カイジ、確疑……!
朝、HRが始まる前の時間……
クラスの各所で……談話……噂話に花を咲かせる生徒達……!
「聞いた?この噂!」
「なになに?こないだのISのこと?」
「あれは、実験中だった機体が暴走したって話でしょ」
お前ら、それでいいのかよ……自分が乗ってたら……
場合によっちゃ大量殺戮者になるんだぞ……!
つか、俺狙いだったからいいものの……一撃目が観客席なら……
防壁が降りる前に……消し炭になってたんだぞ……?
「その話じゃなくて!ここだけの話、内緒だよ?実は……来月の学園別トーナメントで勝つと織斑君と付き合えるんだって!」
「そうなの!?」「まじ!?」「すっごーい!」
最後の部分は……内緒話、声も小さく聞こえなかったが……
その前に……興味を無くしていた……!
「みなさん、何を騒いでいらっしゃるんでしょう……?」
「興味ねぇよ……俺が知るか……あんな呑気なやつらのことなんて……」
「やはり……前のISの事が気になって?」
あの後、所属不明のISは……教員部隊によって学園の地下へ……連行された……
現在調査中とのことで……カイジでさえ他の生徒達と……
大して変わらない情報しか……得られていないのであった……!
「当たり前だろ……暴走してた……自分の意思じゃない……そんなのは何の免罪符にもならねぇ……人を殺しちまったら……」
鉄骨渡り……俺が切っ掛け……道拓く者となり……皆が続いた……
決定したのはあいつら自身……強要したわけじゃない……だけど……
あの時俺が……出ていかなければ……俺が、引き留めていたら……
……石田さんや佐原は……まだ……今も……地下施設行きかもしれないが……
少なくとも……生きてたんだ……きっと……生きてた……俺が、9人を殺……
「急に黙られて……どうされたんですの?それに顔色が優れませんわよ……?」
「いや、なんでもねぇ……とにかく、もうHRだ……席に戻れ……」
「(時折、暗い表情をお見せなさいますわね。地の底、裏切り、今日は人を殺してしまったら……万が一にもカイジさんが殺人を犯したとは考えたくありませんわ。やむを得ない、事故かなにかで殺人を犯してしまった……そんな知り合いでもいるのでしょうか?)体にはお気を付け下さいまし」
カイジの心に重く圧し掛かる……9人の仲間の命……もしあの時……こうしていれば……
とりとめもない思考が……時折カイジの精神を蝕む……
朝のHR……学園の一日の始まり……!
今日は何と……転校生……!
「今日はみなさんに転校生を紹介します。さぁ、入ってきてください!」
「みなさん、フランスから来ました。シャルル・デュノアです。みなさん、よろしくお願いします」
正しく美少年……といった風の生徒が……真耶の紹介と共に入って来た……!
「(男装趣味か……?中学の時にもいたっけな、なんか知らねーけど女子なのに男子の制服着てるやつ……それともスカートじゃ、ギャンブルで負った傷が隠せないとか……?それはないか……)」
カイジにシャルルが……男性名であることなど……知る由もなかった……!
肌を隠すのは、傷を隠すため……短絡思考……世紀末的思考……
「だ、男子?」
「はい、こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて、本国から転入を」
「いやいや……その冗談はシャレにな……」
「きゃあああああああああ」
「男子!三人目の男子!」「しかもうちのクラス!」「美形!守って上げたくなる系の!」
熱狂……狂乱……狂気乱舞……歓声が渦巻き……カイジの声はかき消される……!
「騒ぐな……!静かにしろ……!今日は二組と合同でIS実習を行う……各人はISスーツに着替えて第二グラウンドへ集合……!」
「はい!」
「(伊藤の奴……さっき、冗談と言ったな……?まさかもう気付いている……?)それから織斑、同じ男子同士だ……デュノアの面倒をみてやれ……」
「わ、分かりました!」
「君が織斑君?初めまして、僕は」
「あー、自己紹介は後回し。とりあえず移動が先だ。女子が着替え始めるから。カイジ、さっさと行こうぜ!」
手だけを振って……返事をするカイジ……考えるはデュノアの事……!
織斑は先にデュノアを連れて……教室を出ていった……
「俺たちはアリーナの更衣室で着替えるんだ。実習のたびにこの移動だから、あんまりモタモタしてられないんだ。千冬ね、織斑先生は遅れると容赦しないから……それと」
織斑が言いかけ、止まる……廊下の先には女子の集団……!
普段は織斑目当て……もう少し数は少ないが……今日は別……!
もう一人……シャルル・デュノア……もう一人の男性操縦者(仮)……!
当然……群がる……蜜を求める蜂のように……!
「来たな、走れ!」
「っふぇ?ちょ、織斑君、手っ……!」
手を握られて赤面……女子達へ燃料投下……当然、爆発……!
「きゃああああ!」「美少年同士の逃避行!」「やっぱり織斑×デュノア!」
不穏なワードを聞きながら……逃走……一夏・デュノア……!
「み、みんななんであんな騒いでるの?」
「そりゃあ、今のところ男性操縦者って三人だけだし」
「えっと、あ、あぁそうだね、うん」
デュノア……今気付いたかのような……ぎこちない反応……!
だが、織斑……授業に遅れないため……必死……気付かない……!
カイジがいたら……当然……詰問……誘導……暴いていた……正体……!
最悪の事態を免れた……シャルロット……デュノア社……引いてはフランス……!
この程度の教育で……スパイ行為が成功すると……
本気で……思っているのか……?フランス……!
一夏、デュノア……何とか女子達を振り切り……更衣室へ……!
「何とか振り切ったみたいだな……あれ?カイジ、もうついてたのか」
「あぁ……もう時間ギリギリ……急いだ方がいいぞ……!」
織斑たちが囲まれること……予想済み……!
女子のいない別ルート……そこを通り、すでに着替え終えた……カイジ……!
「そうだな、自己紹介してる暇は、ないか。ま、授業終わってからの休憩時間にゆっくりやろうぜ。それより早く着替えよう」
そういうやいなや、制服を脱ぐ一夏……上半身をデュノアの目に晒す……!
「うっ、うわぁ!」
「(……あ?なんだよ、その反応。舐めてんのか、おい……?)」
まだ断言はできないカイジ……だが、どうみても怪しい反応……!
どのような育ちであれ……同性・同年代の着替えに……悲鳴を上げる奴などまずいない……!
「どうしたんだよ。早く着替えないと遅れるぞ?」
「う、うん。着替えるよ。だから、ちょっと、あっち向いてて……ね?」
「俺は先に行っておく……!」
「いや、まぁ別に着替えをじろじろ見る気はないが……また後でな、カイジ!」
カイジの姿が消えたのを確認し……高速で着替えるデュノア……しかし……!
「(そこに、鏡……あるんだよな。ピンクの可愛らしい下着……胸までカバーするコルセット……十中八九、女……!流石に、下着だけ女装趣味……ってことは、ねーよな……?)おっと、忘れもんだ……」
先に行かせたと思わせ……カイジ、監視……一時間と持たず、ばれる……
シャルル・デュノア……その正体……!
違和感……胡散臭さ……疑惑……どうぞ正体を暴いてください……!
「珍しいな、カイジが忘れ物なんて」
「そういうことくらい、あるさ……俺のことはいい、早く行きなって……」
「そうだな、早く行こうぜ、デュノア!」
そう言い、先へ向かう一夏……その姿を確認した後……
「デュノア……」
先ほどよりも声を低くし……デュノアだけを呼び止めるカイジ……!
「な、何かな?」
「お前は、男……なんだな……?信じるぞ……?俺は、偽ろうとするもの、騙そうとするものには……容赦しない……それでいいんだな……?」
「な、何を言ってるのかな?先生だって、僕の事を男だって紹介したじゃないか」
ぎこちなく、笑みを浮かべながら……否定をするデュノア……
「そうか……なら、いいんだ……そう来るなら、それはそれで……」
含みのある物言い……困惑するデュノア……!
「あは、ははは。ほら、早く行こ!織斑君も待ってるし……!」
そう言い、逃げるように背を向けるデュノア……その背を静かに見つめるカイジであった……!