成層破戒録カイジ   作:URIERU

43 / 91
推理パート3


カイジ、看過……!

自室に戻ったカイジ……ベッドの上で寝転がる……!

しかし、寝付けない……どうにも気がかり……!

 

「そうは言ったものの、寝覚めが悪い……」

 

「どうしたの~、かーくん。ここんとこずっと眉間にしわが寄って、顔に影がおりてるよ~。影がおりてるのはいつものことか~」

 

隣のベッド……まだ起きていた布仏がカイジの独り言を拾う……!

 

「なぁ布仏……聞いていいか……?」

 

「なに~?」

 

「例えば、お前が誰かに助けを求められたとする……だが、その助けを求めてきた奴は……碌に自分が助かるための行動をしていない……多少はした……一応考えて助かるための案を出して、それを信じて行動してた……だけど、それはどうみても穴だらけ……そして助けを求めてきたときには……もう期限もギリギリ……手遅れもいいところ……しかもそいつの協力者に逆ギレされた……お前はそんな奴を助けるため、行動するか……?」

 

カイジも自分の行動に疑念……ここで何もしないことは容易い……

鉄骨の時自分は11番の背を容易に押せた……でも、それをしなかった……!

今回は自分が手を貸すのは容易なのに……それをしないのか……?

カイジがされてきた裏切り、イカサマ、偽りに比べれば……

デュノアのした最初の謀りなど……可愛いものであるといえた……

奴はそれ以上の……スパイ行為などをしてきたわけではない……!

 

「う~ん、難しいなぁ。その子が自分の友達かどうかそういうのにもよるけど、でも助けないとほんとに大変な状況になるなら、何もしないってことはないかなぁ」

 

「そうか、ありがとよ……いい奴だな、お前……」

 

カイジは純粋にそう思った……今回カイジが直面していることは命……

そこに関わってくるため比較対象たり得ないが……しかし、だからこそ……

ここで見逃すことは容易ならざること……赤子を谷に突き落とすようなものだ……

 

「それだけでいいの~?」

 

「(デュノアは俺を偽ったが、俺自身に何かをしてきたわけじゃねぇ……釘を刺したからかもしれないし、奴なりに思う所があったのかも知れねぇ……それはわからないが……)もうすこし、頭を回す……それから答えを決める……!」

 

色々と考えることはある……実際、自分にも手立てがないのは確かなのだ……!

文字通り、手遅れ……スパイ行為をした、しないに関わらず……

社会が、IS委員会が……デュノアの存在を許さないだろう……!

デュノアの存在を明かして……そのままフランスを戦禍に巻き込むか……

デュノアをそのまま引き渡して……フランスは事なきを得るか……

どちらの手を取っても……デュノアの命運は尽きているといえた……!

 

「そっか、かーくんはどっちを選択してもいいと思うよ。で、私からも聞いていい~?ラウラウとなんで急に仲良くなったの~?前はまとわりつかれてる感じだったのが、懐かれてる感じになったよね」

 

前までは距離……ちゃんとプライベートスペース……それを確保したうえで……

周囲をちょろ……ちょろ……!カイジの動向を観察……そんな感じ……

それが今となっては……懐いた子供……保育園に現れた優しいお兄さん……

それに付きまとう少女……転校当時のことを考えれば……もはや別人であった……!

この話はまた後日挟もう……いまは推理パートなのだ……!

 

「そいつは……ラウラと試合を経てなんか……認められたようでな……試合中断のあと色々あっ……」

 

途中、言いさして口を紡ぐカイジ……不審に思う布仏……

 

「ん~、どうしたの?」

 

「っし……静かにしてくれ……!」

 

急に真剣みを帯びたカイジの顔……こんな時に茶々を入れるほど……彼女は呑気ではない……!

 

「(何かを考え付いたのかなぁ?お嬢様が随分とご執心だったっけ?前のVTシステム事件の時の事でなにやらあったとか……さっきの話はきっとおりむーとしゃるるんのこと。しゃるるんはどうなるのかなぁ。お嬢様もかなり頭を痛めていたけど、打つ手が思いつかないみたいだし……)」

 

急に黙りこくったカイジの横顔を眺めつつ……思考を巡らす布仏……!

お嬢様が千冬に何を言われたか……それは教えてくれなかったが……

カイジの事をよく見ておくように……そう頼まれた布仏である……!

 

「(あの試合……VTシステムに残っていた会話……脚本通り……強制介入……舞台のキャストと意志……操り人形……どちらに転んでも……これがヒント、キーワード……では、脚本……本来の脚本があったはずだ……本来通りじゃないからの強制介入……VTシステムのもう一つの発動条件……機体のダメージ……搭乗者の願望……本来負けていたら、強制介入せずとも……VTシステムは発動していたんだ……!それが本来の脚本……!周囲を容易に納得させられる発動……加えて証拠を消さなくてもいい……担当官は事態の重大さに怯えて逃げ出した……死体を完全に消し去っていれば……それで済む……!つまり脚本通りとは……ラウラが負けることだった……しかし、そうならなかった……!あの時の舞台キャストは四人だ……しかし俺が考えていた、メインキャストは二人……織斑が零落白夜で破壊役……ラウラがVTシステムを発動する役……その二つで成り立つ……どちらに転んでも、とは……織斑が破壊できようができまいが……どちらでもいい、そういう意味……そう、捉えた……恐らくそれでいい……ここからが肝心……デュノアも俺もメインキャストなら……!俺は足手まといとしてラウラの足を引っ張る役……デュノアは2vs1に持っていく役……2vs1に持っていけば……試合もラウラが負けていた可能性がある……!俺は別に誰でもよかった……逆に脚本家にとっての誤算が俺か……?これが、本来の脚本の筋書き……俺はなんでこんなことを見逃していたんだ……!そして委員会の不審な国のリスト……だがあと、もう一つ欠片が足りない……?)すまねぇ、もう寝る……!」

 

一方的に会話の途中で遮断……自分勝手もいいところだが……

口を挟んではいけない……直感的に悟る布仏であった……!

 

「わかったよ~、よく分からないけどうまくいくといいね!(もしこれで、かーくんがしゃるるんを助ける手立てを見つけたのなら、それは確かに驚くべきことだね~。私の頭なんかじゃどう考えても詰んでるもんなぁ~)」

 

布仏もまた、暗部に関わる者……更識より助言を求められる……

というよりは愚痴聞きだが……今回の事態のおおよそは把握していた……!

 

 

翌日の授業中……考え事のせいで上の空のカイジ……!

 

「で、あるからしてコアバイパスを繋ぐというこ……」

 

「っ……!」

 

ふと聞こえてきた言葉……その時カイジに電流走る……!

 

「どうした伊藤……私の授業で居眠りでもしていたのか……?」

 

「そのまま話を続けろ……!」

 

最早暴言……授業を中断しておきながら……命令……続けろ……!

しかし、一種異様な愕然とした表情……そのカイジに千冬も手をこまねく……

 

「お前というやつは……言葉遣いに気をつけろ……!で、コアバイパスを繋ぐという行為はとても難しく、本来設備の整った場所でやるか、そうでないなら熟練の技術者を必要とする。まかり間違っても今日の授業を聞いたからといって、アリーナで試してみるなどしないように。(初めは愕然としていた伊藤の表情が……段々と険しくなっていく……何を考えている?)」

 

「(あの時デュノアがしようとしていたのがコアバイパスだ……エネルギーを白式に移そうとしていた……デュノアはあの場で成功させる……その自信があったのか……?それとも、脚本家の指示……本来の脚本通りに進まないため……その修正、零落白夜による事態の早期収拾……あるいは破壊をしようとしていた……?)」

 

授業終了後……廊下を歩く千冬を追いかけるカイジ……!

 

「デュノアの専用機の会話ログを漁れ……VTシステム事件当日の会話……そのすべてだ……!」

 

それだけを千冬に囁き……そのまま去っていくカイジであった……!

 

「なに……?おい……!一体なんだというのだ……またなにか陰謀が暴かれるのか……?伊藤の手によって……」

 

千冬は訳の分からない恐怖……そして、寒気すら覚えた……


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。