放課後……人通りの少なくなった夕暮れ……ここは学園の一角……!
そこに千冬、ボーデヴィッヒの影……!そして、遠くにカイジの姿……!
「私には私の役目がある。それだけだ」
「こんな極東の地でなんの役目があるというのですか!お願いです、教官!我がドイツで再びご指導を!ここではあなたの能力の半分も活かされません」
だが、カイジ実はこの時素通り……盗み聞きをするつもり、無し……!
当然、この問題は自分の関係ないところ……織斑姉弟とボーデヴィッヒの問題……!
話は耳に入っていても……全く興味はなかった……!
「大体、この学園の生徒など教官が教えるに足る人間ではありません。危機感に疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしているような奴らばかり!そのような者たちに教官が時間を割く必要があるというのですか!」
ラウラが熱弁する中……カイジ、無関心……圧倒的温度差……!
あえてすぐ横を通り過ぎる……!
「そこまでにしておけよ、小娘……おい、伊藤。素通りする場面じゃないぞ……」
「……は?いやいや、俺、無関係……!織斑姉弟の、家族の問題に……わざわざ首を突っ込むほど……野暮じゃない……!弁えてる……常識を……!だから、好きなだけ、やってくれ……!俺の関係ないところで……!」
カイジ、したり顔……にやけ顔……クズ特有のどこか人を腹立たせる表情……!
「(人をイラつかせることに関しては天性の才能があるらしい……!だが、私をイラつかせてただで済むと思うなよ……!)ほう……いい度胸だ。そうだ、ラウラ……先ほどの言葉、確かに私にも否定できないところがある……先日、クラスの者どもを喝破……焚きつけてやったが目覚める者はいなかった……未だに危機感を覚えるものもいない……だが、この男は違う……!」
千冬の口からでた……意外な言葉……カイジを認めるような……そんな発言……!
「この軟弱そうな男に何があるというのです!」
「っふ、この男は私も認めている。その戦術眼……策略……度胸……成長を気に掛けるくらいにはな……!」
敬愛すべき教官が……認める発言……!カイジのような冴えない風体の男を……!
当然、向けられる……!一夏のように……千冬の経歴に傷をつけたわけではない……
それ故に……敵意ではなく……純粋な嫉妬、興味のようなもの……!
「て、てめぇ……心にもないことを……寝ぼけてんのか……!?なんのつもりだ……!」
「(そうだ、ラウラの事をおし……任せてみよう……!オルコットもこいつによって目覚めた……ラウラの目も覚ましてくれるだろう……!我ながらいい考えだ……デュノアのことに時間を……割かせないようにすることもできる……!私は嘘は言ってない……正しく一石二鳥、今日は晩酌でもしよう……一石三鳥だな……!)見ろ、ラウラ……!私に対しても臆することのない口利き……!並大抵の男にできることではない……!」
「た、たしかに!この男、自分を偽装……情けない、不甲斐無いと思わせている!?」
ボーデヴィッヒは戦闘面以外では……アホの子……圧倒的世間知らず……残念な子……!
「……いや、ちげぇって……正しい、その評価……!お前は間違ってない……!」
「見ろ……普通の男なら憤慨……自分のことを情けない、不甲斐無いと罵られれば……!だが、あえて受け入れる……自分の偽装がばれないように……!」
ああ言えばこう言う……揚げ足取り……カイジの言葉をすべて……いいように解釈……!
「そ、そんな高度なテクニックが!」
あるわけがない……!
「そういうわけでだ、私は仕事が忙しい……お前たちはさっさと寮に戻れ……!」
有無を言わせず、立ち去る……千冬……!残される……呆然とするカイジ……!
「(くそ……!このクソアマ……!押し付けやがった、俺に問題……!自分で……自分で解決しろよ……教え子だろ……!慕ってる生徒を……放り出すんじゃねぇ……!そもそも、家族の問題……!ちきしょう、ちきしょう……やらかした……意趣返し……いつもの復讐に……ちょっとかましてやろうと思ったら……とぼけてやったら……墓穴……Wで墓穴……まさかのWボケ……引かされた……ジョーカー……!)」
相手は世界最強の座に君臨した女性……挑発してただで済むわけがない……!
そして当然……ボーデヴィッヒ、興味津々……!今までに見たことのない人種……!
何よりも千冬……教官が、戦術眼……策略……そこを認めていた……!
ただ単に……度胸があるだけだったり……口利きが生意気なだけなら……ただの身の程知らず……
切り捨てられるが……戦闘面……そこを認めているのでは……無視はできない……!
一夏への恨み……それを忘れたわけではない……が、しかし、カイジにも……!
移ってしまったその興味……!