カイジ、巡考……!
「ぐぅ、うっ……うわぁぁあああああ!」
急に悲鳴を上げ始めたボーデヴィッヒ……絶対防御のあるISの試合において……
ここまでの悲鳴をあげることは……まずないと言っていい……!
故に不審……カイジ、デュノア両名共に……手を止める……!
「なんだ……ボーデヴィッヒ……何があった……!?」
「何が起きてるの!?」
ボーデヴィッヒの方を確認すると……ISに走る紫電……
ISの強制解除の兆候……しかし、一夏はAICで止めている……攻撃を喰らう訳がない……!
目前の一夏も……戸惑う……突如苦しみだしたボーデヴィッヒ……
その姿を見ながら……ただ立ち尽くしていた……!
「ともかく、試合は中断だ……デュノア……!」
「そうだね。少なくともただ事じゃない!」
異常事態……それを察知した二人は……向かう、織斑とボーデヴィッヒの元へ……!
ここは暗闇……ボーデヴィッヒの精神世界……!
「いきなり、何だというのだ!?ISが動かなくなったかと思えば……違う場所に……いや、これは意識の中?一体私はどうなっている?まだ、戦いは終わっていない、誰だ私の邪魔をするものは!」
「こんにちわ、お人形さん。すまないな、急にこんなことをして」
闇の中、姿はなく……声だけが聞こえてくる……
「何者だ、貴様!」
「私がだれかなど些細なことだ、役に立ってもらう時が来た。それだけだ。しかし、私たちの脚本通りには進まないようだから、こうして強制的に介入した」
「役に立つ?脚本通り?何のことかは知らんが、私が貴様の思惑に乗るとでも思うのか!?」
「言っただろう、お人形さん。舞台のキャストに意志なんていらない。必要なのはマリオネットのように操られる糸、それだけだ」
「貴様、この私を人形と誹るか!」
「頑張って否定してもどうにもならない。だが、安心しろ。お前はお前の望む姿になる。ただそれだけだ」
「なんだと?私が望む姿、っぐ、これは、なんだ……!?」
ずぶ……ずぶ……と足から黒い泥沼に沈んでいく……
「ぐ、うぐ、前が見えなく……!」
黒い泥の沼に全身が浸かり……何も見えない暗闇へと墜ちる……!
だが、暗闇の中に一筋だけ……光が差し込んでいる部分があった……!
「っむ、動けるのか?一体どうなっている、完全な暗闇の中。光はあそこだけか」
不審に思うも抜け出す手段も思いつかない……光へと近づいていくボーデヴィッヒ……!
「な、なんだこれは……昔の私か?」
光の下へたどり着いた瞬間……周囲に現れる自らの過去……それを映す数々のモニター……
始めは自分が栄華を誇っていた……IS誕生以前の光景……!
が、急に暗くなり……その次に映っていたのは……IS登場後の光景……!
手術により自らの優秀な成績は落ちぶれ……罵られる自らの姿……!
そして、ラウラの頭に囁き……過去の罵倒……自らのトラウマ……!
「や、やめろ。私は、私は落ちこぼれなどでは、出来損ないなどではない!」
またも暗転……周囲が暗闇に閉ざされ、またも一筋だけ光が差し込んでいる……
囁きに苛まれながらも……光へと近づいていくボーデヴィッヒ……そして
「こ、これは、教官……?」
近づくとそこには……第一回モンドグロッソ優勝者……暮桜を纏った織斑千冬の姿……
そして、その織斑千冬が……ボーデヴィッヒへと語りかける……!
「ラウラ、この手を取れ。私がお前に、また力をやる」
その声を聞いた瞬間……うっとおしかった囁きが消える……
「教官……また、私を導いてくれるのですか?」
教官からの待ち望んでいた言葉……歓喜に胸が震える……だが、胸はない……!
「あぁ、そうだ。だから早く、この手を取れ」
「嬉しいです、教官……!また、私をみちびっ……!」
だが、その手に触れた瞬間、ぞわ……ぞわ……と嫌な感覚が体に入り込んでくる……!
「(声はなんと言っていた?私の望む姿になる、っく、これは……!)」
「っち、ばれたか。演技には自信があったのだが」
「っく、うぅ。また、纏わりついてきて……」
「そのまま受け入れてくれた方が出来が良かったのだがな。まぁ、どちらに転んでも私は構わん。では、せいぜい役に立て」
「き、貴様あぁぁああぁ!」
ボーデヴィッヒの意思は再び……暗黒へと飲み込まれていった……
「あああああああっ……!」
再びボーデヴィッヒ……絶叫……あらんばかりの声をあげる……!
それと同時に……ISからどろ……どろ……!と黒い泥が溢れ出す……!
そして、その泥が再び……飲み込んでいく、ボーデヴィッヒを……!
「(一体、なんだ……あれは……ボーデヴィッヒの様子からして……自分から望んだもの……とは考えにくい……!しかし、どうにせよISが……あんな風に変化するものなのか……?)おい、織斑先生……見てるんだろ……?なんだ、あれは……?」
状況からして……自身の理解を超えている……そう感じたカイジは……
唯一状況を知っていそうな相手へ……説明を求めた……!
「……」
「おい、だんまりかよ……極秘事項とか……ふざけたこと抜かすなよ……?あんた、ラウラを頼む……って言ったろ……!そして俺は……乗りかかった船……出来ることはやる……そう言った……だから、教えろよ……!」
一度乗りかかった船……自ら関わっていったことを……
途中で投げ出す気はない……カイジであった……!
「あれは、VTシステムと呼ばれるものだ……正式名称はヴァルキリートレースシステム……過去のモンドグロッソの部門受賞者(ヴァルキリー)の動きを……トレースするシステムだ……現在IS条約で……どの国家・組織・企業において……その研究・開発・使用のすべてが禁止されているものだ……!どうやらそれがボーデヴィッヒの機体に……積まれていたようだ……」
千冬の口からでた言葉……それはまたも禁忌の代物……!
ボーデヴィッヒの出生と同じく……危険な代物であった……!
「(全くなんていうか……なにそれ……って感じだな……つまるところ……これを積んでることがばれるってことは……それは国として致命傷……左右しかねない……その趨勢……そういう代物……!そして、ボーデヴィッヒは望んで……発動したわけではない……引っかかるな……)ドイツの担当官を……今すぐ捕まえておけ……逃げられる前にな……!」
「理由は……?」
「そっくり、あんたが言った……言葉通りの代物なら……その関係者を逃すなよ……そいつがVTシステムを……発動させた犯人……って公算が今のところ高い……!」
「(こいつは一体どこまで頭が回るというのだ……!?)お前が気にすることではない、と言いたい所だが……安心しろ、すでに学園のものを向かわせてある……」
「(次は発動させた理由……試合を中断させるため……俺たちに勝たせないため……それだけにしては過激すぎる……ていうか、自国の代表候補生……この勝ちの流れで中断はおかしい……それに、この試合にそこまでの……価値があるとも思えない……モンドグロッソなら別だが……トーナメントの存続が危ぶまれる……なら、何だ……ドイツにとって発動させるメリット……それはどこにある……?)情報が足りない……!頭を回すのは後だ……ひとまず、ボーデヴィッヒの様子を……!?」
ボーデヴィッヒへ視線を向けるカイジ……そこには、白式で突っ込む一夏の姿……!
零落白夜を発動させた雪片弐型を大上段に構え……必死の形相で切りかかっていた……!
原作ではラウラのVTシステムは機体損傷が一定レベルに達し、彼女の負の精神が振りきれた時発動となっていました。原作内での表記は一定レベルだけだったはずですが、pixivのものにダメージレベルDとありました。どっかの文献にはDって書かれてたのかな?
でも、まじでDだとやばい。何故かって、ラウラがセシリアと鈴をボコった時の機体損傷がCを超えるくらいだから。Dってもう具現維持限界を超えてるクラス。もう防御もなにも発動してない生身の人間にパイルバンカーぶち込むくらいやばい。Dの表記が公式のものでないことを祈る。さすがにデュノア絶許。