オリジナル設定、オリジナルキャラ、物語中盤から擬人化等、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それでもという方は、どうぞお付き合いください。
「あ!? 馬鹿じゃないか、お前! つか、馬鹿だったな、ばーかばーか」
「んだとコラァ! やる気か、てめぇ!?」
マーレインがモーテルの扉を開けると、見慣れた二人が言い争いをしていた。
「……もう飲んでるのか、今日は何の言い争いをしてるの?」
もはや慣れてしまって、驚く事もなくなったマーレイン。
「ヒトミのやつが、ドーブルはなんでも技を覚える事が出来るって言うんだぜ? あんないぬっころに出来る訳ないだろ!?」
「ばっか、ククイ。いぬっころ舐めんなよ!? やれば出来るんだよ、やれば!」
「だったら、とっとと捕まえて見せてみろってんだ!」
そう言って、缶ビールを煽る二人。借りているモーテルが隣だったから、ちょくちょく顔を合わせるようになり、いつからかこうやって言い争うようになっていった。
「昨日は伝説のポケモンについてだっけ? あれはどうなったのさ?」
そういうとククイが表情を曇らせた。
「……こいつが書いたイラストと似たような伝承を知ってる先輩がいたよ。クソッ、なんでそんなこと知ってんだよ、この馬鹿!」
「えらーいククイ博士には教えませーん! あははは」
マーレインもヒトミのポケモンに対する知識には驚かされる。ククイが興味をもったのもそれがきっかけだ。島の守り神についても、四つの島全ての守り神について、様々な事を語った。守り神は気紛れで、人の前に現れる事すら珍しいと言うのに、半年前にアローラに来たと言うヒトミという青年は見事に描いてみせた。
「それは凄いな……ん、これは一体?」
「ヤドンの尻尾をアマカジの葉っぱで燻してみた。結構いけるぜ」
「マーレイン、これは美味いぞ。お前も食え!」
絵を描いたり、料理をしたり、色々と器用になんでもこなすヒトミ。他人からは色々行動がおかしいけど、悪い奴じゃなさそうと思われていることについてはまだ自覚していない様子だ。
「あ、ホントだ。美味しい」
「マーレインの分のチューハイ、ほれ」
「あっ、俺が買ってきた酒だぞ、勝手にすんなよ!」
「怒んなよククイ、折角マーレインが来たのに、構わないだろ」
チューハイを受け取って口をつける。マーレインはあまりお酒は好きじゃないんだが、この二人との馬鹿騒ぎは嫌いではない。ククイがもう一つ缶ビールを空けながら人の金だと思って好きにしやがって、とぶつぶつ呟いている。この中では一番の稼ぎ頭だし、なんだかんだ言ってヒトミに奢るのも日常になってきてる。
「なぁマーレイン、あれ、どうなった?」
「どうもこうも、出来る訳ないだろ、って馬鹿にされたよ」
思い出すと苛々したのか、一気にチューハイを煽る。アルコールが回り、マーレインは少し顔が赤くなっている。
「いやいや、お前なら出来るって! 絶対、大丈夫だから!」
「その根拠はどこから来るんだよ……」
呆れながらも、その言葉に対してはマーレインは喜んでいるようだ。研究というのは、始めた頃はバカにされるもので、形が出来ていかないと誰も期待しないものだ。それなのに会ってまだ数える程だと言うのに、ヒトミはマーレインの事を信じて、お前なら出来る、と言う。
「何の話だ?」
「フェスサークルの話だよ、ククイ。それに加えてGTSについても初期構想を出したら駄目だし喰らってきた」
「それは上司が無能だな! やってない事を不可能っていうなら研究者止めろってんだ!」
「そうだそうだ、失敗がなんだ! 失敗が怖くてポケモントレーナーが出来るか!?」
「そうだヒトミ! その通りだ! お前は馬鹿だけど、そこは分かってる奴だ!」
ついにククイとヒトミが肩を組んで踊りだした。隣の部屋がまだ空だからいいものの、何時苦情が来てもおかしくないぐらいの騒ぎだ。朝まで騒いで呑み倒すことも最近では多くなってきた。
「全く……馬鹿ばっかだ」
マーレインはチューハイの残りを喉に流し込み、一人呟く。
「マイクテス、マイクテス……聞こえますか?」
「うん、聞こえてるよ、マーレイン。ありがと」
ライチのパソコンの前にマーレインの顔が映し出される、逆にマーレインのパソコンにはライチの顔が映っている。
「……すまんな、マーレイン。どうもこの手のパソコンは苦手でな」
ハラがマーレインに礼を言う。やり方を伝えて、マーレインが部屋から出ていった。
「あー、あー、ライチ殿。聞こえておりますかな?」
「聞こえていますよ、ハラ様。お忙しいところ申し訳ありません」
ハラはいつものように、豪快に笑う。
「構いませんな。こちらもライチ殿に話したいと思っておりましたからな。本来であればお会いできればよかったのですがな」
お互い、島キング、島クイーンという立場だ。そうおいそれと自分の島を離れる訳にはいかず、自分の仕事もこなしているとこうやって話す機会を作る事も出来ない。
「しかし……パソコンとやら、すごいですな」
「そうですね」
ライチはいつまで経っても機械類の操作に慣れないハラに苦笑する。マーレインやククイが研究に没頭している事に関して、良いのか悪いのかよく悩ましているらしい。何せ何をやっているのか、研究についても内容が全く分からないのだから評価の使用もない。孫のハウ君が生まれてからは、そういった事についても大分丸くなったみたいだけれど。
「おっと、話がそれてしまいましたな。ちなみに、ライチ殿のお話とは?」
「はい、そちらに行ったヒトミさんの現状が気になって……御迷惑をおかけしておりませんか?」
ハラは無言になる。腕を組んでうむむと唸って、ようやく言葉をだした。
「ククイとマーレインとよく馬鹿騒ぎしているみたいですな。この前は、二日酔いで朝の鍛錬に来たので、叱ってやったばかりですな」
何やってるんだあの馬鹿はと、マイクに入らないようにライチが呟く。
「……ただ、不思議な人間ですな。ドーブルの落書きを消して回って、街の皆からは評価も高いですな。朝の鍛錬も、欠かさず来ておりますし、人柄は悪くはないのですが……素質はあまりないですな」
ライチは悪い事はしていないらしいということ胸を撫で下ろす。
「御迷惑でなければ、何よりです。素質が無いのは……まぁ、分かっていたことですから」
他のキャプテンの様に、特別な能力がある訳でも、ポケモンを育てる能力があるわけでも、守り神からの加護がある訳でもない。そう言ってしまえば、ある意味普通の人間なのだが。
「素質はありませんが、努力はしておりますな。特に育てる事に関しては見た事が無い程……彼のポケモンは良く懐いておりますぞ。特に気負わずとも、時が経てば立派なトレーナーになると思いますぞ」
「そう……ですか。ありがとうございます」
「いえいえ、ライチ殿からお預かりした島めぐりの人間ですからな! 正直どんな厄介ものかと心構えていたのですが、別の意味で驚かされましたな!」
「ええ、アーカラ島に居た時も、驚かされました」
それから近況を少し話して、通信が終わる。慣れない事をしていたからか、結構時間が経っていて、肩や腰が強張っていたのをほぐす為に背伸びをする。
「んー……元気にやってるなら、いいかな」
ライチの気がかりが少し晴れたのか、気付かないうちに表情が柔らかくなる。
「……グズマの事もあったけど、心配いらないかな」
ライチは才気あふれるハラの弟子を思い出し、杞憂だと振り払う。
読了ありがとうございました。今回はポケモンのデータは無です。
自分の勝手な想像ですが、ククイ博士は今でこそいい人って感じですが、昔はやんちゃしてたイメージがあります。
グズマとの会話だったり、ところどころに現れる黒い面(を感じる気がする)が、どこか暗い過去があったイメージにつながっているのでしょうか。
まぁ、王道でいえば、結婚してから丸くなったってとこでしょうか。