始まる……学園ならば……授業……一時間目……IS概論……!
山田先生の口から紡ぎ出される……呪文……数々の難解な言語……!
理解できようはずもない……ISに興味などない……一夏では……!
カイジもほとんど同じ……!命がけ……ホテルで勉学に取り組んでいたが……!
しかし……理解しきれなかった……!分かりやすい解説がなければ……当然…!
ほんのすこしだけ……欠片ほど理解しているにすぎない……!
「どうしましたか、織斑君?分からないところがあったら先生に聞いてください。なんたって私は先生なんですからね!」
「山田先生、全部分かりません!」
がたっ……がたっ……っと再演…自己紹介の時と同じ……!
呆然……呆ける……予想外の一言に……山田先生棒立ち……!
「え、えと全部……ですか?」
「はい、全部です」
「他にもいますか、ここまでの内容で分からない人は?」
いない……!さすがに全く分からないものは……!カイジも全く、ではない……!
「伊藤君はどうですか……?」
「ちょっとはわかる……!ちょっとは……」
不安……圧倒的不安……!山田麻耶の胸中にあるのは不安……その一言……!
「織斑、入学前に渡した参考書はどうした……?」
「あの、古い電話帳と間違えて捨てました」
「この大馬鹿者が……!!」
そういい、振り下ろされる鉄槌……!今日一番の速度……殺人的一撃……!
その一撃にたまらず昏倒……一夏……昏倒……!
「いまのはちょっとしょうがない気もしますね…」
山田真耶にすら……切り捨てられる……!
「伊藤はどうした?ちゃんとやっておけと言ったはずだが……?」
「読むには読んだって……!でもあんな難しいの、分かりやすい解説でもねぇと理解できるわけねぇだろ……!!」
「ほう。じゃあ分かりやすい解説があればちゃんとできるということだな?」
「いや、それは、まぁ。そういうことになるかな……」
「テストの結果を期待しているぞ……!さて、織斑。お前には再発行してやるから理解できるまで徹夜しろ……!」
「いや、あんな分厚いの徹夜なんてしてたら眠れねーよ……」
「やれといったらやれ!」
「はい……」
容赦の無い一言……一夏、消沈……やる気などでようはずもない……!
「織斑、伊藤。貴様ら、自分が望んでこの環境にいるわけではない、だからやる気が起きないとでも考えているのか?」
「……」「……」
「やはり、そうか。いいか、人は望むと望まざるとに関わらず、生きていかなければならない。それが嫌なら人であることをやめろ」
「(研究所送りっていう前提があるから、俺は理解できるけど、そうじゃねぇなら極論もいいところじゃねぇか……!ここでの成績が人生の何になるってんだよ……!ただ単に平穏な生活を望むんなら、こんな参考書、クソ喰らえだっつぅの……)」
「不満でもあるか、伊藤……?」
「いや、そうだな。確かに、人として生きたいならやらざるを得ないもんな……俺たちは」
含みのある物言い……カイジと千冬、にらみ合い……!
「(俺たちは……?)」
一夏、ついていけず……!それもそのはず、千冬はなにも話していない、現状……!
「山田先生、続きを」
「は、はい。お二人とも……?先生も精一杯頑張りますから、頑張ってくださいね!」
その後は淡々と進む……授業……!二人をおいてけぼりにして……!
そして訪れる休憩時間……!解放……一時の解放……だが、駄目……!
解放などされない……!新たな刺客……!カイジへと……迫る……!
あ……?目の前から迫る金髪の女……あきらかに狙い……定めている……俺……!
逃げる……!カイジ…たまらず逃げる……!
「(流石に刺客じゃないだろう……だが、面倒ごとはごめんだっての……!休憩時間くらい休憩させろよ……!休憩って言葉くらい、分かるだろ……!)」
「あ、お待ちに……」
脱兎のごとく、カイジ……!聞く耳持たず……逃げ出す……!
が、それも無駄……!追ってくる、金髪女……!廊下まで……!
「なってくださいまし……!」
「(だめだ、これ以上逃げらんねぇ……っていうか、追ってくるなよ……!諦めるだろ……普通……!)なんだよ……!」
「なぜ、お逃げになりますの……わたくし、何かなさいまして!?」
女尊男卑に染まっているとはいえ女……年頃の女子……!
男から一目散に逃げられては心に来るものがあったのだ……!
「いや、だってこう面d……じゃなくて、休憩時間だろ、今……俺は休憩したいんだよ……!」
「そ、それだけですの……?それだけの理由でこのわたくしから逃げた、と……」
「そうだよ……で、何の用だ?そもそもあんたが誰かも知らないんだけど……」
「まぁ!?わたくしを知らない?って、当然ですわよね……知っていたらあんな風に逃げ出すわけないですもの……」
「(なんでISに関わってる女は自分の事を知っている前提で話をし始めてんだ……?ブリュンヒルデは、知らない人のほうが稀だろうが……)」
「わたくしはイギリス国家代表候補生セシリア・オルコットですわ。以後お見知りおきを」
「へぇ~、イギリスねぇ。あーぁ、あー、なんとなくある。そういう雰囲気!ほら紅茶のにおいが漂ってきそうな感じ……!それとその金髪のドリル…!」
暴言……もはやカイジ売っている……喧嘩……真正面から……!
「あなた……馬鹿にしていますの……?」
「いや、イギリスなら紅茶って言葉が思い浮かんだだけ……あとはよく映画で出てくる英国人のお嬢様ってそういう髪型のイメージだったから、つい」
「ま、まぁいいですわ。他意はないということは分かりましたから……」
不承不承……喧嘩を売りに来たわけでもない……矛を収めるオルコット……!
「で、結局自己紹介だけだったのか……?悪かったな、逃げたりして」
「(代表候補という部分には見事に触れられませんでしたわね……しかし、ここで蒸し返すのもみっともないですわ……)え、えぇ。まぁ不幸な行き違いはありましたが、そういうことですわ。では、ご機嫌よう」
物足りない表情をしつつも去っていくオルコット……!
「それにしても代表候補ってことは優秀な奴ってことか……」
「(!?そこはちゃんと気づいておりましたのね!冴えない男かと思っておりましたが、すこしは出来ますわね!)」
カイジの独白…届く、オルコットの耳へ……!カイジ、知らぬ間に上げる……株……!
一転歓喜……足取り軽く戻っていくオルコット……!圧倒的チョロさ……!チョロコット……!