君はルールを守る人?破る人?   作:3148

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今回はヒメ回です。番外と言うことでヒメ視点で描いているので読みづらければすみません。

オリジナルキャラ、オリジナル設定、擬人化等苦手な方はブラウザバックを推奨します。

それでも良いという方は、お付き合いください。


第三十三・五話 前編

「主、ちょっとこっちに座りんし」

日当たりのいい縁側で、白湯を啜りながらヒトミを呼び出す。ヒトミは言われるがままに行き、隣に腰かける。

「何か、隠し事しとりまへんか?」

アローラ地方をでてからバトルをする回数が増えている。つい最近では色違いのラルトスを捕まえて、早速レベル上げに勤しんでいるのだが、それにしても急ぎ足にレベリングをしている感覚を覚えていた。

「……ヒメには隠し事が出来ないな」

ため息を一つ、主がこぼす。

「主が分かりやすいだけでありんす。ちなみに、具体的にどういうことを危惧しているか、聞いてもよろしおす?」

そう切り出すと、主はすらすらとこの先のアローラに起こる事、自分が間違えてしまったこと、そしてそれをやり直さないといけない事を語る。

「……また、難儀なことを」

そう呟きながらも、主らしいと感じていた。どこまでもお人好しな主には、仕方のないことかもしれない。

「確かに、戦力は多いに越したことはないでありんす。ただ、相手が相手だけに、闘い方は考えんと厳しいんに」

そう答えると主は一つ問う。

「ついてきて、くれるのか?」

何を今更、と思うが、言い出しにくいのも分からなくもない。

「ヨワシやラフィなら兎も角、わっちは大丈夫でありんす。彼女等は動物であり、魚で有り犬でありんす。故に生きていたいと思い、主を止めはるかもしれん」

それでも最後はついて行くだろうけれど、とつけたす。

「ヒメは……止めないのか?」

「わっちは、花でありんす。勿論、生きているに越したことは、ありゃしはりまへんが」

白湯を啜り、喉を潤す。

「最愛の人のそばで散ることも、歓びにありおす」

そう言うと、立ち上がり背筋を伸ばす。さて、最終決戦に向けて準備が必要だ。

 

 「それで、考えはありまへんの?」

「あれば、試してるんだが、今のところは漠然とレベル上げ位しか思いつかないんだよ」

仮想敵に対して、有効な策が思いつかないらしく、頭を抱えている。なにせ分が悪いにも程があるのだから。

「ふむ、主はどうすれば勝てると思はります?」

無茶でも良い、実現できるかどうかは案を出してから考える物だ。

「他のポケモンは置いて置くにしても、ヒメは特性を活かす方向で考えた方が良いと思う」

特性、天邪鬼だ。能力の上下する変化技は、逆の効果をもたらすという特性だ。自分の場合リーフストーム等が相性が良いとされているが。

「ん~、わっちは特殊技は得意とはいえまへんからなぁ」

元々種族値はAよりなのだ、擬人化する事でさらに拍車がかかっている。

「ということは、新しい技を考えるか、技を改良していく方向になりんす」

「新しい……技か」

そこでもう一度頭を抱える。残念ながらポケモンの知識に関しては明るくないので、そこは主に頼るほかはない。

「何か、変化技をあげていってもらえまへん?」

「からをやぶる、ちょうのまい、つるぎのまい、つめをとぐ、とぐろをまく、りゅうのまい、はらだいこ……」

よくもまぁ、そこまですらすらと技名が出てくる物だ、と感心する。まぁ、わっちが他に関して興味がないだけかもしれないけれど。

「こうそくいどう、てっぺき、ギアチェンジ、つぼをつく、ビルドアップ、コットンガード……」

「ん、さっきなんて?」

そして、主が口を止める。

「何か、気になるのがあったか?」

そう言って、改めて技名を告げていく。そして一つ、これならばという物を見つけた。

 

 アマージョが覚えられるのであれば、自分にも可能ではないか、擬人化能力があればなおさらである。

「とはいえ、そのままだと逆効果なんだよなぁ」

「なにもそのまま使おうとはおもとりまへん。自分の技ならまだしも、他のポケモンの技を精錬するのは難しいのはわかってはります」

その言葉で、主は理解したようだ。

「……改悪なら、ってことか」

特性天邪鬼を利用し、つぼを突くを改悪しようという事だ。

どちらにせよ、一筋縄ではいかないが、試してみる価値はある。

 

 

 そう考えて、チャーレムやラフィの協力の元、つぼをつくの真似事くらいなら出来るようになったが、本来上昇する数字よりも低く、尚且つマイナス方面になっている。

「逆に血行を悪くするつぼを突くとか、得意にしているポケモンとかはいはりまへん?」

「コジョンドなら、はっけいとかは覚えるけど、それも少し違うような……」

なにより、一つ二つ能力値が上昇したところで、形勢が逆転するとは思えない。もっと、思い切った事をしなければならないだろう。

「……主、ちょっとここを触ってみて貰っても、よろしおす?」

そういうと、自分の胸の部分を指す。

「どうした、考えすぎておかしくなったか?」

「主にだけは言われたくないでありんす、いいから!」

そう言って、無理矢理手を掴み、胸を触らせる。自分の鼓動が高まるのを感じる。

「……鼓動が鳴っているの、わかります?」

「まさか……本気か?」

「実現できるかどうかは、主次第でありんす。わっちはただ、主の命に従うだけでありんす」

そう呟くと、時間が欲しいと主は去って行った。優しい主が思い切るには自分が背中を押すしかないだろう。どちらにせよ、結論は変わらないのだから。

 

 数日後

 

 両手を包帯でぐるぐる巻きにした主が、ラフィに泣き付かれていた。必死で宥めてはいるが、説明に苦労している様子だ。

「一体、何がありんした?」

主に近づくと、耳打ちされる。研究室のトレーニングルームで伝えると言われてしまえば、そこに足を向けるしかない。

 

 トレーニングルームに行くと、主が後から入ってくる。

「覚悟は……決まりんしたか?」

「ああ」

そういうと、ポケットから木で出来た簪を取り出した。

「……それは?」

「こいつを適切に刺す事で、一時的に心臓を止める事が出来る。ヒメの体なら、十数秒で同化し、効果はなくなる。本来なら、その十数秒で能力は低下し、その後瀕死に至る」

本来なら、ということは特性天邪鬼の性能がいかんなく発揮されるということだ。その十数秒間だけ、全開に近い能力が引き出される事になる、という。

「またそんな結滞なものを……まさか、主が削り出した訳でありんす?」

「こんなこと、他の誰かに任せられるか。まぁ、難しくて結構時間かかっちまったけど、これでいけるはずだ」

ふふふと笑う。自分は死ぬ覚悟をしていたというのに、他人の事となるとここまで力を発揮するのだから主は面白い。

「それでは……主が刺しておくんなまし」

一歩間違えれば、死に至る技だ。失敗したときのことを考えれば、すべきではないのかもしれない。ただ、主にこの命を摘まれるというのなら、それは本望である。主は顔を顰め、歯を食いしばって俯くが、やがて覚悟を決めたようだ。

「……いくぞ」

「いつでも」

主がわっちの左胸を触り、鼓動を確かめる。刺す位置を間違えれば、ただの自殺行為となる。緊張が走り、神経を集中させ、間違いないと確信したとき、一気に簪が胸の奥まで差し込まれる。

「……!?」

その瞬間、時が止まったのか錯覚した。特性が発動したのだ。死に直面した体細胞はその全てをいかんなく発揮し、抵抗する。流れる空気も、僅かな呼吸音も、自分の袖がすれる音ですら、耳障りに感じるほど。永遠とも思える感覚も、少しずつ流れている。やがては力を失い、倒れてしまった。

「ヒメ、ヒメ!」

 

 

 

 仰向けに倒れたヒメにヒトミが近づき、耳を胸に当てる。

「心臓が……動いていない」

見たところ、同化現象は進んでいるが、肝心の心臓が動いていない。すぐに両手を合わせ、心臓マッサージを行う。

「絶対に、絶対に死なせないからな!」

リズムを刻むように、精一杯振動を与え、人工呼吸を行う。三度目の心臓マッサージでヒメが目を開き、心臓が再び動き出したことがわかった。

「良かった……本当に」

力一杯抱きしめ、ただ生きていてくれたことに感謝をし、涙を流すヒトミ。

 

 「まぁ……成功してよかったでありんす」

「成功? 能力は上がっていたのか?」

ヒトミが首を傾げる。わっちが指を指すと丁度真後ろの壁に目を向ける。そこには直径十センチほどの穴が開いていた。

「あの位置から、あの穴を開けられる程度には能力が上がりはりました」

そう告げて、立ち上がろうとすると体に全く力が入らないことに気付く。

「……動けない、のか?」

「そのようでありんす」

多少指先を動かすことは可能だが、ほとんど動かないと言っても過言ではない。

「それじゃあ、よいしょっと」

主が背中と膝の下に上を通し、体を持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。

「外の……日当たりの良いベンチがいいでありんす」

「承知いたしました、お姫様」

 

 時間は丁度真昼頃だろうか、天気は雲一つなく、天気は良好である。ヒトミとともにベンチに座り、肩を預けて寄りかかる。というよりも支えることが出来ないのだ。

「日が落ちるまで、このままで……」

「……ヒメ?」

そう呟くと、体中に疲労感が襲い、気が遠くなる。主の暖かさを感じながら、暖かい日差しの中、まどろみに落ちていく。

 

 「……はっ!?」

目が覚めると、まだベンチに座っていた。隣でヒトミは座っていて、自分が目を覚ました事に気付く。

「目が覚めたか、体の調子はどうだ?」

「ふむ、疲労感は抜けてはおりまへんが、動くようにはなりんした」

そういうと、多少ふらつきながらも立ち上がることが出来る。

「全く、流石に今回は無茶のし過ぎでありんした。当分は休暇を頂けないとダメでありんすね」

それに対して、主はその通りだと応える。

「……まだやることがあるなら、行っても構いまへんよ。わっちはゆるりと戻るとします」

「いや、そんな体で……」

「ゆっくりさせてくんなまし、ほらつべこべ言わずに行った行った」

しっしっと手で振り払う動きをすると、納得のいかなさそうな面持ちでヒトミは室内に戻っていった。

「……」

ヒトミが去った後のベンチで一人佇む。

「まぁ、気付いておりまへんよな」

自分の頬が一気に熱くなるのを感じる。そう、動く能力だけでなく、感覚も普段の何倍も鋭敏になっていたのだ。そして、倒れて四肢が動かなくなった後も、感覚はそのままだった。

「主の……鼓動」

心臓が早くなり、本当に心配してくれている事が鮮明に分かる。額に流れる汗や表情から、自分に対する情を感じ取ることが出来た。

「主の……唇」

人工呼吸とはいえ、唇を重ねたことに違いはない。主に自覚はないだろうし、それによって息を吹き返した事は感謝すべきだ。だが、それとは別次元で意識せざるを得ない。

「……鮮明に思い出せるのが、また厄介な」

あまりにも衝撃的すぎる感覚は、一度眠った後でも、はっきりと思い出せる。唇を重ねた瞬間、主の熱い吐息、その感情すら感じ取ってしまった。

「当分は……顔を合わせない方が良いでありんす」

未だに熱が治まらない頬と、早鐘を打つ心臓を恨みがましく思いながらも、昂ぶる感情には、悪いと思えずにいた。

 




読了ありがとうございました。
ラストバトル用にオリジナル技を編み出すところを書かせて頂きました。

ラランテス可愛いよラランテス、と言った感じの話でした。

それでは、次もお付き合いいただければ幸いです。
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