オリジナル設定、擬人化、独自解釈、オリジナル主人公のストーリーとなりますので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それでも、良いという方はお付き合いください。
――どうせお前らは、ポケモンをバトルの道具としか見てないんだろ――
いらいらした様子で、男は3DSを閉じた。色違いのポケモンをGTSで手に入れたにも関わらず、不一致の性格のためにバトルで連敗し、先ほどレートが3ケタ下がったからかもしれない。
「酒でものむか……」
部屋の散らかった中で、コートを取り出し、外に出る。雨は降っていないものの、吹く抜ける風は、体温を少しずつ奪っていく。鉄骨でできた階段を降りようとしたとき。
「つめたっ!」
冬の冷気に晒された鉄製の手すりは、指が張り付きそうなほどに温度が下がっていた。顔をしかめ、苛立ちをはらすかのように音を立てて階段を下りる。近くのコンビニへと男は足を向けた。
「ありあっしたー」
酒とつまみを購入し、帰路につく。完全に昼夜逆転した生活を送っていて、街灯をコンビニの光だけが、足元を照らす。
「くっそ~、いけると思ったんだけどなぁ」
先ほどのポケモンバトルのことを呟き始める。調整次第ではいけるはずだった、そう呟きながら、とぼとぼと歩いていると、ふと足元が暗くなった。原因を知るために男が顔をあげると、街灯がバチバチと音を立て、点滅しており、放っておくとすぐにも消えてしまいそうだった。
「……ついてねぇな」
偶々不機嫌なところに、不運が重なった。それも良くあることだと自分に言い聞かせて歩き続けていたのだが、足元が見えづらく、段差に気付かず足を引っ掛ける。
「ってぇ!」
なんとか転ばずには済んだものの、先ほど購入した缶ビールとつまみをコンビニの袋ごと落としてしまった。気恥ずかしさからか、周囲を見渡したが他に人の気配はない。溜息をこぼし、男は落としたコンビニの袋を探し始めるが、何せ灯りは精々星と月の光程度だ、足元がなんとか見えるかどうかという状態に男は苛立ちを募らせていく。
「……ん、なんか明るいな」
ぼんやりと光が見える。暗すぎて遠近感がなく、どれぐらいの距離にあるのかは分かり辛い。落とした荷物を探して周りを見渡してもよくわからない。まるで自動販売機に群がる虫のように、男はそれに近づいて行った。
「う……そだ、ろ?」
それは次元の裂け目、まるでその空間が向こう側に抜けおちていってしまうような、非現実的な現象。あり得ない現象に対して、男は呟く。
「ウルトラホール」
闇夜に言葉が呑み込まれていく。その現象は近づくごとに薄れ、時になくなってしまうかのように不安定だった。男は迷い、足を踏み出す。非現実的な現象に興味が湧いたのか、或いはそれが夢幻だと証明するためにか、光に誘われて手を伸ばし、その先へと男は落ちていく。
「……ん?」
目を覚ますと、大木が男の目の前にあった。むせかえる様な草の匂いが先ほどまでいたいた場所ではない事を告げる。
「えーと、周りは草ばっか、大木と……見た事あるような」
確かに、似たような景色を見た記憶はあるのだが、思い出せない。
「なんだ……頭が、痛ぇ!」
頭を抱え、痛みを耐える。やがて痛みが治まっていったのか、抱えていた手を離し、今度はデコに手を当てる。
「そうか、俺はウルトラホールを通ったのか!」
それと同時に、男がパニックに陥った。
「確か、記憶喪失になった例があったはずだ……まずは」
記憶を探すかのように、頭を掻き一つ一つ思い出せることを口に出していく。
「おれの名前は星野 一海(ほしの ひとみ)。高卒で就職して、ブラック企業について……でかい失敗をやらかして、二週間前に退職して」
ボソボソと呟き続けて、唯一の趣味であるポケモンを昼夜問わずやり続けて、という言葉で止まった。
「……忘れよう」
ヒトミがそう呟いたとき、目の前の大木が揺れる。
野生のカリキリが現れた!
丁度手のひらに収まるくらいの大きさの緑色と二本の鎌、大きな赤い目が特徴のかまくさポケモンが落下してきた。
「……ぅゎ、かゎぃぃ」
ちょうどヒトミと対峙する形になるが、首をかしげる。
「カリキリって、こんなに小さかったっけ?」
ポケモン図鑑には0.3mとあったのだが、それと比較すると約三分の一といったところだろうか。
「きゅ?」
今目の前にいるポケモンは、のんきにヒトミを見つめている。あまりに小さいのでつまんで手のひらに乗せてみた。
「きゅ!」
「いたっ」
カリキリに手のひらを突きさされた。サイズがサイズなので、少し血が出た程度だ。その反動でカリキリを落としてしまい、再度向き合う形になっているのだが……
「きゅきゅ」
落ちた時についた砂埃を悠長に手で払っている。カリキリがヒトミを警戒する様子はなく、ただ対峙しているだけである。
「……これは、ワンチャンあるか」
ヒトミが周囲を見渡すと、周りはジャングルで植物が生い茂っているが、よく見れば道具を使い捨てた後のゴミやまだ使えそうな道具が転がっていた。恐らく他のトレーナーが来た時に落としたのだろう、ゲームでは有り得ないが、実際に野生のポケモンと遭遇した時に道具を落としたり、うっかり躓いて落とすというのも、足元の悪いこの環境では仕方ないことに思える。
「……あった」
上半分が青く、赤いラインが二つ付いている、スーパーボールが数メートル先に転がっていた。カリキリに刺激を与えない様に、ゆっくりと落ちている所まで近づく。ヒトミにそれほど興味を示している訳ではなく、動く様子もない。手に取るとまだ未使用の様で、中にポケモンが入ってると言う事も無かった。手のひらに収まるサイズのそれを握りしめ、再びカリキリへと近づく。
「きゅ?」
ほしの ひとみは混乱している!
スーパーボールを拾った、カリキリが目の前にいる。だが、ヒトミは動くことができない。
「使い方が分かんねぇ……」
迷っているとカリキリの方から近づいてきた。
「きゅきゅ?」
まるでトテトテという効果音が似合いそうに歩いて、目の前で止まる。スーパーボールを右に左に動かしてみると視線が動く。
「あっ、ポケリフレで見た事あるわ」
ポケ豆はあるのかなぁ、などと呟きながらヒトミはカリキリの目の前にスーパーボールを置く。
「きゅきゅ」
ボールの真ん中のボタンを小さい鎌が突く。
ぽわんっ
ボールの中にカリキリが呑みこまれた、地面に落ちて何度か揺れた後。
カチッ
やったぞ、カリキリを捕まえた!
「お、おぅ……」
恐る恐る近づきカリキリの入ったボールを拾う。どうやら中ですやすやと眠っているみたいだ。ポケモンにとってはボールの中も快適らしい。
「ポケモン、ゲットだぜ!」
お決まりの台詞をポーズ付きで決めるヒトミ。ただ、その後すぐに顔が紅潮していく。人がいたら致命傷だった、そう呟く。
ガサガサ
「……はっ!?」
そう人は見ていなかった。ただ、その場にいるのがカリキリ一匹等と言う事はなかったのだ。周囲に視線を感じる。それも一つや二つではない。突き刺さるような縄張りを意識しているポケモンの視線と、甘い香りがする。
「あっ、これアマカジの匂いだ」
一瞬、呆けた表情になるが、大切なのは野生のポケモンに囲まれているという事実を思い出したのか、全力で走りだす。
「逃げるんだよぉぉぉー!」
どれくらい走っただろうか、地面を這いまわる蔦や転がる枝に躓きながら、気がつけば服も汗で重くなって、かなり熱くなっている。ゲーム画面では二つのエリアチェンジ程度の距離だが、実際は獣道しかなく、どこまで走っても景色が変わる事がないように思えた。
「ちょ、異世界ものでっ……ハードモードは聞いてないっすよ!」
わき腹を抑え、整地されてない道を走ったせいで足首を痛めたのか歩き方もおかしくなり、膝をついて少しでも酸素を取り込もうと荒い呼吸をする。今ポケモンに襲われたら、ひとたまりもないだろう。
ガサガサ
草むらを掻きわけるような音がした。その音は少しずつ近づいてきている。徐々に大きくなっている音から、先ほどの様な小さなポケモンではない、少なくとも人とそう変わらない大きさだということが分かる。逃げられる程呼吸も落ち付いていないし、何より野生のポケモンから逃げられるかどうかすら怪しい。草をかき分ける音が大きくなり、それはすぐ近くまで来ている。恐怖で体が強張り、動く事も出来ない、涙目になりながら信じてもいない神様に祈った。
(どうか、命だけは……)
「アローラ! 珍しい服装だね、観光客かな?」
緑色のポニーテールを揺らし、陽気に声をかけてきたのは、涼しそうな格好をしている少女だった。
読了ありがとうございました。
後書きにはポケモンの設定を書き込んでいこうと思います。まぁ、毎回出るほどの種類のポケモンが出てくるわけではないのですが。
カリキリ
アローラ図鑑No.143
タイプ:草
特性:天邪鬼
種族値:H40 A55 B35 C50 D35 S35 (合計種族値250)
Lv:18
個体値:H28 A22 B15 C20 D15 S0
とりあえず、こんな形で、できる限り戦闘はゲーム準拠で行いたいのですが、どこまで書けるかはわかりません。興味がない方は読み飛ばしていただいて問題ありません。