成層破戒録カイジ   作:URIERU

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解答パート
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チフユ、謀闘……!

そして、千冬、決戦の場……交渉、デュノアの背後にいる魑魅魍魎……悪鬼と……!

 

「IS学園教師の織斑千冬です。今回は貴国の代表候補生シャルル・デュノアさんの件でお話があります」

 

「はい、当国の代表候補生が何か問題でも起こしましたか?」

 

「そちらから送られた資料には男性とありましたが、先日ちょっとしたアクシデントがありまして、男性ではなく女性であるということが判明しました。そちらから、何か弁明などされることはありますか?」

 

「おかしいですね。こちらもちゃんと検査を行い、男性ということを確認しております。そちらの間違いでは?」

 

「(伊藤の言った通り、相手は男であるという前提で進めてくる、か)そうは言われましても、こちらでの血液検査、及び身体検査で確実に女性ということが判明しております」

 

「それは、おかしいですね。各関係機関が見逃すはずもないのですが」

 

「それでですね。わたくしどもと致しましてはそちらで何があったにせよ、重大な規約違反、IS委員会へ話を通しそちらで決定を仰ごうと考えております」

 

「少々、お待ちください。上の者と代わりますので、そちらと話を進めてもらってもよろしいですか?私では判断がつきかねます」

 

「(担当官は知らぬ存ぜぬ、騙された体。今から出てくるのが本番、か)分かりました」

 

「こちらはフランスIS委員会代表ゴードン・ベックだ。こんにちは、マドモワゼル織斑、お噂はかねがね」

 

「どういたしまして、ミスターベック。担当官からお話しは聞かれましたか?」

 

「あぁ、話は聞いている。しかし、いきなり委員会に話を持ち込んで、などという性急な手を打つのは解せんな。我々の方に情報を調査する暇も与えてくれないのかな?また、デュノア氏の調査も当然我々の方でやり直したい。来週にはコア情報を持ち帰ることになっていたはずだ。その時まで待ってもらってもよいのではありませんかな?」

 

「(委員会の代表がたかだか一代表候補生のスケジュールなど把握しているものか。やはり伊藤の言うようにこいつは事情を知っている深い関係者だな)帰国の時期についてのお話なのですが、デュノアさんのほうがちょっといま状態が不安定なのです。どうやら自分自身が男のはずなのに、女だったことに驚いているような状態でして」

 

「一体どういう意味だ?何を言っている?」

 

「どうやら元々女性だったのに男性と思うように洗脳を受けていたような感じでして。それ故我々も女性だと気づくのにここまで時間がかかってしまいました。検査してみると血中にも不審な薬物反応が見られまして」

 

「馬鹿な事を抜かすでない!我々がそんなことをしたというのかね?」

 

「それは、デュノアさんの情報から客観的に判断した事実でして、疑うとかそういう問題ではないのです。そして、男の自分は織斑一夏と仲良くなり、模擬戦や訓練を通じて機体情報を入手するように教育されていた、ということをうわごとで言っている状態なのです。これは明確なスパイ行為と我々は捉えていますが、いかがでしょうか?」

 

「妄言はもうたくさんだ!ともかく、彼は専用機持ちで我々の大事なコアを所有している。そして彼についてはこちらで再調査を行う。君たちの調査では信用できない!血中から薬物が見つかったなど、ふざけるのも大概にしろ!学園側が専用機持ちのコア情報を持ち帰らせるという要求を拒むつもりなのかね?」

 

「そうは言われましても、彼女は帰国することを恐怖心から拒否しています。当然政府の正当な要求は我々学園も拒めないことは百も承知です。ですが、デュノアさんの状態、スパイ行為を要求されていた、これらを踏まえるとこのまま帰国させるのは非常に危険だと判断しました。また、申請書類、そもそも男性、女性かを間違える国の検査に期待はできません。フランスに帰す前にIS委員会及び女性権利団体の調査を経てから帰国してもらおうと考えています。そこでデュノアさんの扱いがどうなるかは分かりませんが、こうすれば少なくともフランスのコアはそちらの手元に返ります。学園側としてはわざわざ国際問題に発展してまで、フランスのコアを掠め取る意図は毛頭ありません。そして、こうすれば正当な要求の拒否にもあたりません。あなたの言うように、何の問題もなければそちらを通してもよろしいのでは?」

 

「……分かった。早急な帰国は望むまい。だが、こちらにも最初に言った通り、関係省庁を洗う時間をもらってもいいかな?何があったのかこちらも把握しておかねば、IS委員会の会合ですべてが後手に回ることになる。場合によっては戦争にもなりかねない。人道的な選択をしてくれないかね?」

 

「(フランスは我々が学園でデュノアの扱いに困ること、非常に危険な爆弾となる上に、手をこまねくであろうということを理解していたのだ。自国の危機、開戦理由になるかもしれないということを逆手に取っていた。こんなことを思いつくなど正気の沙汰じゃない、伊藤もフランスも!)トカゲの尻尾切り、どこの関係者がトカゲの尻尾になるかを決める時間でよろしいですか?」

 

「君、口を慎みたまえ!」

 

「別にその人員を選ぶ時間を待っても構いません。些末な事です。我々は、これ以外の情報も手にしているのです。今現在疑心暗鬼になっているIS委員会へデュノアさんは格好の燃料になり、そして、さらには火種となる情報があります」

 

「な、何を言っている、フランスを脅迫するというのかね!?」

 

「VTシステム事件当日のデュノアさんのISの通信記録に、担当官が織斑一夏へコアバイパスを繋げることの提案、及び解説書を送信した事実が残っています。これによりデュノアさんのISより、織斑一夏の操縦する白式へエネルギーを受け渡し、白式の零落白夜を使用させようとしていたことを確認しております。零落白夜は特性上、ISのバリア無効化によりISをもろとも破壊することが可能です。担当官もやたらと内部の様子を、それこそ数分おきには聞くほど気にされておりましたね。これらの情報と共にIS委員会へ送り込んだらどうなるでしょうか?」

 

「それは担当官も彼の身を案じての事だ……零落白夜とやらも解決策として、使用できるようにコアバイパスを提案したにすぎないのではないかな?」

 

「そう言うこともできますね。前回の会合ではVTシステム事件の真犯人は不明で有耶無耶。そして真犯人がどこかの国であるはずだが、それも分からない。故の疑心暗鬼です。しかし、フランスには実行するだけの理由がありますね?ドイツはイグニッションプランにおける敵、レーゲン型でトライアルに参加しており、フランスは1歩も2歩も遅れている。今回の事を機に、シュヴァルツェアレーゲンを亡き者にし、AICの技術アドバンテージを奪い、ドイツを失墜させる。動機としては十分ではないですか?」

 

「だが、確定的な証拠ではあるまい!このような脅迫を受ける謂れはない!」

 

「えぇ、そうですね。確定的ではありません。ですが、脅迫をしているつもりもないのですよ。客観的な情報のみ提供するだけですから。男子として入学させたことにより男性操縦者との接触も容易なデュノアさんの存在、男性と女性を間違える杜撰な処理・不透明な流れ、急な予定変更、今回の通信記録とVTシステム事件、ドイツが犯人となっていたら起きていた事、及びそれらによって利益を得そうな国、これらを全て纏めIS委員会の議題として提出して、会議の様子を見てみることにしましょう。各国がどういう動きをするか、見物ですね?」

 

「そんなことをすれば戦争が起こるぞ!客観的な事実もあるが、後半は憶測とも言える部分だ!そのような情報を提供して、国家間の危機を招くと言うのかね!?」

 

「(自分から招いておいてよく言う。なんという輩だ)フランスが各国を納得させられる資料を用意すればいいだけではありませんか?戦争が起こるかどうかや国家間の危機など私たちの知ったことではありません。日本からはとても遠い国の出来事ですので。デュノアさんの様子にはIS学園関係者一同とても心を痛めております。年頃の女性が自分の性別を偽る洗脳を受けて、自分が大掛かりな陰謀を知らぬ間に担がされていたのです。とてもショックな出来事でしょう。そんな哀れな彼女の存在を亡き者にして、今回の事態をうやむやにするということは、到底容認できません。それこそ人道にもとる行為ですから」

 

「き、きさま……ぬ、うぅ……しかし、私に君の考えをわざわざ全て話す道理もないな……?今回の事は連絡してくる必要はなかったはずだ。我々に確認を取らずとも行動には移せた。なにか、話したいことがあるのではないかね?」

 

「(全てを敢えて話し追い詰めたら相手もその意図に気付き、そして何かがあるとみて食いつく。伊藤は恐ろしすぎる、なんだこれは、どうなっている。ここまで思い通りにいくものか……?私も舞台で操られている人形のような気分だ……)私たちとしても戦争が起きることなど望んでいるわけではありません。ですのでデュノアさんの身柄に関して提案をしたいのです。早急にトカゲの尻尾を用意してください。いくらか泥をかぶってもらうことにはなります。自分たちの内部でのミスにより、不幸な男性操縦者が生まれてしまった、そういうことにしてもらいます。それによりデュノアさんは正式に書類の手違いということで女性としてこちらへ入学させます。女性、となってしまえばフランスが、彼女の身柄について何かをする必要がなくなりますね?もし何かがあれば私たちは全力で動くことになります。例え事故死であろうとなんであろうと、フランス国内で彼女が害されることになったら、先ほどの情報をいつでも公開する準備があります。どうですか?あの情報が公開されてもし戦争になればドイツは容赦しないでしょうし、あなた方の国はイギリス・イタリアにも睨まれています。戦争にすらならないでしょうね。あなた方にとっても損失はかなり少ない道なのでは?」

 

「(くそ、なんたることだ!なぜこうも逃げ道がない手に至ったのだ、まるでDeepを相手にしているようだ!やはりデュノア社を潰すとするか……彼らが洗脳、及び薬物で彼女を彼にした、関係省庁には金で買われた職員を数名用意するとしよう。デュノア社の謀略という形が分かりやすい終わり方だな)分かった、デュノア氏が女性であったということを、早急に公開しよう。来週に予定されていた帰国の予定もなくす。ひとまずは帰国の時期は未定ということにさせてもらおう。当然彼女を犯罪者とはフランスも扱わない。入学当初から今回の事態判明までは心神喪失状態で責任追及は困難ということにしよう」

 

「迅速かつ賢明なご判断ですね。では、これで失礼いたします」

 

「あぁ、それではこちらも失礼する」

 

電話を切ったのち、男の行動は素早かった。

 

デュノア社は自分たちがステージの外側から操る側だと思っているが、それは大きな勘違いであった。彼らもまたステージの内側、所詮糸で操られているだけ。外側の人間から糸を切られたらもう動くことはできないのだ。今回のステージ、糸で操られている人形が、さらに糸で人形を操っていた。そんなことをしたものだから、その動きがぎこちなくなった。それはまた仕方のない話であった。

 




 シャル自身が男だと完全に思い込んでおり、女ではなかったということにしております。これによりシャル自身の性別詐称を解消し、スパイ行為そのものも洗脳によるもの、及び機体情報を直接盗んだのではなく、模擬戦や訓練というあくまで正規の(違法ではないというくらいの意味で)手段で情報を得ていた、ということにしています。これなら自身が詐称していた事実及びシャル自身のスパイ行為を消せるといったところですね。

 フランス側としては、薬物使用などないというのは分かり切っているにしても、相手側に可能な限り無害な何らかの薬品を使われたりする恐れがあるため、IS委員会を通すことも危険です。自分たちは一切そんなことはしていないと言っているにも関わらず、状況証拠がシャルの体から出てくるとその他の答弁が全て無駄になってしまいます。また、女性権利団体が動きかねない事案となるので、例えその危惧がなくても非情に面倒ごとに発展しかねません。

 結局今回の事態を公表したら女性権利団体が動くのではないか?と思われるでしょうが、先手を打たれて動かれるよりは、完全に犯人を決めてそれに対して動き始めているという形の方が安全にことを進められます。

 元々はデュノア社が提案してフランス政府が協力したスパイ事件。時期をみて帰国させたあとデュノア社としては社内で飼い殺すか別人として生きてもらう算段だったのでしょうが、フランス政府が途中からこの計画を利用。VTシステム事件を引き起こしています。

ご納得いただけたらなぁと思います。

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