とある日の朝の人気番組……
「現在世間をにぎわせている男性操縦者の続報です。三人目の男性操縦者とされていたシャルル・デュノア氏でしたが、フランス本国の発表により、女性、シャルロット・デュノア氏であったという旨の発表がなされました。これに対するフランスIS委員会代表ゴードン・ベック氏の回答です」
「今回我がフランスよりこのような事態を起こしてしまった事を深く陳謝いたします。現在目下調査中でありまして、現時点で判明した情報のみの発表となりますこと、どうかご理解いただけますよう、深くお願い申し上げます。我々の現在の調査で最も深く関与していると目されているのは、フランスのIS開発企業デュノア社であります。デュノア社の社長、セドリック・デュノア氏が一人娘であるシャルロット・デュノア氏に対して、薬物投与並びに洗脳を行っていたという記録が見つかっております。これにより、シャルロット・デュノア氏はシャルル・デュノア氏と自らを認識し、その性別の認識をも変えてしまったと思われます。そして、デュノア社の口座を調査しましたところ、多額の使途不明金が見つかり、これが各関係機関職員への賄賂となったのではないかと考えております。現在各機関へ捜査が入っております。フランス本国特別捜査本部ではシャルロット・デュノア氏は、当時心神喪失状態であり、責任追及は困難であると考えております。以上が調査の状況及びフランスの見解となっております。このたびは我がフランスよりこのような事態を招いてしまったことを、再び深く陳謝致します」
「以上がフランスの公式見解ですね。デュノア社は第三世代機開発の遅れにより、政府からの資金援助の一部がカットされていたという噂もあり、それが今回の事態を起こした原因なのではないかとの見解があります。これに対して、七海さんどう思われますか?」
七海さん、この番組の政治面担当……この番組内の常識人……
しかし、もう一人……七海さんと呼びかけた北澤さん……
彼とはよく問題が発生する……割かし下らない理由で……
「一企業がやることにしてはかなり派手っていうか、壮大な計画ですよね。恐らくは男性操縦者の織斑一夏君への接触、特に第三世代機の情報収集が主な目的なんでしょうけどねぇ。それによって、第三世代機の開発に目処が立てば、噂の資金カットも無くなって会社の経営が立て直せる。しかしですよ、全く自国のリスクを考えてないと言いますか、資金カットは事実でそれに対する恨みもあり、このような派手な行動に至ったとも考えられますよね」
「私としましては、一企業が国家の関係機関に賄賂を贈ったとはいえ、IS委員会の目を欺いて、男性として入学させるなんてかなり無茶があるようにもおもえますがね。やっぱりフランス国家そのものが関わっているんじゃないですか?」
「それでは陰謀論ではありませんか?男性操縦者への接触をこのような形で国家ぐるみで果たしてしまえば、それこそ戦争になりかねませんよ。いくらなんでも危険すぎる手、そこまでして第三世代機をものにする理由っていうのがねぇ」
「現在欧州連合は統合防衛計画がありましたね。フランスは現在出遅れているといいますか、トライアルに参加できていないのは非常に痛手なのではとも思いますが、そこのところはどうでしょうか?」
「たしかにすでに三か国、イギリス、ドイツ、イタリアがトライアルには参加していますね。特にテンペスタⅡはモンドグロッソにも出場したテンペスタの系列機、レーゲン型も完成度が高いと聞きますし、今から頑張ってトライアルに参加してもかなり厳しいと思うんですけどねぇ」
正直なところ、今更感が非常に強いのである……それ故のドイツ陥落計画……
それをゴードンらが実施したともいえるが……それは失敗に終わった……
そして、これらの事件は当然機密事項……番組で流れることはなかった……
というよりもこの中の誰もが知らないことなのだが……
「ちょっとちょっとぉ、イギリスのティアーズ型に対してはコメントないのぉ!?現在適正Aランクで専用機持ち、国内のIS学園にいるセシリア・オルコット氏に対して失礼じゃないですか?オルコット氏のあの優雅な佇まい、ナチュラルブロンドとあのISスーツで強調された肢t」
「北澤さん、ちょっとそれ以上はスポンサーからクレーム来るんで自主規制でお願いしまーす」
この番組の看板格北澤さん……男性視聴者への根強い人気を誇る……
そもそもISの番組自体男性人気はないものの……この番組は政治的な話……
あとは北澤さんによるISスーツの解説……代表候補生の紹介等……
それらが特殊な人気を果たしている……セシリアもまた……
この番組の割かし人気……よく話題にのぼるのであった……!
「ほんと北澤さんはちょっと見るところっていうかさぁ。いっつもそれですよねぇ、ほんとISスーツの詳しさには水をあけられますよ。で、別に僕にティアーズ型を貶める意図はないんですよ。ただ、氏も言われた通りの適正、やっぱりこれが問題っていうか」
「っはぁー、ロマンが分かってないっていうか、もうほんと。久しぶりに切れちまったよ、スタジオの外出ろよ」
「あ?統合防衛計画っていうことの重要性、それに求められる要綱も理解できない輩が偉そうにしやがってよぉ、表でろや」
そして、非常に血の気が多く……よく乱闘騒ぎが発生する……
このフリーダムな感じ……それがまた妙な人気がでる一要因でもあった……!
「はい、えー、まことに見苦しい場面をお見せしてしまい申し訳ありません。みなさんお馴染みの放送事故、いつものように議論に熱くなってしまいます両氏ですが、ISに対する知識、見解には優れたところがあることをご理解ください。では、その時ISが動いたのコーナーでした、今後ともお楽しみに!次のコーナーは……」
コーナーがこのような放送事故で終わるのが……これまた不思議と癖になるのである……
そして、そんな番組が放映されていた日……それは……
シャルル・デュノア改めシャルロット・デュノアの再入学の日である……!
「みなさん、今日は転校生、と言ってもご存知の人を改めて紹介しますね。ニュースなどで知っている人も多いとは思いますが、温かく迎えてあげてくださいね。では、デュノアさん。入ってきてください」
真耶の掛け声とともにデュノア入室……!その顔には緊張の色が強い……!
「シャルロット・デュノアです。訳あって、男性操縦者として入学してきましたが再入学して、女性としてみなさんと過ごさせてもらいます。騙すような形になってしまってごめんなさい」
本当は騙していたが……建前としてこう言わざるを得ない……それは辛いことであった……
「大丈夫だよー、ニュースみたもん!」
「最低だよね、実の娘にそんなことするなんてさ」
「気にしないで、デュノアさん!」
「みんな……みんな、本当にありがとう……」
皆の温かい心に触れ涙ぐむシャルロット……!大団円……円満解決……!
???
「今回の事、あの織斑千冬がすべて、裏で糸を引いたと思うかしら?」
「彼女の事を侮るわけではないが、気質は武官であって文官ではない。あのような策を思いつくとは思えないな」
「そうよねぇ、誰なのかしらねぇ。ぜひ私たちの仲間に加わってほしいわ」
「とはいえ、そいつに関係あったのかどうか、それは不明にしても行動からみて、我々の活動を受け入れるタイプではなさそうだがな」
「そうでなければ、いずれ消さないといけないわね。だれかもわからないけど、惜しい才能ね」