成層破戒録カイジ   作:URIERU

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カイジ、代表……!

一限目の授業が始まり……開口一番、山田真耶、宣言……!

 

「それでは、1年1組のクラス代表は伊藤開司君に決定いたしました!」

 

「……は?なんで、俺……?戦績から言えば、オルコットだろ……!」

 

「織斑に勝ったオルコットに勝った伊藤。分かりやすい図式だろう」

 

筋は通っている……少なくとも成り立っている、不等号……!

 

「伊藤君はちょっと頼りなくて不安だけど……」

 

「でも、土壇場でどうにかしてくれるっていうか……勝負運の強さ?」

 

「たしかに、一週間であれだけ戦略組んだのってすごいよね……!」

 

賛同……なんとか……カイジを認める声……!

 

「どう考えても、向いてねーだろ……俺にクラスの仕事とか……無理……どうみても……」

 

「わたくしが補佐しましてよ。ですから、頑張りましょう……?」

 

そういい、カイジへと語りかける、オルコット……!

 

「う、うぅ、ありがてぇ、ありがてぇ……!」

 

「((涙もろいなぁ……大丈夫かなぁ……))」

 

だが、まだ不満……一夏にならなかったことに……!

いる……!篠ノ之やブリュンヒルデの信者たち……!

 

「ま、待ってください。何故一夏ではないのです、こんな軟弱な男を……!」

 

「そうよ、専用機も持ってない男が代表なんて……!」

 

「いや、箒!俺は普通にセシリアに負けたんだ。カイジは十分に戦っただろ、最後には女の子の事を気遣って……それを軟弱だなんて言うなよ!」

 

織斑としても、オルコットの本気を受けて……カイジの時との違い……強さ……隙の無さ……!

その理不尽さを感じ取ってはいたものの……それを差し引いてもカイジの戦い……

なによりも、女性への気遣いを認めていた……!

 

「しかし……!」

 

「他のクラスも専用機持ちでないものが代表だ、ある種の平等さが保たれている。篠ノ之、そこでオルコットの名が出てくるのなら、まだわかる。本来の実力を出して戦っていれば、そもそもこの決定戦は出来レース。オルコットの一人勝ちのはずだったからな」

 

「ならば、そこの男が勝ったのも偶然……一夏は本気を出されて負けて、伊藤には手加減をして負けて……本来、オルコットの一人勝ちだったというなら、対等じゃない!」

 

「確かに試合の順番が逆であったなら、織斑もまだオルコットに迫れたかもしれん。次戦では本気を出したオルコットに伊藤が負けていた、そういうこともあったかもしれんな」

 

「だったら……!」

 

「だが、それはたらればの話。それにお前は本当に、伊藤がただ偶然で勝ったと、そう思っているのか?」

 

「そ、そうではないですか……!ただ、オルコットの油断に付け込んで、運よく……!」

 

その言葉を聞き……数名の女子が肯定……!

 

「……他にもそう思っている者はちらほらいるようだな。伊藤は勝てるための状況を、自ら作り上げたのだ。オルコットが油断するように、その行動を誘発するように」

 

千冬は理解していた……カイジの行動……その策略……!千冬の目からみても一週間で……

素人同然のカイジが……ここまでの策略を組んだこと……素直に驚き……驚嘆……!

勝負事に対する……人間の心理に対する読み……その正確さを……認めていた……!

 

「あ、相手の油断を誘うなど卑怯な……!一夏は剣一本で正々堂々と戦ったのですよ……!」

 

「織斑は第三世代機、伊藤は第二世代機、その時点で織斑と伊藤を比べて、正々堂々という言葉は使えん。それに、それが駆け引きというものだ。さすがに試合中に体調不良を装ったり泣き出して、それで油断を誘って攻撃を仕掛けたのなら、許さないがな」

 

人の情に付け込む真似は……許されない……裏の世界でしか……!

 

「……」

 

「もう俺のことは、いいじゃねぇか……実際、篠ノ之の言ってることも満更おかしい、的外れってわけでもない……!確かに、一つ一つの状況を組み立ててどうにか俺は勝った、まぁオルコットの降伏だが……油断や慢心、そういうのがなければ負けていたのは事実……!だから、もういいって……!」

 

カイジとて、理解している……公式戦の動画を見て……そもそも自分が勝てぬ相手……!

油断に油断を重ねさせ……戦略が嵌ってくれただけのこと……!

 

「……伊藤がそういうのなら、これ以上はよそう。そして、伊藤のクラス代表選出、篠ノ之や他に不満がある者はオルコットに勝負を挑むことだな。言っていただろう、あの試合に不満がある者は試合を受け付けると。もし伊藤と同等の条件を引き継いで一週間、今のオルコットに迫ることができるものが、この中にいるというのなら……その者の意見を聞いてやらんこともない」

 

ある種、あり得ぬ宣言……オルコットに勝つことができたのなら……!

挿げ替えることも可能、ということ……クラス代表を……!

 

「わたくしは逃げも隠れもしなくってよ。正々堂々、戦いますわ」

 

この場で挑んだら一夏と同じ状況……油断したオルコットではなく……

本気のオルコットに挑まなければならないという理不尽さである……!

 

みな、逡巡……戸惑い……篠ノ之も……迷う……提案は魅力的……!

そこへ千冬……一喝……喝破……焚きつける……!

 

「だが、甘くない……本来、代表候補生……専用機というものは……!コツコツ、コツコツと……努力を積み上げて……何百何千といるライバルを蹴落として……そうしてつかみ取れる……!ようやく、そのチケット……代表候補生……!勘違いするな……これがスタートライン……!専用機を持つためには……今までの有象無象ではない……ライバル……本物……気を抜けば……一瞬で転落……出し抜かれる……そんな奴らと競い合って……そして手に入る……!それが……専用機……!選ばれたもの……!当たり前、たかが一週間で……勝てるなど……そんなに甘くはない……!それでも、それでも、追いついて……勝ちたい……どうしても勝ちたいなら……賭けるしかない……自らの誇り……!失われることになっても……!成し遂げられると思うな……!安全圏……何も失わないで……通せると思うな……意見……!」

 

油断や慢心を捨て去ったオルコットの……一夏戦でのその試合は一方的なものであった……!

仕方ない、当然……!カイジとて、同じ状況なら……同じくぼこぼこ……手も足も出る訳がない……!

 

「(と、利根川……!?だけど、あいつは、もう……俺が……)」

 

千冬は百も承知……本気のオルコットに……いまのクラスで勝てる者がいないことを……!

しかし、生徒の向上心、もし立ち向かう気概があるものが……!そんなものがいるというのなら……!

多少の無茶を厭わず……育ててやりたいという……そういう思い……!

 

が、駄目……!いない……!当然、かくことになる、赤っ恥……!

相手が悪いとはいえ公衆の面前で、ぼこぼこにされる未来……!

失われる、自尊心……!クラスの女子……それを当然、回避……!

 

篠ノ之も、上げられない……一夏にISのことについて……教えることを独占した挙句……!

勝たせられず……なにより、使ってしまった束というカード……!

自らが負けてしまえば……何ら言い訳もできない……所詮付属品、束の……!

そう見られるかもしれないという恐怖……ここに来て回る、毒……!

普段の勝気な篠ノ之なら……上げられた、手……上がらず……!

 

織斑千冬はクラスを睥睨……そして思考……

 

ここまで焚きつけても立ち上がるものはなし、か……

女も軟弱のまま……恥をかくだけ、怪我をするわけでもないというのに……

というより、かかない恥……ここまで私が、強調……勝てないこと……

負けて当然……そういう流れを作った……!

他者から揶揄されるようなことがないように……

最早失われるのは自尊心だけ……自分の、自分との勝負なんだ……

同じ条件ということは一週間、ISを優先的に使用できるということ……

まず訪れないチャンス……専用機持ちと戦えて……一週間もISを独占できる……

ここまでお膳立して……これをものにしないとはな……!

 

「立候補者はいないようだな。今後この話は……」

 

「ま、待ってください……!まだ、考える時間を……!」

 

「私は、お前たちの母親ではない……!いつまでも、待ったりしない……決断を……!チャンスは……いつまでも転がっていない……!ISは467機……それ以上でも、以下でもない……!数は限られているんだ……!だからこそ、当然……競争、競争なんだ……!今この場で立ち上がれなくても……それだけは胸に刻んでおけ……!」

 

「……!」

 

厳しく……険しい……しかし、それでも教師……とどのつまり、彼女もまた、教師……!

少なくとも、甘くはない……この学園に入って……ようやくスタートライン……!

ここで燻っていては……当然訪れない……成長は……!

 

「もう、この話は受け付けない。オルコットに挑むのは、個人の自由だがな。授業時間を押している。早速授業に入るぞ……!」

 

……残念だが、自らの自尊心の殻を……脱ぎ捨てられる者は、いなかったようだな……!

 




代表決定戦を決めたときの千冬はカイジ視点なら、完全なマッチポンプ、言い訳もむずかしい状況でしたが、考えなしだったわけではありません。
早めに一夏・カイジの成長を促すためには、自身の置かれている状況、同年代でもすでに強い相手がいるということを知ってもらう必要があったのです。
どちらも普通にぼこられて、立ち上がれよみたいな。
獅子は我が子を千尋の谷に落とす、を地で行く感じ。
当然勘違いされやすい。カイジみたいな輩には……

はっきり言って千冬としてもカイジがここまでやったのは純粋に驚きなのでした。


ラウラ辺り書いてるときの素朴な疑問
ラウラさん、鈴ちゃんの龍咆をAICで止めてたけど見えないのにどうやって止めてんのさ。アニメだと演出上色ついてるから止めるのを特に不思議に思わなかったけどさ。鈴ちゃんも相性ここまで最悪なんてっていうけど、見えないものを止められてることに疑問持ってよ。セシリアはカウンター機体に近いんだから頑張ってよ。BTを使えば唯一自力脱出可能なんだし、君EN兵器が主なんだからさぁ……

あと、AICで止められた人間って心停止しないか……?

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