オリジナルキャラ、オリジナル設定、擬人化等、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それでも良いという方は、何とぞよろしくお願いします。
※イラスト追加しました。
2年後
ハレハレビーチ、そこは常夏の天国。観光客が戯れ、ビーチパラソルの花が咲き、時に水しぶきがあがる楽園。そこに、サングラスをかけてアロハシャツを着た、観光地には微妙にマッチングしない青年が座っていた。
「アローラ、そこの綺麗なおねいさん達!」
その地方の独特な挨拶をし、二人組であるいている女性に目を付けた。
「……なんですか?」
かなり怪しい目で青年を見ている。なんなら声をあげて、警察を呼ぶぞと言った雰囲気だ。
「いやいや、折角観光に来たんなら記念に、ポストカードなんかどうかなって」
「興味ないです」
横を通り過ぎようとすると、懐からポストカードを取り出した。
「……ね、結構綺麗に描けているでしょ?」
観光客は目を見開く。それは確かに自分たちが浜辺で遊んでいる風景だ。
「と、盗撮?」
「とんでもない、カメラじゃあないですよ。ほら」
するとその男は近づいてきたドーブルの頭を撫でる。
「こいつが色を塗ってくれるんです、そん所そこらの写真より、ずっと思い出残るものですよ」
確かに、素人目でも分かる程、描いた事が分かるものだ。表面がでこぼこしていて、まるで小さな絵画のよう、さらには写真では有り得ないアングルから撮られ、なおかつ水しぶきも幻想的に仕上げられている。
「……確かに、悪くはないかも」
「あとこの辺、カメラだとちょっと映りが悪くなるところも……ね?」
男が周りに聞こえないような声で指をさす、そこはちょうど女性の下腹部にあたる所なのだが、まるでスタイリストの様な体型の自分がそこに描き出されている。
「……確かに」
「一枚千円でっす」
「えっ、高くない?」
「いや、ポストカードなんてどこいってもこれくらいしますよ」
「え~……」
「八百円」
「もう一声」
「二枚で千五百円で、これ以上はちょっと厳しいです」
「う~む、仕方ない買った」
「毎度あり!」
日は沈み、ポケモンセンターには宿泊に来るもの、今からポケモンを探しに出る者、疲れを癒す為に休んでいる者、様々な人間が混じり合う。その端にぽつんと、有料の喫茶スペースがある。
「おっちゃん、グランブルマウンテン一つ」
「あいよ」
慣れた手つきで、豆を砕き、お湯を注いでいく。円を描くように、少しずつ、少しずつ足されていくお湯と、広がるコーヒーの香り。苦みとコクがそれだけで想像を掻き立てる。
「おまち」
ポケ豆とお菓子と一緒にコーヒーが出る。ポケ豆をドーブルに渡し、美味しそうに食べている。青年はコーヒーに口を付け、少しだけ呑みこむ。
「やっぱりおっちゃんのコーヒーは美味いね」
「下手なお世辞どうも、それより、今日はどうだったんだい?」
「良くも無く悪くも無く、世は事もなしってね」
実際にポストカードが売れるのは一日に20から30枚ほど、値引きは8割程度目安で受け入れる方が観光客には受けが良い。がめつそうな客には半額まで下げる事もあるが、まぁそれはそれだ。元出が一枚十数円と考えれば悪くない。それでも、天気が良くて観光客が多い日に限る。皆ご機嫌な日には、自分も乗っかってご機嫌になれるってことだ。
「羨ましい限りだ、こっちは客足があんたくらいしかいなくて困ってるんだがな」
「またまた、さっきまで船から降りてきたトレーナーで賑わってたんでしょ。俺だってそれ位わかるさ」
観光客の中には、勿論ポケモントレーナーもいる。アローラのポケモンショップ内の喫茶店は有名だ。他の地方では基本的にサービスとしての軽食くらいしかないので、そこそこの食べ物が有料でも食べれるのであれば有難いと足を運ぶトレーナーも少なくない。
「と、そんなこと言ってたらお客さんかね?」
「いや、俺の連れみたいだ。悪いね、待ち合わせしてたんだ」
そう言ってコーヒーの代金を置いて、青年が立ち去る。
「……毎度」
カランカランと下駄の軽やかな音がなり、暗くなった道に人通りは疎らなものの、通りすぎる人の視線を集める。
「ふわ~あ、今日は天気が良くて、よかったでありんす」
土地柄に合わない和服を着た少女は、横に居る青年に声をかける。
「おいおい、さっきまで寝てたんだろう。眠気覚ましでも買ってこようか?」
先程までつけていたサングラスを外し、二人はマリエ庭園へと足を運ぶ。
「眠気なら、懐に入ってる森のヨウカンで覚めると思うでありんす」
「……終わったら食べていいよ」
頭の上に音符を飛ばして、少しだけ歩くスピードを上げる。マリエ庭園の入り口まで付いたところで、二人は別れる。
「それじゃあ、終わったらお茶屋で」
「今宵は月も綺麗に出て、華やかでよろしおす。あとはお客さんが沢山おらはられたらええんやけど」
「そいつは舞台に上がってからの、お楽しみだな」
マリエ庭園の中心にあるお茶屋普段は夜に客がいる事もないのだが、この日はほとんど満席に近かった。皆がこの後の華を見に、今か今かと待っているのだ。客席がどよめき始め、主役が現れた事を示す。
「皆々様、本日はお集まりいただき、感謝の言葉を述べさせていただきます」
ピンク色の和服を纏い、優雅に一礼をする少女は、真夜中だと言うのに、月の光に照らされて、月を映し出す背後の池を舞台に咲く一輪の華の様に美しかった。
「世にも珍しき、夜に咲く華、是非終幕までお付き合いくださいませ」
そう言葉を区切ると、少女の袖の中から、短刀が現れる。ゆらり、ゆらりと、風に揺れる花のように舞う。長くたなびく袖と帯が軌跡を残し、磨き上げられた刀は月の光を時に反射し、時に月を写し、その残像はまるで蛍の光の様に、輝いては隠れ、その身を翻しては円を描き、静かに、物音一つなく舞う。
「……皆々様に、命の祝福があらんことを」
凛とどこまでも透き通る声で少女がさざめく。それと同時に、風が吹く。舞台を取り囲むように、円を描くように草木がざわめきだす。より一層舞は激しくなり、人々の目が注目が高まった瞬間、周囲の花々が咲き乱れる。月夜に照らされ、反射し輝く花弁は幻想的に、夢の様に風に揺れる。少女が刀を振るい、向けられた花が散る、二度、三度と刀は振るわれ、全ての花弁が散り、風に乗る。それは客席を中心に渦を巻き、ゆっくりと穏やかに舞いあがっていく。やがてその全てが頭上に集まると少女が高々と短刀を振り上げ、風切り音と共に振り下ろされる。まるで力を失ったかのように、花弁達がゆっくり、ゆっくりと客席に降り注ぐ。それはまるで春の桜の様に、一つ一つゆっくりと舞い降りてくる。
「御清聴、感謝します」
いつの間にか短刀を仕舞っていた少女が優雅に一礼をする、観客は皆拍手で少女を送り出す。
観客の興奮冷めやらぬ中、少女はこっそりと裏口から入る。
「おつかれヒメ、おかげで店長も大満足だよ」
「三日かけて仕込んだ舞台でありんす、当然でありんす」
そう言って椅子に腰かけると、お茶と茶菓子を当然の様に頬張る。
「さて、後は客が退くまで、ゆるりとしようか」
読了ありがとうございました。ようやく二章となりました。設定をここで書くかは悩んでいるので、また後ほど。