑して彼は苦笑していた。

「悪かった悪かった。まあ、行こうじゃないか。車か?」

「むっ……まあ、な。学園の予備のをな」

「じゃ、運転頼めるか?」

「…わかったよ」

 レイヴンのマイペースさに負けたのか、千冬は少し苦笑しながら車のキーを取り出して、学園の駐車場に行く為のエレベーターに彼と一緒に乗り込んだ。

 

 

 

 2人は車に乗り込み、IS学園から最も近いショッピングモール……には行かず、少し遠いショッピングモールへと向かった。理由としては多々あるのだがやはりIS学園の生徒に千冬がレイヴンと2人で買い物してるところなど見られるわけにもいかなかったからだ。人の噂も七十五日とも言うがこれはそうもいかない。見られでもしたら噂は瞬く間に広がり、手のつけられないところまで行くのは間違いないということは目に見えていたからだ。

 そこで2人は車で1時間ぐらいの距離にあるショッピングモールへと行く事になった。

 車中ではジャズの音楽が鳴り響いている。無論、千冬の趣味ではなく、完全にレイヴンの趣味である。その音を耳に入れながら彼女は少し笑い隣にいる彼に意地悪な笑みを浮かべて言った。

「ジャズを聴くなんて意外…じゃないな、見事に似合ってはいるな」

「ふっ、これこそダンディなオトコって感じだからな」

 彼女の言葉に彼は渋い顔を作りながら言い返す。

「見た目が外国の中年映画俳優なら話は別だがな、お前では背を伸ばしてるようにしか見えんぞ?」

「ふっ、男は中身よ。それもわかんねぇんだから男の1人も出来んという感じじゃねぇのかい?」

 その鋭き刃の如き言葉は彼女の胸に刺さる。その通り。彼女は恋愛なんてしたことも無い。両親がいなくなってから弟の面倒を見ていた為である。もちろん、告白はされた事はあるが全て断っていたし、今のようにある程度落ち着いた頃になった頃にはIS学園の教員。男からは遠ざかっており、彼のその言葉は見事にグッサリと刺さる。

「くっ…言ってくれるではないか」

「はっはっは!これでもオジサン、それなりの長い年月は生きてるってわけだ!もっとも、千冬の処女臭さはプンプンするがな」

「なっ…!いや待て…私は大人らしい大人だと…」

 よく言われると言おうとしたがこのやり取りをした中でそんな風に感じられたところがないのは事実だと彼女は自覚して、その言葉を飲み込む。

「よく言われるって顔だな?まあ、お前の事を理解してなきゃそうかもしれないが…俺にとっちゃピンと来たもんでな」

 読心術があるのか、と聞きたいほどの鋭い言葉。やはり人生経験のある彼の方がこの手の話題には分があるようだ。

「一夏が大人になれば…私だって相手を探…す…」

 いじらしくなってしまいそう言い返そうとするが花嫁姿の自分は想像もつかないせいか後半は少し落ち込みながら言葉を口にしていた。

「そういうところが処女…つうか、綺麗というか可愛いところなんだよ。まあ、良いんじゃねぇのか?俺とっちゃお前さんの花嫁姿は見たいもんさ」

 それまでにいる気はないという感情をしまいながら、彼は千冬に言った。その言葉にやはり敵わないと彼女は息を吐きながら彼からの弄りを素直に受け入れていた。

 そして彼らの乗る車が目的地のショッピングモールに着くと直ぐに千冬は外部対策の為のサングラスを装着しながら中へと入っていく。

「へぇ、デカイな……あまりこういう所は知らないものでな、君任せ…ああ、いや忘れてくれ。俺が先導で行こう…」

 経験したこともない場所の為に千冬に助力を頼もうとした彼はそもそも彼女も疎い事に気付く

「何を言いたいんだ貴様…」

 が、流石に彼女もこの対応には心外なようだ。

「いや何、無敵な戦上手なお前さんでもここじゃ無敵…ではないだろう?」

「…確かに私は2回程しか来てないが」

 予想通りの言葉が帰ってきた為にレイヴンは苦笑をしながら肩を叩いた後、近くの施設内地図の場所に歩く。

 その2人の姿は、本来であれば年の離れた女性と少年である筈なのだがあまりにも雰囲気が少年の方にはあった為に先輩について行く後輩の女性のようになっていた。

 そして彼等は心ゆくまで買物を満喫をし、彼にとっても彼女にとっても二つ目の思い出となった。

 ……運命の時、編入まであと三日前の出来事である。




とてつもない誤字があったので修正しました。
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