実習が終わり、昼食の時間……カイジを誘いに来る一夏……!
「なぁ、カイジ!昼、屋上で一緒に食わないか?」
「……そういうのは先約の許可を……とってからにするんだな……」
織斑の背後には……デュノアと箒に凰の姿……!
当然箒には睨まれ……デュノアは不安……凰は戸惑い気味……!
箒にとっては軟弱者……一夏の活躍の場を奪った者……!
デュノアにとっては恐怖……一瞬にして正体がばれ……宣戦布告されたようなもの……!
鈴は前回の襲撃時……なまじ近くで見ていた分……カイジの得体の知れなさへの畏怖……!
「え?みんな、いいよな?せっかく、男子も増えて三人。仲良くしたいもんな」
だが、そんなことは……知る由もない織斑……!
「すまねぇな、そもそも今日は食堂なんだ、俺……いや、折角天気もいいんだ……騒々しい食堂より、屋上へ行って来いよ」
「そっか、残念だな。じゃあ、また機会があったらな」
教室から出ていくのを見送るカイジ……そこへオルコットが声をかける……!
「みなさんと、仲良くなさりませんの?」
「あいつらが、俺と仲良くしたいって……そう思ってるって……?」
そう見えたのなら……オルコットの目は節穴だ……!
「……箒さんと鈴さんはともかく、織斑さんとデュノアさんは同じ男性操縦者ではありませんこと?」
「(気付かない、よな……まぁ俺も断言はできねぇけど……でも、不安そうな表情してる時点で、怪しさ全開なんだよ……騙す気がないっていうか……ん……?そう考えると……どこかおかしいな……引っかかる……)ともかく、あんな針の筵で……飯なんか食いたくねぇ……!あとは、調べたいことがある……のんびりしてる暇はない……!」
「(平然と、買ったパンを取り出しましたわね……!全くもって……それにしても……急いで調べたい事とは……?邪魔はしない方がよさそうですわね)では、失礼致しますわ」
気になりつつも空気を読み……席へと戻るオルコット……!
そして、放課後……デュノアの情報収集に動く……!
昼間にデュノアのことを調べ……デュノア社の一人息子であること……
それ以上の……社長の家族構成や情報は分からなかった……!
脅迫……誘拐……テロ対策……当然その情報はトップシークレット……!
個人で調べるカイジでは……限界……たどり着けない領域であった……!
そのため、やはり基本……今まで通り、学園に提出されたデータを洗う……!
「山田先生、すいませんが……デュノアの専用機や公式戦の情報など……いただけませんか……?」
「え、えと。デュノア君のですか?クラスメイトですし、そんな戦うようなことも、ないと思いますけど……?」
珍しく、狼狽える真耶……今までされたことのない……情報の出し渋り……!
「学年別トーナメント戦では……誰と当たるか、わかりませんよね……?今のうちに情報を得ておきたいんです……ありますよね……?専用機、持ってるんですから……!(織斑と同じように……男性操縦者だから専用機を得た……だから無いって言われると……突っ込めないんだが……)」
狼狽える真耶……!それを見て助け船を出す千冬……!
「まだ、デュノアは転校してきたばかりだ……こちらも先日のIS襲撃事件の処理と重なって……デュノアのことはほとんど手付かずだ……すまないが、まだ情報は渡せない……」
「そうですか……分かりました……では、処理が出来たら……渡してもらえるんですね……?情報がない……ではなく……!そして……所属不明のISについても……ね……!」
含みを持たせるカイジ……前者は情報の存在そのものを訝しんでいる……そういう印象を与える……!
「……そうなる、気長に待っていろ……だが、所属不明のISについては……極秘事項に当たることも……多くなりそうでな……」
端的に、後者の情報は渡せない……そう言う千冬であった……!
「俺が処理した……と恩着せがましく言うつもりもないが……まぁ、学園別トーナメントまでに……立つといいですね……処理の目処が……!」
職員室からカイジが去るのを見送り……ため息……山田真耶……
「伊藤君、気付いているんでしょうか……?」
「恐らく、な……だが、伊藤としても断言できるほどの情報はないはずだ……だから、我々の態度を試しにきた……とも考えられる……(ひとまずなにもするな、と釘を差すか……?しかし、伊藤にとっては……所属不明機は自分を殺しに来た敵であり……デュノアは自分の情報を取りに来た敵……と見えるはずだ……こちらから下手に動けば……伊藤がどう行動するか予測がつかん……情報が不足している今、無理に動けないか……)」
「早めに、デュノアさんの情報を洗わなければなりませんね」
「忙しくなるな……」
二人の教師……覚悟……残業……徹夜……一人はビールへの欲求を堪えて……
「あ、先生方、少しよろしいですかな?」
「どうされました?」
「明日、1組に転校生来るから」
「……???」
無慈悲な宣告……教員二人へ追い打ち……追いつかない思考……理解……
あり得ない……前日の放課後……夕暮れに……転校生のお知らせ……
容赦ない仕打ちへ……たまらず……思考停止……
そして、翌朝……昨日と全く同じように……転校生の紹介……!
あり得ぬ出来事……二日続けて転校生……同じクラスに……!
「えと、今日も嬉しいお知らせがあります。またクラスに一人、お友達が増えました。ドイツから来た転校生を紹介します。ラウラ・ボーデヴィッヒさんです」
「え?転校生?昨日デュノア君が来たばっかりじゃ」
「どういうこと?二日連続で転校生だなんて」
「おかしくない?こんな時期に、二人もこのクラスに転入なんて」
銀髪……眼帯……直立不動……険しい空気を纏う転校生……!
「みなさん、まだ自己紹介が終わってませんよ。お静かに」
「挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官!ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
そう言われ……軍人よろしく半歩前へ……気をつけの姿勢をし……名前だけ……!
「……」
「あの、以上ですか?」
問いかけられるも、答えず……一夏の方へにらみを利かせ……近寄る……!
そして……クラスに乾いた音が……響き渡る……!
呆然……唖然……皆声も出さず……状況に理解が追い付かない……!
「認めない。貴様があの人の弟であるなど!認めるものか!」
「(いきなり平手打ち……?教官……教え子……だが、ここが一年生ってことは……どこか違う場所で……織斑先生と関係があるってこと……恐らく狂信者……弟がいることが認められないんだろうな……可哀想に……哀れな奴……織斑を否定しても……自分が妹になれるわけでも……居なくなるわけでもないのに……あれ?つまるところ……俺、無関係……?良かった……!)」
自分に関係がないと分かるやいなや……途端に興味をなくしたカイジ……!
いま自分の目下の問題は……デュノアである……!
「(問題が……仕事が……どんどん増えていきます……!なんで、私の身ばっかりに起こる……理不尽、こんな不幸が……!)」
「(いかんな……私の晩酌の時間がどんどん削られていく。仕事が忙しいから部屋も汚いまま……今度一夏に食事を作りに来てもらおう……たまには弟の手料理が食べたいものだ)」
南無……山田真耶……生徒のために……粉骨砕身……頑張れ……!
織斑千冬……八割は、自分のせい……自業自得……!弟に体よく家事を……押し付けるな……!
様々な者の思いが錯綜する中……どうする……カイジ……どうなる……デュノア……!