訓練する気も起きず……部屋に戻りベットに寝転がるカイジ……そこへ来客……!
「伊藤、いるか?話がある」
「……来たか。わざわざ、後戻りできない……そんな道に踏み込むとは……俺も救い難いな……はい、何のお話しですか?織斑先生……!」
「ここで話すことではない……相談室へ場所を変えるぞ」
「(極秘事項、と言っていたしな……これは長くなるかな……)はいよ……」
相談室へ移動……ここは防音・盗聴対策の完璧な部屋である……!
「で、話す気になったと……?」
「あぁ……しかし、これはお前が言う通り、極秘事項……他言無用……口外無用……そんな代物だ」
ボーデヴィッヒの出生は……ある種一国の情勢を左右しかねない……
遺伝子強化試験体……試験管ベビー……生体兵器……!
バレれば当然……各国からの突き上げどころでは済まない……暗黒面であった……
カイジの行ってきた……命がけのギャンブル……そのほうが現実味があるとさえいえる……
「俺から首突っ込んだわけでもないのに……そんなところへ、首を突っ込まさせた……そのことに対する弁明は……ないんですかね……?」
「それは、私も済まなかったな……つい、貴様のすまし顔で歩いていくのにむかっ腹がたってな……それにそもそも、貴様が煽るのがよくないのだ……私も人の子だ……」
「謝る気、微塵もねーだろ……あんた……!ボーデヴィッヒを焚きつけて……弟との対立煽って擦り付けて……デュノアが女であること……フランス政府が関わっていそうなこと……マスコミにリークしまくるぞ……!」
凶悪な切り札……カイジもわざわざ、千冬がボーデヴィッヒを押し付けた事……
それはただイラついていた……それだけではないことは看破……!
恐らくはデュノアの事……自分を遠ざけたい事も察知していた……!
「それだけは、本当に勘弁してくれ……戦争さえ起きかねないんだ……それにしても、初日の自己紹介の時点で気付いてなかったか……?」
最早そんなことをされれば……胃潰瘍……頭痛……円形脱毛症……!
ありとあらゆる……ストレス性の病を発症するだろう……!
当然、晩酌……酒に酔う時間など……微塵もなくなるに決まっている……!
「当たり前だろ……普通に大ニュースになるはずが、なんもなく入学してきて……その時点では半信半疑だったが……実習前の更衣室で……ほぼ黒だと確定したよ……」
それゆえ、カイジに疑念……当然スパイを送り込むとなれば……
その教育は……苛烈を極めることになる……到底自身が……気付けるような……
しかも……一日と持たない……そんな杜撰……!証拠の処分もできない……!
そんな自ら断崖絶壁に飛び込む行為……するわけがない……そんな違和感……!
「そうか……1時間も持たなかったか……これも極秘事項にあたることになる……現在我々もデュノアを救うため……奔走している……!この事態は戦争にさえ発展しかねないのだ……できれば静観していてくれると助かる……」
つまり逆に……逆に考えるならば……断崖絶壁に飛び込むからこそ……助かる道……
そして、その助かる道を……先生たちが拓いているのではないか……そんな、考え……!
「戦争、か……でも、降りかかる火の粉は……払うぞ……?どうみても男性操縦者との接触……それが送り込まれた目的……それに、俺はデュノアに……偽り、騙すなら……容赦はしないと……告げてある……!」
だが、カイジ……自分の身に……何かを起こすつもりなら……容赦はしない……!
とはいえ無論カイジとて……戦争の引き金にはなりたくない……
相応の手段は考える……ということは、言うを待たない……!
「そこは、私の弟が無自覚にも……引き受けてくれている……第三世代機持ちに加えて、私の弟……情報を取るならそちら、とな……」
「あんたは弟に話す気はないのかよ……?」
「一夏にはできれば……この世界の……暗く冷たい部分に……関わることなく……生きてほしいと思っている……」
家族の持つ愛情として……わざわざ自分の家族を……そんな世界に関わらせるなど……
現実問題……歪んでいると言わざるを得ない……関わらないで欲しい……至極真っ当……!
「そうかよ……ま、言った通り……家族の問題、首を突っ込みはしない……」
「そうしてくれると、助かる……では、ボーデヴィッヒの話だがな……お前も引いていいんだぞ……?こちらから関わらせてしまって、今更だが……お前たち子供が、知るべきでないことも……この世にはたくさんある……」
千冬としても……表の世界で生きている……真っ当なカイジを……
ドイツ軍の持つ……裏も裏……極秘事項に関わらせたいと……思ってはいない……!
「(この世の暗黒面……その世界にどっぷり浸かったような俺だ……今更1個2個増えたところで……どうってことはない……)構わないぜ、乗りかかった船だ……まぁ解決し切れる、とは言わねぇぞ……?どう見ても、厄介そうだしな……」
だが、残念なことに……カイジは真っ当ではない……
裏も裏……千冬も驚く……狂気の世界で生きていたのであった……!
「そこまでは、私も言わんさ……では、話すとしようか……ラウラはな、ドイツ軍の遺伝子強化試験体……試験管ベビーであり……要するに強化人間及び生体兵器に……分類されるものだ」
「(ボーデヴィッヒの奴、言い辛いことは何も……とか言ってなかったか!?せいぜい幼少期から……軍人として育て上げられて……薬物強化とかされたくらい……そんな風に思っていた時期が……俺にもありました……)……いやいや、どっから突っ込めばいいんだよ……倫理とか、違法とか色々すっ飛ばしてる……控えめに言っても頭おかしいだろ……!」
自身とて、倫理も法もない世界を生き抜いたが……生まれたときからそんな世界ではない……
おまけに、あの世界に入ってしまったのは……半ば仕方ないとはいえ……自らの失態……
流石のカイジも唖然……ボーデヴィッヒの境遇……!
「それは……そうだな、私も否定できない……だが、否定してもラウラはもう生み出されて、ここにいるのだ……私がドイツ軍へ教官として赴いたとき……ラウラはIS適正向上の手術を受けたせいで……落ちこぼれと言われる状態になっていてな……それを私が訓練を施し……今ではIS部隊の隊長となるまで成長した……それにより、私を妄信的に……信仰することになってしまったのだ……一夏に恨みを抱いているのも……その私の経歴に泥を塗ったから、ということのようだ……」
今回の事もいわば……自身の力を証明するため……!
力を認められてきたボーデヴィッヒは……自分を力でしか……表現できないのだ……!
「(今回の事は、織斑千冬の……気を引くため……自らを鍛えた教官が……自分の元を去った……自分の力を誇示して……また戻ってきてもらおう……そういう算段なのか……?ひとまず、これ以上……厄介ごとを起こされては……動きづらい……)なるほど、そういうこと……分かった、出来ることはやってみるさ……そうだ、ボーデヴィッヒに……学年別トーナメントまでは……私闘・模擬戦は禁じると……あんたから言っといてくれ……!正直、ISで暴走されたら俺では到底手に負えない……というか、現状一年生じゃだれも手に負えない……」
二人の専用機持ちを相手取り……それに勝利する力……!
ボーデヴィッヒの力量を……正確に把握しているカイジであった……!
「わかった、伝えておく……すまないな、ラウラのこと……よろしく頼む……」
カイジ、目下の問題はボーデヴィッヒ……!
これで一安心か……デュノアは果たして……!?
千冬さんもわざわざ暗部にまで関わせるつもりは初めからありませんでした。デュノアの問題が場合によってはあまりにも大きいことに発展しかねないため、どうしてでもカイジを遠ざけたかったのです。そこにきて、手のかかるボーデヴィッヒはちょうどよい目くらましになると踏んだのです。