君はルールを守る人?破る人?   作:3148

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第三章 幕間 一夜目

 「わっ、っと」

ウルトラホールを抜けた先には、ゲームの中で見たウツロイドがいた場所に雰囲気はにている。岩肌に囲まれ、頼りない道が続いてる。そんな世界だ。

「ここ……は?」

ヒトミがそう呟くと、誰かが目の前に倒れているのを発見する。急いで駆け寄ると、酷い怪我をしていた。幸いにも、彼自身冒険者だったのか、応急キットを持っていて、せめて止血だけでも、と最低限の処置をしていく。それから顔色は変わらず悪いものの、その人物が目を開いた。

「お前は……?」

帽子をかぶってない為か、きづくのが遅れた、彼こそがアローラ島新チャンピオン、ヨウだったのだ。

「俺は……ウルトラホールを通ってここに来たんだ。それにしても、何があったんだ?」

ヒトミがそう話すと、当てが外れた、とヨウが呟く。そして、二つのボールを取り出す。

「ラリオーナ!」

「マヒナペーア!」

アローラの伝説のポケモンが二体、その姿を現す。だが、その姿は傷ついており、荘厳なオーラとは真逆に疲労の色が見て取れた。

「ヒトミ、と言ったか。お前はどこまで知っている?」

ヨウがそう尋ねる。ヒトミはさっぱり状況が飲み込めないが、とにかくお互いの状況を知るべきだと提案した。ヨウは周囲の危険がないことを確かめ、傷薬でポケモンの傷を癒やしてから、話し始めた。

「どうやら、ここまではおってこれないみたいだな」

「何に追われているんだ? しかも、ソルガレオとルナアーラを両方持ってるなんて」

まるで誰かのセーブデータのような状況になっている、と呟く。

「今さっき、本気を出したジガルデにボコボコにされて、ウルトラホールに逃げ込んで来たところだ。そして、一縷の望みにかけてルナアーラとソルガレオにウルトラホールを開いて貰った。現状を打破出来る人間かポケモンが出てくる事を祈ってな」

残念なことに、普通の人間が呼び出されてしまった、ということだ。

「ちょっと待て! どうしてお前がジガルデに襲われるんだ!?」

奥歯に何かが挟まったように言い詰まるが、なんとか言葉にする。

「興味本位だったんだ。GTSに伝説のポケモンをいれて交換が出来るとは思ってなかった。精々別地方と繋がる程度だと思っていたが、どうやら別世界にまで繋がっているらしい」

嫌な汗がヒトミの背筋を流れる。

「もしかして、ミュウツーとか、守り神、とかだったりする?」

ヨウが驚く。

「どうして、知ってる?」

知っているも何も、ヒトミのサンムーンのセーブデータだからだ。どうやら、自分が呼ばれたのは偶然ではなく、やらかしたことに対して呼び出されたらしい。

「ま、まぁ、それはいいじゃないか。それよりも現状の問題だ、ジガルデってことは秩序が崩れた、っていっているのか?」

「そうだ。これ以上生態系を崩す行動を認めることは出来ない、ってな。オーラ全開にして能力が上がった状態で出てきたから、何をしてもほとんどダメージが通らなくて、このざまだ」

急激にヒトミに自責の念が沸いてきたのか、気まずい顔をするが、改めてヨウに確認する。

「敵はジガルデパーフェクトフォルム一体、強化済みだけ、ってことか?」

「……当たり前のように伝説のポケモンの事を話すんだな。まぁ、お前の言うとおりの状況だ」

そこで二つ疑問点が生じる。勿論、ゲームと彼が闘っている舞台が食い違っているのはある程度予測はしているが、どこまで食い違っているのかを理解したい。

「いくら強化されてても、相手は氷四倍弱点だ、それにほとんどダメージを通らない、っていうことは相手に攻撃できたのか?」

そう言われると、ヨウがばつの悪そうに頭を掻く。

「まるで見てきたみたいに言うんだな。手持ちに氷タイプはいなかったよ。それに、あんなけでかけりゃ、スピードで負けることはないさ。大体先制はこっちが取れる。固すぎてどれだけ殴ってもダメージになってなさそうだったが」

そこまで聞いて、恐らくジガルデの強化された部分にSは加わっていないだろう、という憶測がつく。なおかつ、弱点を突く形で攻撃出来なかった、奇襲の為にこの状態になっているのだ。最悪の場合を想定して。

「ちょっと待っててくれ」

圏外になっているスマホを取り出し、データと計算機を打ち込んでいく。

「何をしてるんだ?」

「ジガルデ パーフェクトフォルム H六百三十六 A二百三十六 B二百七十八 C二百十八 D二百二十六 S二百六。これがレベル百の努力H振りだけのステータスだ。全力ってことは最悪のケースを想定してステータス全六段階上昇と考えると、他のステータスが九百台以上になるな……えげつない、そりゃ勝てないわ」

ちなみにキュウコンの吹雪で乱数四発だって、他人事のようにヒトミが呟く。それに対して、ヨウは驚きを隠さずに問う。

「ステータスって、それは正しい情報なのか!? それにキュウコンの攻撃四回で倒せるって、本当か!?」

「かもしれない、だよ。仮にDに努力値降ってたらさらに厄介だけど、俺のデータだったら攻撃面に降ってるはずだし、というか、6V計算であってるかな」

まるで呪文のようだ、と頭を抱える。

「頑丈持ち揃えて、キュウコンに襷持たせて、元気の塊使ってゾンビアタックかけたら倒せるんじゃない?」

計算上、五回以上攻撃出来るはずだ。実際の数字がその通りなら、だが。まぁ、ぶっちゃけ、襷でいけるならS振りフリーザーで襷持たせてこころのめ絶対零度で一撃必殺っていう可能性もなくはないけれど。

「……マジか。確かにそう言われると倒せなくもないような気はしてきた。幸いにも、色違いと普通のキュウコンはいるし、襷もBPで交換してきたら用意できなくもないか」

そういうとヨウが計画を立てよう、と提案してきた。それに協力してくれ、とヒトミに懇願する。

「……いや、全然それはいいけど。大丈夫か?」

机上の空論という言葉が脳裏をかすめたが、そこはヨウが言葉を放つ。

「俺はチャンピオンだ。多少の無理難題、解決出来なくて何がアローラのトップだ。そこに可能性があるなら、もぎ取ってきてやるさ」

ヒトミはその剣幕と自信に気圧される。ゲームとしてはエンジョイ勢と自称している分、あまり主人公が格好良いイメージはなかったのだが、確かに弱冠十一か十二歳で島廻をこなしてチャンピオンになれば、これくらいの貫禄は付くのかもしれない。

 

 相手の相性を考えて、こちらはタイプをこおりで統一。被ダメに関しては攻撃力上昇を込みで考えて一撃で倒されると考える。というわけで、ジガルデ討伐部隊を編成してみた。

「アローラキュウコン、性格は臆病、Lv百、技は氷の息吹、持ち物は拘り眼鏡、努力値はCSぶっぱで、ダメージは六百七十六~七百九十六、確定急所一撃だ」

以上、現実は非常である。勿論、本当に急所に当てられるのか、スピードは勝てるのか、そもそもジガルデや他のポケモンの数値がデータ通りなのか、等問題はある。しかし、急所で能力上昇無効を利用すれば、なんとかできてしまう、ということだ。あと余談ではあるがLv百のナマコブシを三回投げつければ相手は死ぬ。

「だ、大丈夫?」

考え事をしているヨウにヒトミは声をかける。流石にこんな作戦を実行するなど、不可能に近いのではと考えていた。

「いや、むしろ俺が常識に捕らわれていた。伝説のポケモンでも、ちゃんと闘える、それを知っていたはずなのに。ありがとうヒトミ、この闘いが終わったらハノハノリゾートのホテルに案内するよ、楽しみにしててくれ」

全力でフラグ立てていったぞ。

「いや、ちょっとまて、本当にやる気か!?」

「ああ、丁度チャンピオンのバトルフィールドなら被害も少なくてすむだろう。ラナキラマウンテンなら、キュウコンも力を発揮しやすいだろうし、後はやってみてからだな」

本当にやる気だ、このチャンピオン。というか、伝説のポケモンやっちゃって良い感じなのか?

「悪いが、俺と一緒にいると危険になる。闘いが終わるまでここで待ってて貰えるか?」

「わ、分かった。健闘を祈る」

そうして、ルナアーラ、ソルガレオとともにアローラへとヨウは戻っていった。こんな作戦で本当に大丈夫なのか、不安で仕方がなかったが、あとはチャンピオンに任せるしかない。

 

 唯待つしかない自分に刻一刻と進む度に不安が積み上がっていく内に、ただ座っているだけではなく、この空間を少し歩くことにした。

「じっとしてると頭が可笑しくなりそうだ」

僅かにある明かりと岩肌が続いているだけの空間だ。他になにもない。

「本当に何もないんだな、この場所には」

ウルトラホールに繋がっている、ただの中間地点なのだろうか。もしかしたらUBに出会うかもしれないという気持ちもあったが、何もなかった。そうして同じ場所に戻ったときに、さっき計算した自分のメモが落ちてあったことを見つけた。

「とうっ」

暇つぶしに手裏剣に折って投げてみた。勿論何も起こるはずもなく、道の先に消えていった。

「ラリオーナ!」

「マヒナペーア!」

そうしていると、伝説のポケモン二匹の鳴き声が聞こえた。

「ヨウ! 無事だったのか」

ヒトミの声にサムズアップで応えるヨウ。来たときと同じぐらいにボロボロになっていたが、表情は希望に満ちあふれていた。

 




読了ありがとうございました。

ようやく主人公を書くことが出来ました()
基本的には、ヨウは操り人形ではなく、神の声が聞こえる的な解釈をしています。
そして、短期間で成長し、チャンピオンになれる才気溢れたトレーナーです。
それに引き替えヒトミ君は、主人公レベルが違うから仕方ないけど。

ということで、今回はここまで、次回もお付き合いいただければ幸いです。
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