カイジ、諦語……!
デュノアがシャルロットとして……再入学を果たすまで……
カイジが一夏を殴り飛ばしてから2日が経過していた……!
普段は一夏が呼びかけ……それにカイジが適当に返す……
しかしこの2日は不気味なほど静か……どちらも互いを無視……
元よりカイジから一夏に話しかけにいくということもないのだが……
周りも騒ぎ立てない……どちらも動きを見せない以上……藪蛇を突きたくはない……!
一夏としては自分が疑った……それが初め……暴力を振るわれたにせよ……
自ら謝りに行く必要がある……少なくとも相手の動きを待つばかりではない……
そう考えてはいるのだが……動けない……その足が向かない……!
3人で話をした時にカイジから言われた言葉……それが足枷……
千冬に言われたことを理解し……そして、カイジが言っていたことに思い当たる……!
事項に対する理解……千冬への相談の提言……そしてなによりも……
千冬へ迷惑をかけないことを……デュノアの命より優先したという指摘……!
全てが千冬と同じ次元……内容に達していたということ……!
今まで千冬に学んできたのは自分なのに……既に理解していたのはカイジ……
なぜ、デュノアを見捨てたカイジが……自分よりも千冬に近しいのか……
なぜ、そのような理解を持ちながらも……薄情な相手に自分から謝りに行くのか……
それらの思考が彼の動きを止めた……!
一方カイジは元より自分から謝る気などさらさらない……!
対外的に見れば当然悪いのは自分……急に暴力に走らずとも冷静に説得……話し合い……
人には口が、言葉がある……それらを使わないのは野蛮な……野生児の行い……!
それを考慮すれば自分から謝りに行くこと……それが常道……普通……常識……!
が、このまま不仲でも自分に困ることはない……今となっては危機感も薄れているが……
千冬に初めに言った言葉……後ろ手にナイフを隠しながら、仲良くはできない……
それを忘れたわけではない……表立って争ったりもしない……とも言ったのだが……
そんなことは都合よく忘れているカイジであった……!
そんな二人故にお互いに歩み寄ることもなく……ただ時が過ぎていき……
デュノア再入学の日に至ったのである……
この日の太陽もまた夕暮れに沈み……みな寮へと帰宅していく……!
そんな中デュノアに呼び止められるカイジ……内容は部屋に来て欲しい……
何か考えたことでもあるのか……大人しくデュノアの部屋へ向かうカイジ……
デュノアは正式に女性として入学……寮も一人部屋へ移行したのだ……!
「何か用か……?今日は……織斑はいないのか……?」
「え、えと、二人で話をしてみたくて、迷惑だったかな……?」
「別に、奴がいるよりは話しやすい……話の腰を一々折られるのは、面倒だからな……話の内容もずれていくし……」
恐らくはデュノアもそう考えたのか……あるいは、一夏を入れては話せないことか……
「そ、そっか……ごめんね、一夏も僕の事を思ってくれて話してくれてるんだけど」
一夏を交えて三人で話した時……あの時点ではカイジにも手立てはなかった……
逆にあそこで変に協力していたら……案を思いつかなかった可能性もあったかもしれない……
「(それで、いいのかよ……お前の人付き合いに首を突っ込むつもりは……ないけどな……)そうかい……で、本題、要件を言えよ……」
「その、要件っていうか、ただお話をするっていうんじゃ、だめかな?」
「……お前と俺で何を話すって……?ねーぞ、共通の話題なんてなんにも……」
「あるんじゃないかな、僕の事……織斑先生は伊藤君が関わっていることを否定してたけど、どうしても腑に落ちないんだ、あそこまで状況が急激に動いたこと。伊藤君に話してから、だしね。そして、お前を助ける唯一の策だそうだ、って織斑先生は言ったんだ。どれだけの人が僕のために動いてくれたのか、それは僕には分からない。だから、分かる範囲だけでもお礼が言いたいんだ」
少なくとも簡単な事態ではなかった……自身の置かれた現状……
きっと多くの人が動いてくれている……そして、その中でも鍵となる人物……
最終的に助かる案を出してくれた……それをカイジだと考えていた……
「……色んな先生が関わってたんだろ……ニュースで言っていたような案を……思いつける人間がいたって……別におかしくないだろ……」
「うーん、それだけだとフランスがそこまで弱気にはならないんじゃないかなって。僕が薬物投与なんてされてないのは分かってるんだから、IS委員会での検査を挟めば、学園側が嘘を言ってることになる。生徒の証言をかきあつめてもいいだろうしね。でも、そうはできなかった。結果としては女性が男性になってしまった、だけならデュノア社を同じように潰して、僕がスパイであることは言い逃れできないから僕を逮捕する。バレたときの手立てとして、それを用意してたはず。だけど、それをしようとすればフランスにとって、もっと致命的な何かが明らかになっていた、いや、されていたっていうべきかな」
状況から逆説的に推論を立てたデュノア……結果がありきで組み立てができるが……
それでもその勘働き、論拠の選別……それらは高度な域に達していた……!
「(こいつ、存外考えているというか……別に織斑に依存しなくても……自分だけでなんか手……考えればよかったんじゃないのか……?というか、織斑にすべて話したのって……織斑先生のことも考えての事だったとか……深読みしすぎか……?)そんな陰謀論みたいなこと言ってどうすんだよ……全て憶測、仮定の話……意味ないって……」
カイジにとっては不思議であった……一夏にはひとまず黙っていてもらうか……
あるいは協力してもらったにせよ……いわば隠れ蓑にして利用……
稼げた時間でとにかく……頭を回せばよかったのではないだろうか……
「僕にとっては、重要なことだよ。それにこれは、十分に陰謀と言えるものだった。デュノア社はたしかに大きな会社だった。そして、僕を洗脳したとか薬物投与をしたなんて事実はない。それは伊藤君なら分かってるでしょ?その事実を作れるのなんて、もうフランス国内じゃ、フランス政府以外無理。あれは国家ぐるみの陰謀だった」
事実を知らない……ただニュースを聞いただけ……それならば信じる……
単純にデュノア社の陰謀……例え難しい所はあったとしても……
否定しうるだけの材料はまず手に入らない……フランスが落とし処とした所以……
「確かに、そう言われてみればそうかもな……つまり、デュノア社は陰謀の犠牲になった、と」
「そういうことになるかな。それで、僕はどうしても、お礼を言いたいんだ。流されるままに過ごしていた僕に、手を差し伸べてくれた人がいるなら……どう考えても、僕には自分が助かる方法を考え付かなかった。でも、あの時伊藤君に嘘をつかずに本当のことを言っていたら、ここまで事態が発展する前に助かったのかもしれないって。そういうことも最近は考えるんだ」
「結果的には助かった、仮定の話をしてもしょうがない……お祈りの結果さ……あそこで話したとして、一生徒の俺に何が出来るって……?」
「ふふ、それこそあの時話していれば僕がスパイする時間はなし、今回のようなデュノア社を尻尾切りするだけで済む、って伊藤君が考え付いたり、その場合僕が学園に残るのは無理だろうけど。あと、伊藤君はボーデヴィッヒさんの事を救ったじゃない。あの時零落白夜が一夏の言う通りの代物なら、それでも助かったかもしれない。だけど、あの時結果的にボーデヴィッヒさんの事を救ったのは伊藤君だった。そして、セシリアのことはあれだけ邪険に扱うのに、ボーデヴィッヒさんにはそうしないのも、気になってね。そして、VTシステムは僕も知ってる。ボーデヴィッヒさんに何も追及がいかないような、そんな生易しいシステムじゃない。そして、VTシステムが収まった後、伊藤君がなにやら織斑先生に話をしていたよね。あの時、舵を握っていたのは伊藤君だった。織斑先生じゃなくて、ね」
当然あの場にいた当事者はそこを見ているだろうが……
人によってはただラウラの安否について……それの確認の会話……
そう見えたものもいるかもしれない……事実、デュノアもそうであった……
しかし、後から思い返していくと不自然……違和感が拭えなかった……
「(話を誘導された……?本当によく周囲の見える奴だ……知識もある……それ故に自分が色々と……行動するのをためらったのか……?自分が動くことによる影響や……織斑のことを考えて……そして、俺に急に話す気になったのも……VTシステム事件の時のことを見ていたからか……)あの、織斑先生が……俺がしゃしゃり出るのを許す、って……?」
「この前の授業の事、忘れたわけじゃないでしょ。コアバイパス……あれは、僕があの時やろうとしてたこと。あそこで伊藤君があんな反応をしたことも僕の気掛かりなんだ。そして、なんて言ったか覚えてる?話を続けろって、命令したんだよ?あの織斑先生に。みんな気が気じゃなかったんじゃないかな。普通に出席簿アタックが飛ぶかと思ったら、そのまま流して授業を続けるし、驚いたよ」
「(あの時は頭回すのに集中してたからな……それにしてもこいつは名探偵かよ……追い詰められていく気分だ……そしてこのことに関しては……どうにも言い訳が立たない……機嫌が良かったんだろ……とでも言っておくか……?いや、こいつには通じない……)そんなことも、あったっけな……」
「だから、ね……あの時は嘘を言ってごめんなさい……そして、ありがとう。本当に、ありがとう……」
それまでは平然と……話していたように見えたデュノアであったが……
ぼろぼろと大粒の涙を流しながら……お礼を言う様子に流石に口を閉ざすカイジであった……
「僕は、もう、ね。自分の知らないところで色んな陰謀が動いて、巻き込まれるのだけは嫌なんだ……いや、怖いんだ。ボーデヴィッヒさんのことだって、担当官と会話をしてコアバイパスを行うことになった。僕はそれを疑うことなく実行しようとしたけど、あの時伊藤君が止めてくれなくて……もし一夏があの場の解決者になっていたら、今頃彼女はここにいないんじゃないかって、そう考えるんだ。良かれと思ってやったことが全て操られてて、陰謀の片棒を担がされてたんじゃないかって。そして最後は、好きな時に糸を切られて動けなくなる、そんなことはもう……」
デュノアはとても深いところまでたどり着いている……そう感じたカイジであった……
「……悪かったな、薬物投与に洗脳なんて……それ以外の策はなかった……お前に責任を行かせないためには……フランスに何を言ったかは知らなくていい……色々脅迫をかけるしかなかった……織斑先生の事は、悪く思うな……俺が脅しをかけてたからな……(俺がラウラのために動いた……フランスを脅迫した内容……それを言ってしまえば……ラウラの闇にまでデュノアは……嗅ぎ付けるかもしれない……真実は花の下だ……)」
ここまでたどり着き……謝罪され、感謝されてしまっては……はぐらかしはできない……
デュノアはただ流されて……何も考えていなかったわけではないのだ……
それを知ったカイジがデュノアに見せられる……真実こそが誠意の形であった……!
だが、折角平和になり……花の咲いた地の……過去を掘り起こす必要はない……!
「伊藤君がそういうなら、もう聞かないよ。知るべきでないこと、なんだろうから。それにしても国家すら脅迫するんだもん、織斑先生でも身動き取れなくて仕方ないよ。ありがとう、ほんとのこと言ってくれて。薬物投与くらい、僕が辿るはずだった未来に比べれば……」
これだけ頭が回るのなら……単純に殺されて消されるほうが……楽だったと言える……
そんな未来についても頭が回るのは……明白であった……!
「まぁ、考えてみればお前も……命を屁とも思わないような連中の……食い物にされてたんだよな……まぁ、もういいか……そうだ、ラウラと仲良く……してやってくれないか……?不器用な、平和な生き方も分からない……そんな奴だけど、悪い奴じゃないんだ……」
「ん、わかったよ。それくらいお安い御用さ。あと私はカイジ君とも仲良くできたらって、そう思うよ」
真実を知ったデュノア……闇は晴れた
次話はようやくセシリアにとってはデート回ですよ!