お決まりの生徒指導室内部……!一夏と千冬の二人……!
「さて、時間はたっぷりある……さあ、話せ」
一応は話を促していく……時間も無限にはないのだ……
「シャルのこと、シャルはシャルルじゃなくてシャルロット。自分の父親からの命令で仕方なく男装して、女なのに男として入学してきたんだ」
「ふむ、それで……?」
「それでって……千冬ねぇは何とも思わないのかよ!親だからって命令されてこんなことさせられて、可哀想だとか助けてやりたいとか!」
「それが、そう思うことが何か重要な意味を持つというのか……?当然人として必要な感情ではある……だが、今この場の話において必要なことではない……続きを話せ……いつ、それに気づいたかも含めてな……!」
一夏としては共感してもらいたいポイント……だがそれは筋違い……
ただ、デュノアの話をするなら……それもいくらか意味があるかもしれない……
だが、今は一夏と今回の事態そのもの……デュノアに対する感情を抱いても意味はない……
「う……俺が気付いたのは二日目、部屋に帰って来たとき偶然知ったんだ……それからシャルに話を聞いて、さっきのこと、デュノア社の経営がピンチでシャルは企業スパイとして父親に送られてきたんだ。それから俺は学園特記事項を使えば、本国に帰らなくても済むって提案して、デュノア社のことは今から三年間あればなにか手も考え付くだろうって話をしたんだ」
大体大筋はそのまま、原作通り……原作ではトーナメントを終えたら再入学してきたが……
「お前にしては考えたほうではある。ではそれから何をしていた……?」
「それからは……特に何も……」
「何も……?三年間あれば今はまだなにも考えていなくても平気、そう考えていた、と?」
恐らく原作のまま……多分なにも考えていない……原作なら不明に女として入学……
フランス、デュノア社に戻った後……その後のことについて話している描写はない……
「そ、そういうわけじゃない!ただ、トーナメントの事とか他の事も……」
「学生としての本分、IS学園の生徒ならISの訓練から勉強まで色々あるのは分かる……しかし、デュノアにとって言わば命がけ……そういう事態であるということは、考えなかったのか……?」
千冬としても一夏に問題解決……それを期待している訳ではない……!
なし崩しで任せているようなもの……だが、関わって誰にも相談せず……
自らがやると決めたなら……当然求められる、その真摯な態度……!
カイジほどの案を出せとは言わない……自分にもできなかったこと……
だが、自分に相談すること……それは少なくともできるはずなのだ……!
「そ、それは……もう事項を使えばひとまずは助かったって思ってたから……」
だが、駄目……!この作品では許さない……そんな暴挙……各国が黙っているなんて……
そんなに世界は甘くない……アホでもない……!介入がなければ脚本通り……
デュノアの運命……その命脈は尽きていた……!
「問題を先送りにした……と。お前にはどうにもISコアや専用機というもの……それに関しての認識が欠けているようだな……」
「認識が欠けている……?」
「お前はなし崩しにその専用機を手に入れた……本来お前の腕前で持つことなどあり得ないのだ……」
実際初の男性操縦者、加えて自らの弟……それが彼が専用機を持てた理由……
それ以外の理由などデータ採取……体の良いモルモットのようなもの……!
カイジに専用機の話がなかったのも……データはひとまず一人……
女性権利団体やISを信奉する女性にとって……データなど少ない方がいい……
IS委員会や女性権利団体の思惑が絡む……政治的な話であった……!
「っな、俺が白式を……千冬ねぇの武器を持つ腕がないって!?専用機ならカ、カイジだって持っているじゃないか!」
「たしかに伊藤もまだ専用機を持てるほどの腕があるとは言い難い……だが、前のトーナメントで奴は作戦を練って、奴が作戦の主体となって動いていた……確かに機体の性能故にできること、できないことはある……だが、伊藤はそれを理解して最適の手を打っていた……そして、今はお前の話だ……伊藤がどうであれ、お前の腕が変わるわけではない……!」
話を逸らす癖……今話をしているのは一夏のこと……他の事に目を向ける意味はない……
「……」
「お前は今まで誰かに勝って来たか?オルコットや、デュノアは確かに相手が悪い……同じ機体を使おうが、訓練機を使おうが、お前では勝てない……というよりは、他の代表候補生と同条件で戦ってもまずお前に勝ち目はない……それでもお前は専用機を持っている……一度授業で話したよな……?専用機持ち、候補生というのは甘くない、と……つまり、彼女たちには求められる……それに値する姿勢、態度……そしてコアは国の重要な財産……それが理解できていれば……それが事項一つで捻じ曲げられる、そうは思わないのだ……その重要性、価値……それらを真に理解していればな……」
この点はデュノアも悪い所ではある……甘い蜜に縋りたいとはいえ……命がけ……
とはいえ一夏の頑なに千冬に頼らんとする姿勢……それ故に何も言えなくなったのか……
「お、俺にはそれがない、専用機持ちになったのはいわば流れ……だから、その価値が理解できていない……」
「そういうことだ……まぁ話を戻そう。たしかに事項の文章をそのまま解釈するなら……それだけでも一時的には助かったとはいえる……これには政治的な、学園の成り立ちも関わってくること……現時点でお前に理解しきれとは言わない……本当の問題はここから……」
「本当の、問題?」
そう、今までのはいわば前座……千冬が話したかったことではない……
真に重要……正念場……ここをはっきりさせなければ手遅れ……意味がない……!
「あぁ、今日の初めのお前の態度……あんなにもフランスに帰国をしたことを気にしていたな……それは、何故だ……?」
「そ、それは……」
「お前にはそれだけ気にしている理由があったということだ……それを私に教えてくれ……それが本題だ……」
「シャ、シャルは命令の変更を受けたって話してて……それで急に帰国の予定ができて、事項の事も専用機持ちに対する正当な要求は断れないってなったんだ。そして、このまま帰国したらシャルはきっと帰って来れないって」
ようやく喋る……6000字、2話分を丸々使ってようやく本題……!
千冬が流石に放っておくわけにいかない……そう心に決めた一事……!
「それで、デュノアは具体的にどうなる、と……?」
「帰って来れないっていうんだから、当然またデュノア社で……」
一夏の想像……学園から退学してデュノア社でまたテストパイロット……
「お前はまさか……デュノアが生きたままでいられるなどと思ってはいまいな……?」
「生きてって、死、死ぬっていうのか!?殺されるなんて、そんな……」
「まぁ必ずしも死ぬ、わけではないかもしれんな……だが、フランスが初めから用意していたのはデュノアの死……あるいは、完全に日の当たらないところで……死ぬとも生きるとも分からない生活を送らされるか……表向きにはどうにしろ死亡という形になっていただろうな……」
それ以外での終わりがない……本来はそういう筋書きである……
「や、やっぱり千冬ねぇもシャルのこと知ってて……」
すぐ、これである……今話している内容は一夏の事……それを逸らしてしまう癖……
「私が、そのことを知っているかどうかは関係ない……一夏、お前の話をしているんだ……死ぬわけではない、そうとしか捉えていなかったからか……お前に危機感が足りないのは、そのせいなのか……?」
千冬がデュノアの事を知っているということ……それを一夏が知っていれば……
また、何やら行動が変わるかもしれないが……意味のない話である……!
「そ、それは確かに俺の考えが甘かったのかもしれないけど……でも実の娘をそんな、初めから殺す前提なんて考えられるかよ!」
実際のところ……デュノア社社長セドリックがそこまで考えていたか……
それは不明である……千冬がゴードン・ベックと話した限りで感じたことは……
トカゲの尻尾とされるのはデュノア社であり……決して頭脳の部分……
考えることが許されていた立場ではない……ということであった……!
「まぁ私もこの事態の全貌は把握しきれていない。デュノア社も所詮……ともかく、今回の事態はデュノアの命に関わる……そういう重大事だったのだ……そして、お前は全力を尽くしたのか……?誠心誠意出来ることをやった、そう言えるか……?」
実にここ……この一事なのである……果たして誠意ある……そう言える行動がとれたのか……
「お、俺だって事態が変わってから……シャルと一緒に出来る限り案を考えたさ……でもどうしても、それは戦争に繋がる、結局シャル自身が助かる道はないって……」
「そこで、自分の限界をお前は悟ったわけだ……なら、そこからどうすべきか、分かるだろう……?」
そして、限界を悟ったのなら……悟ったなりにやるべきことがある……!
自らの力で無理ならば……人の力に頼るということ……それはなんら恥ではない……
それを恥ずかしがり……頼るべきを頼らず全力を尽くさない……これこそが恥ずべき事……!
「その、それだけは……」
「私に何故相談しない……?先ほどの態度を見ればお前自身、私が知らないと思っていたようだが……相談されても、私の力ではどうしようもない事態ではあったが……だが、今は結果を話しているのではない……お前は自分自身が関わった重大事に……もう一度聞く……デュノアに自らの全力を尽くしたと、そう言えるか……?」
「ち、千冬ねぇにこれ以上迷惑は……俺のことだけでも迷惑をかけてるってのに、そんなの男じゃねぇ、女の子一人、家族一人救えなくて!」
「では、もうお前は男ではない……もうすでに、シャルル・デュノアは学園に在籍していない……」
それが、事実……もうシャルル・デュノアなる学生はこの学園にはいない……
「そ、そんなことって」
「お前のその心意気や生き方そのものを否定する気はない……これが命のかかわってこない……藍越学園にでも入って、友達同士の間柄での問題解決なら……今のお前の姿勢でも……そうそう問題になることもあるまい……手が早い所はあるがな……それでも、命に関わるような事態はまずないからな……だが、ここは違う……ふとすれば人の命に関わりかねない事態……そういうことに巻き込まれる……その時常に最善の手を尽くせなどとは言わん……だが、自分の矜持を他者の命と天秤にかけることだけはやめろ……!」
「お、俺はシャルのことを、シャルの命を自分のプライドとかけていた……」
「本来出来るはずなのだ……本当に助けたいという気持ちで……胸がいっぱいなら……捨てられる……例えそれが……自分にとって大切な想い……矜持であっても……人の命に関わるということ……それは何よりも重い……初手で私に頼らなかったのは、まぁいい……だが、事態が変化してからなによりも……私には相談すべきであった……それがデュノアに対しての……せめてもの誠意だった……」
デュノアがその時どう考えていたか……そればかりは神のみぞ知ること……
しかし、一夏はカイジのことも退け……自分にとっての切り札も切らない……
その姿を見てデュノアがどう思ったのか……カイジから聞かされて知っている……
既に千冬が動いているということ……実に滑稽な姿に映ったのではなかろうか……
「……」
「まぁここまで話しておいて今更だが……シャルル・デュノアは学園から除籍されたが……数日後シャルロット・デュノアが入学してくる」
「……え?ど、どういうことだよ?」
「お前や、私ではデュノアを救うことはできなかった……しかし、デュノアを救えるようにフランスと交渉した者がいてな……それによって、デュノアは……本来の性別と名前を取り戻して……この学園に入学できることになった……」
「じゃ、じゃあ千冬ねぇが今まで話していたことって……シャルがもうこの学園にはいないって」
「む……?私がそんなことを言ったか……?今までの私の発言をよくよく思い返してみろ……私は一度もお前が考えているようなこと……それを肯定などしていないぞ……」
そう、シャルル・デュノアという初めから存在していない……それがいなくなった……
ただ、それだけのこと……そして、フランスに行ったこともはぐらかすだけ……
答えてなどいない……大人は質問に答えたりしない……!
「え?あ……!でも、千冬ねぇ、ならあんな態度取ることないだろ!普通に話してくれよ!」
一夏の憤慨もある種当然……だが、通らない……そんなに軽い事態ではない……
「甘ったれるな……!お前が初めからデュノアが助かっている……そういう風に聞いてたらお前……どう考えてた……?今のように私に……素直にデュノアの事を告白したか……?なによりも自分自身の行い……その言動……真摯に思い返していた……そう私に向かって言えるか……?」
そう、初めから助かっている……そんなことを知れば確実に引いていた……その熱……!
助からなかった……取返しが付かないこと……それを前提に話すからこそ……
考える、自分の今までの行い……それが対外的に見てどうだったのか……!
「そ、それは俺だって今回の事を重く考えて、ちゃんと自分の行動を反省して……」
「それはデュノアが死んだからだ……死んだから真摯に考えるようになったんだ……!そうでなければ最初、しょっぱな……誤魔化したりはぐらかしたりしない……!聞く……ストレートに……直接デュノアはどうなったのか……何より私に話すことをためらわない……!」
「でも千冬ねぇも忙しそうだし、疲れてるみたいだったから……これ以上仕事を増やしたくなかったんだ!」
「お前が篠ノ之や凰と喧嘩しただのそんなことであったら、私も一々持ち込むなというが……さっきも言った通り、今回は事態が事態だ……こういう事態がそう何度も起こっては欲しくないが……お前も自身の立場を理解しろ……そして事の重大性をよくよく把握して……それに合わせた行動をするように心がけろ……!デュノアのことは聞かれても知らぬ存ぜぬで通せ……その時問題ない回答はお前自身で考えろ……ではな……絶対に無用な騒ぎ立てをしたり……何があったか知らんが伊藤を疑うのはやめろ……私は元より知っていたことだ……私からの話はここまで……(申し訳ないことをしたとは思っているが……お前が気付かなければそれでよし……気付いたとしても、まず問題は起こらない……そういう算段での話……)」
呆然と座ったまま握りこぶしに力をいれる一夏……彼が今回の話をどう受け止めたか……
それは私にも分からないことである……!
くっそ、一番この話が文字数おおいやんけ!