成層破戒録カイジ   作:URIERU

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中国酢豚編
カイジ、奔逸……!


一日が終わり……夕暮れに染まる学園……!そこへ、小さな影が一つ……!

新たな刺客……!中国より……現れる……!

 

「ほんと、一夏がISを動かすなんてびっくりよね……一夏ったらどんな顔するかしら。それに、あの約束覚えててくれるかな!」

 

胸に抱くのは淡い恋心……甘酸っぱい青春……!

 

「それにしても、学園総合受付ってどこかしら?こんな広い敷地じゃ迷っちゃうじゃない、あっ!」

 

目の前にはカイジ……遊歩道をふらついているカイジ……

未だ抜けきっていない、ダメージ……致命の食事……!

 

「(な、なんかちょっと雰囲気怖いっていうか、男で制服ならもう一人の男性操縦者ってことよね?明らかに学園のイメージと違うじゃない!でも、他に人影もないし、うぅ……)あ、あの~。ちょっといいですか?」

 

「……あ?え、えと……誰っていうか、なんか用……?」

 

「(なんでまだ夕暮れなのに、顔が見えないほど影が降りてんのよ!それになんか警戒されてるし!逆だっての!私があんたを警戒したいくらいよ!)学園総合受付という場所を教えて欲しいんですけど……」

 

「(……?書類提出で誰もが一度は行ったことあるだろ……なんで知らない……?なんで俺に聞くんだよ……ってか部外者……?制服着てるけど、つまりアレ……生徒じゃない……そして今この状況……!?)え、えと、どこだったかな。ははは、そこいらにいる奴に聞けば分かると思うんだけど……」

 

そう言い後ずさるカイジ……少なくとも距離を離さなければ……

刺客なら、何か武器はある……最低限……銃かナイフか……

まずは、距離を取って……安全圏……逃げ出さねば……!

 

「あ、あの、せめて人がいる場所、教えてくれませんか?そうしたらそこの人に聞きますから」

 

だが、詰めてくる、距離……無情にも……一歩ずつ、一歩ずつ……!

 

「ここは逃げるが勝ち……!」

 

またも勘違い……ただの恋する乙女を……刺客……殺し屋と……!

 

「あっ!ちょっと、待ちなさいよ!待ちなさいったら!」

 

「(っひぃ!お、追いかけてきやがる……!やっぱり、あぶねぇ……!やっぱ油断できねぇ……!学園内でも……自衛……最低限、自衛はしなきゃ……!あ、あれは!)お、オルコット、助けてくれ……い、命、狙われて……!」

 

「へぅっ!?ど、どうされましたの!?カイジさん、腰にしがみつくなんて……そんな大胆な……!」

 

情けない……男が女の背後に隠れて……腰にしがみつき、へっぴり腰……!

 

「いや、あれ……目の前……!刺客……俺の命、狙ってるって、絶対……!」

 

気にせず、目の前を指さし叫ぶ……!圧倒的情けなさ……!

 

「は、はい……?刺客、ですの……?」

 

「はぁっ、はぁ。だ、だれが、刺客よ!だれが!」

 

「お、お前……!」

 

「うがああああああ、何を勘違いしてんのよおおおおおお!!!」

 

「ひ、ひぃ!」

 

更に強く腰を掴むカイジ……もはや抜けかけている、腰……カイジ……

 

「カイジさん、どうか落ち着かれてください。それに流石に恥ずかしいですわ……!」

 

「あ、あぁ……!す、すまねぇ……つい、気が動転してただけで……悪気はないんだって……!」

 

そう言われてようやく離れる……オルコットから……!

 

「全く、あなたという方はなんと情けない……それで、えと、そちらの方も落ち着いてくださる?冷静に話し合いましょう」

 

「わ、わたしは冷静よ……!いつだって、ね……!」

 

犬歯をむき出しにし……苛立ちを隠さない……!

 

「(そうは見えませんが……)一体なにがあったんですの?」

 

「私がそこの男に総合受付の場所を聞こうとしたのよ。そしたら急に後ずさり始めて、逃げだすから追ったのよ!」

 

「だって、知ってるだろ……!少なくとも学園の生徒なら……!一回は行ってる、絶対に総合受付は……!」

 

「まぁ、たしかにこの学園の生徒ならば提出書類のために、一度は寄っている場所のはずですけれど……」

 

「そりゃ、私が転校生だからよ!転入の手続きをするために学園総合受付に来いって書いてあったけど、広すぎて、迷ったのよ……」

 

最後の部分だけは……少し恥ずかしそうにしゃべる……!

 

「あら、そういうことでしたの。でしたら、あちらの正面の建物を右に曲がって、まっすぐ行った建物の一階にありましてよ」

 

「そう、ありがとね。えっと、そういえば自己紹介もしてなかったわね。私は中国代表候補生、凰鈴音よ。よろしくね」

 

「ご丁寧にどうも。わたくしはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットですわ。どうぞ、よろしく」

 

「……」

 

黙ったまま、静かに距離を取ろうとするカイジ……しかし……!

 

「で、そっちの男は自己紹介もできないわけ!?」

 

当然……逃げられない……!

 

「い、伊藤開司だ。逃げたりして、悪かったな……」

 

「ほんとよ、こんな美少女を見て逃げ出すなんて!」

 

「わたくしも、最初にカイジさんから逃げ出されましたわね……」

 

そう言われ目をそらすカイジ……!普通に美少女……!

町で見かけたら振り返るくらいの……二人からの冷たい視線……!

 

「奇遇っていうか、面白い偶然ね。おっと、時間やばいから急ぐわ。それじゃ、ありがとねー!」

 

凰を見送るカイジとオルコット……そして……

 

「警戒心が高いのは仕方ないことなのかもしれませんが、流石に女性に対して失礼でしてよ?いきなり逃げ出すなんて……」

 

「いや、だって、不自然……明らかに……こんな時期に転校生なんて……考えねぇって……可能性……それに、必要……自衛……やっぱ、自分の身は自分で……」

 

未だに愚痴愚痴と……自分の正統性をアピール……カイジ……!

その上、守れていない……自分の身……オルコット頼り……!

 

「カ・イ・ジ・さ・ん?」

 

「いや、悪かったって、だから、謝ったじゃん……」

 

「もうすこし、しっかりしてくださいまし。クラス代表なんですのよ!」

 

「わかった……するよ……もうちょっと努力……」

 

「(わたくしは惚れる相手を間違えましたかしら……でも、放っておけないんですのよね……)」

 

惚れた者の弱み……オルコット……!果てしなく……頼りない……カイジ……!

頑張れ……見限られる前に……カイジ……!

 

 


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