希少な男子生徒の動向を窺う女生徒……!まるで檻……!
動物園の珍獣を見るかのように囲まれている……晒される好奇の視線……!
一人はブリュンヒルデの弟……!ある種の近寄りがたさ……背後にあるものの強大さ……!
もう一人はギャンブラー……言い繕いはしても、ギャンブラー……!
どちらも近寄りがたい……特に、カイジ……!寄ってくるなと言わんばかりの無言の威圧……!
そんな中空気に耐えかねたのか……立ち上がる一夏……!
そして向かう……もう一人の男……カイジの元へ……!
「な、なぁ。カイジ、でいいかな。俺は織斑一夏。お互い唯一の男子生徒同士、仲良くやろうぜ!」
爽やか……!今までカイジが見たこともないような爽やかさ……!
カイジの周りの男……常に顔に影が差したような……!
笑顔は……企んでいますと言わんばかりの男ども……!
違う……!この笑顔には企みなど感じられない……!圧倒的好青年……!
だが、敵……将来的には間違いなく敵……!
至る、カイジ……!この男、無自覚……!
自分の価値……ブリュンヒルデの弟ということ……!
ただ弟なだけ……そうとしか感じていない……!
「あぁ。伊藤開司だ。よろしくな、織斑」
「よそよそしいじゃんか、名前でいいぜ?」
「いや、男を名前で呼ぶこととかあんまないし」
「うーん、千冬ねぇと被っちゃうから分かりづらいと思うんだけどなぁ」
変わらず……気絶するほどの殴打を喰らっても……未だ変わらず千冬ねぇ……!
「先公を織斑って呼び捨てにはしねーし、逆にお前に先生ってつけることもねーよ」
「それはたしかに、そうなんだけど……」
「いずれ、そのうちな。そのうち」
「あぁ、分かった!いつか、な!」
しつこさ……多少のしつこさはあるが……心得ている……引き際……!
この男……できる……!カイジにはない……人との調和能力……!
「(それにしてもさっきから、なんで睨まれてんだ、俺……)」
織斑の背後……巨乳な女生徒が睨みつけている……!
話している途中に感じた……刺すような視線……!
あきらかに敵愾心……!まさか……刺客……?この学園内にも……!
「(一夏の奴……!私のところに先に来るかと思えば、もう一人のそんな冴えないギャンブル好きの男のところへ挨拶へ行くなど!何を考えておるか……!)」
無自覚……先ほど一夏の助けてにそっぽ向いたことを忘れて……!嫉妬……!
許せない……乙女心……!幼少の頃、恋い焦がれていた一夏……理不尽な別れ……!
引き裂かれた二人……!そして出会い……!運命的……圧倒的神のいたずら……!
なのに自分の元ではなく……嬉しそうにもう一人の男の元へ……!駆け寄るなど……!
この時カイジ……勘違い……圧倒的勘違い……!
ただの恋する乙女を……暗殺者……刺客と……勘違い……!
「(っひぃ!近寄ってきた……!)」
恐怖……カイジの顔に浮かぶ恐怖……!
「どうしたんだよ、カイジ?そんな顔して」
「ちょっと、いいか?」
「は、はい。大丈夫ですよ。どうぞ、どうぞ」
情けない……年下の女子へ……へこへこ……圧倒的不甲斐無さ……!
「あ、あぁ。そこまで丁寧にされなくても構わんが・・・話しているところ申し訳ないが、一夏を借りていってもいいだろうか」
「どうぞ。織斑のほうに決めたのならどうぞ、好きなようにしてやってください」
即断……即決……!生贄……!織斑を生贄に捧げる……!
「え、え?箒?どうしたんだよ、いきなり」
「そちらの方が織斑に話があるんだとよ。俺のことはいいから行って来いよ」
「そうか?じゃあ、どうするんだ?箒」
「ここでは話しにくい、すこし教室から出よう」
「分かった。じゃあ、またな!カイジ」
合掌……!手を振り返さずに、カイジ……合掌……!
安らかに眠れ……一夏……!また会わんことを……!
ーーーーーーーーーーー
「ねぇねぇ~、なんで手を合わせてるの~?いただきます~?」
あ……?突如耳元にかかる激甘ボイス……!
突如としてカイジの脳裏によみがえる美心とのピクニック……!
頬についた卵カスを取るため……某リッカーの如く這いよってきた美心……!
惹起されたトラウマがカイジを恐れさせた……!
「うわぁああ。って、誰だアンタ」
飛びのいて距離を取るカイジ……!だが、いない……そこに、美心はいない……!
「ちょっといまのは傷付くよ~……」
そこにいるのは某ピカチュウ……の耳は器用にも垂れ下がり……
全身で傷ついたことを表現……耳だけなのに、感じさせる……圧倒的罪悪感……!
「悪かったな、ちょっと嫌なこと思い出しちまったんだ」
「うぅ~、それならこっちもごめんだねぇ~」
……なんだ、このゆるい生き物……カイジの過ごしてきた世界にはいない……不思議な生き物……!
それもそのはず、女学園……!IS学園とはいっても、ここは女学園……!
いるわけがない……!魑魅魍魎……!悪鬼羅刹……!
一癖二癖はあっても……地下労働施設ではない……!
「でぇ~、なにしてたの~?」
「いや、ただ織斑に手を合わせてただけ……」
「なんか知り合いっぽかったもんねぇ~」
……知り合い……?確かに織斑は箒と呼んでいた、あの女生徒……
つまり睨んでいたのは織斑……?俺、無関係……?
ってことは勘違い……刺客じゃない……安堵……!
「なんだ、良かった。俺の平穏は守られたのか」
「よく分かんないけど、良かったねぇ~」
……調子が狂う……なんだ、この生き物……!誰だ……こいつ……!
俺のことを知らない奴はいない……逆に俺が知っている奴はいない……!
そもそも……あの最悪の自己紹介……!
あの自己紹介で寄ってくるのは物好き……なんらかの思惑が働いているもの……!
その二択……この女はどっちだ……?
そもそもこんなのんびりとしたやつ……この殺伐とした世界でいるか……!?
生き残れるわけがねぇ……!限定じゃんけん……鉄骨渡り……Eカード……!
食い殺される……こんなのんびりとしていたら……!
的外れ……!勘違いしている……地下と……!
目の前の謎に悩むカイジ……が、女……気にせず、自己紹介……!
「布仏本音だよ、よろしくねぇ~♪」
「え……?あ、あぁ布仏ね、覚えたよ。じゃあな」
ぶった切る……これ以上付き合ってられないとばかりに……一方的……!
「えぇ~、もうちょっとおしゃべりしようよ。自己紹介はながれちゃったしさ。なんかほかに趣味はないの~、好きなものとか~」
が、駄目……!この女……関係なし……!空気とか、そんなもの……!
塗り替えていく……!独特の空気で……!
「(趣味はギャンブルしかねぇ……!好きなものも、地下で覚えたビールと焼き鳥だっての……!)」
一つとして公言できるものがないカイジ……!
「いや、俺のことはいいからさ。布仏は趣味とか、好きなものとかないの?」
逸らす……話題を自分から、布仏へ……!
「私に興味深々~?趣味は全世界お菓子集め、好きなものはお菓子だよ~♪」
マシュマロ……頭の中はお花畑……ではなくマシュマロ……!
ふわふわ……真っ白……なにもないのか……こいつ……?
カイジ的感想……これは普通……年頃の女子としては普通……!
異常なのはカイジ……!唯一人……!
「お菓子なら~、どんなものでも歓迎だよ~♪」
「そ、そうか……俺は甘いもんは苦手だから、なんか手に入ったらやるよ」
布仏……歓喜……喜びの舞……不思議な踊り……!全身で表現……喜び……!
「わ~い。あ、もう時間になるね~。それじゃあまたね~かーくん」
疲労……今までに相手にしたことがない相手の対応……思いのほか……!
だが……まだまだ、続く……容赦なく……カイジの苦難!……かー……くん……?