成層破戒録カイジ   作:URIERU

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推理パート2


カイジ、呆気……!

ここは、織斑・デュノアの部屋……部屋にはカイジを入れて三人……!

 

「何の用事だ……?」

 

「伊藤君にもそろそろ話しておかなくちゃと思って。僕は女の子だけど、男子として入学してきたっていうこと」

 

「(初日に気付いてるけどな……)へぇ、それで……それが今更どうしたんだよ……?」

 

最早カイジにとって今更も今更……すでに一か月は経過していた……

 

「今更ってカイジは気付いてたのか!?シャルが女の子ってこと!」

 

「(めんどくせぇ……気付かない奴がいんのかよ……連れて来いよ、そんな間抜け……まぁ話には乗っといてやるか……)いつだったか更衣室で見たとき、気付いたのさ……」

 

「んとね、僕が送り込まれたのは男性操縦者と接触するためなんだ。そして初めは一夏とその専用機の情報……でも、昨日伊藤君とその専用機の情報を得るようにって変わったんだ。あとは再来週にはコア情報とその情報を持って帰るようにって、ね」

 

「(つまり、俺にも専用機の情報を明け渡せ……そう言いたいわけ……?舐めてんのか……こいつは……いや、そうじゃないな……こいつ、もう帰って来れないってこと……気付いたわけか……俺の情報持ち帰ろうがなんだろうが……フランスは始末をつける……恐らく……事故死させて遺体も消す……これで終わりだもんな……!これ以上在学させたら……流石に他の国もアクション……調査……起こされかねないしな……)それで、俺に専用機の情報を渡せって……?寝言は寝てから言えよ……」

 

カイジ、あえてぼかす……デュノアは別に自分の情報が欲しいわけではない……

そんなことをしても無意味ということを分かっている……それを分かりつつも……

自分にあえて話してきた意図……それを探る……!

 

「カイジ!シャルだって大変なんだぞ!そんなひどいこと言うなよ!」

 

「一夏、落ち着いて!伊藤君が言ってることは普通だよ、自分の専用機の情報なんて簡単に渡せるもんじゃないんだから」

 

「だからって言い方ってもんがあるだろ!」

 

「なぁ……不毛な茶々を入れるくらいなら……出て行ってくれないか……?それとも……俺が出ていこうか……?」

 

「シャル!俺の機体の情報だけでいいだろ!それを送れば大丈夫だって!」

 

最早事態はそんなところで展開していない……機体情報の価値がない訳ではないが……

しかし、デュノア自身の危険性……それがその価値を上回ってしまったのだ……!

 

「僕が帰国することは拒否はできないんだって。国家からの専用機持ちに対するコア情報の持ち帰り、これは正当な要求であり学園特記事項も適用されないらしいんだ」

 

「そんな、本人の同意がないと介入はできないって書いてあったじゃないか!」

 

「そんなもん……建前に決まってるじゃねぇか……なんらかの不当な要求があった時に……本人を守るための事項であって……正当な要求を拒否する……そんな文言じゃねぇだろ……!」

 

「でも、シャルが帰国したら戻って来れるかどうかわからないだろ!?それだったらこれって不当な要求じゃないか!」

 

「前後が逆転……お前は、帰国したら何かあるかも知れない……だから、帰りませんとか言うつもり……?帰国した後のことを懸念して……不当性を主張するとか普通は通らねぇよ……なんか特別な事情でもない限り……」

 

「それで、ね。僕どうしたらいいのかなって。正直なにも手が考え付かなくて」

 

「……は?え、ていうか……なに……?その、事項……それで、お前はもう安泰……学生の間は大丈夫……国家からも干渉されない……帰国しなくても大丈夫……その間によく分かんないけど……なんとかなる……とかそういう感じ……だったわけ……?まじで……?今までの間にそれだけ……?」

 

「……」「……」

 

「やってらんねぇ……知るか、んなもん……もう、帰るわ……」

 

「シャルを見捨てるっていうのかよ!友達だろ!そんな人でなしだとは思わなったぞ、カイジ!」

 

「(え、なんだよ、これ……なんで責められてんの……?いや、お前らが……もっと色々手を考えてて……手を尽くしてどうしても……どうにもならなかった……とかなら……まぁ少しくらい考えないこともない……けど、駄目……お前らずっと何してたっけ……訓練か……?確かに訓練は大事だ……でも、命の危機を差し置いて……やってる場合か……?それとも、その事項以外全く何も……案は浮かばなかったのか……?というか、入学初日……俺が言った時点で……動いてれば……こいつ自身何もやってない……脅されて無理やり……とか、デュノアだけでも……助かったかもしれないけど……駄目……手遅れ……ここまで長期間になったら……スパイ活動をしていた……そういう追及から逃れられない……)こう、先生に相談とかは……?お前の姉さん、IS世界じゃ強力……名前は通るじゃねぇか……そういう伝手を使ったりとか……しなかったわけ……?」

 

「ただでさえ俺の事で千冬ねぇには迷惑をかけてるんだ。これ以上迷惑はかけられない!一人の家族に女の子一人、自分の力で守れなくて何が男だ!」

 

「(なら、もうお前男じゃねぇじゃん……ここまで事態逼迫するまで……出した案がそれだけ……どんなに危機に陥っても……自分の家族の名前は使わないのか……?)いやいや、逆に俺に何ができるって……?姉さんの名前使えよ……俺なんかより圧倒的に強力……それとも、なに……?お前の中で姉さんに迷惑をかけないこと……それはデュノアの命より優先されるわけ……?」

 

どう考えてもカイジと千冬では……そのネームバリューの差は歴然……

使うべき、頼るべき……それはカイジではなく千冬である……!

 

「そういうわけじゃない!なんでそうなるんだよ!」

 

「(話通じねぇ~……どうにもならねぇ~……ていうか、もうお前の姉さん……むっちゃ動いてる……弟の案が事項だけって知ったら……流石に愕然とするだろうな……あのブラコンでも……)いや、たぶんお前にとって姉さんのこと……それ以外は全部以下なんだ……ボーデヴィッヒの時も……そうだったよな……?姉さんのものだか何だか知らねぇけど……あの時お前は……ボーデヴィッヒとあの黒いISの境界線……それが分かってたわけ……?薄皮一枚先にボーデヴィッヒがいたら……確実に死んでたぞ……?」

 

「もう、それは終わったことじゃないか!ボーデヴィッヒは助かった!それに零落白夜もエネルギー刃だけの展開なら、千冬ねぇが人体には影響ないって言ってたんだ!」

 

「そいつは、初耳だな……じゃあ、お前はそれを誰かで試したのか……?それとも今この場で……自分かデュノアの頭にそのエネルギー刃を……躊躇いなくぶっ刺せるか……?」

 

「っう、そ、それは……」

 

「誰かお前にとって大事な人間に……それが出来るなら……俺もあの時の事を謝るよ……が、少なくとも……人から聞きかじったことで……命に関わるようなことはするな……人は仮には死ねない……一度しか死ねないんだ……」

 

自分や大切な人間には躊躇うが……そうでない相手なら試してからなど……

流石に許されることではない……!

 

「……」

 

「(……デュノア、お前はこの話を聞いて……何か思うことはないのか……?気付けよ、お前が哀れにすら……思えてきたじゃねぇか……)そうだな……ならデュノアの件もラウラの件の時と同じように……結果論で助かること……それを祈っとけよ……そうすればみんな幸せ……違うか……?」

 

一夏は自分を救うため……最善を尽くしているのかどうか……

そこに疑念を持ってほしい……そう思うカイジであった……!

 

「カイジはもういい!シャル、二人で案を考えよう!まだ時間はある、間に合うはずだ!」

 

「そう……頑張ってくれ……応援しとくよ……」

 

「い、一夏!あ、伊藤君、まっ……」

 

さっさと部屋を後にするカイジ……ため息すら出ない……!

 

「(くそ、なんてこった……織斑が暴走したら……先生の懸念していた戦争……そうなりかねないんじゃないか……?それにここに来ていきなり……俺の機体の情報だと……?というか俺の機体の情報を知っている……にしてもずいぶん指示が早ぇな……デュノアが報告をしたのか……?いや、あの状態で自分から……あっちと積極的に関りを持つ……とは思えない……!やっぱ学園内に内通者がいると見るべきか……?そして、またもなにか引っかかる……そんな感じ……一体なんだ……?)」

 

ひとまず、千冬へ報告……一夏の動きに警戒……忠告をしておかなければ……

全てが水泡に帰し……最悪の事態を招きかねない……!

 


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